発生動向総覧
〈第2週コメント〉 1月19日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 222例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢3例
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菌種:S. flexneri (B群)1例_感染地域:宮城県
菌種:S. sonnei (D群)2例_感染地域:愛知県1例、パプアニューギニア1例
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腸管出血性大腸菌感染症16例(有症者12例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内16例
国内の感染地域:千葉県3例、三重県2例、大阪府2例、北海道1例、宮城県1例、秋田県1例、埼玉県1例、神奈川県1例、京都府1例、兵庫県1例、福岡県1例、不明1例
年齢群:3歳(1例)、6歳(1例)、9歳(1例)、10代(4例)、20代(4例)、30代(2例)、60代(1例)、70代(1例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(6例)、O157 VT2(3例)、O26 VT1(2例)、O91 VT1(1例)、O157 VT1(1例)、O165 VT不明(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:29例(有症者23例、うちHUS 1例.死亡なし)
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4類感染症: |
A型肝炎2例(感染地域:群馬県1例、インドネシア1例)
つつが虫病7例
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感染地域:鹿児島県2例、埼玉県1例、千葉県1例、東京都1例、新潟県1例、高知県1例
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デング熱3例(デング熱2例、デング出血熱1例)
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感染地域:タイ1例、フィリピン1例、インドネシア1例
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ボツリヌス症1例(乳児ボツリヌス症_感染地域:千葉県)
レジオネラ症7例(肺炎型7例)
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感染地域:山形県1例、群馬県1例(温泉)、新潟県1例、富山県1例、石川県1例、福井県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:50代(1例)、60代(3例)、70代(1例)、80代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢6例(腸管アメーバ症6例) |
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感染地域:茨城県1例、愛知県1例、大阪府1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)2例
感染経路:経口感染1例、性的接触1例(異性間)、その他・不明4例
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ウイルス性肝炎3例 |
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B型3例_感染経路:性的接触3例(異性間2例、異性間・同性間不明1例)
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急性脳炎6例 |
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インフルエンザウイルスA型2例_年齢群:2歳(1例)、4歳(1例)
インフルエンザウイルスAH1pdm 2例_年齢群:20代(1例)、30代(1例)
インフルエンザウイルス型不明1例_年齢群:10代
病原体不明1例_年齢群:3歳.死亡
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例 |
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年齢群:20代(1例.死亡)、60代(1例)、70代(1例)
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後天性免疫不全症候群10例(AIDS 2例、無症候8例) |
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感染地域:国内6例、国内・国外不明2例、タイ1例、国内/ブラジル1例
感染経路:性的接触6例(同性間6例)、性的接触(異性間)/刺青1例、不明3例
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梅毒7例(早期顕症II期5例、無症候1例、晩期顕症1例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例 |
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遺伝子型:Van C_菌検出検体:血液
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麻しん1例〔麻しん(臨床診断例)〕
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感染地域:国内
国内の感染地域:神奈川県
年齢群:0歳
累積報告数:7例〔麻しん(検査診断例4例、臨床診断例3例)〕
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(補)他に2011年第1週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例(感染地域:ウズベキスタン)、パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ)、レジオネラ症1例(感染地域:岐阜県.死亡)、急性脳炎6例〔インフルエンザウイルスAH1pdm2例_5歳(1例)、8歳(1例).インフルエンザウイルスAH3亜型1例_60代.単純ヘルペスウイルス1例_50代.病原体不明2例_0歳(2例)〕、クリプトスポリジウム症1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(70代、死亡)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では沖縄県(55.26)、佐賀県(27.87)、福岡県(24.81)、宮崎県(24.08)、長崎県(20.43)、大分県(19.98)、宮城県(17.82)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は2,396例と3週連続で減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約74%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(2.59)、石川県(1.00)、広島県(0.96)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山形県(4.83)、石川県(4.52)、福井県(3.18)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(15.5)、愛媛県(12.5)、宮城県(12.4)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(3.7)、宮崎県(3.7)、鳥取県(3.5)が多い。手足口病の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では沖縄県(1.35)、佐賀県(0.48)、宮崎県(0.33)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福岡県(2.83)、山形県(1.97)、秋田県(1.46)、佐賀県(1.39)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(0.18)、千葉県(0.08)、新潟県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では岩手県(0.28)、滋賀県(0.22)、福島県(0.08)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では長野県(5.3)、香川県(3.9)、和歌山県(2.5)、島根県(2.5)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では福島県(1.86)、沖縄県(1.57)、富山県(1.40)が多い。
〈12月コメント〉
◆性感染症について 2011年1月14日集計分 性感染症定点数:967
(産婦人科・産科・婦人科:465、泌尿器科:400、皮膚科90、性病科12)
●月別推移
