発生動向総覧
〈第17週コメント〉 5月7日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 268例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例(感染地域:神奈川県2例、台湾1例、インド1例)
腸管出血性大腸菌感染症15例(有症者7例、うちHUS 2例) |
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感染地域:国内15例
国内の感染地域:京都府3例、福岡県2例、千葉県1例、岐阜県1例、愛知県1例、兵庫県1例、岡山県1例、山口県1例、沖縄県1例、不明3例
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、3歳(1例)、10代(1例)、20代(3例)、30代(3例)、40代(1例)、50代(1例)、60代(2例)、70代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(4例)、O157 VT2(3例)、O91 VT1(2例)、O145 VT2(1例)、O157 VT不明(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:351例(有症者202例、うちHUS 9例.死亡なし)
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腸チフス2例〔感染地域:国内(都道府県不明)1例、バングラデシュ1例〕
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4類感染症: |
A型肝炎3例(感染地域:鹿児島県1例、フィリピン1例、インド1例)
つつが虫病4例(感染地域:福島県2例、島根県1例、愛媛県1例) 日本紅斑熱1例(感染地域:三重県)
マラリア1例(原虫種不明_感染地域:ウガンダ)
レジオネラ症11例(肺炎型11例)
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感染地域:大阪府3例、山形県1例、千葉県1例、富山県1例、静岡県1例、京都府1例、大分県1例(温泉)、沖縄県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:50代(2例)、60代(3例)、70代(5例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:東京都2例、徳島県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)3例、中国1例、ベトナム1例、ネパール1例
感染経路:経口感染3例、性的接触4例(異性間2例、異性間・同性間不明2例)、不明3例
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ウイルス性肝炎1例(B型_感染経路:不明)
急性脳炎3例
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ロタウイルス1例_年齢群:0歳
病原体不明2例_年齢群:4歳(1例)、8歳(1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:20代)
後天性免疫不全症候群12例(AIDS 3例、無症候7例、その他2例)
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感染地域:国内9例、中国1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触10例(異性間2例、同性間8例)、その他・不明2例
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ジアルジア症5例
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感染地域:国内(都道府県不明)1例、ケニア2例、インド1例、ギニア1例
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梅毒6例(早期顕症I期2例、早期顕症II期1例、晩期顕症1例、無症候2例)
破傷風1例(年齢群:60代) バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:血液)
風しん1例(検査診断例)
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感染地域:愛知県
年齢群:1歳
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麻しん10例〔麻しん(検査診断例8例、臨床診断例2例)〕
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感染地域:国内9例、イタリア1例
国内の感染地域:大阪府2例、神奈川県1例、長野県1例、岐阜県1例、静岡県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:0歳(1例)、1歳(2例)、10〜14歳(1例)、20〜24歳(1例)、25〜29歳(3例)、35〜39歳(2例)
累積報告数:168例〔麻しん(検査診断例65例、臨床診断例53例)、修飾麻しん(検査診断例50例)〕
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(補)他に2010年第16週までに診断されたものの報告遅れとして、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、クリプトスポリジウム症1例(感染地域:北海道、感染源:牛)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:消化器系排液、遺伝子型:不明1例_菌検出検体:尿)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は減少した。都道府県別では佐賀県(1.64)、山口県(0.97)、山梨県(0.45)、新潟県(0.38)、広島県(0.38)、香川県(0.34)、福岡県(0.31)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は430例と第5週以降減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約77%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第13週以降増加が続いている。都道府県別では佐賀県(0.74)、新潟県(0.66)、富山県(0.66)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では山形県(4.40)、石川県(3.97)、鳥取県(3.32)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では福井県(23.3)、富山県(21.0)、宮崎県(19.