発生動向総覧
〈第36週コメント〉 9月15日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 350例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例
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菌種:S. dysenteriae(A群)1例_感染地域:中国
菌種:S. flexneri (B群)1例_感染地域:インド
菌種:S. sonnei (D群)2例_感染地域:中国1例、ヨルダン1例
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腸管出血性大腸菌感染症190例(有症者126例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内188例、中国/韓国1例、スペイン1例
国内の多い感染地域:三重県28例、福岡県15例、大阪府13例、宮城県9例、神奈川県7例、愛知県7例、京都府7例、兵庫県7例、広島県7例、埼玉県6例、山梨県6例、岩手県5例、千葉県5例、東京都5例、長野県5例、北海道4例、青森県4例、滋賀県3例、熊本県3例
年齢群:0歳(3例)、1歳(8例)、2歳(12例)、3歳(9例)、4歳(7例)、5歳(5例)、6歳(6例)、7歳(3例)、8歳(2例)、9歳(2例)、10代(30例)、20代(31例)、30代(21例)、40代(12例)、50代(19例)、60代(8例)、70代(7例)、80代(5例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(92例)、O157 VT2(30例)、O26 VT1(18例)、O103 VT1(9例)、O157 VT1(8例)、O157 VT不明(6例)、O26 VT1・VT2(4例)、O145 VT2(3例)、O26 VT不明(2例)、O91 VT1(2例)、O111 VT1(2例)、O121 VT2(2例)、O165 VT2(2例)、O103 VT不明(1例)、O111 VT不明(1例)、O121 VT不明(1例)、O128 VT1・VT2(1例)、その他・不明(6例)
累積報告数:3,028例(有症者2,032例、うちHUS 65例.死亡4例)
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腸チフス1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
パラチフス4例 |
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感染地域:京都府1例、国内(都道府県不明)1例、ネパール1例、タイ/インドネシア/バングラデシュ1例
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4類感染症: |
A型肝炎2例〔感染地域:岐阜県1例、国内(都道府県不明)1例〕
つつが虫病1例(感染地域:秋田県)
デング熱6例(感染地域:インド3例、フィリピン2例、ベトナム1例)
日本紅斑熱4例(感染地域:鹿児島県2例、島根県1例、高知県1例)
日本脳炎1例(年齢:80代_感染地域:長崎県)
マラリア1例(三日熱_感染地域:インドネシア)
ライム病1例(感染地域:栃木県)
レジオネラ症17例〔肺炎型16例(うち1例死亡)、ポンティアック型1例〕
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感染地域:北海道3例(うち1例温泉)、長野県2例、岩手県1例、秋田県1例、埼玉県1例、千葉県1例、東京都1例、愛知県1例、滋賀県1例、兵庫県1例、福岡県1例、宮崎県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:40代(1例)、50代(4例)、60代(4例)、70代(3例)、80代(3例)、90代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢15例(腸管アメーバ症11例、腸管外アメーバ症3例、腸管及び腸管外アメーバ1例) |
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感染地域:東京都3例、宮城県1例、埼玉県1例、千葉県1例、愛知県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)5例、ベトナム1例、国内・国外不明1例
感染経路:経口感染4例、性的接触2例(同性間2例)、その他・不明9例
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ウイルス性肝炎2例
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B型1例_感染経路:性的接触(同性間)
サイトメガロウイルス1例_感染経路:不明
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急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:80代) クリプトスポリジウム症4例(感染地域:青森県4例)
クロイツフェルト・ヤコブ病3例 |
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孤発性プリオン病古典型2例
遺伝性プリオン病家族性1例
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:70代)
後天性免疫不全症候群11例(AIDS 2例、無症候9例) |
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感染地域:国内11例
感染経路:性的接触11例(同性間11例)
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梅毒7例(早期顕症I期2例、早期顕症II期1例、晩期顕症1例、無症候3例)
破傷風1例(年齢群:80代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例
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遺伝子型:不明_菌検出検体:血液
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麻しん7例〔麻しん(検査診断例2例、臨床診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例4例)〕
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感染地域:国内6例、中国1例
国内の感染地域:青森県1例、千葉県1例、愛知県1例、三重県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、3歳(1例)、7歳(1例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(1例)、80代(1例)
累積報告数:377例〔麻しん(検査診断例136例、臨床診断例106例)、修飾麻しん(検査診断例135例)〕
