発生動向総覧
〈第28週コメント〉 6月21日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 291例 |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症123例(有症者79例、うちHUS 3例) |
|
感染地域:国内122例、韓国1例
国内の多い感染地域:三重県20例、東京都16例、愛知県13例、福岡県5例、神奈川県4例、岐阜県4例、熊本県4例、北海道3例、岩手県3例、秋田県3例、千葉県3例、京都府3例、大阪府3例、兵庫県3例、福島県2例、香川県2例、鹿児島県2例
年齢群:0歳(1例)、1歳(3例)、2歳(4例)、3歳(4例)、4歳(3例)、5歳(6例)、6歳(2例)、8歳(4例)、9歳(1例)、10代(11例)、20代(22例)、30代(25例)、40代(6例)、50代(10例)、60代(9例)、70代(9例)、80代(2例)、90代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(55例)、O157 VT2(16例)、O26 VT1(16例)、O157 VT不明(8例)、O103 VT1(6例)、O157 VT1(4例)、O121 VT2(3例)、O55 VT1(1例)、O103 VT不明(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、O111 VT1(1例)、その他・不明(11例)
累積報告数:1,438例(有症者901例、うちHUS 32例.死亡1例)
|
|
4類感染症: |
A型肝炎3例(感染地域:福島県1例、千葉県1例、富山県1例)
オウム病1例(感染地域:茨城県_感染源:インコ)
つつが虫病2例(感染地域:福島県1例、新潟県1例)
デング熱4例(デング熱3例、デング出血熱1例)
|
|
感染地域:インドネシア3例、ベネズエラ1例
|
日本紅斑熱1例(感染地域:高知県) マラリア1例(卵形_感染地域:カメルーン)
レジオネラ症11例(肺炎型11例)
|
|
感染地域:山形県1例(温泉)、茨城県1例、栃木県1例、群馬県1例、長野県1例、岐阜県1例、大阪府1例、福岡県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)1例、中国1例
年齢群:50代(3例)、60代(4例)、70代(3例)、80代(1例)
|
|
5類感染症: |
アメーバ赤痢11例(腸管アメーバ症9例、腸管外アメーバ症2例) |
|
感染地域:茨城県1例、京都府1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)5例、インドネシア1例、カンボジア1例、バヌアツ1例
感染経路:経口感染3例、性的接触1例(異性間)、その他7例
|
ウイルス性肝炎3例
|
|
C型2例_感染経路:針刺し事故1例、不明1例
B型1例_感染経路:不明
|
急性脳炎2例〔病原体不明2例_年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)〕
劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例 |
|
年齢群:40代(1例)、60代(1例)、90代(1例)
|
後天性免疫不全症候群12例(AIDS 2例、無症候9例、その他1例) |
|
感染地域:国内11例、米国1例
感染経路:性的接触11例(異性間4例、同性間6例、異性間/同性間1例)、不明1例
|
ジアルジア症1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
梅毒12例(早期顕症I期3例、早期顕症II期3例、晩期顕症1例、無症候5例)
破傷風2例〔年齢群:20代(1例)、70代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
|
|
遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:血液
|
風しん2例(検査診断例2例)
|
|
感染地域:千葉県1例、大阪府1例
年齢群:35〜39歳(1例)、40代(1例)
|
麻しん14例〔麻しん(検査診断例3例、臨床診断例3例)、修飾麻しん(検査診断例8例)〕
|
|
感染地域:国内14例
国内の感染地域:愛知県3例、東京都2例、兵庫県2例、群馬県1例、埼玉県1例、千葉県1例、神奈川県1例、奈良県1例、福岡県1例、熊本県1例
年齢群:0歳(2例)、1歳(1例)、3歳(1例)、4歳(1例)、5〜9歳(3例)、15〜19歳(2例)、25〜29歳(2例)、35〜39歳(2例)
累積報告数:314例〔麻しん(検査診断例114例、臨床診断例98例)、修飾麻しん(検査診断例102例)〕
|
(補)他にマラリア1例の報告があったが、削除予定。また2010年第27週までに診断されたものの報告遅れとして、腸チフス1例(感染地域:ネパール)、日本紅斑熱1例(感染地域:和歌山県)、急性脳炎4例〔突発性発しん(臨症診断)1例(1歳)、病原体不明3例(1歳、5歳、6歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(20代)、風しん1例(検査診断例.感染地域:長崎県.年齢群:5〜9歳)などの報告があった。
|
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は3週連続で横ばいであった。都道府県別では沖縄県(1.17)、福井県(0.34)、千葉県(0.08)、神奈川県(0.08)、静岡県(0.07)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は143例と2週間連続で減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約78%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では富山県(1.75)、大分県(1.33)、広島県(0.87)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いている。都道府県別では石川県(2.45)、山口県(2.29)、鳥取県(2.21)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第21週以降減少が続いている。都道府県別では大分県(7.8)、宮崎県(7.3)、島根県(7.3)が多い。水痘の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いている。都道府県別では宮崎県(2.08)、新潟県(1.80)、長野県(1.76)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第24週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では高知県(13.3)、大分県(9.4)、静岡県(8.2)、新潟県(8.2)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では千葉県(1.46)、福井県(1.45)、三重県(1.44)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(0.24)、山梨県(0.21)、京都府(0.21)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第19週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(12.4)、宮城県(12.0)、神奈川県(11.6)、山形県(11.5)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(3.64)、福島県(3.04)、山口県(2.82)、和歌山県(2.32)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は第25週以降減少が続いている。都道府県別では青森県(2.33)、佐賀県(2.17)、宮城県(1.42)が多い。
