発生動向総覧
〈第11週コメント〉 3月24日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 255例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例(感染地域:フィリピン1例、インドネシア1例)
腸管出血性大腸菌感染症20例(有症者11例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内20例
国内の感染地域:熊本県5例、福岡県4例、千葉県3例、愛知県2例、石川県1例、大阪府1例、山口県1例、宮崎県1例、不明2例
年齢群:4歳(1例)、5歳(1例)、6歳(1例)、7歳(1例)、8歳(1例)、10代(3例)、20代(5例)、30代(4例)、40代(1例)、60代(2例)
血清型・毒素型:O26 VT1(6例)、O157 VT1・VT2(5例)、O8 VT1・VT2(1例)、O91 VT1(1例)、O157 VT1(1例)、O157 VT2(1例)、O165 VT2(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:224例(有症者138例、うちHUS 5例.死亡なし)
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腸チフス2例(感染地域:鹿児島県1例、マレーシア/インド1例)
パラチフス1例(感染地域:広島県)
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4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:北海道_感染源:馬刺し/生鹿肉)
A型肝炎13例
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感染地域:福岡県3例、東京都2例、広島県2例、茨城県1例、埼玉県1例、京都府1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)2例
*第10週より報告数が増加し、第11週は過去3年間(2007〜2009年)の週別報告数と比較して最多の報告数であった。本年は劇症肝炎の報告もあった。複数の自治体の症例において感染源としてカキが推定されている。経口感染による広域アウトブレイクの可能性もあるので注意を要すると考えられる。
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デング熱7例(感染地域:インドネシア5例、タイ2例)
日本紅斑熱2例(日本紅斑熱2例感染地域:鹿児島県2例)
マラリア2例
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熱帯熱1例_感染地域:ギニア
原虫種不明1例_感染地域:スリランカ
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レジオネラ症4例(肺炎型4例)
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感染地域:岩手県1例(温泉)、兵庫県1例、岡山県1例、タイ1例
年齢群:60代(2例)、70代(1例)、80代(1例)
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レプトスピラ症1例(感染地域:マレーシア_感染源:河川/ネズミ)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢11例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症3例) |
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感染地域:北海道1例、東京都1例、神奈川県1例、国内(都道府県不明)4例、中国1例、タイ1例、マレーシア1例、国内・国外不明1例
感染経路:経口感染5例、性的接触2例(異性間1例、同性間1例)、不明4例
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ウイルス性肝炎3例
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B型3例_感染経路:性的接触1例(異性間)、不明2例
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急性脳炎5例
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水痘・帯状疱疹ウイルス1例_年齢群:70代
病原体不明4例_年齢群:7歳(2例)、30代(1例)、60代(1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
後天性免疫不全症候群22例(AIDS 3例、無症候17例、その他2例)
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感染地域:国内19例、国内・国外不明3例
感染経路:性的接触18例(異性間1例、同性間14例、異性/同性間3例)、性的接触(同性間)/静注薬物使用1例、不明3例
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髄膜炎菌性髄膜炎1例(感染地域:東京都/神奈川県)
梅毒5例(早期顕症II期2例、無症候3例)
破傷風1例(年齢群:70代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子型:Van B 1例_菌検出検体:尿
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:血液
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風しん2例(検査診断例2例)
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感染地域:東京都1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:30〜34歳(1例)、35〜39歳(1例)
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麻しん3例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:国内3例
国内の感染地域:埼玉県1例、東京都1例、福岡県1例
年齢群:0歳(1例)、3歳(1例)、10〜14歳(1例)
累積報告数:92例〔麻しん(検査診断例31例、臨床診断例31例)、修飾麻しん(検査診断例30例)〕