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(補)他に2010年第35週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例〔菌種:S. flexneri(B群)_感染地域:ボリビア〕、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、デング熱2例(感染地域:フィリピン1例、インドネシア/フィリピン1例)、日本紅斑熱1例(感染地域:広島県)、急性脳炎2例〔単純ヘルペスウイルス1例(40代)、水痘・帯状疱疹ウイルス1例(40代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(80代)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は微増した。都道府県別では沖縄県(0.71)、山口県(0.21)、新潟県(0.17)、長崎県(0.16)、静岡県(0.10)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は568例と第33週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第33週以降増加が続いている。都道府県別では広島県(1.61)、高知県(1.57)、青森県(1.29)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第33週以降増加が続いている。都道府県別では福井県(1.64)、山口県(1.29)、鳥取県(1.26)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第33週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では大分県(7.0)、宮崎県(6.6)、福井県(5.6)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では愛媛県(1.30)、福井県(1.27)、徳島県(1.17)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では福井県(3.59)、岩手県(3.13)、北海道(2.93)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福岡県(0.81)、熊本県(0.81)、長崎県(0.77)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(0.24)、岐阜県(0.11)、高知県(0.07)、福岡県(0.07)、長崎県(0.07)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では岩手県(2.45)、青森県(2.36)、山形県(2.28)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では島根県(3.00)、和歌山県(2.55)、山口県(2.49)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福島県(2.14)、宮城県(1.42)、沖縄県(1.29)が多い。
〈8月コメント〉
◆性感染症について 2010年9月10日集計分 性感染症定点数:964
(産婦人科・産科・婦人科:463、泌尿器科:397、皮膚科91、性病科13)
●月別推移
2010年8月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.38(男1.20、女1.18)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.77(男0.29、女0.48)、尖圭コンジローマが0.46(男0.28、女0.18)、淋菌感染症が1.01(男0.83、女0.18)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で減少、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で増加した。女性では、性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で微増した(24〜27ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、男性では尖圭コンジローマでやや少なく、女性では性器クラミジア感染症および尖圭コンジローマでやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(8月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜34歳および40〜44歳の3つの年齢群、尖圭コンジローマは30〜34歳の年齢群、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は20〜29歳の2つの年齢群、尖圭コンジローマは20〜24歳の年齢群、淋菌感染症は20〜24歳の年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、男性では性器ヘルペスウイルス感染症、女性では性器クラミジア感染症および性器ヘルペスウイルス感染症で10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢群分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜39歳、60〜64歳、70歳以上の7つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜29歳の3つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性よりも多く、他の年齢群は同値あるいは男性が多かった。淋菌感染症では15〜19歳の年齢群が同値で、他の年齢群は男性が女性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられたが、男性では2010年に入り横ばいとなっている。性器ヘルペスウイルス感染症は、男性では2007年以降、女性では2006年以降微減傾向がみられたが、男性では2009年以降ほぼ横ばいで、女性では2010年に入り微増傾向がみられる。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられる。淋菌感染症は、男性では2003年以降減少傾向がみられたが2010年に入り微増傾向がみられ、女性では2004年以降微減傾向がみられたが2007年以降は横ばいで推移している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で同値、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で増加であった。女性では性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで同値、淋菌感染症で同値であった。
◆薬剤耐性菌について (9月10集計分)
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基幹定点数(8月):468.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.62(前月:4.47、前年同月:4.20)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。8月は前月よりやや増加し、過去10年間の同月との比較では上位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.73(前月:0.99、前年同月:0.76)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。8月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.13(前月:0.09、前年同月:0.09)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。8月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の62%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の55%を占める一方、70歳以上が全体の22%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の63%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.5:1
PRSP感染症…男:女=1.8:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.7:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は沖縄県(11.3)、福島県(10.1)、山口県(9.8)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(4.4)、新潟県(2.9)、福井県(2.7)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が59件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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