発生動向総覧
〈第20週コメント〉 5月26日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 285例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢6例〔感染地域:東京都1例、国内(都道府県不明)1例、インド3例、韓国1例〕
腸管出血性大腸菌感染症36例(有症者25例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内34例、トルコ1例、ブラジル1例
国内の感染地域:兵庫県7例、大阪府6例、福岡県6例、広島県2例、石川県1例、静岡県1例、三重県1例、京都府1例、島根県1例、愛媛県1例、熊本県1例、宮崎県1例、不明5例
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、3歳(2例)、4歳(1例)、5歳(2例)、7歳(1例)、9歳(1例)、10代(5例)、20代(12例)、30代(4例)、40代(1例)、50代(1例)、60代(1例)、70代(2例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2(12例)、O26 VT1(10例)、O157 VT1・VT2(5例)、O121 VT2(2例)、O157 VT1(2例)、O157 VT不明(2例)、O126 VT不明(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:435例(有症者264例、うちHUS 12例.死亡なし)
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4類感染症: |
E型肝炎2例
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感染地域:熊本県1例_感染源:牛、馬の内臓
感染地域:宮崎県1例_感染源:猪肉
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A型肝炎7例
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感染地域:青森県1例、群馬県1例、埼玉県1例、東京都1例、兵庫県1例、島根県1例、鹿児島県1例
累積報告数:209例〔劇症肝炎6例_年齢群:40代(1例)、50代(3例)、60代(2例.うち死亡1例)〕
*第10〜20週の累積報告数は178例(劇症肝炎5例、うち死亡1例)となり、都道府県別では、福岡県25例、東京都23例、広島県22例、兵庫県12例の順に多い。広域アウトブレイクの可能性もあり、引き続き注意を要する。
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つつが虫病2例(感染地域:秋田県1例、栃木県1例) デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、インド1例) 日本紅斑熱1例(感染地域:愛媛県)
レジオネラ症12例(肺炎型12例)
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感染地域:鹿児島県2例、栃木県1例(温泉)、群馬県1例(温泉)、埼玉県1例、新潟県1例、石川県1例、山梨県1例、長野県1例(温泉)、愛知県1例、国内(都道府県不明)1例(温泉)、香港1例
年齢群:40代(1例)、50代(2例)、60代(7例)、80代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢12例(腸管アメーバ症10例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:東京都5例、埼玉県1例、京都府1例、兵庫県1例、愛媛県1例、高知県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)1例感染経路:性的接触6例(異性間3例、同性間2例、異性間・同性間不明1例)、その他6例
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ウイルス性肝炎5例
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B型5例_感染経路:性的接触4例(異性間2例、同性間1例、異性/同性間1例)、不明1例
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急性脳炎2例
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ロタウイルス1例_年齢群:2歳
単純ヘルペスウイルス1例_年齢群:70代
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型) 劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:60代.死亡)
後天性免疫不全症候群25例(AIDS 8例、無症候14例、その他3例)
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感染地域:国内21例、国内・国外不明4例
感染経路:性的接触20例(異性間4例、同性間13例、異性/同性間2例、異性間・同性間不明1例)、不明5例
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ジアルジア症1例(感染地域:東京都)
梅毒7例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、無症候3例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC _菌検出検体:血液)
風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例)
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感染地域:茨城県1例、広島県1例
年齢群:15〜19歳(1例)、20〜24歳(1例)
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麻しん14例〔麻しん(検査診断例4例、臨床診断例3例)、修飾麻しん(検査診断例7例)〕
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感染地域:国内14例
国内の感染地域:神奈川県3例、東京都2例、北海道1例、群馬県1例、埼玉県1例、千葉県1例、岐阜県1例、京都府1例、大阪府1例、広島県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(7例)、10〜14歳(2例)、20〜24歳(1例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(3例)
累積報告数:206例〔麻しん(検査診断例80例、臨床診断例65例)、修飾麻しん(検査診断例61例)〕
