発生動向総覧
〈第15週コメント〉 4月21日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 284例 |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症18例(有症者7例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内18例
国内の感染地域:東京都3例、千葉県2例、愛知県2例、茨城県1例、群馬県1例、神奈川県1例、京都府1例、大阪府1例、兵庫県1例、山口県1例、宮崎県1例、鹿児島県1例、不明2例
年齢群:2歳(1例)、10代(2例)、20代(5例)、30代(3例)、40代(1例)、50代(3例)、60代(3例)
血清型・毒素型:O157 VT2(4例)、O91 VT1(3例)、O26 VT1(2例)、O157 VT1・VT2(2例)、O111 VT1・VT2(2例)、O103 VT1(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:323例(有症者189例、うちHUS 7例.死亡なし)
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腸チフス1例(感染地域:インド)
パラチフス2例(感染地域:インド1例、ネパール1例)
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4類感染症: |
E型肝炎2例
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感染地域:北海道1例_感染源:豚生レバー
感染地域:群馬県1例_感染源:鹿生肉
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A型肝炎5例
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感染地域:神奈川県1例、新潟県1例、京都府1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)1例
累積報告数121例〔劇症肝炎3例_年齢群:40代(1例)、50代(1例)、60代(1例.死亡)〕
*第10〜15週の累積報告数は91例(劇症肝炎2例、うち死亡1例)となり、都道府県別では、福岡県18例、広島県15例、東京都11例の順に多い。91例のうち、感染源として、カキ43例、貝類3例などが推定されている。広域アウトブレイクの可能性もあり、引き続き注意を要する。
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つつが虫病1例(感染地域:大分県)
デング熱2例(感染地域:インド1例、インドネシア1例)
レジオネラ症5例(肺炎型5例)
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感染地域:京都府2例、和歌山県1例、長崎県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:70代(4例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢7例(腸管アメーバ症7例) |
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感染地域:埼玉県3例、国内(都道府県不明)4例
感染経路:経口感染1例、性的接触(同性間)3例、不明3例
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ウイルス性肝炎3例
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B型2例_感染経路:性的接触(異性間)2例
C型1例_感染経路:静注薬物常用
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急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:1歳)
クリプトスポリジウム症1例(感染地域:三重県)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
後天性免疫不全症候群15例(AIDS 6例、無症候8例、その他1例) |
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感染地域:国内11例、米国1例、国外(国不明)1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触11例(異性間1例、同性間9例、異性/同性間1例)、その他4例
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ジアルジア症1例(感染地域:インド)
梅毒10例(早期顕症II期3例、晩期顕症1例、無症候6例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子型:VanB 1例_菌検出検体:腹水
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:血液
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風しん1例(検査診断例)
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感染地域:群馬県
年齢群:35〜39歳
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麻しん15例〔麻しん(検査診断例5例、臨床診断例5例)、修飾麻しん(検査診断例5例)〕
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感染地域:国内14例、台湾/フィリピン1例
国内の感染地域:青森県1例、宮城県1例、茨城県1例、東京都1例、神奈川県1例、長野県1例、静岡県1例、国内(都道府県不明)7例
年齢群:0歳(1例)、1歳(3例)、2歳(1例)、3歳(1例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(2例)、20〜24歳(1例)、35〜39歳(1例)、40代(2例)、50代(1例)、70代(1例)
累積報告数:139例〔麻しん(検査診断例48例、臨床診断例47例)、修飾麻しん(検査診断例44例)〕
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(補)他に2010年第14週までに診断されたものの報告遅れとして、パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ)、デング熱1例(感染地域:インドネシア)、日本紅斑熱5例(感染地域:三重県4例、沖縄県1例)、マラリア2例(熱帯熱1例_感染地域:ウガンダ、卵形1例_感染地域:ガーナ)、急性脳炎3例〔単純ヘルペスウイルス1例(80代)、病原体不明2例(9歳、10代)〕、クリプトスポリジウム症1例(感染地域:北海道)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は増加した。都道府県別では佐賀県(1.51)、山梨県(0.80)、岩手県(0.56)、山口県(0.56)、新潟県(0.48)、沖縄県(0.47)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は660例と第5週以降減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約74%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では宮崎県(0.78)、新潟県(0.48)、福井県(0.45)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(3.68)、山形県(3.60)、富山県(3.14)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では福井県(19.5)、宮崎県(18.5)、富山県(17.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では宮崎県(4.2)、鹿児島県(3.3)、沖縄県(2.9)が多い。手足口病の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では愛媛県(4.00)、福井県(3.14)、広島県(2.78)、鳥取県(2.53)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では山形県(1.00)、三重県(0.93)、福井県(0.86)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では広島県(0.19)、奈良県(0.11)、千葉県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では熊本県(1.15)、高知県(0.73)、香川県(0.57)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(3.00)、石川県(2.62)、和歌山県(2.48)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(2.00)、宮城県(1.92)、埼玉県(1.67)が多い。
〈3月コメント〉
◆性感染症について 2010年4月12日集計分 性感染症定点数:961
(産婦人科・産科・婦人科:461、泌尿器科:398、皮膚科89、性病科13)
●月別推移