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(4.5)、鹿児島県(3.5)、島根県(3.5)、沖縄県(3.5)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第13週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では愛媛県(7.9)、福井県(3.6)、広島県(3.4)、山口県(3.0)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(1.14)、三重県(0.71)、大分県(0.67)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鳥取県(0.11)、沖縄県(0.09)、広島県(0.06)、福岡県(0.06)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第13週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では熊本県(1.46)、高知県(1.40)、香川県(0.86)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では石川県(3.28)、沖縄県(2.79)、宮崎県(2.31)、富山県(2.17)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では埼玉県(3.44)、青森県(2.00)、石川県(2.00)が多い。
〈第18週コメント〉 5月12日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 111例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢1例(感染地域:バングラデシュ)
腸管出血性大腸菌感染症16例(有症者12例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内16例
国内の感染地域:沖縄県4例、北海道2例、兵庫県2例、岡山県2例、長野県1例、京都府1例、大阪府1例、長崎県1例、鹿児島県1例、不明1例
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、2歳(2例)、3歳(5例)、10代(4例)、20代(1例)、40代(1例)、80代(1例) 血清型・毒素型:O157 VT2(6例)、O157 VT1・VT2(4例)、O26 VT1(2例)、O63 VT2( 1例)、O91 VT不明(1例)、O157 VT1(1例)、O157 VT不明(1例)
累積報告数:375例(有症者220例、うちHUS 10例.死亡なし)
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4類感染症: |
A型肝炎11例
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感染地域:富山県3例、東京都2例、京都府1例、福岡県1例、熊本県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)2例
累積報告数:167例〔劇症肝炎3例_年齢群:40代(1例)、50代(1例)、60代(1例.死亡)〕
*第10〜18週の累積報告数は136例(劇症肝炎2例、うち死亡1例)となり、都道府県別では、福岡県23例、東京都18例、広島県18例、兵庫県9例、埼玉県8例の順に多い。広域アウトブレイクの可能性もあり、引き続き注意を要する。
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つつが虫病1例(感染地域:秋田県) デング熱1例(感染地域:フィリピン)
マラリア2例
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三日熱1例_感染地域:インド
熱帯熱1例_感染地域:コンゴ共和国
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レジオネラ症4例(肺炎型4例)
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感染地域:長野県2例、埼玉県1例、香川県1例
年齢群:70代(3例)、90代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢6例(腸管アメーバ症3例、腸管外アメーバ症3例) |
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感染地域:千葉県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)3例、インド1例
感染経路:経口感染2例、性的接触1例(同性間)、不明3例
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ウイルス性肝炎2例〔B型2例_感染経路:性的接触2例(異性間2例)〕
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例〔年齢群:50代(死亡)〕
後天性免疫不全症候群8例(AIDS 4例、無症候4例)
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感染地域:国内6例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触7例(異性間2例、同性間4例、異性間・同性間不明1例)、その他・不明1例
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梅毒4例(早期顕症II期1例、先天梅毒1例、無症候2例)
風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例)
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感染地域:埼玉県1例、東京都1例
年齢群:1歳(1例)、60代(1例)
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麻しん3例〔麻しん(検査診断例2例、臨床診断例1例)〕
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感染地域:国内3例
国内の感染地域:神奈川県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、20〜24歳(1例)
累積報告数:176例〔麻しん(検査診断例69例、臨床診断例56例)、修飾麻しん(検査診断例51例)〕
