発生動向総覧
〈第49週コメント〉 12月15日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 312例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例
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菌種:S. boydii (C群)1例_感染地域:中国
菌種:S. sonnei (D群)3例_感染地域:タイ1例、ベトナム1例、エジプト/トルコ/ギリシャ1例
* 今週も国内感染例の報告はなかった。国内でのS. sonnei 症例に対しては、今後も食品を介した広域感染の疑いを考慮し、生鮮魚介類の生食・冷凍食品の喫食歴や食材の遡り調査等、引き続き注意が必要である。
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腸管出血性大腸菌感染症28例(有症者21例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内27例、エチオピア1例
国内の感染地域:兵庫県3例、三重県2例、岩手県1例、宮城県1例、群馬県1例、千葉県1例、岐阜県1例、山口県1例、福岡県1例、大分県1例、不明14例*
*兵庫県内の専門学校でO157 VT1の集団発生、第48〜49週に12例の報告。
年齢群:2歳(1例)、5歳(1例)、7歳(1例)、8歳(2例)、10代(3例)、20代(11例)、30代(4例)、40代(1例)、50代(2例)、60代(1例)、70代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1(11例)、O157 VT1・VT2(3例)、O157 VT2(3例)、O26 VT1(2例)、O26 VT不明(1例)、O91 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、O128 VT2(1例)、O157 VT不明(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:4,063例(有症者2,675例、うちHUS 90例.死亡5例)
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:スリランカ)
つつが虫病40例
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感染地域:千葉県11例、福島県8例、鹿児島県7例、神奈川県4例、
岐阜県3例、広島県2例、宮崎県2例、秋田県1例、新潟県1例、静岡県1例
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デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、インド1例)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ガーナ)
レジオネラ症11例(肺炎型11例)
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感染地域:福島県1例(温泉)、茨城県1例、富山県1例、山梨県1例、長野県1例、静岡県1例、和歌山県1例、国内(都道府県不明)4例(うち1例温泉)
年齢群:40代(1例)、50代(2例)、60代(3例)、70代(2例)、80代(1例)、90代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症9例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:東京都3例、長野県1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)3例、タイ1例、国内・国外不明1例
感染経路:経口感染3例、性的接触3例(異性間1例、同性間1例、異性間・同性間不明1例)、その他・不明4例
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ウイルス性肝炎2例〔B型2例_感染経路:性的接触1例(異性間)、不明1例〕
急性脳炎3例〔病原体不明3例_年齢群:3歳(1例)、4歳(1例)、9歳(1例)〕
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔年齢群:50代(1例.死亡)、70代(1例)〕
後天性免疫不全症候群20例(AIDS 7例、無症候12例、その他1例) |
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感染地域:国内17例、韓国/台湾/タイ1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触17例(異性間3例、同性間13例、異性/同性間1例)、不明3例
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梅毒5例(早期顕症II期3例、無症候2例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症3例 |
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遺伝子型:不明3例_菌検出検体:褥瘡創面2例、尿1例
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風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例) |
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感染地域:神奈川県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:5〜9歳(1例)、35〜39歳(1例)
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麻しん7例〔麻しん(検査診断例4例、臨床診断例2例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:国内7例
国内の感染地域:東京都2例、愛知県2例、岐阜県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、5〜9歳(1例)、10〜14歳(2例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(1例)
累積報告数:434例〔麻しん(検査診断例153例、臨床診断例119例)、修飾麻しん(検査診断例162例)〕
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(補)他に2010年第48週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例〔菌種:S. sonnei(D群)_感染地域:ネパール〕、E型肝炎3例〔感染地域(感染源):北海道2例(不明2例)、三重県1例(刺身・魚介類)〕、日本紅斑熱3例(感染地域:愛媛県2例、長崎県1例)、マラリア1例(熱帯熱_感染地域:インドネシア)、レジオネラ症1例〔感染地域:国内(都道府県不明)(温泉)〕、アメーバ赤痢1例〔腸管アメーバ症.感染地域:国内(都道府県不明)、感染経路:不明.死亡〕、急性脳炎3例〔コクサッキーウイルス1例(7歳)、ヒトヘルペスウイルス(型不明)1例(80代)、病原体不明1例(30代)〕、クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型.死亡)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例〔20代(1例)、50代(1例)、90代(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では佐賀県(4.87)、北海道(4.48)、長崎県(3.74)、埼玉県(1.93)、大分県(1.91)、沖縄県(1.45)、宮城県(1.36)、福島県(1.33)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は3,448例と第42週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約69%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第44週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(2.52)、山形県(1.93)、石川県(1.59)、福岡県(1.16)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では石川県(5.7)、山形県(5.1)、山口県(4.7)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では富山県(26.2)、愛媛県(25.4)、埼玉県(25.4)、三重県(25.4)、群馬県(24.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は第43週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福井県(4.00)、大分県(4.00)、新潟県(3.69)、佐賀県(3.43)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(1.32)、滋賀県(0.97)、宮崎県(0.92)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第43週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福岡県(2.19)、山形県(1.17)、長崎県(1.11)、宮城県(0.98)が多い。百日咳の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では広島県(0.15)、沖縄県(0.15)、福井県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では熊本県(0.52)、北海道(0.18)、福島県(0.17)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では長野県(4.91)、新潟県(3.69)、鹿児島県(3.51)、島根県(2.57)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福島県(3.00)、埼玉県(2.56)、愛媛県(2.33)が多い。
