発生動向総覧
〈第27週コメント〉 7月14日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 308例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例
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菌種:S. boydii (C群)1例_感染地域:国内(都道府県不明)
菌種:S. sonnei (D群)4例_感染地域:フィリピン1例、インドネシア1例、モロッコ1例、タイ/バングラデシュ/パキスタン1例
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腸管出血性大腸菌感染症144例(有症者100例、うちHUS 6例) |
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感染地域:国内144例
国内の多い感染地域:愛知県28例、三重県16例、秋田県15例、東京都7例、福岡県7例、埼玉県6例、岩手県5例、神奈川県5例、奈良県4例、熊本県4例、宮城県3例、千葉県3例、石川県3例、大阪府3例、兵庫県3例、鹿児島県3例、山形県2例、福島県2例、滋賀県2例、山口県2例、佐賀県2例
年齢群:1歳(4例)、2歳(3例)、3歳(3例)、4歳(4例)、5歳(5例)、6歳(2例)、7歳(7例)、8歳(5例)、9歳(2例)、10代(21例)、20代(21例)、30代(20例)、40代(6例)、50代(10例)、60代(11例)、70代(8例)、80代(8例)、90代(4例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2( 84例)、O157 VT2( 22例)、O26 VT1(8例)、O145 VT2(4例)、O157 VT1(4例)、O111 VT1(3例)、O157 VT不明(3例)、O26 VT1・VT2(1例)、O26 VT不明(1例)、O55 VT1( 1例)、O103 VT1( 1例)、O121 VT2(1例)、OUT VT1(1例)、その他・不明(10例)
累積報告数:1,302例(有症者816例、うちHUS 28例.死亡1例)
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4類感染症: |
A型肝炎5例
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感染地域:宮城県1例、山形県1例、東京都1例、神奈川県1例、国内(都道府県不明)1例
累積報告数:262例〔劇症肝炎7例_年齢群:40代(1例)、50代(3例)、60代(3例.うち死亡1例)〕
*アラート情報を発出した第10〜27週の累積報告数は230例(劇症肝炎6例、うち死亡1例)となり、都道府県別では、福岡県28例、東京都26例、広島県25例、兵庫県18例、神奈川県15例、埼玉県13例、大阪府10例の順に多い。報告数は、第22〜25週は6〜9例で推移し、第26週0例、第27週5例となったため、今週でアラート解除と判断する。
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オウム病1例(感染地域:千葉県_感染源:インコ) つつが虫病3例(感染地域:山形県2例、新潟県1例)
デング熱1例(感染地域:インドネシア)
マラリア1例(卵形_感染地域:ウガンダ)
ライム病1例(感染地域:京都府)
レジオネラ症21例(肺炎型20例、ポンティアック型1例)
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感染地域:熊本県4例(うち3例温泉)、山形県2例(うち1例温泉)、愛知県2例、宮城県1例、福島県1例(温泉)、栃木県1例(温泉)、埼玉県1例(温泉)、神奈川県1例、新潟県1例、富山県1例、長野県1例、岐阜県1例、京都府1例、福岡県1例(温泉)、国内(都道府県不明)2例
年齢群:30代(1例)、50代(6例)、60代(6例)、70代(7例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢12例(腸管アメーバ症11例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:埼玉県1例、東京都1例、大阪府1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)5例、韓国1例、インドネシア1例、タイ1例
感染経路:経口感染5例、性的接触4例(異性間3例、異性・同性間不明1例)、その他3例
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ウイルス性肝炎2例(B型2例_感染経路:性的接触1例、不明1例) 急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:3歳) クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
後天性免疫不全症候群19例(AIDS 6例_うち死亡1例、無症候13例)
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感染地域:国内17例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触16例(異性間1例、同性間15例)、性的接触(同性間)/静注薬物使用1例、不明2例
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ジアルジア症1例(感染地域:京都府)
梅毒6例(早期顕症I期1例、早期顕症II期1例、無症候4例)
破傷風1例(年齢群:70代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子型:不明2例_菌検出検体:血液1例、胆汁1例
