|
発生動向総覧
〈第10週コメント〉 3月24日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 288例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例
|
|
感染地域:インド1例、インドネシア1例
|
腸管出血性大腸菌感染症22例(有症者9例、うちHUS なし) |
|
感染地域:国内21例、ベトナム1例
国内の感染地域:山形県6例、埼玉県2例、大阪府2例、熊本県2例、神奈川県1例、新潟県1例、石川県1例、愛知県1例、和歌山県1例、広島県1例、福岡県1例、不明2例
年齢群:1歳(2例)、7歳(1例)、10代(4例)、20代(2例)、30代(2例)、40代(1例)、50代(1例)、60代(4例)、70代(3例)、90代(1例)、100歳以上(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(7例)、O111 VT1(6例)、O26 VT1(3例)、O157 VT2(2例)、O91 VT1・VT2(1例)、O91 VT1(1例)、O157 VT1(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:203例(有症者124例、うちHUS 5例.死亡なし)
|
|
4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:神奈川県_感染源:イノシシ鍋)
A型肝炎8例
|
|
感染地域:東京都2例、神奈川県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)2例、インドネシア1例、フィリピン1例
|
デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、タンザニア1例)
レジオネラ症9例(肺炎型8例、ポンティアック型1例)
|
|
感染地域:富山県2例、北海道1例、茨城県1例、埼玉県1例(温泉)、神奈川県1例、静岡県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:50代(2例)、60代(3例)、70代(1例)、80代(2例)、90代(1例)
|
|
5類感染症: |
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症1例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
|
感染地域:東京都3例、大阪府2例、埼玉県1例、神奈川県1例、愛知県1例、京都府1例、国内(都道府県不明)1例
感染経路:性的接触7例(異性間4例、同性間2例、異性・同性間不明1例)、不明3例
|
ウイルス性肝炎4例
|
|
B型3例_感染経路:性的接触3例(異性間2例、異性/同性間1例)
C型1例_感染経路:カミソリ
|
急性脳炎3例
|
|
ムンプス/マイコプラズマ1例_年齢群:9歳
病原体不明2例_年齢群:1歳(1例)、30代(1例)
|
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:50代)
クロイツフェルト・ヤコブ病3例(孤発性プリオン病古典型3例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例〔年齢群:70代(死亡)〕
後天性免疫不全症候群10例(AIDS 3例、無症候7例) |
|
感染地域:国内8例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触9例(異性間2例、同性間6例、異性/同性間1例)、性的接触(異性間)/静注薬物使用1例
|
ジアルジア症1例(感染地域:青森県)
髄膜炎菌性髄膜炎1例〔感染地域:国内(都道府県不明)/タイ/ベトナム/ハワイ〕
梅毒13例(早期顕症I期2例、早期顕症II期6例、晩期顕症2例、無症候3例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例
|
|
遺伝子型:不明_菌検出検体:胸水
|
麻しん9例〔麻しん(臨床診断例5例)、修飾麻しん(検査診断例4例)〕
|
|
感染地域:国内9例
国内の感染地域:千葉県3例、東京都2例、宮城県1例、愛知県1例、大阪府1例、愛媛県1例
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、2歳(1例)、3歳(1例)、5〜9歳(1例)、15〜19歳(1例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(1例)、60代(1例)
累積報告数:86例〔麻しん(検査診断例25例、臨床診断例32例)、修飾麻しん(検査診断例29例)〕
|
(補)他に2010年第9週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:北海道)、E型肝炎2例〔感染地域(感染源):北海道2例(生肉1例、不明1例)〕、レジオネラ症1例〔感染地域:フィリピン(スパ)〕、急性脳炎3例〔病原体不明3例(1歳、3歳、5歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔60代(1例.死亡)、90代(1例)〕などの報告があった。
|
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第4週以降減少が続いている。都道府県別では富山県(1.79)、佐賀県(1.77)、新潟県(1.73)、山形県(1.52)、岩手県(1.42)、沖縄県(1.00)、福井県(0.84)、長野県(0.75)が多い。。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は2,353例と第5週以降減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約69%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第6週以降増加が続いている。都道府県別では福井県(0.64)、石川県(0.59)、新潟県(0.49)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第7週以降増加が続いている。都道府県別では山形県(5.1)、宮城県(3.8)、北海道(3.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第5週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では福井県(20.4)、大分県(19.7)、山形県(17.7)、新潟県(16.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は第5週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(4.6)、沖縄県(3.4)、鹿児島県(3.4)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第3週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では鹿児島県(2.27)、広島県(2.10)、愛媛県(1.76)、岡山県(1.69)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では青森県(0.62)、神奈川県(0.44)、大分県(0.44)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では鹿児島県(0.13)、沖縄県(0.12)、宮崎県(0.11)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第6週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では島根県(0.87)、熊本県(0.27)、香川県(0.18)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は第6週以降増加が続いている。都道府県別では沖縄県(3.85)、富山県(2.59)、石川県(2.52)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮城県(2.08)、青森県(2.00)、福島県(1.71)、沖縄県(1.71)が多い。
