発生動向総覧
〈第4週コメント〉 2月2日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 297例 |
3類感染症: |
腸管出血性大腸菌感染症9例(有症者5例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内8例、フランス1例
国内の感染地域:福島県1例、栃木県1例、千葉県1例、神奈川県1例、広島県1例、福岡県1例、宮崎県1例、不明1例
年齢群:6歳(1例)、10代(1例)、20代(2例)、30代(1例)、50代(2例)、60代(1例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(3例)、O26 VT1(2例)、O91 VT1(1例)、O157 VT2(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:57例(有症者40例、うちHUS 3例.死亡なし)
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パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ)
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4類感染症: |
E型肝炎3例
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感染地域(感染源):北海道1例(レバ刺し)、東京都1例(豚のタン)、石川県1例(不明)
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A型肝炎18例
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感染地域:千葉県2例* 、東京都1例、和歌山県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)12例、国外(国不明)1例
* 千葉県内の飲食店における食中毒。2010年第51週以降累計21例が報告されている。
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つつが虫病1例(感染地域:千葉県)
デング熱2例(感染地域:フィリピン1例、インドネシア1例)
ボツリヌス症1例(乳児ボツリヌス症_感染地域:愛媛県_感染源:ハチミツ)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:コモロ)
レジオネラ症8例(肺炎型6例、ポンティアック型2例)
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感染地域:兵庫県3例、埼玉県1例、東京都1例、富山県1例、石川県1例、大阪府1例
年齢群:30代(1例)、50代(3例)、60代(2例)、70代(1例)、80代(1例)
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レプトスピラ症1例(感染地域:東京都_感染源:ネズミ)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢17例(腸管アメーバ症12例、腸管外アメーバ症3例、腸管及び腸管外アメーバ症2例)
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感染地域:東京都4例、静岡県2例、栃木県1例、埼玉県1例、千葉県1例、滋賀県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)4例、台湾1例、インドネシア1例
感染経路:経口感染2例、性的接触8例(異性間5例、異性間・同性間不明3例)、その他・不明7例
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ウイルス性肝炎3例
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B型3例_感染経路:性的接触1例(異性間)、不明2例
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急性脳炎6例
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インフルエンザウイルスA型3例_年齢群:3歳(1例)、40代(1例)、80代(1例)
インフルエンザウイルスAH1pdm 1例_年齢群:7歳
病原体不明2例_年齢群:1歳(1例)、4歳(1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(遺伝性プリオン病家族性)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例
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年齢群:30代(1例)、60代(1例)、70代(1例)
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後天性免疫不全症候群12例(AIDS 3例、無症候8例、その他1例)
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感染地域:国内11例、タイ1例
感染経路:性的接触11例(異性間9例、異性/同性間2例)、不明1例
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梅毒9例(早期顕症I期4例、早期顕症II期2例、無症候3例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanA_菌検出検体:腹水.死亡)
風しん1例(検査診断例)
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感染地域:茨城県
年齢群:5〜9歳
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麻しん10例〔麻しん(検査診断例4例、臨床診断例5例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:国内8例、ベトナム1例、東京都/フィリピン1例
国内の感染地域:広島県5例、愛知県2例、東京都1例
年齢群:1歳(1例)、3歳(2例)、5〜9歳(2例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(1例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(2例)
累積報告数:28例〔麻しん(検査診断例14例、臨床診断例11例)、修飾麻しん(検査診断例3例)〕
