発生動向総覧
〈第48週コメント〉 12月8日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 318例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢3例
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菌種:S. flexneri (B群)1例_感染地域:エジプト
菌種:S. sonnei (D群)2例_感染地域:タンザニア1例、キューバ/メキシコ1例
* 今週も国内感染例と推定される症例の報告はなかったが、第39〜47週には、食品を介した広域感染の疑いがある計23例が報告されている。今後も国内でのS. sonnei 症例に対しては、生鮮魚介類の生食・冷凍食品の喫食歴や食材の遡り調査等、引き続き注意が必要である。
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腸管出血性大腸菌感染症31例(有症者16例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内30例、インドネシア1例
国内の感染地域:福岡県7例、兵庫県3例、愛知県2例、京都府2例、山口県2例、熊本県2例、山形県1例、埼玉県1例、神奈川県1例、徳島県1例、不明8例
年齢群:0歳(1例)、1歳(2例)、2歳(2例)、3歳(1例)、4歳(2例)、5歳(3例)、8歳(1例)、9歳(1例)、10代(3例)、20代(3例)、30代(3例)、40代(3例)、50代(4例)、60代(1例)、70代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(11例)、O145 VT1(4例)、O157 VT1(3例)、O25 VT2(1例)、O26 VT1(1例)、O91 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、O145 VT2(1例)、O146 VT1・VT2(1例)、O157 VT2(1例)、O157 VT不明(1例)、その他・不明(5例)
累積報告数:4,028例(有症者2,649例、うちHUS 90例.死亡5例)
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パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ)
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4類感染症: |
A型肝炎3例(感染地域:宮城県2例、長野県1例)
オウム病1例(感染地域:宮城県_感染源:不明)
つつが虫病42例
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感染地域:鹿児島県8例、福島県6例、神奈川県6例、千葉県5例、群馬県2例、三重県2例、宮崎県2例、宮城県1例、石川県1例、岐阜県1例、静岡県1例、愛知県1例、滋賀県1例、和歌山県1例、広島県1例、福岡県1例、長崎県1例、大分県1例
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デング熱3例(感染地域:フィリピン2例、パキスタン1例)
日本紅斑熱1例(感染地域:鹿児島県)
マラリア2例
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熱帯熱1例_感染地域:モザンビーク
原虫種不明1例_感染地域:インドネシア
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レジオネラ症4例(肺炎型4例)
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感染地域:北海道1例(温泉)、千葉県1例、石川県1例、イタリア1例
年齢群:60代(3例)、70代(1例)
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レプトスピラ症1例(感染地域:沖縄県_感染源:不明)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症10例)
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感染地域:東京都1例、神奈川県1例、滋賀県1例、広島県1例、鹿児島県1例、沖縄県1例、国内(都道府県不明)2例、中国/ベトナム1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触3例(同性間3例)、経口感染2例、その他・不明5例
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ウイルス性肝炎1例〔C型_感染経路:性的接触(異性間・同性間不明)〕
急性脳炎1例(インフルエンザウイルスAH3亜型_年齢群:5歳)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔年齢群:80代(2例)〕
後天性免疫不全症候群14例(AIDS 2例、無症候11例、その他1例)
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感染地域:国内11例、中国1例、フランス1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触12例(異性間5例、同性間7例)、不明2例
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ジアルジア症1例(感染地域:岡山県)
梅毒6例(早期顕症I期2例、早期顕症II期1例、無症候3例)
破傷風3例〔年齢群:40代(1例)、60代(1例)、70代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子型:VanC 2例_菌検出検体:血液1例、胆汁1例
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風しん2例(検査診断例2例)
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感染地域:東京都1例、大阪府1例
年齢群:30〜34歳(1例)、40代(1例)
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麻しん2例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例1例)〕
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感染地域:国内1例、インド1例
国内の感染地域:神奈川県
年齢群:0歳(1例)、35〜39歳(1例)
累積報告数:428例〔麻しん(検査診断例150例、臨床診断例119例)、修飾麻しん(検査診断例159例)〕