〈2月コメント〉
◆性感染症について 2010年2月15日集計分 性感染症定点数:967
(産婦人科・産科・婦人科:464、泌尿器科:401、皮膚科89、性病科13)
●月別推移
2010年2月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.05(男0.98、女1.06)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.67(男0.27、女0.40)、尖圭コンジローマが0.42(男0.23、女0.19)、淋菌感染症が0.81(男0.67、女0.14)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で微増、性器ヘルペスウイルス感染症で微減、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で減少した。女性では、性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で減少、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で微減であった(29〜32ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、男性では性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマでやや少なかった。女性では4疾患すべてでやや少なかった(図2)。
|
|
図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(2月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は20〜29歳及び40〜44歳の3つの年齢群、尖圭コンジローマは25〜29歳の年齢群、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は20〜29歳の2つの年齢群、尖圭コンジローマは25〜29歳の年齢群、淋菌感染症は20〜24歳の年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、男性は性器クラミジア感染症で、女性は4疾患すべてで10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢群分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、淋菌感染症では、すべての年齢群で男性が女性よりも多かった。一方、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜39歳、55〜70歳以上の9つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられる。性器ヘルペスウイルス感染症は、男性では2007年以降、女性では2006年以降微減傾向がみられる。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられる。淋菌感染症は、男性では2003年以降減少傾向、女性では2004年以降微減傾向がみられたが2007年以降は横ばいで推移している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で同値、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで同値、淋菌感染症で減少であった。女性では性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で減少、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で同値であった。
◆薬剤耐性菌について (3月12集計分)
|
基幹定点数(2月):464.
|
●月別
|
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
3.89(前月:3.98、前年同月:4.24)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。2月は前月よりやや減少し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.01(前月:0.91、前年同月:0.67)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。2月は前月よりやや増加し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.06(前月:0.05、前年同月:0.06)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。1月は前月よりやや増加し、過去10年間の同月との比較では下位に属した。
|
●年齢階級別
|
MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の67%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の67%を占める一方、70歳以上が全体の16%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の70%を占めている(図3:PDF参照)
|
●性別:女性を1 として算出した男/女比
|
MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.4:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.4:1
|
●都道府県別
|
MRSA感染症
定点当たり報告数は沖縄県(9.7)、栃木県(7.7)、新潟県(7.2)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は新潟県(3.2)、高知県(3.1)、栃木県(3.0)、宮崎県(3.0)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が27件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
|
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
