発生動向総覧
〈第1週コメント〉 1月12日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 226例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢1例
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菌種:S. sonnei (D群)_感染地域:ネパール
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腸管出血性大腸菌感染症10例(有症者9例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内10例
国内の感染地域:広島県2例、福岡県2例、北海道1例、千葉県1例、静岡県1例、山口県1例、不明2例
年齢群:2歳(1例)、6歳(1例)、9歳(2例)、10代(1例)、20代(4例)、30代(1例)
血清型・毒素型:O8 VT1(1例)、O26 VT1(1例)、O103 VT1(1例)、O157 VT2(1例)、O157 VT不明(1例)、その他・不明(5例)
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パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ/ネパール)
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4類感染症: |
A型肝炎2例(感染地域:宮城県1例、茨城県1例)
エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)
コクシジオイデス症1例〔感染地域:米国(アリゾナ州)〕
つつが虫病11例
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感染地域:鹿児島県4例、千葉県2例、茨城県1例、三重県1例、宮崎県1例、カンボジア2例
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デング熱1例(感染地域:インドネシア)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:パプアニューギニア)
レジオネラ症7例(肺炎型7例)
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感染地域:新潟県2例(うち1例温泉)、茨城県1例、埼玉県1例、神奈川県1例(温泉)、長野県1例、岐阜県1例
年齢群:50代(2例)、60代(1例)、70代(2例)、90代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢4例(腸管アメーバ症4例.うち1例死亡)
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感染地域:埼玉県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)1例、タイ1例
感染経路:経口感染2例、その他・不明2例
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ウイルス性肝炎2例
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B型2例_感染経路:性的接触2例(異性間1例、異性間・同性間不明1例)
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急性脳炎3例
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インフルエンザウイルスA型3例_年齢群:20代(1例)、30代(1例)、40代(1例.死亡)
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔年齢群:70代(1例)、80代(1例)〕
後天性免疫不全症候群7例(AIDS 1例、無症候6例)
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感染地域:国内5例、国内・国外不明1例、タイ1例
感染経路:性的接触4例(異性間2例、同性間2例)、不明3例
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ジアルジア症1例(感染地域:フランス)
梅毒4例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、無症候1例)
破傷風1例(年齢群:40代)
風しん1例(検査診断例)
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感染地域:宮城県
年齢群:40代
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麻しん6例〔麻しん(検査診断例3例、臨床診断例3例)〕
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感染地域:国内5例、ベトナム1例
国内の感染地域:愛知県3例*、千葉県1例、東京都1例
年齢群:1歳(1例)、4歳(1例)、5〜9歳(1例)、30〜34歳(1例)、40代(1例)、60代(1例)
* 2010年第51週に引き続き岡崎市における発生
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(補)他に2010年第52週までに診断されたものの報告遅れとして、デング熱1例(感染地域:タイ)、マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ガーナ)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では沖縄県(25.90)、福岡県(11.53)、佐賀県(11.41)、長崎県(9.29)、宮城県(9.15)、鹿児島県(7.41)、宮崎県(7.25)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は3,033例と2週連続で減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約79%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は横ばいであり、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(2.38)、福井県(0.86)、沖縄県(0.85)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では石川県(3.41)、宮崎県(2.83)、福井県(2.77)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では宮崎県(20.1)、鹿児島県(13.8)、富山県(13.3)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では大分県(7.8)、福井県(5.5)、宮崎県(5.5)、福岡県(5.1)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(0.62)、福井県(0.36)、青森県(0.31)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福岡県(2.52)、宮城県(1.33)、鳥取県(1.26)、長崎県(1.18)が多い。