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(補)他に2011年第3週までに診断されたものの報告遅れとして、急性脳炎1例〔インフルエンザウイルスAH1pdm(60代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症5例〔50代(1例)、60代(1例.死亡)、70代(2例)、80代(1例.死亡)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanA 1例_菌検出検体:尿、遺伝子型:不明1例_菌検出検体:便)、風しん1例(臨床診断例.感染地域:愛媛県.年齢群:2歳)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(60.88)、長崎県(56.61)、福岡県(47.17)、佐賀県(46.64)、群馬県(45.30)、大分県(44.36)、埼玉県(43.66)、沖縄県(43.57)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症のの報告数は2,267例と減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約72%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では富山県(1.79)、石川県(0.90)、福岡県(0.80)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では石川県(6.9)、福井県(5.1)、鳥取県(5.1)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では大分県(14.0)、宮崎県(13.5)、宮城県(13.4)が多い。水痘の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では大分県(4.19)、鳥取県(3.42)、沖縄県(3.26)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(1.41)、佐賀県(1.04)、岩手県(0.50)、福井県(0.50)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福岡県(2.08)、宮城県(1.53)、北海道(1.41)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(0.18)、福岡県(0.09)、東京都(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では岩手県(0.20)、熊本県(0.17)、鳥取県(0.11)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では長野県(3.76)、香川県(3.03)、新潟県(2.11)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福島県(3.00)、宮城県(1.58)、埼玉県(1.44)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。インフルエンザは、1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト−ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生をコントロールすることは困難であると思われる。2009年4月に新型インフルエンザ〔インフルエンザA(H1N1)2009〕の発生が明らかとなり、世界各国で大きな流行をもたらしたことは記憶に新しい。日本でも2009年の5月に最初の国内患者発生報告があり、同年第48週をピークとした大きな流行に発展し、2010年の春には新型インフルエンザの流行は鎮静化した。その後2010年の11月、12月と再びインフルエンザの患者発生数は増加し、2011年の1月に入ってからは急増してきている。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。2011年第4週のインフルエンザの定点当たり報告数は31.88(報告数157,381)となり、第42週以降15週連続で増加が続いている(図1)。都道府県別では宮崎県(60.88)、長崎県(56.61)、福岡県(47.17)佐賀県(46.64)、群馬県(45.30)、大分県(44.36)、埼玉県(43.66)、沖縄県(43.57)、鹿児島県(43.24)、熊本県(41.33)、千葉県(40.56)の順となっている。定点当たり報告数は42都府県で20.00を、18都県で30.00を、11県で40.00を上回った。37都道府県で前週の報告数を上回ったが、流行が最も大きな九州地方では、宮崎県を含めた5県で前週よりも減少がみられた(図2)
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診したインフルエンザ患者数を推計すると、2011年第4週は約176万人(95%信頼区間:163万人〜189万人)(暫定値)となり、前週の推計値(約149万人)を上回った。176万人の内訳は男性約90万人(51.1%)、女性約86万人(48.9%)であり、年齢群別では5〜9歳約35万人(19.9%)、20代約24万人(13.6%)が多く、次いで0〜4歳、10〜14歳及び30代が約23万人(13.1%)であった(図3)。全年齢群で推計受診患者数の増加がみられており、特に5〜9歳と0〜4歳の増加が大きかった(図4)。2010年第36週以降これまでの累積の推計受診患者数は490万人(95%信頼区間:472万人〜508万人)(暫定値)であった。
2010年第36週〜2011年第4週までの期間中に国内では3,609検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm 2,267件、AH3亜型(A香港型)1,203件、B型139件とAH1pdmが最多を占めている。一方、2010年第52週〜2011年第4週までの直近の5週間では、総検出報告数1,913検体中AH1pdm 1,562件(81.7%)、AH3亜型294件(15.4%)、B型57件(3.0%)であり、AH1pdmが約8割を占めている(図5)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2001〜2011年第4週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第2〜4週) |
図3. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合(2011年第4週) |
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図4. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別・週別推移 |
図5. インフルエンザウイルス検出報告割合(2010年第52週〜2011年第4週) |
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2011年第4週のインフルエンザの患者報告数は増加し、推計の受診患者数は176万人と、前シーズンである2009/10シーズンのインフルエンザA(H1N1)2009の流行のピーク時の推計値(2009年第48週、189万人)に近い値となった。一方、これまで2週連続して全ての都道府県で患者報告数の増加がみられていたが、第4週では最も流行の大きかった九州地方の5県を含めて、国内では10県で減少が認められた。第4週現在流行のピークに差しかかってきている可能性が考慮されるが、まだインフルエンザの本格的な流行は継続しており、加えてB型インフルエンザの患者発生数は例年2月以降に増加する場合が多く、今後ともインフルエンザの発生動向には注意が必要である。
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