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(補)他に2010年第17週までに診断されたものの報告遅れとして、コレラ1例(感染地域:インド)、デング熱1例(感染地域:インドネシア)、日本紅斑熱1例(感染地域:熊本県)、レジオネラ症1例〔感染地域:埼玉県(温泉)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症3例(遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液、遺伝子型:不明2例_菌検出検体:血液1例、尿1例)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では佐賀県(0.59)、山口県(0.47)、広島県(0.30)、岡山県(0.25)、岐阜県(0.23)、福岡県(0.20)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は283例と第5週以降減少が続いている。年齢別では、1歳以下の報告数が全体の約67%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(0.56)、佐賀県(0.48)、岐阜県(0.45)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(2.07)、福井県(1.73)、大分県(1.50)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福井県(18.1)、香川県(14.9)、宮崎県(12.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(4.9)、新潟県(4.0)、鹿児島県(3.3)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では愛媛県(3.76)、福井県(3.36)、宮崎県(1.75)、広島県(1.65)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福井県(0.77)、新潟県(0.54)、千葉県(0.52)、長崎県(0.52)が多い。百日咳の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では鳥取県(0.16)、栃木県(0.15)、広島県(0.15)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では高知県(0.60)、熊本県(0.54)、岩手県(0.53)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では和歌山県(3.26)、石川県(2.17)、富山県(2.10)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では埼玉県(5.2)、群馬県(2.4)、福島県(1.9)が多い。
注目すべき感染症
◆ 百日咳
百日咳は、好気性のグラム陰性桿菌である百日咳菌(Bordetella pertussis)の感染を原因とする急性の呼吸器感染症である。特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴としており、母親からの移行抗体が有効に働かないために乳児期早期から罹患する可能性があり、ことに百日咳(P)ワクチンを含んだDPT三種混合ワクチンを接種していない生後6カ月以下の乳児が罹患した場合は、未だに死に至る危険性がある疾患である。百日咳はこれまで乳幼児を中心とした小児で流行する疾患とされてきたが、ワクチンの開発・普及と乳児期の接種率の上昇によって、発生報告数は大きく減少した。だが最近では小児科定点報告疾患であるにもかかわらず20歳以上の成人例の報告数が年々増加してきており、かつての乳幼児を中心に流行する疾患と呼ぶには相応しくない状況となりつつある。百日咳は、通常は感染後7〜10日間の潜伏期間を経て発症するが、臨床経過は乳幼児の典型例では(1)カタル期、(2)痙咳期、(3)回復期の3つに分けられている。成人の発生例は咳が長期にわたって持続するものの、乳幼児にみられるような重篤な痙咳性の咳嗽を示すことは稀であり、症状が典型的ではないために診断が見逃されやすく、感染源となって周囲へ感染を拡大してしまうこともあり、注意が必要である。治療薬としてはマクロライド系抗菌薬が第一選択であるが、セフェム系が処方されることもある。早期に抗菌薬を処方すれば、症状の軽減と菌排出期間(無治療の場合は3週間前後)の短縮が期待できる。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告数に基づいて百日咳の患者発生状況の分析を行っている。2010年第18週の週別の患者報告数は70例(定点当たり報告数0.02)であり、ゴールデンウィーク期間中であるにもかかわらず前週(第17週)の報告数(68例)をやや上回ったが、2008年、2009年の同時期の報告数を下回った状態が続いている(図1)。都道府県別では、広島県11例、神奈川県10例、栃木県7例、千葉県7例、東京都7例、福岡県4例の順となっている(図2)。2010年第1〜18週までの累積報告数は1,261例であり、2000年以降の過去11年間では、2009年(1,723例)、2008年(1,670例)に次いで多い報告数となっている。年齢群別では、20歳以上56.8%(716例)、0歳10.5%(133例)、1歳4.5%(57例)、2〜3歳6.5%(82例)、4〜5歳6.1%(77例)となっている(図3)。20歳以上の報告割合は年々高くなってきていたが、2010年では50%を上回った状態となっている(図4)。累積報告数を男女別でみると、男性41.5%(523例)、女性58.5%(738例)と女性の報告割合が高く、0歳児では男性の報告割合が高いものの、20歳以上では女性の報告割合が60%以上を占めている(図5)。
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図1. 百日咳の年別・週別発生状況(2000〜2010年第18週) |
図2. 百日咳の都道府県別報告状況(2010年第18週) |
図3. 百日咳累積報告数の年齢群別割合(2010年第1〜18週) |
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図4. 百日咳の年別・年齢群別割合(2000年〜2010年第18週) |
図5. 百日咳累積報告数の年齢群別男女別割合(2010年第1〜18週) |
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感染症発生動向調査における百日咳の患者報告数は、小児科定点からの報告であるにもかかわらず、2000年以降年々20歳以上の成人層からの報告割合が増加し、2010年では第18週までに報告数の半数を超える56.8%を占めている。
感染症情報センターでは、成人層を中心とした患者発生状況の実態をより明らかにすることを目的として、2008年5月から「百日咳DB:全国の百日咳発生状況」(http://idsc.nih.go.jp/disease/pertussis/pertu-db.html)を立ち上げ、感染症発生動向調査とは別に解析を行っている。2008年5月8日から2009年12月28日までに同DBに報告された756例(後に百日咳を否定された2例を除く)においても同様に、20歳以上の報告数が多くを占めている(http://idsc.nih.go.jp/disease/pertussis/DB/s-091228.pdf)。
百日咳は、現在でもワクチン未接種の乳児が罹患した場合には重症化が危惧され、かつては乳幼児を中心に夏季に流行する疾患であった。しかし最近では、成人層の患者発生の割合が年々高くなってきており、その詳細を明らかにするためには、現在の小児科定点による発生動向調査では不十分であると言わざるを得ない。また、既に米国等では思春期から成人層への百日咳対策としてワクチンの追加接種が実施されており、我が国においても早急に検討が必要と思われる。現状のままで何等有効な対策が講じられなければ、今後は成人層を中心とした百日咳の流行が毎年継続的に発生し、それによってワクチン未接種の乳児への感染機会も増加することが懸念される。百日咳の今後の発生動向には注意が必要である。
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