〈11月コメント〉
◆性感染症について 2010年12月10日集計分 性感染症定点数:967
(産婦人科・産科・婦人科:463、泌尿器科:401、皮膚科90、性病科13)
●月別推移
2010年11月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.20(男1.02、女1.18)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.71(男0.24、女0.47)、尖圭コンジローマが0.44(男0.24、女0.20)、淋菌感染症が0.81(男0.65、女0.16)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、4疾患すべてで減少した。女性では、性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で減少した(25〜28ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、男性では性器ヘルペスウイルス感染症でやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(11月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜34歳の2つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は30〜34歳の年齢群、尖圭コンジローマは30〜34歳の年齢群、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、4疾患すべてで20〜24歳の年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、男性では性器クラミジア感染症、女性では性器クラミジア感染症と淋菌感染症で10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢群分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜29歳、35〜44歳、50〜64歳、70歳以上の9つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜29歳の3つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性より多く、他の年齢群は同値あるいは男性が多かった。淋菌感染症ではすべての年齢群で男性が女性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられたが、男性では2010年に入り微増傾向がみられている。性器ヘルペスウイルス感染症は、男性では2007年以降、女性では2006年以降微減傾向がみられたが、男性では2009年以降ほぼ横ばいで、女性では2010年に入り微増傾向がみられる。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられる。淋菌感染症は、男性では2003年以降減少傾向がみられたが2010年に入り増加傾向がみられ、女性では2004年以降微減傾向がみられたが2007年以降は横ばいで推移している。前月との比較では、男性では4疾患すべてで減少であった。女性では性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で同値、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で減少であった。
◆薬剤耐性菌について (12月10集計分)
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基幹定点数(11月):466.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症 4.06(前月:4.03、前年同月:3.81)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。11月は前月よりやや増加し、過去10年間の同月との比較では上位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.01(前月:0.83、前年同月:0.86)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。11月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.11(前月:0.09、前年同月:0.08)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。11月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の64%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の62%を占める一方、70歳以上が全体の18%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の54%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.8:1
PRSP感染症…男:女=1.4:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=2.7:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は福島県(8.7)、滋賀県(7.6)、栃木県(7.3)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は福井県(4.0)、千葉県(3.6)、大阪府(2.5)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が52件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。インフルエンザは、1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト−ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生をコントロールすることは困難であると思われる。2009年4月に新型インフルエンザ〔パンデミック(H1N1)2009〕の発生が明らかとなり、世界各国で大きな流行をもたらしたことは記憶に新しい。日本でも2009年の5月に最初の国内患者発生報告があり、同年第48週をピークとした大きな流行に発展したが、その後新型インフルエンザの流行は鎮静化し、最近ではAH1pdmの他にAH3亜型やB型インフルエンザウイルスも国内のインフルエンザ発生例から継続的に検出されている。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。2010年第49週のインフルエンザの定点当たり報告数は0.93(報告数4,480)となり、第42週以降8週連続で増加が続いている(図1)。都道府県別では佐賀県(4.87)、北海道(4.48)、長崎県(3.74)、埼玉県(1.93)、大分県(1.91)、沖縄県(1.45)、宮城県(1.36)、福島県(1.33)、鹿児島県(1.26)、岐阜県(1.18)の順となっている。北海道、関東地方、九州地方で報告数の多い地域が多く、また佐賀県、長崎県、北海道、埼玉県、大分県の増加が目立つ(図2)。2010年第36〜49週までの期間中に国内では692検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm 225件(32.5%)、AH3亜型(A香港型)444件(64.2%)、B型23件(3.3%)とこれまでのところAH3亜型が最多を占めている(図3)
既に一部の地域においてインフルエンザの報告数が大きく増加し、北海道、佐賀県、長崎県の保健所地域では注意報レベルや更には警報レベルを超えたところも存在している(感染症情報センターホームページ:https://nesid3g.mhlw.go.jp/Hasseidoko/Levelmap/flu/index.html 参照)。インフルエンザの定点当たり報告数が、全国的な流行開始の指標である1.00を間もなく超えるものと予想される*。インフルエンザの発生動向には、今後更に注意深く観察していく必要がある。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2000〜2010年第49週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第47〜49週) |
図3. インフルエンザウイルス検出報告割合(2010年第36〜49週) |
*第50週の定点当たり報告数(2010年12月22日集計分)は1.41となった。
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