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発生動向総覧
〈第9週コメント〉 3月10日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 290例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢3例(感染地域:インド2例、タイ/ベトナム1例)
腸管出血性大腸菌感染症12例(有症者8例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内11例、ミクロネシア1例
国内の感染地域:宮城県1例、神奈川県1例、愛知県1例、大阪府1例、広島県1例、高知県1例、福岡県1例、熊本県1例、不明3例
年齢群:5歳(1例)、8歳(2例)、10代(1例)、20代(4例)、30代(1例)、40代(1例)、50代(1例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(6例)、O157 VT2(3例)、O91 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:178例(有症者112例、うちHUS 5例.死亡なし)
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4類感染症: |
E型肝炎2例
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感染地域_感染源:国内(都道府県不明)1 例_イノシシ肉、中国1例_不明
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オウム病1例(感染地域:愛知県_感染源:インコ)
デング熱1例(感染地域:インドネシア)
マラリア1例(三日熱_感染地域:コンゴ民主共和国)
レジオネラ症5例(肺炎型5例)
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感染地域:東京都1例、石川県1例、広島県1例、宮崎県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:50代(2例)、60代(1例)、70代(1例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢11例(腸管アメーバ症9例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:東京都2例、岐阜県2例、広島県1例、熊本県1例、中国1例、国内(都道府県不明)3例、国外(国不明)1例
感染経路:性的接触5例(異性間2例、同性間2例、異性・同性間不明1例)、不明6例
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ウイルス性肝炎2例
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B型2例_感染経路:性的接触2例(異性間1例、異性・同性間不明1例)
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急性脳炎2例〔病原体不明2例_年齢群:2歳(1例)、4歳(1例)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例
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年齢群:50代(1例)、60代(1例.死亡)
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後天性免疫不全症候群11例(AIDS 2例、無症候9例)
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感染地域:国内8例、国内・国外不明3例
感染経路:性的接触8例(異性間4例、同性間4例)、不明3例
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梅毒8例(早期顕症II期3例、晩期顕症1例、無症候4例)
破傷風1例(年齢群:60代)
風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例)
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感染地域:千葉県1例、中国1例
年齢群:10〜14歳(1例)、40代(1例)
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麻しん5例〔麻しん(臨床診断例3例)、修飾麻しん(検査診断例2例)〕
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感染地域:国内5例
国内の感染地域:東京都3例、三重県1例、福岡県1例
年齢群:1歳(1例)、25〜29歳(1例)、35〜39歳(1例)、40代(2例)
累積報告数:76例〔麻しん(検査診断例25例、臨床診断例28例)、修飾麻しん(検査診断例23例)
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(補)他に2010年第8週までに診断されたものの報告遅れとして、デング熱1例(デング出血熱_感染地域:インドネシア)、日本紅斑熱1例(感染地域:三重県)、マラリア2例(熱帯熱1例_感染地域:ナイジェリア.卵形1例_感染地域:ウガンダ)、レプトスピラ症1例(感染地域:新潟県_感染原因:不明)、急性脳炎7例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 1例(20代)、インフルエンザウイルスA型1例(6歳)、インフルエンザウイルス型不明1例(10代)、ノロウイルス1例(1歳)、ヒトヘルペスウイルス6型2例(0歳1例、1歳1例)、RSウイルス1例(1歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例(8歳1例、70代1例)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:血液)、風しん1例(検査診断例.感染地域:千葉県.年齢群:10〜14歳)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第4週以降減少が続いている。都道府県別では佐賀県(2.95)、新潟県(2.35)、富山県(2.08)、長野県(1.64)、福井県(1.63)、山形県(1.44)、岩手県(1.39)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は3,012例と第5週以降減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約69%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第6週以降増加が続いている。都道府県別では佐賀県(0.87)、鹿児島県(0.45)、新潟県(0.44)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では山形県(4.9)、鳥取県(4.7)、宮城県(4.0)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第5週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では大分県(20.1)、新潟県(19.1)、山形県(17.4)、福井県(17.