発生動向総覧
〈第45週コメント〉 11月17日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 298例 |
3類感染症: |
コレラ1例(感染地域:タイ)
細菌性赤痢2例
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菌種:S. sonnei (D群)2例_感染地域:神奈川県1例、国内(都道府県不明)1例
* 第39週以降国内で感染したS. sonnei 症例の報告は、東北から九州地方にわたる12都県から累計22例が報告されている。感染源として海産物が推定される症例が多く、かつ菌株の解析により16例でMLVAパターンの一致がみられていることから、食品を介した広域感染の疑いが強まっている。原因究明および今後の発生予防のためにも、引き続き国内でのS. sonnei 症例に対し、喫食歴および食材の遡り調査、菌の分子疫学的解析等、積極的な疫学調査が必要である。
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腸管出血性大腸菌感染症48例(有症者24例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内47例、米国1例
国内の感染地域:兵庫県6例、熊本県6例、福岡県4例、鹿児島県4例、岐阜県3例、愛知県3例、徳島県3例、広島県2例、北海道1例、宮城県1例、群馬県1例、埼玉県1例、東京都1例、石川県1例、静岡県1例、京都府1例、和歌山県1例、鳥取県1例、山口県1例、宮崎県1例、不明4例
年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、3歳(4例)、4歳(2例)、8歳(1例)、9歳(1例)、10代(4例)、20代(10例)、30代(7例)、40代(3例)、50代(8例)、60代(3例)、70代(1例)、80代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT2(20例)、O157 VT1・VT2(14例)、O111 VT1(5例)、O157 VT不明(3例)、O26 VT1(2例)、O91 VT1・VT2(1例)、O121 VT不明(1例)、O146 VT1・VT2(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:3,910例(有症者2,582例、うちHUS 87例.死亡5例)
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腸チフス例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
A型肝炎3例〔感染地域:福井県1例、国内(都道府県不明)2例〕
エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)
つつが虫病16例
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感染地域:福島県7例、秋田県2例、神奈川県2例、宮崎県2例、岩
手県1例、静岡県1例、熊本県1例
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デング熱1例(感染地域:インドネシア)
日本紅斑熱1例(感染地域:和歌山県)
ライム病1例(感染地域:新潟県)
レジオネラ症14例(肺炎型14例)
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感染地域:埼玉県2例、三重県2例、茨城県1例、富山県1例(温泉)、長野県1例(温泉)、岐阜県1例、愛知県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)3例、中国1例
年齢群:40代(1例)、50代(3例)、60代(6例)、70代(1例)、80代(3例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢11例(腸管アメーバ症10例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:東京都3例、千葉県1例、京都府1例、兵庫県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)4例
感染経路:性的接触3例(異性間1例、異性間・同性間不明2例)、経口感染1例、その他・不明7例
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ウイルス性肝炎4例
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B型2例_感染経路:性的接触2例(異性間2例)
C型2例_感染経路:不明2例
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急性脳炎3例
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ヘルペスウイルス2例_年齢群:20代(1例)、50代(1例)
病原体不明1例_年齢群:40代
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔年齢群:40代(2例)〕
後天性免疫不全症候群19例(AIDS 4例、無症候15例) |
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感染地域:国内16例、タイ1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触18例(異性間4例、同性間11例、異性/同性間2例、異性間・同性間不明1例)、性的接触(異性間)/刺青1例
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ジアルジア症1例(感染地域:石川県)
梅毒5例(早期顕症I期3例、無症候2例)
麻しん3例〔麻しん(検査診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例2例)〕
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感染地域:国内
国内の感染地域:埼玉県1例、東京都1例、福岡県1例
年齢群:5〜9歳(1例)、20〜24歳(1例)、40代(1例)
累積報告数:412例〔麻しん(検査診断例143例、臨床診断例116例)、修飾麻しん(検査診断例153例)〕
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(補)他に2010年第44週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:ネパール)、デング熱3例(感染地域:インド3例)、日本紅斑熱2例(感染地域:広島県1例、愛媛県1例)、急性脳炎2例〔単純ヘルペスウイルス1例(50代)、病原体不明1例(0歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例〔50代(1例)、60代(1例)、70代(1例)〕、破傷風1例(年齢群:40代.死亡)、風しん1例(検査診断例.感染地域:大阪府.年齢群:10〜14歳)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では北海道(1.51)、沖縄県(0.69)、岐阜県(0.65)、群馬県(0.55)、宮崎県(0.53)、徳島県(0.51)、山梨県(0.50)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,603例と第42週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(0.86)、広島県(0.86)、石川県(0.76)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では山口県(5.6)、福井県(3.4)、鳥取県(2.6)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では大分県(30.2)、山形県(23.0)、新潟県(19.5)、山口県(17.5)が多い。水痘の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では青森県(2.50)、徳島県(2.25)、滋賀県(2.16)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では千葉県(1.11)、富山県(0.93)、山形県(0.80)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福岡県(1.10)、秋田県(0.86)、長崎県(0.75)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(0.18)、栃木県(0.13)、千葉県(0.11)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では滋賀県(0.31)、熊本県(0.21)、岩手県(0.15)、千葉県(0.15)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では新潟県(2.89)、宮崎県(2.89)、長野県(2.85)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(4.00)、宮城県(3.00)、福島県(2.86)が多い。
〈10月コメント〉
◆性感染症について 2010年11月12日集計分 性感染症定点数:967
(産婦人科・産科・婦人科:464、泌尿器科:401、皮膚科89、性病科13)
●月別推移