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風しん2例(検査診断例2例)
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感染地域:三重県1例、ベトナム1例
年齢群:30〜34歳(1例)、40代(1例)
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麻しん16例〔麻しん(検査診断例5例、臨床診断例5例)、修飾麻しん(検査診断例6例)〕
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感染地域:国内14例、フィリピン1例、ベトナム1例
国内の感染地域:青森県1例、埼玉県1例、千葉県1例、東京都1例、神奈川県1例、京都府1例、広島県1例、愛媛県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)5例
年齢群:0歳(2例)、1歳(3例)、2歳(1例)、5〜9歳(2例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(2例)、35〜39歳(3例)、40代(2例)
累積報告数:296例〔麻しん(検査診断例110例、臨床診断例95例)、修飾麻しん(検査診断例91例)〕
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(補)他に2010年第26週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):北海道(焼き鳥、貝類)〕、オウム病2例〔感染地域(感染源):鳥取県1例(不明)、福岡県1例(不明)〕、急性脳炎5例〔ヒトヘルペスウイルス6型1例(0歳)、エンテロウイルス71型1例(1歳)、病原体不明3例(1歳、2歳、40代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例〔40代(1例)、70代(1例)、80代(1例.死亡)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanA_菌検出検体:血液)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は2週連続で横ばいであった。都道府県別では福井県(1.03)、沖縄県(0.74)、岐阜県(0.18)、佐賀県(0.15)、鹿児島県(0.11)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は176例と減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約84%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では富山県(1.21)、佐賀県(1.09)、広島県(1.04)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いている。都道府県別では山形県(2.73)、山口県(2.69)、石川県(2.38)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第21週以降減少が続いている。都道府県別では大分県(7.6)、宮崎県(7.3)、島根県(6.4)が多い。水痘の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いている。都道府県別では宮崎県(2.64)、山形県(2.63)、滋賀県(2.41)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第24週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では高知県(12.6)、大分県(12.1)、山口県(10.1)、福井県(8.3)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では秋田県(2.00)、長崎県(1.91)、千葉県(1.74)が多い。百日咳の定点当たり報告数は3週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(0.18)、栃木県(0.15)、福井県(0.14)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第19週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では埼玉県(10.5)、宮城県(9.6)、神奈川県(9.4)、東京都(9.0)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福島県(3.35)、和歌山県(3.32)、宮崎県(3.03)、山口県(3.02)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は3週連続して減少した。都道府県別では埼玉県(2.22)、福島県(1.86)、佐賀県(1.83)が多い。
注目すべき感染症
◆ 腸管出血性大腸菌感染症 (2010年7月14日現在)
2010年の腸管出血性大腸菌感染症報告数は、例年同様に第20週から増加し始めた。第22〜24週にかけて、三重県の中学・高校における大規模な集団感染事例(189例)が発生したことで一時的に報告が急増した。その後いったん減少したが、第25週91例、第26週103例と再び増加し始め、第27週は144例であった(図1)。本年第27週までの累積報告数1,302例は、2000年以降の各年同期間の累積報告数と比較して2001年に次いで2番目に多い報告数である(2000年1,083例、2001年1,481例、2002年1,161例、2003年743例、2004年1,026例、2005年1,068例、2006年1,036例、2007年1,234例、2008年1,169例、2009年1,029例)。
