発生動向総覧
〈第26週コメント〉 7月7日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 357例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例
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菌種:S. sonnei(D群)2例_感染地域:中国1例、モロッコ1例
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腸管出血性大腸菌感染症86例(有症者60例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内85例、韓国1例
国内の多い感染地域:愛知県12例、東京都8例、大阪府7例、宮城県6例、三重県5例、山口県5例、岡山県4例、岩手県3例、新潟県3例、茨城県2例、埼玉県2例、千葉県2例、京都府2例、奈良県2例、福岡県2例、熊本県2例、鹿児島県2例
年齢群:1歳(5例)、2歳(2例)、3歳(3例)、4歳(3例)、5歳(3例)、6歳(3例)、7歳(2例)、9歳(3例)、10代(11例)、20代(13例)、30代(12例)、40代(5例)、50代(6例)、60代(5例)、70代(8例)、80代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2( 43例)、O26 VT1( 17例)、O157 VT2(10例)、O157 VT不明(3例)、O26 VT不明(1例)、O91 VT1(1例)、O103 VT1(1例)、O121 VT2(1例)、O145 VT2(1例)、その他・不明(8例)
累積報告数:1,138例(有症者699例、うちHUS 20例.死亡1例)
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パラチフス2例(感染地域:インド1例、インド/バングラデシュ1例)
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4類感染症: |
E型肝炎2例
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感染地域:愛知県1例_感染源:猪肉
感染地域:中国/ミャンマー1例_感染源:不明
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つつが虫病3例(感染地域:秋田県1例、福島県1例、鹿児島県1例)
デング熱3例(デング熱2例、無症状病原体保有者1例)
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感染地域:インドネシア1例、ラオス1例、東ティモール1例
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マラリア2例
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三日熱1例_感染地域:ソロモン諸島
熱帯熱1例_感染地域:カメルーン
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レジオネラ症23例(肺炎型22例、ポンティアック型1例)
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感染地域:埼玉県2例、京都府2例、福岡県2例、岩手県1例、栃木県1例、新潟県1例(温泉)、富山県1例、長野県1例、静岡県1例(温泉)、兵庫県1例、愛媛県1例、熊本県1例(温泉)、国内(都道府県不明)8例(うち1例温泉)
年齢群:0歳(1例)、30代(1例)、50代(3例)、60代(11例)、70代(1例)、80代(6例)
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レプトスピラ症1例(感染地域:ベトナム_感染源:河川)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症8例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:千葉県2例、福岡県2例、埼玉県1例、東京都1例、神奈川県1例、国内(都道府県不明)1例、中国1例、フィリピン1例
感染経路:経口感染2例、性的接触1例(同性間)、その他7例
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クリプトスポリジウム症3例(感染地域:栃木県2例、ベナン1例)
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:70代)
後天性免疫不全症候群21例(AIDS 4例、無症候16例、その他1例)
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感染地域:国内17例、国内・国外不明4例
感染経路:性的接触16例(異性間4例、同性間11例、異性/同性間1例)、不明5例
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ジアルジア症1例(感染地域:東京都)
梅毒8例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、晩期顕症1例_死亡、無症候3例)
破傷風3例〔年齢群:60代(2例)、70代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:血液)
風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例)
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感染地域:大阪府1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(1例)、30〜34歳(1例)
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麻しん14例〔麻しん(検査診断例5例、臨床診断例5例)、修飾麻しん(検査診断例4例)〕
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感染地域:国内13例、ベトナム1例
国内の感染地域:千葉県2例、東京都2例、静岡県2例、群馬県1例、埼玉県1例、神奈川県1例、兵庫県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:0歳(1例)、1歳(2例)、4歳(1例)、5〜9歳(1例)、15〜19歳(2例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(1例)、40代(3例)、50代(1例)