2010年10月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.46(男1.16、女1.30)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.70(男0.26、女0.45)、尖圭コンジローマが0.49(男0.28、女0.21)、淋菌感染症が0.96(男0.78、女0.19)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で横ばい、性器ヘルペスウイルス感染症で微減、尖圭コンジローマで微減、淋菌感染症で減少した。女性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で増加した(27〜30ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、男性では性器ヘルペスウイルス感染症でやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(10月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜34歳の2つの年齢群、尖圭コンジローマは25〜34歳、40〜44歳の3つの年齢群、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜29歳の年齢群、尖圭コンジローマは20〜24歳の年齢群、淋菌感染症は20〜29歳の2つの年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、男性では性器ヘルペスウイルス感染症、女性では性器クラミジア感染症、淋菌感染症で10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢群分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜59歳の9つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性よりも多く、他の年齢群は同値あるいは男性が多かった。淋菌感染症ではすべての年齢群で男性が女性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられたが、男性では2010年に入り微増傾向がみられている。性器ヘルペスウイルス感染症は、男性では2007年以降、女性では2006年以降微減傾向がみられたが、男性では2009年以降ほぼ横ばいで、女性では2010年に入り微増傾向がみられる。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられる。淋菌感染症は、男性では2003年以降減少傾向がみられたが2010年に入り増加傾向がみられ、女性では2004年以降微減傾向がみられたが2007年以降は横ばいで推移している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで同値、淋菌感染症で増加であった。女性では性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で増加であった。
◆薬剤耐性菌について (11月12集計分)
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基幹定点数(10月):466.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.03(前月:4.13、前年同月:3.74)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。10月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.83(前月:0.61、前年同月:0.75)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。10月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.09(前月:0.12、前年同月:0.07)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。10月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では下位に属した。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の63%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の59%を占める一方、70歳以上が全体の20%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の63%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.8:1
PRSP感染症…男:女=1.6:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=1.9:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は沖縄県(10.1)、福島県(10.0)、栃木県(8.0)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は福井県(2.7)、奈良県(2.5)、千葉県(2.3)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が41件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は多種多様の原因によるものを包含する症候群名である。全国約3,000カ所の小児科定点からの患者発生報告数が増加するのは冬季であり、その大半はノロウイルスやロタウイルス等のウイルス感染を原因とするものであると推測されている(IASR, Vol 31. No 11.p312-314, 2010参照)。また、患者発生のピークは例年12月中となることが多く(図1)、同時期の感染性胃腸炎の、特に集団発生例の原因の多くはノロウイルスによるものであると考えられてきた(感染症情報センターホームページhttp://idsc.nih.go.jp/iasr/noro.html 参照)。
ノロウイルスの感染経路としては、以前は食中毒としての経口感染がよく知られていたが、患者や無症状病原体保有者との直接もしくは間接的接触による接触感染や、患者の嘔吐物や下痢便を介した飛沫感染等のヒト−ヒト感染があり、その感染力は非常に強い。乳幼児の集団生活施設である保育所や幼稚園、小児の集団生活施設である小学校等においては、これら接触感染や飛沫感染等により、集団発生が繰り返されてきているものと推察される。また、2006年12月の東京都豊島区のホテルにおいて発生した集団感染事例のように、「吐物や下痢便の処理が適切に行われなかったために残存したウイルスを含む小粒子が、掃除などの物理的刺激によって舞い上がり、それを間近とは限らない場所で吸引し、経食道的に嚥下して消化管へ至る感染経路」である「塵埃感染」が発生する場合がある(感染症情報センターホームページ「ノロウイルスの感染経路」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/0702keiro.html 参照)。ノロウイルスの感染予防には、流水・石けんによる手洗いの励行と吐物や下痢便の適切な処理がきわめて重要である(感染症情報センターホームページ「家庭等一般の方々へ」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/taio-a.html、「医療従事者・施設スタッフ用」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/taio-b.html参照)。
感染症発生動向調査によると、全国約3,000カ所の小児科定点からの感染性胃腸炎の2010年第45週の定点当たり報告数は7.70(報告数23,366)と、第42週以降増加が続いている(図1)。都道府県別では、大分県(30.22)、山形県(22.97)、新潟県(19.51)、山口県(17.51)、長崎県(15.27)、福岡県(14.46)、山梨県(11.79)、福井県(10.82)、三重県(10.11)の順となっている。第45週は佐賀県を除く46都道府県で前週の報告数よりも増加がみられており、特に大分県、新潟県、山口県、福岡県、山梨県、長崎県等では大きく増加した(図2)。殆どの学校や幼稚園等の小児の集団生活施設の夏季休暇が終了した直後の第36週から第45週までの定点当たり累積報告数は39.86(累積報告数120,354)であり、年齢群別では0〜1歳26.4%、2〜3歳21.7%、4〜5歳16.7%、6〜7歳10.1%の順であり(図3)、5歳以下で全報告数の60%前後を、7歳以下で70%以上を占めているのは例年と同様である。
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図1. 感染性胃腸炎の年別・週別発生状況(2000〜2010年第45週) |
図2. 感染性胃腸炎の都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第43〜45週) |
図3. 感染性胃腸炎の年齢群別割合(2010年第36〜45週) |
感染性胃腸炎は、その報告数が11月に入ると急増し、12月中(第49〜52週)にピークを迎えるという流行をほぼ殆どの年で繰り返してきた。第44〜45週の定点当たり報告数の増加(2.39)は、2010年では第2〜3週の増加に次ぐ大きな増加となっている(図1)。第45週は国内の大半の地域で報告数の増加がみられ、この傾向は今後も継続し、流行は更に拡大していく可能性が高いものと予想される。感染性胃腸炎の発生動向には今後とも注意深い観察が必要である。
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