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は第5週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(5.3)、鹿児島県(4.2)、沖縄県(3.9)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第3週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では広島県(2.00)、鹿児島県(1.55)、山形県(1.50)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(0.53)、青森県(0.43)、神奈川県(0.29)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では徳島県(0.13)、栃木県(0.10)、石川県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第6週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では島根県(0.39)、岩手県(0.28)、熊本県(0.19)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は第6週以降増加が続いている。都道府県別では沖縄県(3.18)、山形県(2.57)、大分県(2.44)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(3.43)、埼玉県(1.89)、宮城県(1.42)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。2009年4月にその存在が明らかとなった新型インフルエンザA/H1N1の臨床像は、従来の季節性インフルエンザとほぼ同様であり、罹患者の大半は合併症なく治癒するといわれているが、肺炎やインフルエンザ脳症を併発して重症化する場合がある。特に肺炎は、急速に進行する重症のウイルス性肺炎を起こす場合が多く、喘息や慢性閉塞性肺疾患等の呼吸器疾患の存在が急激な悪化と関連しているといわれている〔Clinical features of severe cases of pandemic influenza:Pandemic( H1N1)2009 briefing note 13, Global Alert and Response, WHO, Oct. 16, 2009;http://www.who.int/csr/disease/swineflu/notes/h1n1_clinical_features_20091016/en/index.html〕。
現在最も新型インフルエンザの伝播が活発であるのは東南アジアであり、他のアジアの地域や、ヨーロッパの東部および南東部においても低いレベルではあるが新型インフルエンザウイルスの循環は継続している。限定されたデータではあるが、西アフリカでは、新型インフルエンザの伝播が増加しつつあることが示唆されている。B型インフルエンザウイルスの検出がアジアで増加しつつあり、西側の地域に広がりつつあることは特筆すべきである。
東アジアでは、新型インフルエンザの活動性は減少が続いているか低いレベルのままとなっており、日本や韓国は季節性インフルエンザの非流行レベルとなっている。最近モンゴルでは、インフルエンザ様疾患が急速に増加しており、これはB型インフルエンザの流行の再燃に関係している。中国では、新型インフルエンザの流行のピークは2009年の11月であったが、インフルエンザ全般の活動性は高いままであり、B型インフルエンザの増加が大きく関与している〔Pandemic(H1N1)2009-update 91:http://www.who.int/csr/don/2010_03_12/enindex.html〕。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2010年第9週のインフルエンザの定点当たり報告数は0.77(報告数3,688)となり、第4週以降減少が続いている(図1)。都道府県別では佐賀県(2.95)、新潟県(2.35)、富山県(2.08)、長野県(1.64)、福井県(1.63)、山形県(1.44)、岩手県(1.39)、岐阜県(1.30)、沖縄県(1.22)、福島県(1.16)の順となっている。秋田県と京都府を除く45都道府県では前週よりも減少がみられている
(図2)。
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数の推計値は約4万人(暫定値)と減少し、第28週以降これまでの累積の推計受診患者数は約2,063万人(95%信頼区間:2,043万人〜2,083万人)(暫定値)となった(図3)。性別では男性約1,065万人(51.6%)、女性約999万人(48.4%)であり、年齢群別では5〜9歳約519万人(25.2%)、10〜14歳約476万人(23.1%)、15〜19歳約280万人(13.6%)、0〜4歳約229万人(11.1%)、20〜29歳約219万人(10.6%)、30〜39歳約155万人(7.5%)の順となっている(図4)。但し、推計受診患者数は、受診患者数の多い医療機関がより多く選定されている傾向があることなどから、真の受診患者数より過大であると考えられている。この点を踏まえ、推計受診患者数についてはあくまで参考値として理解していく必要がある。
患者報告数が増加し始めた2009年第28週以降では、2010年第9週までに、全国の地方衛生研究所から28,769件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.06%)、AH3亜型(A香港型)152件(0.53%)、B型29件(0.10%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)28,570件(99.31%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めている。また、2010年に入っても第1〜9週までの9週間で検出・報告された2,435件中、AH1亜型0件、AH3亜型4件( 0.16%)、B型23件( 0.94%)、AH1pdm 2,408件( 98.89%)と殆どがAH1pdmである状態が継続しており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される状態が続いているが、ビクトリア系統を中心としたB型インフルエンザウイルスの報告数もやや増加している(図5、および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2000〜2010年第9週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第7〜9週) |
図3. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)週別推移(2009年第28週〜2010年第9週) |
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図4. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合(2009年第28週〜2010年第9週) |
図5. インフルエンザウイルス検出報告割合(2009年第28週〜2010年第9週) |
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定点からの報告数は、2009年第48週をピークに減少し続け、2010年第3週に一旦やや増加したものの、第4週以降再び減少が続き、2009年第33週以降、インフルエンザの全国的な流行開始の指標である1.00を上回った状態が2010年第8週までの29週間継続していたが、30週目に1.00を下回った。現在日本国内においては、散発的な流行も含めてインフルエンザの流行は殆どみられていないと予想される。しかし、まだ新型インフルエンザの今後の発生動向については不明な点も多く、最近ではB型の検出報告数が増加してきており、AH3亜型も検出されている。インフルエンザの発生動向には今後とも注意が必要であると思われる。
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