第27週に報告のあった144例は、有症状者が100例(69%)、無症状病原体保有者が44例(31%)であった。都道府県別にみると、愛知県(29例)、三重県(16例)、秋田県(15例)、東京都(10例)からの報告が多かった(図2)。愛知県と三重県では、第26週(愛知県18例、三重県6例)からそれぞれ報告数が増加しており、そのほとんどがO157 VT1・VT2である。また秋田県では、第26週から高齢者福祉施設でO157 VT1・VT2の集団感染事例が発生し、これまでに計16例の感染が報告されている。性別では男性62例、女性82例であり、年齢群別では0〜9歳35例、10〜19歳と20〜29歳各21例、30〜39歳20例の順に多かった。腸管出血性大腸菌感染症の重篤な合併症である溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症者は、6例(1歳、3歳、4歳、30代、70代、90代各1例)報告され、すべて女性であった。
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図1. 腸管出血性大腸菌感染症の年別・週別発生状況(2000〜2010年第27週) |
図2. 腸管出血性大腸菌感染症の診断週別・都道府県別報告数(2010年第25〜27週) |
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第1〜27週の累積報告数1,302例についてみると、報告の多い都道府県は、三重県(221例)、福岡県(112例)、東京都(100例)、愛知県(90例)、大阪府(76例)であり、性別では男性628例、女性674例、年齢群別では10〜19歳326例、0〜9歳322例、20〜29歳201例の順に多い。三重県の中学・高校における集団感染の他に、最近では第22〜23週に埼玉県の保育園(10例)で、第23〜24週に福岡県の保育園(27例)で集団感染事例が発生している。HUS発症者は累計28例報告されており、性別では男性12例、女性16例で、年齢群別では0〜4歳19例、10〜14歳2例、15歳以上7例であった。死亡例は1例(90代男性、O157 VT1・VT2、HUS発症せず)報告されている。
今後、毎年本症が数多く発生する夏季を迎えて、その発生動向には注意が必要である。食肉の十分な加熱処理などにより、食中毒の予防を徹底するとともに、手洗いの励行などにより、ヒトからヒトへの二次感染を予防することが重要である。
(補)菌の検出状況については、http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph-lj.html をご参照ください。
◆ 流行性耳下腺炎
流行性耳下腺炎(mumps:ムンプス)は、ムンプスウイルスの感染を原因として発症する感染症である。2〜3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側性の唾液腺(耳下腺が最も多い)のびまん性腫脹、疼痛、発熱を主症状とし、2〜7歳の小児に好発する。不顕性感染が3分の1程度認められ、発症しても、通常は1〜2週間で軽快する予後良好の疾患であるが、髄膜炎をはじめ、髄膜脳炎、難聴、睾丸炎、卵巣炎、膵炎等の種々の合併症を起こす場合がある。感染経路はヒト−ヒト間の飛沫感染、接触感染であり、特に保育施設等、ムンプスウイルスに免疫を持たない乳幼児の集団生活施設では、しばしば集団発生が認められている。また成人での発症例では、髄膜炎、精巣炎、熱性痙攣、難聴、膵炎などの合併症によって入院を要する例が比較的多い。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告数に基づいて流行性耳下腺炎をはじめとする各種小児科疾患の発生動向の分析を行っている。2010年第27週の定点当たり報告数は1.53(報告数4,636)と前週(第26週)の定点当たり報告数1.34より増加した(図1)。都道府県別では福島県(3.35)、和歌山県(3.32)、宮崎県(3.03)、山口県(3.02)、静岡県(2.48)、石川県(2.34)、埼玉県(2.31)の順となっている(図2)。2010年第1〜27週の定点当たり累積報告数は30.22(報告数91,636)であり、既に2007年、2008年の1年間の定点当たり累積報告数を大きく上回っており(図3)、また2009年の第1〜27週までの定点当たり累積報告数15.79の2倍近い値となっている。年齢群別では4〜5歳33.2%、6〜7歳22.5%、2〜3歳21.1%、8〜9歳10.3%の順となっている。7歳以下で全報告数の80%以上を占めているのは例年と同様である(図4)。
1982年以降の流行性耳下腺炎の週別定点当たり報告数の推移をみると、流行性耳下腺炎は3〜4年周期で大きな流行が訪れていたが、1989年のMMRワクチンの導入により周期が4〜5年に延長し、その流行規模も縮小傾向を示していた。しかし、その後のMMRワクチンの中止とムンプス関連ワクチンの接種率の低下により、流行性耳下腺炎の流行は再び増大傾向となり、最近では流行の周期は4年となってきている(図5)。2010年は過去3年間よりも流行が大きくなる事が予想されており、今後一旦は夏季休暇によって報告数の減少がみられても、秋期には再び増加してくるものと思われる(図1)。今後とも、本疾患の流行状況、発生動向には注意が必要である。
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図1. 流行性耳下腺炎の年別・週別発生状況(2000〜2010年第27週) |
図2. 流行性耳下腺炎の都道府県別報告状況(2010年第27週) |
図3. 流行性耳下腺炎の定点当たり累積報告数の年別推移(2000〜2010年第27週) |
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図4. 流行性耳下腺炎の年別・年齢群別割合(2000〜2010年第27週) |
図5. 流行性耳下腺炎の定点当たり報告数の推移(1982〜2010年第27週) |
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