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(補)他に2010年第19週までに診断されたものの報告遅れとして、レジオネラ症1例〔感染地域:茨城県(温泉)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(50代)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:尿)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山口県(1.06)、三重県(0.46)、佐賀県(0.46)、広島県(0.43)、福島県(0.39)、長野県(0.33)、熊本県(0.30)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は275例と減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約70%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では佐賀県(0.87)、広島県(0.82)、鹿児島県(0.64)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山形県(4.6)、石川県(4.4)、福井県(4.1)、鳥取県(3.4)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(21.3)、富山県(14.9)、宮崎県(14.3)、長野県(13.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(4.8)、香川県(3.6)、佐賀県(3.0)、愛媛県(3.0)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では愛媛県(10.2)、山口県(6.1)、大分県(4.3)、高知県(4.2)、宮崎県(4.0)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では神奈川県(1.50)、福井県(1.50)、山形県(1.40)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では栃木県(0.43)、千葉県(0.15)、新潟県(0.13)、東京都(0.12)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では宮崎県(2.03)、岩手県(1.90)、高知県(1.83)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では和歌山県(2.77)、福島県(2.69)、石川県(2.66)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では埼玉県(2.89)、群馬県(2.38)、宮城県(2.33)が多い。
注目すべき感染症
◆ 手足口病
手足口病(hand, foot, and mouth disease:HFMD)は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に主に夏季に流行する疾患である。病原ウイルスは主にコクサッキーウイルスA16(CA16)、エンテロウイルス71(EV71)であり、その他コクサッキーウイルスA6、A9、A10などのエンテロウイルスによって発症する。臨床的特徴であるが、感染から3〜5日の潜伏期間の後に、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2〜3mmの水疱性発疹が出現する。発熱は約3分の1に認められるが軽度であり、高熱が続くことは通常はない。本症は基本的には数日間のうちに治癒する予後良好の疾患である。しかしながら、まれではあるが髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症などのほか、心筋炎、急性弛緩性麻痺などの多彩な臨床症状を呈することがある。特にEV71に感染した場合は、中枢神経系の合併症を引き起こす割合が高いことが明らかとなってきているため、同ウイルスが流行している期間中は、手足口病発症児の経過を注意深く観察し、合併症に対する警戒を行う必要がある。なお、急性脳炎を合併した場合には、診断した医師は5類感染症全数届出疾患として報告が必要である。
感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染であり、保育園や幼稚園などの乳幼児施設においての感染予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となる。本疾患は主要症状が回復した後も比較的長期間にわたって児の便などからウイルスが排泄されることがあるが、基本的には軽症疾患であることを踏まえ、回復した児に対して長期間の欠席を求めることは現実的ではない。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告に基づいて手足口病をはじめとする各種小児科疾患の発生動向を分析している。2010年第20週の手足口病の定点当たり報告数は1.41(報告数4,267)となった。ゴールデンウィーク終了以降は2週連続で増加しており、また第10週以降は2000年以降の11年間の同時期の値の中では最も多い状態が続いている(図1)。都道府県別では愛媛県(10.2)、山口県(6.1)、大分県(4.3)、高知県(4.2)、宮崎県(4.0)、福井県(3.7)、和歌山県(3.2)、兵庫県(3.1)の順であり、西日本地域での流行が目立っており、特に愛媛県、山口県、高知県では大きく増加している(図2)。
2010年第1〜20週までの定点当たり累積報告数は8.42(累積報告数25,478)であり、年齢群別では2〜3歳40.2%(10,239)、0〜1歳31.0%(7,905)、4〜5歳19.2%(4,900)の順となっており、発生報告の中心が5歳以下の乳幼児であることは例年と同様である(図3)。
第1〜20週までの20週間の手足口病由来ウイルス分離・検出報告数は76件であり、EV71が65.8%(50件)と最多を占め、2004年以降では最も高い割合となっている(図4)。
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図1. 手足口病の年別・週別発生状況(2000〜2010年第20週) |
図2. 手足口病の都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第18〜20週) |
図3. 手足口病の年別・年齢別割合(2000〜2010年第20週) |
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図4. 手足口病由来ウイルス分離・検出報告割合推移(2004〜2010年第20週) |
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2010年の手足口病の報告数は、2000年以降の同時期と比較して最多となっているが、今後は夏季の流行のピークに向かって更に増加してくるものと予想される。また、患者由来検体から検出されるウイルスではEV71が多数を占める状態が続いており、患者発生数の増大と共に、中枢神経系の合併症発生例の増加が懸念される。今後とも手足口病の患者発生動向の推移と、発病者由来検体からのウイルスの検出状況には注意が必要である。
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