発生動向総覧
〈第47週コメント〉 12月1日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 267例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢1例
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菌種:S. sonnei(D群)1例_感染地域:エジプト
* 今週も国内感染例と推定される症例の報告はなかったが、第39〜45週には、食品を介した広域感染の疑いがある計22例が報告されている。今後も国内でのS. sonnei 症例に対しては、生鮮魚介類の生食・冷凍食品の喫食歴や食材の遡り調査等、引き続き注意が必要である。
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腸管出血性大腸菌感染症29例(有症者20例、うちHUS 2例) |
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感染地域:国内28例、ケニア1例
国内の感染地域:愛知県4例、兵庫県3例、山口県3例、福岡県3例、熊本県3例、三重県2例、滋賀県2例、埼玉県1例、福井県1例、長野県1例、和歌山県1例、徳島県1例、鹿児島県1例、不明2例
年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、3歳(3例)、4歳(3例)、5歳(2例)、6歳(2例)、8歳(1例)、10代(3例)、20代(6例)、30代(3例)、50代(3例)、60代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(13例)、O157 VT2(5例)、O157 VT不明(2例)、O91 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、O145 VT不明(1例)、O146 VT2(1例)、O157 VT1(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:3,985例(有症者2,627例、うちHUS 89例.死亡5例)
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腸チフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
A型肝炎2例(感染地域:埼玉県1例、東京都1例)
つつが虫病17例
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感染地域:神奈川県4例、福島県2例、広島県2例、青森県1例、群馬県1例、千葉県1例、新潟県1例、富山県1例、石川県1例、熊本県1例、宮崎県1例、鹿児島県1例
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デング熱5例(感染地域:インド2例、インドネシア1例、カンボジア1例、モルディブ1例)
日本紅斑熱2例(感染地域:千葉県1例、熊本県1例)
日本脳炎1例(年齢:70代_感染地域:高知県)
マラリア2例
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三日熱1例_感染地域:インド
原虫種不明1例_感染地域:フィリピン
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レジオネラ症8例(肺炎型8例)
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感染地域:栃木県1例、埼玉県1例、長野県1例、島根県1例(温泉)、福岡県1例、国内(都道府県不明)2例、韓国1例
年齢群:30代(2例)、50代(1例)、70代(1例)、80代(4例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症9例)
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感染地域:福島県1例、東京都1例、長野県1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)4例、国外(東南アジア.国不明)1例
感染経路:経口感染4例、性的接触2例(異性間1例、同性間1例)、その他・不明3例
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ウイルス性肝炎3例 |
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B型3例_感染経路:性的接触2例(異性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明1例
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急性脳炎3例〔病原体不明3例_年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、50代(1例)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病1例
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遺伝性プリオン病ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例
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年齢群:40代(1例.死亡)、70代(1例.死亡)
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後天性免疫不全症候群9例(AIDS 2例、無症候6例、その他1例)
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感染地域:国内5例、タイ1例、フランス1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触5例(同性間5例)、不明4例
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ジアルジア症1例(感染地域:インド)
梅毒2例(早期顕症II期1例、無症候1例)
破傷風1例(年齢群:50代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子型:不明2例_菌検出検体:尿1例、便1例
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麻しん5例〔麻しん(臨床診断例3例)、修飾麻しん(検査診断例2例)〕
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感染地域:国内4例、フィリピン1例
国内の感染地域:東京都1例、京都府1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:2歳(1例)、10〜14歳(1例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(1例)、60代(1例)
累積報告数:422例〔麻しん(検査診断例143例、臨床診断例121例)、修飾麻しん(検査診断例158例)〕