2010年3月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.23(男1.03、女1.20)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.71(男0.27、女0.44)、尖圭コンジローマが0.44(男0.24、女0.20)、淋菌感染症が0.88(男0.72、女0.16)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で微増、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で増加した。女性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで微増、淋菌感染症で増加した(30〜33ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、男性では性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマでやや少なかった。女性では性器クラミジア感染症でやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(3月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜34歳の2つの年齢群、尖圭コンジローマは20〜44歳の5つの年齢群、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は20〜29歳の2つの年齢群、尖圭コンジローマは20〜24歳の年齢群、淋菌感染症は20〜24歳の年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、男性は尖圭コンジローマで、女性は性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、淋菌感染症で10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢群分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜39歳、55〜59歳、70歳以上の7つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性よりも多かった。一方、淋菌感染症では15〜19歳で同値であり、20歳以上のすべての年齢群で男性が女性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4(PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられる。性器ヘルペスウイルス感染症は、男性では2007年以降、女性では2006年以降微減傾向がみられる。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられる。淋菌感染症は、男性では2003年以降減少傾向、女性では2004年以降微減傾向がみられたが2007年以降は横ばいで推移している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で減少、尖圭コンジローマで同値、淋菌感染症で増加であった。女性では4疾患全てで増加であった。
◆薬剤耐性菌について (4月12集計分)
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基幹定点数(3月):463.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
3.98(前月:3.89、前年同月:4.41)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。3月は前月よりやや増加し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.95(前月:1.01、前年同月:0.72)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。3月は前月よりやや減少し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.06(前月:0.06、前年同月:0.07)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。3月は前月よりやや増加したが、過去10年間の同月との比較では最下位に属した。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の67%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の62%を占める一方、70歳以上が全体の19%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の71%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.6:1
PRSP感染症…男:女=1.3:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.5:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は沖縄県(10.1)、栃木県(8.4)、広島県(6.4)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は東京都(2.9)、福井県(2.3)、山口県(2.3)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が28件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ 手足口病
手足口病(hand, foot, and mouth disease:HFMD)は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に主に夏季に流行する疾患である。病原ウイルスは主にコクサッキーウイルスA16(CA16)、エンテロウイルス71(EV71)であり、その他コクサッキーウイルスA6、A9、A10などのエンテロウイルスによって発症する。
臨床的特徴であるが、感染から3〜5日の潜伏期間の後に、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2〜3mmの水疱性発疹が出現する。発熱は約3分の1に認められるが軽度であり、高熱が続くことは通常はない。本症は基本的には数日間のうちに治癒する予後良好の疾患である。しかしながら、まれではあるが髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症などのほか、心筋炎、急性弛緩性麻痺などの多彩な臨床症状を呈することがある。特にEV71に感染した場合は、中枢神経系の合併症を引き起こす割合が高いことが明らかとなってきているため、同ウイルスが流行している期間中は、手足口病発症児の経過を注意深く観察し、合併症に対する警戒を行う必要がある。なお、急性脳炎を合併した場合には、5類感染症全数届出疾患として報告が必要である。
感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染であり、保育園や幼稚園などの乳幼児施設においての感染予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となる。本疾患は主要症状が回復した後も比較的長期間にわたって児の便などからウイルスが排泄されることがあるが、基本的には軽症疾患であることを踏まえ、回復した児に対して長期間の欠席を求めることは現実的ではない。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告に基づいて手足口病をはじめとする各種小児科疾患の発生動向を分析している。2010年第15週の手足口病の定点当たり報告数は0.55(報告数1,673)と3週連続して増加がみられており、2000年以降の11年間の同時期の値の中では最も多くなっている(図1)。都道府県別では愛媛県(4.00)、福井県(3.14)、広島県(2.78)、鳥取県(2.53)、鹿児島県(2.36)、岡山県(1.85)、山口県(1.51)の順であり、西日本地域に報告数の比較的増加している県が多い(図2)。第1〜15週までの15週間の定点当たり累積報告数は4.09(累積報告数12,398)であり、広島県(22.92)、鹿児島県(18.33)、愛媛県(17.86)、福井県(17.05)、岡山県(16.72)、山形県(14.10)、鳥取県(13.79)、山口県(7.78)の順となっており、中国地方を中心とした西日本地域で報告数が増加している県が多くなっている(図3)。
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図1. 手足口病の年別・週別発生状況(2000〜2010年第15週) |
図2. 手足口病の都道府県別報告状況(2010年第15週) |
図3. 手足口病の都道府県別累積報告状況(2010年第1〜15週) |
累積報告数の年齢別割合をみると、発生報告の中心が5歳以下の乳幼児であることは例年と同様であり、2010年は3歳以下で全体の70%以上を、また5歳以下で全報告数のほぼ90%を占めている(図4)。
第1〜15週までの15週間の手足口病由来ウイルス分離・検出報告数はまだ38件であるが、EV71が52.6%(20件)と最多であり、2004年以降では最も高い割合となっている(図5)。
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図4. 手足口病の年別・年齢別割合(2000年〜2010年第15週) |
図5. 手足口病由来ウイルス分離・検出報告割合推移(2004年〜2010年第15週) |
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2010年は現時点において既に手足口病の患者報告数の増加が認められているが、同疾患の流行のピークは夏季であり、今後更に患者数が増加してくるものと考えられる。加えて、手足口病の患者由来検体からはEV71が検出される状態が続いており、今後患者発生数の増大と共に中枢神経系の合併症発生例の増加が懸念される。今後とも手足口病の推移と発病者由来検体からのウイルスの検出状況には注意が必要である。
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