発生動向総覧
〈第50週コメント〉 12月22日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 334例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例
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菌種:S. sonnei (D群)2例_感染地域:インド1例、エジプト/トルコ/ギリシャ1例
* 今週も国内感染例の報告はなし。国内でのS. sonnei 症例に対しては、今後も食品を介した広域感染の疑いを考慮し、生鮮魚介類の生食・冷凍食品の喫食歴や食材の遡り調査等、引き続き注意が必要である。
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腸管出血性大腸菌感染症13例(有症者7例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内13例
国内の感染地域:埼玉県3例、兵庫県2例、佐賀県2例、大分県2例、岐阜県1例、不明3例*
* うち1例は兵庫県内の専門学校内O157 VT1の集団発生
年齢群:1歳(1例)、5歳(1例)、7歳(1例)、10代(1例)、20代(3例)、30代(2例)、40代(1例)、60代(3例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(4例)、O26 VT1(3例)、O157 VT2(2例)、O91 VT1(1例)、O111 VT不明(1例)、O157 VT1(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:4,082例(有症者2,684例、うちHUS 90例.死亡5例)
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4類感染症: |
E型肝炎2例
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感染地域:愛知県1例_感染源:不明
感染地域:中国1例_感染源:不明
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A型肝炎3例(感染地域:福岡県1例、熊本県1例、宮崎県1例)
つつが虫病31例
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感染地域:千葉県9例、宮崎県6例、鹿児島県4例、福島県2例、栃木県2例、熊本県2例、群馬県1例、東京都1例、岐阜県1例、静岡県1例、愛知県1例、長崎県1例
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デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、フィリピン1例)
マラリア2例(三日熱2例_感染地域:インド2例)
レジオネラ症3例(肺炎型3例)
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感染地域:福岡県1例、熊本県1例(温泉)、沖縄県1例
年齢群:50代(1例)、60代(1例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢7例(腸管アメーバ症5例、腸管外アメーバ症2例)
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感染地域:千葉県1例、兵庫県1例、佐賀県1例、国内(都道府県不明)3例、ベトナム1例
感染経路:経口感染2例、性的接触1例(異性間)、経口感染/性的接触(異性間)1例、その他・不明3例
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ウイルス性肝炎2例〔B型2例_感染経路:性的接触1例(異性間)、母子感染1例〕
急性脳炎3例
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ヒトパレコウイルス1例_年齢群:0歳
インフルエンザウイルスA型1例_年齢群:40代
病原体不明1例_年齢群:6歳
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クロイツフェルト・ヤコブ病3例
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孤発性プリオン病古典型2例
遺伝性プリオン病ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病1例
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:40代)
後天性免疫不全症候群14例(AIDS 4例、無症候10例)
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感染地域:国内11例、国内・国外不明3例
感染経路:性的接触10例(異性間1例、同性間9例)、不明4例
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梅毒7例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、晩期顕症1例、無症候2例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症3例
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遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液
遺伝子型:不明2例_菌検出検体:尿1例、膿/組織1例
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風しん3例(検査診断例2例、臨床診断例1例)
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感染地域:東京都2例、兵庫県1例
年齢群:20〜24歳(1例)、25〜29歳(1例)、40代(1例)
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麻しん5例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例3例)〕
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感染地域:国内5例
国内の感染地域:愛知県2例、千葉県1例、神奈川県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(1例)、10〜14歳(1例)、25〜29歳(1例)、40代(2例)
累積報告数:440例〔麻しん(検査診断例154例、臨床診断例121例)、修飾麻しん(検査診断例165例)〕
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(補)他に2010年第49週までに診断されたものの報告遅れとして、デング熱1例(感染地域:インド)、日本紅斑熱2例(感染地域:愛知県1例、広島県1例)、レジオネラ症1例(感染地域:群馬県.死亡)、急性脳炎2例〔ヒトパレコウイルス1例(0歳)、インフルエンザウイルスAH3亜型1例(60代)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症3例〔遺伝子型:VanB 3例(うち1例死亡)_菌検出検体:腹水1例、尿1例、便1例〕などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では佐賀県(8.26)、長崎県(7.36)、北海道(5.87)、大分県(2.55)、宮城県(2.52)、埼玉県(2.44)、山梨県(2.33)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は4,047例と第42週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約68%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第44週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(3.21)、石川県(1.48)、山形県(1.43)、大分県(1.25)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では石川県(5.8)、山形県(5.6)、新潟県(5.2)、山口県(4.9)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では富山県(31.1)、三重県(29.6)、愛媛県(29.5)、埼玉県(27.6)、宮崎県(26.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は第43週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では大分県(5.6)、長崎県(4.3)、福岡県(4.1)、山形県(3.8)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(1.32)、滋賀県(0.81)、千葉県(0.56)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は第43週以降増加が続いており、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福岡県(2.42)、山形県(1.80)、長崎県(1.36)、秋田県(1.34)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福岡県(0.15)、沖縄県(0.12)、栃木県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では岩手県(0.30)、熊本県(0.15)、北海道(0.14)、富山県(0.14)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では長野県(4.51)、新潟県(3.51)、香川県(3.20)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では青森県(2.67)、埼玉県(2.44)、宮城県(2.42)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。インフルエンザは、1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト−ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生をコントロールすることは困難であると思われる。2009年4月に新型インフルエンザ〔パンデミック(H1N1)2009〕の発生が明らかとなり、世界各国で大きな流行をもたらしたことは記憶に新しい。日本でも2009年の5月に最初の国内患者発生報告があり、同年第48週をピークとした大きな流行に発展したが、2010年の春には新型インフルエンザの流行は鎮静化した。その後2010年の11月、12月と再びインフルエンザの患者発生数は増加してきている。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。2010年第50週のインフルエンザの定点当たり報告数は1.41(報告数6,758)となり、第42週以降9週連続で増加が続いている。また2010/11シーズンでは全国的な流行開始の指標である1.00を初めて上回った(図1)。都道府県別では佐賀県(8.26)、長崎県(7.36)、北海道(5.87)、大分県(2.55)、宮城県(2.52)、埼玉県(2.44)、山梨県(2.33)、福井県(2.06)の順となっている。定点当たり報告数が1.00を超えているのは20都道県に及んでおり、特に佐賀県、長崎県の増加が目立つ(図2)。
2010年第36〜50週までの期間中に国内では1,042検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm 376件(36.1%)、AH3亜型(A香港型)624件(59.9%)、B型42件(4.0%)とこれまでのところAH3亜型が最多を占めているが(図3)、第49週、第50週の直近の2週間ではAH1pdmの方が報告数が多くなっている。
日本のインフルエンザの患者報告数は増加が続いているが、北米、ヨーロッパ、モンゴル、中国、韓国等の他の北半球の国々も、冬季を迎えてインフルエンザの報告数が増加してきている(WHOホームページ:http://www.who.int/csr/disease/influenza/2010_12_30_GIP_surveillance/en/index.html)。過去の季節性インフルエンザの流行の例をみると、わが国では、今後冬季休暇が終了し、学校、幼稚園、保育所等の小児の集団生活施設が再開した後の1月中旬以降に流行が本格化していく可能性が高い。インフルエンザの発生動向には、今後更に注意深い観察が必要である。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2000〜2010年第50週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第48〜50週) |
図3. インフルエンザウイルス検出報告割合(2010年第36〜50週) |
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