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発生動向総覧
〈第35週コメント〉 9月8日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 368例 |
3類感染症: |
コレラ1例(感染地域:インド)
細菌性赤痢5例
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菌種:S. sonnei (D群)5例_感染地域:タイ1例、カンボジア1例、スリランカ1例、インド1例、タイ/カンボジア1例
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腸管出血性大腸菌感染症161例(有症者111例、うちHUS 6例) |
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感染地域:国内159例、韓国1例、インド1例
国内の多い感染地域:大阪府22例、宮城県11例、東京都11例、兵庫県11例、三重県8例、岩手県7例、長野県6例、広島県6例、京都府5例、福岡県5例、佐賀県5例、北海道4例、福島県4例、栃木県4例、千葉県4例、神奈川県4例、奈良県4例、埼玉県3例、香川県3例、宮崎県3例
年齢群:1歳(9例)、2歳(11例)、3歳(3例)、4歳(11例)、5歳(5例)、6歳(2例)、7歳(7例)、8歳(4例)、9歳(3例)、10代(23例)、20代(19例)、30代(22例)、40代(7例)、50代(10例)、60代(9例)、70代(7例)、80代(8例)、90代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(65例)、O157 VT2(32例)、O26 VT1(25例)、O157 VT不明(12例)、O26 VT1・VT2(6例)、O103 VT1(6例)、O157 VT1(5例)、O165 VT1・VT2(2例)、O91 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、O165 VT不明(1例)、その他・不明(5例)
累積報告数:2,805例(有症者1,879例、うちHUS 63例.死亡3例)
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腸チフス1例(感染地域:タイ/カンボジア/ラオス)
パラチフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
A型肝炎2例(感染地域:兵庫県1例、韓国1例)
デング熱11例
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感染地域:フィリピン3例、インドネシア2例、ラオス2例、タイ1例、
マレーシア1例、インド1例、ベトナム/カンボジア1例
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日本紅斑熱1例(感染地域:愛媛県)
マラリア3例(熱帯熱3例_感染地域:ガーナ2例、コートジボワール1例)
レジオネラ症8例(肺炎型8例)
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感染地域:栃木県1例、神奈川県1例、新潟県1例、国内(都道府県不明)5例
年齢群:50代(3例)、60代(1例)、70代(2例)、80代(1例)、90代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢16例(腸管アメーバ症13例、腸管外アメーバ症3例) |
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感染地域:東京都2例、大阪府2例、北海道1例、神奈川県1例、福井県1例、岐阜県1例、京都府1例、兵庫県1例、大分県1例、国内(都道府県不明)2例、中国1例、インドネシア1例、トルコ1例
感染経路:経口感染3例、性的接触4例(同性間2例、異性/同性間1例、異性間・同性間不明1例)、その他・不明9例
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ウイルス性肝炎1例〔B型_感染経路:性的接触(異性間)〕
急性脳炎4例
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エンテロウイルス2例_年齢群:2歳(1例)、5歳(1例)
ヒトヘルペスウイルス6型1例_年齢群:1歳
サルモネラ菌(エンテリティディス)1例_年齢群:6歳
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
後天性免疫不全症候群8例(AIDS 3例、無症候4例、その他1例)
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感染地域:国内5例、フィリピン/マレーシア1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触6例(異性間1例、同性間5例)、不明2例
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ジアルジア症1例(感染地域:米国)
梅毒3例(早期顕症II期3例)
破傷風3例〔年齢群:70代(2例)、80代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子:VanB 1例_菌検出検体:カテーテル
遺伝子:VanC 1例_菌検出検体:血液
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風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例)
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感染地域:東京都1例、滋賀県1例
年齢群:10〜14歳(1例)、25〜29歳(1例)
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麻しん6例〔麻しん(検査診断例4例)、修飾麻しん(検査診断例2例)〕
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感染地域:国内6例
国内の感染地域:埼玉県1例、東京都1例、神奈川県1例、福井県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:0歳(1例)、4歳(1例)、15〜19歳(1例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(1例)、60代(1例)
累積報告数:368例〔麻しん(検査診断例135例、臨床診断例105例)、修飾麻しん(検査診断例128例)〕
