発生動向総覧
〈第5週コメント〉 2月9日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 336例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢7例
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菌種:S. flexneri (B群)2例_感染地域:ネパール2例
菌種:S. boydii (C群)1例_感染地域:インドネシア
菌種:S. sonnei (D群)4例_感染地域:フィリピン3例、ペルー1例
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腸管出血性大腸菌感染症12例(有症者4例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内12例
国内の感染地域:栃木県2例、宮崎県2例、北海道1例、青森県1例、宮城県1例、福島県1例、静岡県1例、愛知県1例、京都府1例、不明1例
年齢群:2歳(1例)、3歳(1例)、10代(3例)、20代(2例)、30代(1例)、40代(3例)、60代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(2例)、O26 VT1(2例)、O103 VT1(1例)、O111 VT不明(1例)、O119 VT1(1例)、O157 VT不明(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:76例(有症者47例、うちHUS 3例.死亡なし)
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4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:東京都_感染源:豚レバー)
A型肝炎19例
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感染地域:千葉県6例*、国内(都道府県不明)11例、フィリピン1例、カンボジア1例
* 千葉県内の飲食店における食中毒。2010年第51週以降累計37例が報告されている。
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チクングニア熱1例(感染地域:インドネシア)
デング熱2例(感染地域:フィリピン1例、ベトナム1例)
レジオネラ症6例(肺炎型5例、ポンティアック型1例)
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感染地域:兵庫県2例、神奈川県1例、富山県1例、大阪府1例、福岡県1例(温泉)
年齢群:60代(3例)、70代(2例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢11例(腸管アメーバ症9例、腸管外アメーバ症2例)
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感染地域:宮城県1例、神奈川県1例、大阪府1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)5例、中国1例、中国/台湾/インドネシア1例
感染経路:経口感染3例、性的接触3例(異性間1例、同性間1例、異性間・同性間不明1例)、その他・不明5例
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ウイルス性肝炎4例
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B型3例_感染経路:性的接触1例(異性間)、ピアス穿刺1例、不明1例
C型1例_感染経路:不明
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急性脳炎6例
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インフルエンザウイルスAH1pdm 2例_年齢群:2歳(1例)、10代(1例)
インフルエンザウイルスA型1例_年齢群:10代
ロタウイルス1例_年齢群:1歳
病原体不明2例_年齢群:4歳(1例)、5歳(1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病2例
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孤発性プリオン病古典型1例
遺伝性プリオン病家族性1例
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例
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年齢群:50代(1例)、60代(2例)
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後天性免疫不全症候群9例(AIDS 3例、無症候6例)
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感染地域:国内7例、インドネシア1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触9例(異性間2例、同性間4例、異性/同性間2例、異性間・同性間不明1例)
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ジアルジア症2例(感染地域:インド1例、ペルー1例)
梅毒7例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、無症候4例)
風しん1例(検査診断例)
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感染地域:山形県
年齢群:25〜29歳
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麻しん10例〔麻しん(検査診断例2例、臨床診断例5例)、修飾麻しん(検査診断例3例)〕
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感染地域:国内10例
国内の感染地域:愛知県2例、福岡県2例、群馬県1例、埼玉県1例、静岡県1例、兵庫県1例、徳島県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、2歳(1例)、4歳(1例)、10〜14歳(1例)、20〜24歳(3例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(1例)
累積報告数:42例〔麻しん(検査診断例17例、臨床診断例19例)、修飾麻しん(検査診断例6例)〕