百日咳の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(0.12)、広島県(0.08)、福岡県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では滋賀県(0.16)、岩手県(0.10)、岡山県(0.07)、高知県(0.07)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では長野県(5.0)、香川県(4.3)、新潟県(3.6)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(3.00)、青森県(1.83)、宮城県(1.33)、愛媛県(1.33)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。インフルエンザは、1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト−ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生をコントロールすることは困難であると思われる。2009年4月に新型インフルエンザ〔インフルエンザA(H1N1)2009〕の発生が明らかとなり、世界各国で大きな流行をもたらしたことは記憶に新しい。日本でも2009年の5月に最初の国内患者発生報告があり、同年第48週をピークとした大きな流行に発展し、2010年の春には新型インフルエンザの流行は鎮静化した。その後2010年の11月、12月と再びインフルエンザの患者発生数は増加してきている。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。2011年第1週のインフルエンザの定点当たり報告数は5.06(報告数24,841)となり、第42週以降12週連続で増加が続いている(図1)。都道府県別では沖縄県(25.90)、福岡県(11.53)、佐賀県(11.41)、長崎県(9.29)、宮城県(9.15)、鹿児島県(7.41)、宮崎県(7.25)、千葉県(6.60)の順となっている。北海道を除く46都府県で増加がみられており、特に沖縄県、福岡県、宮城県の増加が目立っている(図2)。
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診したインフルエンザ患者数を推計すると、2011年第1週は37万人(95%信頼区間:34万人〜39万人)(暫定値)となり、前週の15万人より大きく増加した(図3)。37万人の内訳は男性約19万人(51.4%)、女性約18万人(48.6%)であり、年齢群別では20〜29歳約11万人(28.9%)、30〜39歳約7万人(18.4%)、40〜49歳約4万人(10.5%)となっている。20〜40代の成人層からの報告数が多くなっているが(図4)、これは学校、幼稚園等の大半の小児の集団生活施設が冬季休暇期間中であることも影響していると思われる。2010年第36週以降これまでの累積の推計受診患者数は87万人(95%信頼区間:84万人〜90万人)(暫定値)であった(図3)。
2010年第36週〜2011年第1週までの期間中に国内では1,526検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm 666件、AH3亜型(A香港型)784件、B型76件とAH3亜型が最も多い。一方、2010年第49週以降ではAH1pdmの報告数の方がAH3亜型よりも多い状況が続いており、2010年第49週〜2011年第1週までの5週間では、総検出報告数718検体中AH1pdm 453件(63.1%)、AH3亜型239件(33.3%)、B型26件(3.6%)であり、AH1pdmの報告数が最多となっている(図5)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2001〜2011年第1週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第51週〜2011年第1週) |
図3. インフルエンザ推計受診者数(暫定値)週別推移(2010年第36週〜2011年第1週) |
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図4. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合(2011年第1週) |
図5. インフルエンザウイルス検出報告割合(2010年第49週〜2011年第1週) |
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北半球の国々では、インフルエンザの患者数の増加が認められており、北米ではAH3亜型が多く検出されている。一方、ヨーロッパ、中近東ではAH1pdmの検出報告数が増加してきており、特に英国ではインフルエンザA(H1N1)2009の流行による重症者数と関連死亡の増加が報告されており、死亡例の多くは15〜64歳の年齢層である。また、フランス、ポルトガル、オランダ、デンマーク、エジプトにおいてもインフルエンザA(H1N1)2009の発生に関連した重症例と死亡例が認められている(WHOホームページ:http://www.who.int/csr/disease/influenza/2011_01_14_GIP_surveillance/en/index.html)。
わが国では、2010年第50週にインフルエンザの定点当たり報告数が全国的な流行の指標である1.0を上回り、その後本格的な流行となりつつあるが、第49週以降はインフルエンザA(H1N1)2009が流行の中心となっている。学校等の冬季休暇期間中であるにもかかわらず、国内の患者発生数は大きく増加し、その中心は20〜40代の成人層であり、今後重症例、死亡例の報告数の増加が懸念される。日本では、1月中旬以降にインフルエンザA(H1N1)2009を中心としたインフルエンザの流行が本格化していくものと予想される。インフルエンザの発生動向には、更に注意深い観察が必要である。
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