累積報告数:277例〔麻しん(検査診断例104例、臨床診断例90例)、修飾麻しん(検査診断例83例)〕
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(補)・A型肝炎の報告数は、第22〜25週は6〜8例で推移したが、第26週は報告がなかった。
・他に2010年第25週までに診断されたものの報告遅れとして、日本紅斑熱1例(感染地域:広島県)、レジオネラ症1例〔感染地域:福岡県(温泉)〕、急性脳炎4例〔カンピロバクター1例(3歳)、つつが虫病リケッチア1例(70代.死亡)、病原体不明2例(3歳、30代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例〔遺伝子型:VanB 2例_菌検出検体:血液2例(うち死亡1例)〕などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では沖縄県(0.48)、岐阜県(0.22)、三重県(0.13)、山口県(0.10)、佐賀県(0.10)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は186例と2週連続で増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では佐賀県(0.91)、広島県(0.82)、富山県(0.79)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では石川県(3.45)、山形県(3.03)、福井県(2.68)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第21週以降減少が続いている。都道府県別では大分県(8.5)、宮崎県(7.6)、福井県(6.2)が多い。水痘の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では石川県(2.83)、宮崎県(2.58)、宮城県(2.54)が多い。手足口病の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では高知県(12.2)、大分県(11.1)、山口県(9.2)、福井県(7.5)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では秋田県(1.97)、千葉県(1.86)、三重県(1.80)、福井県(1.68)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では新潟県(0.20)、高知県(0.17)、大分県(0.17)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では徳島県(9.5)、愛知県(6.9)、大分県(6.7)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では宮崎県(3.50)、和歌山県(2.84)、福島県(2.69)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福島県(2.43)、宮城県(2.25)、沖縄県(1.57)が多い。
注目すべき感染症
◆ ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナ(Herpangina)は、発熱、口腔粘膜に現れる水疱性の発疹を特徴とした急性のウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に夏季に流行する疾患である。病原ウイルスは主にコクサッキーウイルスA群(CA2、CA4、CA5、CA6、CA10等)である場合が多いが、まれにコクサッキーウイルスB群、エコーウイルスで発症する場合もある。
感染から2〜4日の潜伏期間の後に、突然の発熱に続いて咽頭痛が出現、咽頭の発赤とともに、主として軟口蓋から口蓋弓にかけての部位に直径1〜2mm、場合により大きいものでは5mmほどの紅暈で囲まれた小水疱が出現する。小水疱はやがて破れて浅い潰瘍となる。発熱は2〜4日間程度で解熱し、やや遅れて粘膜疹も消失する。発病者の殆どは予後良好の疾患であるが、エンテロウイルス感染症の特徴として、まれに無菌性髄膜炎や急性心筋炎を合併することがある。発熱以外に頭痛、嘔吐等の症状や、心不全徴候の出現には十分に注意すべきである。
特異的な治療法はなく、発熱や頭痛に対する対症療法が中心となるが、時に脱水に対する治療が必要となることがある。急性期のみの登園・登校停止では厳密な流行阻止効果は期待できないが、幼児期までに大半の者が罹患する疾患であり、また大部分が軽症であることから、登園・登校については手足口病と同様に、流行阻止の目的というよりも患者本人の状態によって判断すべきである。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告に基づいてヘルパンギーナをはじめとする各種小児科疾患の発生動向を分析している。2010年のヘルパンギーナの報告数は、第19週以降増加が続いており、第26週の定点当たり報告数は4.16(報告数12,601)と前週の定点当たり報告数(2.87)よりも大幅に増加した(図1)。都道府県別では徳島県(9.54)、愛知県(6.85)、大分県(6.69)、神奈川県(6.55)、千葉県(6.43)、秋田県(5.94)、東京都(5.91)、福井県(5.91)の順となっている。鳥取県、島根県、福岡県、宮崎県、沖縄県を除く42都道府県で前週よりも増加がみられている(図2)
2010年第1〜26週までの定点当たり累積報告数は13.63(累積報告数41,308)であり、年齢別では1歳25.1%(10,371)、2歳20.6%(8,498)、3歳17.2%(7,096)、4歳13.2%(5,437)、5歳8.1%(3,342)、0歳6.5%(2,698)の順となっており、5歳以下で全報告数の90%前後を占めていることは例年と同様である(図3)。
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図1. へルパンギーナの年別・週別発生状況(2000〜2010年第26週) |
図2. ヘルパンギーナの都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第24〜26週) |
図3. へルパンギーナの年別・年齢別割合(2000〜2010年第26週) |
ヘルパンギーナの流行のピークは7月の中旬以降となることが多く、2000年から2009年までの過去10年間の流行のピークは第27週1回、第28週4回、第29週3回、第30週1回、第31週1回であった(図1)。ヘルパンギーナの流行は間もなくピークを迎えるものと考えられるため、その発生動向には注意が必要である
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