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(補)他に2011年第4週までに診断されたものの報告遅れとして、腸チフス1例(感染地域:インド)、E型肝炎2例〔感染地域(感染源):北海道1例(不明)、愛知県1例(不明)〕、ボツリヌス症1例(乳児ボツリヌス症_感染地域:福岡県_感染源:不明)、マラリア1例(熱帯熱_感染地域:エチオピア)、急性脳炎5例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 2例_2歳(1例)、3歳(1例).インフルエンザウイルスA型1例_8歳.病原体不明2例_1歳(1例)、7歳(1例)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔60代(1例.死亡)、80代(1例)〕などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は減少した。都道府県別では長崎県(44.13)、宮崎県(42.28)、群馬県(41.22)、福岡県(40.90)、富山県(37.88)、愛知県(37.79)、神奈川県(37.53)、埼玉県(36.81)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,944例と2週連続で減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約71%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は横ばいであったが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(2.03)、鹿児島県(0.84)、沖縄県(0.74)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では石川県(8.6)、山形県(5.2)、新潟県(4.7)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では宮崎県(15.1)、大分県(14.6)、長崎県(12.2)、宮城県(12.2)が多い。水痘の定点当たり報告数は第2週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(4.47)、大分県(3.56)、宮崎県(3.26)が多い。手足口病の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(2.21)、福井県(0.73)、岩手県(0.55)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福岡県(1.51)、宮崎県(1.29)、北海道(1.15)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(0.18)、鳥取県(0.11)、福岡県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では群馬県(0.17)、沖縄県(0.12)、熊本県(0.06)、宮崎県(0.06)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では長野県(4.85)、香川県(2.63)、宮崎県(2.17)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎のの定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福島県(4.00)、青森県(2.83)、埼玉県(2.78)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。インフルエンザは、1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。2009年4月に新型インフルエンザ〔インフルエンザA(H1N1)2009〕の発生が明らかとなり、世界各国で大きな流行をもたらしたことは記憶に新しい。日本でも2009年の5月に最初の国内患者発生報告があり、同年第48週をピークとした大きな流行に発展し、2010年の春には新型インフルエンザの流行は鎮静化した。その後2010年の11月、12月と再びインフルエンザの患者発生数は増加し、2011年の1月に入ってからは急増した。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。インフルエンザの報告数は2010年第42週以降増加が続いていたが、2011年第5週のインフルエンザの定点当たり報告数は28.93(報告数143,035)と前週の報告数(31.88)を下回った(図1)。都道府県別では長崎県(44.13)、宮崎県(42.28)、群馬県(41.22)、福岡県(40.90)、富山県(37.88)、愛知県(37.79)、神奈川県(37.53)、埼玉県(36.81)、新潟県(35.46)、大分県(33.31)の順となり、これまで流行の大きかった九州地方や関東地方をはじめ33都府県で減少がみられている(図2)。
定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した
患者数を推計すると約155万人(95%信頼区間:142万人〜168万人)となり、年齢群別では5〜9歳約34万人、0〜4歳約22万人、10〜14歳約21万人、30代約20万人、20代約18万人の順であった。50代以下の各年齢層で減少がみられ、特に20代が前週の24万人から大きく減少した(図3)。2010年第36週以降これまでの累積の推計受診患者数は約645万人(95%信頼区間:623万人〜667万人)(暫定値)であり、その内訳は男性約332万人(51.6%)、女性約311万人(48.4)、年齢群別では5〜9歳約118万人(18.6%)、20代約100万人(15.8%)、30代約87万人(13.7%)、10〜14歳約78万人(12.3%)、0〜4歳約77万人(12.2%)、40代約60万人(9.5%)の順となっている(図4)。
2010年第36週〜2011年第5週までの期間中に国内では4,375検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm 2,828件、AH3亜型(A香港型)1,358件、B型189件とAH1pdmが最多を占めている。一方、2011年第1〜5週までの直近の5週間では、総検出報告数2,548検体中AH1pdm 2,043件(80.2%)、AH3亜型413件(16.2%)、B型92件(3.6%)であり、AH1pdmが約8割を占めている(図5)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2001〜2011年第5週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第3〜5週) |
図3. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別・週別推移(2010年第46週〜2011年第5週) |
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図4. インフルエンザ累積推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合 |
図5. インフルエンザウイルス検出報告割合(2011年第1〜5週) |
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日本国内のインフルエンザの報告数は2010年第42週以降継続的に増加し、2011年に入って本格的な流行となっていたが、2011年第5週は50代以下の幅広い年齢層で減少がみられており、流行のピークが過ぎ去りつつあるものと推察される。しかしながら、まだインフルエンザの本格的な流行は継続しており、加えてB型インフルエンザの患者発生数は例年2月以降に増加する場合が多く、今後ともインフルエンザの発生動向には注意が必要である。
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