現在インフルエンザ伝播の活動性が最も盛んな地域は東南アジアと西アフリカである。データは限定されているものの、中央アメリカからカリブ海地域においても新型インフルエンザの活動性が増大しつつある可能性がある。ヨーロッパ南部および東南部と、東、西および南アジアでは、低いレベルの新型インフルエンザウイルスの循環が続いている。世界的規模では、インフルエンザウイルスの伝播は主に新型インフルエンザウイルスであるが、東アジアではB型インフルエンザウイルスが主流であり、また東南アジアや東アフリカでも低いレベルで検知されている。東アジアでは、日本、韓国、香港、台湾では新型インフルエンザの活動性は低下が続き、患者発生率は非流行時期のレベルまで下がり、そのままの状態である。中国では、新型インフルエンザの活動性は実質上は減退しているものの、B型インフルエンザの流行が続いている。モンゴルで最近観察されたインフルエンザ様疾患患者の急増は、殆どがB型インフルエンザの流行によるものである。加えて、日本、韓国、台湾、フィリピン、タイ、インドネシア、バングラデシュなどの東および東南アジアの地域においても、低いレベルながらもB型インフルエンザウイルスの増加が観察されつつある。東および東南アジアでは季節性のA香港型(A/H3N2)インフルエンザウイルスもわずかではあるがいくつかの国で検知されている〔Pandemic(H1N1)2009-update 92:http://www.who.int/csr/don/2010_03_19/en/index.html〕。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。本サーベイランスは原則的に臨床診断によるものであり、最近の国内のインフルエンザウイルス検出状況を考慮すれば、現在報告されているインフルエンザ患者発生の殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される。
2010年第10週のインフルエンザの定点当たり報告数は0.51(報告数2,451)となり、第4週以降減少が続いている(図1)。都道府県別では富山県(1.79)、佐賀県(1.77)、新潟県(1.73)、山形県(1.52)、岩手県(1.42)、沖縄県(1.00)、福井県(0.84)、長野県(0.75)、鳥取県(0.72)、香川県(0.72)の順となっている。40都道府県では前週よりも減少がみられている(図2)。
|
|
|
図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2000〜2010年第10週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第8〜10週) |
図3. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)週別推移(2009年第28週〜2010年第10週) |
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診した患者数の推計値は約3万人(暫定値)と減少し、第28週以降これまでの累積の推計受診患者数は約2,066万人(95%信頼区間:2,046万人〜2,086万人)(暫定値)となった(図3)。性別では男性約1,066万人(51.6%)、女性約1,000万人(48.4%)であり、年齢群別では5〜9歳約520万人(25.3%)、10〜14歳約476万人(23.1%)、15〜19歳約280万人(13.6%)、0〜4歳約229万人(11.1%)、20〜29歳約219万人(10.6%)、30〜39歳約155万人(7.5%)の順となっている(図4)。但し、推計受診患者数は、受診患者数の多い医療機関がより多く選定されている傾向があることなどから、真の受診患者数より過大であると考えられている。この点を踏まえ、推計受診患者数についてはあくまで参考値として理解していく必要がある。
厚生労働省が公表している新型インフルエンザによる国内の入院例および死亡例(平成22年3月17日現在入院例17,623例、死亡例198例:http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/kenkou/influenza/houdou/2010/03/dl/infuh0317-01.pdf 参照)と国内の人口(平成20年度人口動態統計、性・年齢別推計人口;2008年10月現在:http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001057781)および第28週以降の累積の推計受診患者数による分析結果を図5〜8に示す。入院率は、人口1万人当たり1.40であり、年齢群別にみるとこれまでの患者発生数を反映して5〜9歳(人口1万人当たり12.28)が最も高い1峰性のピークを示しているが(図5)、推計受診患者数(暫定値)当たりでみると推計受診患者1,000人当たり0.85となり、年齢群別では15〜19歳と20代が最も低く、幼若年齢層(0〜4歳:推計受診患者1,000人当たり1.91)と高齢者層(60〜69歳:同2.78、70歳以上:同5.21)で高い値を示している(図6)。死亡率は、人口10万人当たりでは0.16であり、年齢群別では0〜4歳(人口10万人当たり0.32)、5〜9歳(同0.23)、40〜49歳(同0.19)、50〜59歳(同0.18)の順となっており、10代、20代、30代は他の年齢層に比べて低い(図7)。一方、推計受診患者(暫定値)1万人当たりの致死率は0.10であり、年齢群別では10〜14歳、15〜19歳(推計受診患者1万人当たり0.01)が最も低く、70歳以上(同2.82)、60〜69歳(同1.47)、50〜59歳(同0.66)と高年齢者程高い致死率を示している(図8)。人口当たりの入院率、死亡率からは、新型インフルエンザ流行のインパクトは9歳以下の幼若年齢層で高いことは明らかであるが、実際に新型インフルエンザに罹患した場合の入院率、致死率は高年齢層の方が高くなっている。
|
|
|
図4. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合(2009年第28週〜2010年第10週) |
図5. インフルエンザの年齢群別入院率1(人口*1万人当たり) |
図6. インフルエンザの年齢群別入院率2〔推計受診患者(暫定値)1,000人当たり〕 |
|
|
|
図7. インフルエンザの年齢群別死亡率(人口*10万人当たり) |
図8. インフルエンザの年齢群別致死率〔推計受診患者(暫定値)1万人当たり〕 |
図9. インフルエンザウイルス検出報告割合(2009年第28週〜2010年第10週) |
患者報告数が増加し始めた2009年第28週以降では、2010年第10週までに、全国の地方衛生研究所から29,145件のインフルエンザウイルスの検出が報告され、AH1亜型(Aソ連型)18件(0.06%)、AH3亜型(A香港型)153件(0.52%)、B型35件(0.12%)、AH1pdm(新型インフルエンザウイルス)28,939件(99.29%)とインフルエンザウイルスの検出報告数の大半をAH1pdmが占めている。また、2010年に入っても第1〜10週までの10週間で検出・報告された2,603件中、AH1亜型0件、AH3亜型5件(0.19%)、B型29件(1.11%)、AH1pdm 2,569件(98.69%)と殆どがAH1pdmである状態が継続しており、現在国内で発生しているインフルエンザの殆どは新型インフルエンザによるものであると推定される状態が続いているが、AH3亜型がわずかに検出され、ビクトリア系統を中心としたB型インフルエンザウイルスの報告数もやや増加している(図9、および感染症情報センターホームページ:http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph/sinin1.gif 参照)。
定点からの報告数は、2009年第48週をピークに減少し続け、2010年第3週に一旦やや増加したものの、第4週以降再び減少が続き、2009年第33週以降、インフルエンザの全国的な流行開始の指標である1.00を上回った状態が2010年第8週までの29週間継続していたが、2010年第9週に1.00を下回り、第10週はさらに低下した。現在日本国内においては、インフルエンザの流行は散発的なものも含めて殆どみられていないと予想される。しかし、まだ新型インフルエンザの今後の発生動向については不明な点も多い。加えて季節性のB型インフルエンザウイルスの検出も継続して見られている。インフルエンザの発生動向には今後とも注意が必要であると思われる。
|