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(補)他に2010年第46週までに診断されたものの報告遅れとして、レジオネラ症1例〔感染地域:岩手県(温泉)〕、急性脳炎2例〔病原体不明2例(2歳、70代)〕、クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型.死亡)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(50代)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanB_菌検出検体:腹水)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では北海道(2.43)、大分県(1.31)、沖縄県(0.88)、岐阜県(0.83)、宮崎県(0.83)、山梨県(0.78)、佐賀県(0.77)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は2,179例と第42週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約70%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第44週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(1.48)、山形県(1.33)、広島県(0.99)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では石川県(3.69)、山口県(3.41)、北海道(2.86)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では大分県(24.0)、福井県(23.7)、山形県(21.8)、山口県(19.8)、静岡県(19.4)が多い。水痘の定点当たり報告数は第43週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では新潟県(3.18)、大分県(3.14)、青森県(2.95)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(1.00)、富山県(0.76)、岩手県(0.73)、福井県(0.73)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第43週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福岡県(1.63)、三重県(0.96)、鳥取県(0.89)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では広島県(0.14)、沖縄県(0.12)、栃木県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では岩手県(0.15)、愛知県(0.14)、沖縄県(0.12)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では長野県(3.35)、新潟県(3.30)、鹿児島県(2.71)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福島県(3.14)、愛媛県(2.67)、青森県(2.50)が多い。
注目すべき感染症
◆ 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は多種多様の原因によるものを包含する症候群名である。全国約3,000カ所の小児科定点からの患者発生報告数が増加するのは冬季であり、その大半はノロウイルスやロタウイルス等のウイルス感染を原因とするものであると推測されている(IASR, Vol 31. No11. p312-314,2010参照)。また、患者発生のピークは例年12月中となることが多く(図1)、同時期の感染性胃腸炎の、特に集団発生例の原因の多くはノロウイルスによるものであると考えられてきた(感染症情報センターホームページhttp://idsc.nih.go.jp/iasr/noro.html 参照)。
ノロウイルスの感染経路としては、以前は食中毒としての経口感染がよく知られていたが、患者や無症状病原体保有者との直接もしくは間接的接触による接触感染や、患者の嘔吐物や下痢便を介した飛沫感染等のヒト−ヒト感染があり、その感染力は非常に強い。乳幼児の集団生活施設である保育所や幼稚園、小児の集団生活施設である小学校等においては、これら接触感染や飛沫感染等により、集団発生が繰り返されてきているものと推察される。また、2006年12月の東京都豊島区のホテルにおいて発生した集団感染事例のように、「吐物や下痢便の処理が適切に行われなかったために残存したウイルスを含む小粒子が、掃除などの物理的刺激によって舞い上がり、それを間近とは限らない場所で吸引し、経食道的に嚥下して消化管へ至る感染経路」である「塵埃感染」が発生する場合がある(感染症情報センターホームページ「ノロウイルスの感染経路」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/0702keiro.html 参照)。ノロウイルスの感染予防には、流水・石けんによる手洗いの励行と吐物や下痢便の適切な処理がきわめて重要である(感染症情報センターホームページ「家庭等一般の方々へ」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/taio-a.html、「医療従事者・施設スタッフ用」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/taio-b.html 参照)。
感染症発生動向調査によると、全国約3,000カ所の小児科定点からの感染性胃腸炎の2010年第47週の定点当たり報告数は12.72(報告数38,582)となり、第42週以降増加が続いている(図1)都道府県別では、大分県(24.0)、福井県(23.7)、山形県(21.8)、山口県(19.8)、静岡県(19.4)、福岡県(18.8)、新潟県(18.6)の順となっている。第47週は39都道府県で前週の報告数よりも増加がみられており、特に静岡県、三重県、愛知県、広島県、福井県等で大きな増加がみられた(図2)。
第36週から第47週までの定点当たり累積報告数は63.15(累積報告数191,152)であり、年齢群別では0〜1歳24.7%、2〜3歳22.2%、4〜5歳18.1%、6〜7歳10.7%の順であり(図3)、5歳以下で全報告数の60%前後を、7歳以下で70%以上を占めているのは例年と同様である。
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図1. 感染性胃腸炎の年別・週別発生状況(2000〜2010年第47週) |
図2. 感染性胃腸炎の都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第45〜47週) |
図3. 感染性胃腸炎の年齢群別割合(2010年第36〜47週) |
感染性胃腸炎は、その報告数が11月に入ると急増し、12月中(第49〜52週)にピークを迎えるという流行を殆どの年で繰り返してきた。2010年は第39週以降、過去10年間の同時期の報告数としては2006年に次ぐ高い値で推移しており、その高い水準を維持したまま第42週以降継続的に増加してきている(図1)。12月に入り、感染性胃腸炎の報告数はさらに増加するものと予想される。第36週以降に全国の地研から報告されているノロウイルスは、過去2年間と同様に、ほとんどが遺伝子群(Genogroup)IIである〔http://idsc.nih.go.jp/iasr/virus/Pdf/Gast00-09s.pdf(シーズン別)、https://nesid3g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data63j.pdf(月別)参照〕。感染性胃腸炎の発生動向とノロウイルスの検出状況には今後とも注意深い観察が必要である。
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