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(補)他に2010年第10週までに診断されたものの報告遅れとして、腸チフス1例(感染地域:ペルー)、パラチフス1例(感染地域:インド)、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):北海道(豚肉)〕、デング熱1例(感染地域:カンボジア)、レジオネラ症1例〔感染地域:福島県(温泉)〕、クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型.死亡)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:Van A _菌検出検体:尿)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第4週以降減少が続いている。都道府県別では富山県(2.23)、佐賀県(1.97)、岩手県(1.88)、新潟県(1.48)、沖縄県(1.36)、山形県(1.35)、福島県(0.83)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,786例と第5週以降減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約72%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では佐賀県(0.48)、宮崎県(0.47)、鹿児島県(0.47)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(4.4)、鳥取県(3.6)、宮城県(3.4)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第5週以降減少が続いている。都道府県別では福井県(22.2)、大分県(20.2)、富山県(15.1)、新潟県(14.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は第5週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(6.1)、鹿児島県(4.4)、福岡県(2.8)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第3週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では鹿児島県(2.91)、広島県(2.69)、岡山県(2.06)、鳥取県(1.95)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では青森県(0.52)、三重県(0.51)、神奈川県(0.48)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鳥取県(0.16)、沖縄県(0.12)、栃木県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第6週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では島根県(0.74)、佐賀県(0.48)、熊本県(0.40)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は第6週以降増加が続いている。都道府県別では沖縄県(2.85)、山形県(2.60)、北海道(2.23)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮城県(4.00)、沖縄県(2.86)、青森県(1.67)が多い。
注目すべき感染症
◆ 手足口病
手足口病(hand, foot, and mouth disease:HFMD)は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に主に夏季に流行する疾患である。病原ウイルスは、主にコクサッキーA16(CA16)、エンテロウイルス71(EV71)で、その他コクサッキーA6、A9、A10などのエンテロウイルスである。
臨床的特徴であるが、感染から3〜5日の潜伏期間の後に、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2〜3mmの水疱性発疹が出現する。発熱は約3分の1に認められるが軽度であり、高熱が続くことは通常はない。本症は基本的には数日間の内に治癒する予後良好の疾患である。しかしながら、まれではあるが髄膜炎、小脳失調、脳炎などの中枢神経系合併症や、心筋炎などの重篤な合併症を呈することがある。特にEV71に感染した場合は、中枢神経性の合併症を引き起こす割合が比較的高いことが明らかとなってきているので、EV71が流行しているシーズンは、手足口病発症児の経過を特に注意深く観察し、合併症に対する警戒を行う必要がある。なお、急性脳炎を合併した場合には、5類感染症全数届出疾患として報告が必要である。
感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染であり、保育園や幼稚園などの乳幼児施設においての感染予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となる。本疾患は主要症状が回復した後も比較的長期間にわたって児の便などからウイルスが排泄されることがあるが、基本的には軽症疾患であることを踏まえ、回復した児に対して長期間の欠席を求めることは現実的ではない。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告に基づいて手足口病をはじめとする各種小児科疾患の発生動向を分析している。2010年第11週の手足口病の定点当たり報告数は0.42(報告数1,259)となり、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い状態が続いている(図1)(本号4, 5ページグラフ参照)。都道府県別では鹿児島県(2.91)、広島県(2.69)、岡山県(2.06)、鳥取県(1.95)、愛媛県(1.78)、山形県(1.33)、福井県(1.23)の順であり、西日本地域に報告数の比較的増加している県が多い(図2)。第1週から第11週までの11週間の定点当たり累積報告数は2.35(累積報告数7,124)であり、広島県(13.32)、岡山県(10.48)、山形県(10.40)、鹿児島県(9.80)、福井県(9.05)、愛媛県(6.51)、鳥取県(5.89)の順となっており、やはり西日本地域で報告数が増加している県が目立っている(図3)。累積報告数の年齢別割合をみると、発生報告の中心が5歳以下の乳幼児であることは例年と同様であり2010年は5歳以下で全報告数のほぼ90%を占めている(図4)。
2010年第1〜11週までの11週間の手足口病由来ウイルス分離・検出報告数は20件とまだ少ないが、EV71が8件と最多であり、2004年以降では2006年に次ぐ高い割合となっている(図5)。
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図1. 手足口病の年別・週別発生状況(2000〜2010年第11週) |
図2. 手足口病定点当たりの都道府県別報告状況(2010年第11週) |
図3. 手足口病の都道府県別累積報告状況(2010年第1〜11週) |
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図4. 手足口病の年別・年齢別割合(2000年〜2010年第11週) |
図5. 手足口病由来ウイルス分離・検出報告割合推移(2004年〜2010年第11週) |
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手足口病由来ウイルスとしてはCA16の検出が最多となる年が多いが、2010年は昨年に引き続いてEV71の方が多く検出されている。例年夏季に患者発生のピークを迎える同疾患の報告数は、現時点ではまだ多くはないが、既に例年の同時期の報告数を大きく上回った状態が続いており、その多くがEV71によるものであると推測される。今後とも手足口病の推移と患者由来検体からのウイルスの検出状況には注意が必要である。
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