2010年12月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.00(男0.95、女1.04)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.73(男0.31、女0.42)、尖圭コンジローマが0.39(男0.22、女0.17)、淋菌感染症が0.83(男0.68、女0.16)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で増加した。女性では、4疾患すべてで減少した。(28〜31ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、男性では尖圭コンジローマでやや少なく、女性では性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症でやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(12月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜34歳の2つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は30〜39歳の2つの年齢群、尖圭コンジローマは25〜29歳の年齢群、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は20〜24歳および30〜34歳の2つの年齢群、尖圭コンジローマは20〜24歳の年齢群、淋菌感染症は20〜24歳の年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、女性では性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、淋菌感染症で10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上の報告はないか、あっても僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、報告数や年齢群分布において明らかな変化は見られておらず、この基準変更の周知徹底が必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜34歳、45〜49歳、70歳以上の6つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性より多く、他の年齢群は同値あるいは男性が多かった。淋菌感染症ではすべての年齢群で男性が女性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較についてはそれらの比率の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられたが、男性では2010年に入り微増傾向がみられている。性器ヘルペスウイルス感染症は、男性では2007年以降、女性では2006年以降微減傾向がみられたが、男性では2009年以降ほぼ横ばいで、女性では2010年に入り微増傾向がみられる。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられる。淋菌感染症は、男性では2003年以降減少傾向がみられたが2010年に入り増加傾向がみられ、女性では2004年以降微減傾向がみられたが2007年以降は横ばいで推移している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で増加であった。女性では4疾患すべてで減少であった。
◆薬剤耐性菌について (1月14集計分)
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基幹定点数(12月):468.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
3.80(前月:4.06、前年同月:3.92)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。12月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
1.19(前月:1.01、前年同月:0.92)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。12月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌感染症
0.10(前月:0.11、前年同月:0.09)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。12月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の66%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の65%を占める一方、70歳以上が全体の17%を占めている(図2:PDF参照)。
薬剤耐性緑膿菌感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の67%を占めている(図3:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.5:1
PRSP感染症…男:女=1.3:1
薬剤耐性緑膿菌感染症…男:女=1.8:1
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は福島県(10.6)、沖縄県(9.6)、滋賀県(7.7)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は福井県(5.0)、栃木県(4.1)、東京都(2.9)が多い。
薬剤耐性緑膿菌感染症
報告総数が45件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。インフルエンザは、1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト−ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生をコントロールすることは困難であると思われる。2009年4月に新型インフルエンザ〔インフルエンザA(H1N1)2009〕の発生が明らかとなり、世界各国で大きな流行をもたらしたことは記憶に新しい。日本でも2009年の5月に最初の国内患者発生報告があり、同年第48週をピークとした大きな流行に発展し、2010年の春には新型インフルエンザの流行は鎮静化した。その後2010年の11月、12月と再びインフルエンザの患者発生数は増加し、2011年の1月に入ってからは急増してきている。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。2011年第2週のインフルエンザの定点当たり報告数は12.09(報告数59,832)となり、第42週以降13週連続で増加が続いている(図1)。都道府県別では沖縄県(55.26)、佐賀県(27.87)、福岡県(24.81)宮崎県(24.08)、長崎県(20.43)、大分県(19.98)、宮城県(17.82)、千葉県(17.56)、鹿児島県(16.97)、群馬県(16.42)の順となっている。全ての都道府県で定点当たり報告数の増加がみられており、26県で10.00を上回った。沖縄、九州地方の各県と、千葉県、群馬県、山形県の増加が目立っている(図2)。
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診したインフルエンザ患者数を推計すると、2011年第2週は78万人(95%信頼区間:71万人〜85万人)(暫定値)となり、第1週の37万人の2倍以上に増加した(図3)。78万人の内訳は男性約41万人(52.6%)、女性約37万人(47.4%)である。年齢群別では20〜29歳約17万人(22.1%)、30〜39歳約12万人(15.6%)、5〜9歳約10万人(13.0%)、0〜4歳8万人(10.4%)、40〜49歳約8万人(10.4%)であり、20代以上が全報告数の58.4%を占めている(図4)。今後学校に通学している年齢群で報告数が大きく増加する可能性があるが、これまでのところは成人層が流行の中心であると考えられる。また、2010年第36週以降これまでの累積の推計受診患者数は165万人(95%信頼区間:158万人〜172万人)(暫定値)であった。
2010年第36週〜2011年第2週までの期間中に国内では2,057検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm 1,094件、AH3亜型(A香港型)876件、B型87件とAH1pdmが最多を占めている。一方、2010年第50週〜2011年第2週までの直近の5週間では、総検出報告数1,031検体中AH1pdm 765件(74.2%)、AH3亜型235件(22.8%)、B型31件(3.0%)であり、AH1pdmが7割以上を占めている(図5)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2001〜2011年第2週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2010年第52週〜2011年第2週) |
図3. インフルエンザ推計受診者数(暫定値)週別推移(2010年第36週〜2011年第2週) |
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図4. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合(2011年第2週) |
図5. インフルエンザウイルス検出報告割合(2010年第50週〜2011年第2週) |
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2011年1月に入り、インフルエンザの患者報告数は九州や関東地方を中心に全国的に急増しており、その流行の中心はインフルエンザA(H1N1)2009によるものである。しかし、2009/10シーズンのインフルエンザA(H1N1)2009の流行時には、2009年の第33週に定点当たり報告数が全国的な流行の指標である1.00を上回ってから、その10倍である10.00を超えるまでに8週間を要したのに比して、今シーズンの場合は2010年第50週に1.00を上回ってから2011年第2週に10.00を超えるまでに要した期間は4週間と短く、前回の流行と比べて短期間で患者数の急増がみられている。また、2009/10シーズンの流行時には患者報告数の6割前後を5〜19歳の年齢群で占めていたが、今シーズンはこれまでのところ20代以上の成人層の報告割合が6割弱を占めるに至っており、同じインフルエンザウイルスを中心とした流行であるにもかかわらず、その流行の形態は変化している。今シーズンのインフルエンザの流行は、全国的に本格的なものとなりつつあるが、インフルエンザの患者発生数の急増が更に続くと、地域によっては医療体制の維持に支障をきたす可能性がある。加えて、成人層での患者発生数の増加は、重症化による入院例の増加や、死亡例の増加を招く恐れがあり、要注意である。今しばらくは、インフルエンザの患者発生数は増加が続く可能性が高く、その発生動向には更に注意しながら観察していく必要がある。
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