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(補)他に2010年第34週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎1例〔感染地域:北海道_感染源:焼肉(動物種不明)〕、レジオネラ症1例〔感染地域:北海道(温泉)〕、急性脳炎2例〔病原体不明2例(0歳_死亡、1歳〕、クリプトスポリジウム症1例(感染地域:青森県_感染源:牛)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:胆汁)、風しん1例(検査診断例.感染地域:茨城県.年齢群:10〜14歳)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は3週連続で横ばいであった。都道府県別では沖縄県(0.53)、長崎県(0.14)、神奈川県(0.07)、東京都(0.06)、岐阜県(0.06)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は372例と3週連続で増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約78%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では広島県(1.68)、富山県(1.14)、長野県(1.00)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では福井県(1.77)、石川県(1.52)、鳥取県(1.47)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では大分県(7.9)、宮崎県(6.8)、島根県(6.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いている。都道府県別では佐賀県(1.35)、愛媛県(1.11)、宮崎県(1.06)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では福井県(3.41)、徳島県(3.29)、宮崎県(3.22)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福岡県(1.01)、長崎県(1.00)、三重県(0.78)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では東京都(0.09)、沖縄県(0.09)、千葉県(0.07)、新潟県(0.07)、高知県(0.07)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では青森県(3.81)、山形県(3.13)、長野県(3.11)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では和歌山県(3.00)、山口県(2.22)、新潟県(1.90)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(2.00)、富山県(1.80)、大阪府(1.20)が多い。
注目すべき感染症
◆ 腸管出血性大腸菌感染症 (2010年9月8日現在)
2010年の腸管出血性大腸菌感染症報告数は、例年同様に第20週から増加し始めた。第22〜24週にかけて、三重県の中学・高校における大規模な集団感染事例(189例)が発生したことで一時的に報告が急増した。その後いったん減少したが、第26週以降再び増加して第31週に200例を超え、第32週188例、第33週233例、第34週253例で、第35週は161例であった(図1)。本年第35週までの累積報告数2,805例は、2000年以降の各年同期間の累積報告数と比較して2001年、2007年、2008年に次いで4番目に多い報告数である(2000年2,270例、2001年3,534例、2002年2,452例、2003年1,717例、2004年2,648例、2005年2,417例、2006年2,618例、2007年2,890例、2008年2,864例、2009年2,352例)。
第35週に報告のあった161例は、患者(有症状者)が111例(69%)、無症状病原体保有者が50例(31%)であった。都道府県別にみると、大阪府(23例)、東京都(14例)、宮城県(13例)、兵庫県(12例)、三重県と佐賀県(各8例)の報告が多かった(図2)。三重県では、福祉施設でO157 VT1・VT2による集団感染が発生し、これまでに4例が報告されている。性別では男性66例、女性95例であり、年齢群別では0〜9歳55例、10〜19歳23例、30〜39歳22例の順に多かった。腸管出血性大腸菌感染症の重篤な合併症である溶血性尿毒症症候群(HUS)の発症者は6例(1歳、3歳、7歳、8歳、20代、70代)おり、病原体の診断方法は菌分離が4例(O157 VT1・VT2、O157 VT2、O157 VT不明、O不明VT不明)、血清でのO抗原凝集抗体の検出が2例であった。
第1〜35週の累積報告数2,805例についてみると、報告の多い都道府県は、三重県(291例)、東京都(237例)、福岡県(203例)、愛知県(173例)、大阪府(169例)であり、性別では男性1,314例、女性1,491例、年齢群別では0〜9歳839例、10〜19歳556例、20〜29歳430例の順に多い。
推定または確定された感染源・感染経路として、肉の喫食が記載されていたのは434例(15%)であり、そのうち生肉または加熱不十分の肉を喫食していた者が207例(1歳3例、2歳4例、3歳6例、4歳3例、5〜9歳38例、10〜14歳18例、15歳以上135例)であった。
上述の三重県以外に最近発生した集団感染として、第30週から長野県の保育施設関連(O26 VT1)、第32〜34週に栃木県の地域の祭り関連(O157 VT1・VT2)、第33〜34週に富山県の保育施設関連(O157 VT1・VT2)、第34週から奈良県の保育施設関連(O26 VT1)などがあった(図2)。
HUS発症者は累計63例(有症状者でのHUS発症率3.4%)報告されており、性別では男性25例、女性38例で、年齢群別では0〜4歳32例(同7.7%)、5〜9歳7例(同2.5%)、10〜14歳5例(同2.9%)、15〜64歳9例(同1.1%)、65歳以上10例(同5.5%)であった(図3)。そのうち菌の分離が確認されたのは45例で、内訳はO157が39例(VT1・VT2 21例、VT2 13例、VT不明5例)、O121が2例(いずれもVT2)、O26が1例(VT1)、O145が1例(VT2)、O不明が2例(VT1・VT2 1例、VT不明1例)であった。死亡例はこれまでに2歳男性(O157 VT1・VT2、HUS発症)、70代女性(O157 VT1・VT2、HUS発症せず)、90代男性(O157 VT1・VT2、HUS発症せず)の3例が報告されている。
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図1. 腸管出血性大腸菌感染症の年別・週別発生状況(2000〜2010年第35週) |
図2. 腸管出血性大腸菌感染症の診断週別・都道府県別報告数(2010年第33〜35週) |
図3. 腸管出血性大腸菌感染症の溶血性尿毒症症候群(HUS)発症者の年齢群別報告数とHUS発症率(2010年第1〜35週) |
前週(第34週)と比較して報告数が減少したものの、未だ150例を超える報告が続いており、引き続き予防対策の徹底が必要である。食肉の十分な加熱処理などにより、食中毒の予防を徹底するとともに、手洗いの励行などにより、ヒトからヒトへの二次感染を予防することが重要である。
(補)菌の検出状況については、http://idsc.nih.go.jp/iasr/prompt/graph-lj.html をご参照ください。
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