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(補)他に2010年第47週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例〔菌種:S. sonnei (D群)_感染地域:国内(都道府県不明)〕、E型肝炎3例〔感染地域(感染源):北海道1例(豚ホルモン、豚レバー)、山形県1例(生レバー)、国内(都道府県不明)1例(不明)〕、デング熱3例(感染地域:インドネシア1例、マレーシア1例、インド1例)、日本紅斑熱4例(感染地域:広島県2例、大阪府1例、和歌山県1例)、急性脳炎2例〔病原体不明2例(3歳、90代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例〔40代(1例)、70代(1例.死亡)、80代(1例)〕、後天性免疫不全症候群1例〔AIDS.感染地域:日本国内、感染経路:性的接触(異性間).死亡〕、風しん1例(臨床診断例.感染地域:長崎県、年齢群:5〜9歳)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では北海道(3.82)、佐賀県(2.41)、長崎県(2.00)、大分県(1.33)、埼玉県(1.30)、鹿児島県(1.26)、沖縄県(1.14)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は2,830例と第42週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約71%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第44週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(2.28)、石川県(1.52)、山形県(1.43)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山口県(5.1)、石川県(4.9)、山形県(4.8)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では山口県(25.5)、埼玉県(23.4)、群馬県(23.1)、静岡県(23.1)、山形県(22.8)、福井県(22.7)が多い。水痘の定点当たり報告数は第43週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では大分県(3.86)、秋田県(3.49)、宮城県(3.30)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では宮崎県(1.08)、岩手県(0.85)、沖縄県(0.79)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第43週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福岡県(1.99)、宮城県(1.18)、長崎県(1.16)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(0.21)、栃木県(0.19)、千葉県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では岩手県(0.33)、熊本県(0.15)、北海道(0.10)、福島県(0.10)、和歌山県(0.10)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では長野県(3.95)、新潟県(3.34)、鹿児島県(3.33)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では青森県(3.50)、愛媛県(3.00)、埼玉県(2.56)が多い。
注目すべき感染症
◆ 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は多種多様の原因によるものを包含する症候群名である。全国約3,000カ所の小児科定点からの患者発生報告数が増加するのは冬季であり、その大半はノロウイルスやロタウイルス等のウイルス感染を原因とするものであると推測されている(IASR, Vol 31. No 11.p312-314, 2010:http://idsc.nih.go.jp/iasr/31/369/tpc369-j.html 参照)。また、患者発生のピークは例年12月中となることが多く(図1)、同時期の感染性胃腸炎の、特に集団発生例の原因の多くはノロウイルスによるものであると考えられてきた(感染症情報センターホームページhttp://idsc.nih.go.jp/iasr/noro.html 参照)。
ノロウイルスの感染経路としては、以前は食中毒としての経口感染がよく知られていたが、患者や無症状病原体保有者との直接もしくは間接的接触による接触感染や、患者の嘔吐物や下痢便を介した飛沫感染等のヒト−ヒト感染があり、その感染力は非常に強い。乳幼児の集団生活施設である保育所や幼稚園、小児の集団生活施設である小学校等においては、これら接触感染や飛沫感染等により、集団発生が繰り返されてきているものと推察される。また、2006年12月の東京都豊島区のホテルにおいて発生した集団感染事例のように、「吐物や下痢便の処理が適切に行われなかったために残存したウイルスを含む小粒子が、掃除などの物理的刺激によって舞い上がり、それを間近とは限らない場所で吸引し、経食道的に嚥下して消化管へ至る感染経路」である「塵埃感染」が発生する場合がある(感染症情報センターホームページ「ノロウイルスの感染経路」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/0702keiro.html 参照)。ノロウイルスの感染予防には、流水・石けんによる手洗いの励行と吐物や下痢便の適切な処理がきわめて重要である(感染症情報センターホームページ「家庭等一般の方々へ」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/taio-a.html、「医療従事者・施設スタッフ用」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/taio-b.html 参照)。
感染症発生動向調査によると、全国約3,000カ所の小児科定点からの感染性胃腸炎の2010年第48週の定点当たり報告数は15.84(報告数47,994)となり、第42週以降増加が続いている(図1)。都道府県別では、山口県(25.5)、埼玉県(23.4)、群馬県(23.1)、静岡県(23.1)、山形県(22.8)、福井県(22.7)、三重県(20.9)、熊本県(20.8)の順となっている。第48週は41都道府県で前週の報告数よりも増加がみられており、特に埼玉県、富山県、山口県、熊本県、滋賀県、群馬県、高知県の報告数で大きな増加がみられている(図2)。
第36週から第48週までの定点当たり累積報告数は79.04(累積報告数239,613)であり、年齢群別では0〜1歳23.8%、2〜3歳22.2%、4〜5歳18.6%、6〜7歳11.0%の順であり(図3)、5歳以下で全報告数の60%前後を、7歳以下で70%以上を占めているのは例年と同様である。
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図1. 感染性胃腸炎の年別・週別発生状況(2000〜2010年第48週) |
図2. 感染性胃腸炎の都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第46〜48週) |
図3. 感染性胃腸炎の年齢群別割合(2010年第36〜48週) |
感染性胃腸炎は、その報告数が11月に入ると急増し、12月中(第49〜52週)にピークを迎えるという流行を殆どの年で繰り返してきた。2010年は第39週以降、過去10年間の同時期の報告数としては2006年に次ぐ高い値で推移しており、その高い水準を維持したまま第42週以降継続的に増加してきており、特に第45週からは急激な増加が続いている(図1)。12月に入り、感染性胃腸炎の報告数はピークの時期を迎えつつあるものと予想される。第36週以降に全国の地研から報告されているノロウイルスは、過去2年間と同様に、ほとんどが遺伝子群(Genogroup)IIである〔http://idsc.nih.go.jp/iasr/virus/Pdf/Gast00-09s.pdf(シーズン別)、https://nesid3g.mhlw.go.jp/Byogentai/Pdf/data63j.pdf(月別)参照〕。感染性胃腸炎の発生動向とノロウイルスの検出状況に
は今後とも注意深い観察が必要である。
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