〈6月コメント〉
◆性感染症について 2010年7月9日集計分 性感染症定点数:959
(産婦人科・産科・婦人科:459、泌尿器科:395、皮膚科92、性病科13)
●月別推移
2010年6月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.38(男1.14、女1.24)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.76(男0.32、女0.44)、尖圭コンジローマが0.48(男0.28、女0.20)、淋菌感染症が0.82(男0.67、女0.15)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で減少した。女性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で横ばい、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で微増した(29〜32ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、男性では尖圭コンジローマと淋菌感染症でやや少なかった。女性では性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症でやや少なかった(図2)。
|
|
図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(6月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は30〜34歳の年齢群、尖圭コンジローマは25〜34歳の2つの年齢群、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜29歳の年齢群、尖圭コンジローマは20〜29歳の2つの年齢群、淋菌感染症は20〜24歳の年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、女性では性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマで10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢群分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜29歳、70歳以上の4つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性よりも多く、他の年齢群は同値あるいは男性が多かった。淋菌感染症では同値の15〜19歳以外の年齢群で男性が女性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4(PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられる。性器ヘルペスウイルス感染症は、男性では2007年以降、女性では2006年以降微減傾向がみられたが、男性では2009年以降ほぼ横ばいで、女性では2010年に入り微増傾向がみられる。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられる。淋菌感染症は、男性では2003年以降減少傾向がみられたが2010年に入り微増傾向がみられ、女性では2004年以降微減傾向がみられたが2007年以降は横ばいで推移している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で減少であった。女性では性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で同値、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で減少であった。
◆薬剤耐性菌について (7月9集計分)
|
基幹定点数(6月):464.
|
●月別
|
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.61(前月:4.29、前年同月:4.21)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。6月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では最上位であった。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.21(前月:1.39、前年同月:1.03)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。6月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.07(前月:0.10、前年同月:0.08)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。6月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では最下位に属した。
|
●年齢階級別
|
MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の64%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の67%を占める一方、70歳以上が全体の17%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の68%を占めている(図3:PDF参照)
|
●性別:女性を1 として算出した男/女比
|
MRSA感染症…男:女=1.5:1
PRSP感染症…男:女=1.4:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=1.8:1
|
●都道府県別
|
MRSA感染症
定点当たり報告数は福島県(11.4)、沖縄県(10.4)、滋賀県(9.3)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は福井県(4.2)、千葉県(3.6)、新潟県(2.9)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が34件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
|
|