発生動向総覧
〈第7週コメント〉 2月23日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 314例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢3例
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菌種:S. flexneri (B群)1例_感染地域:神奈川県
菌種:S.sonnei (D群)2例_感染地域:鹿児島県1例、インドネシア1例
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腸管出血性大腸菌感染症10例(有症者3例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内10例
国内の感染地域:佐賀県2例、青森県1例、千葉県1例、愛知県1例、兵庫県1例、不明4例
年齢群:10代(2例)、20代(5例)、30代(1例)、40代(1例)、50代(1例)
血清型・毒素型:O26 VT1(3例)、O91 VT1(2例)、O145 VT2(1例)、O157 VT2(1例)、その他・不明(3例)
累積報告数:96例(有症者55例、うちHUS 4例.死亡なし)
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腸チフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
A型肝炎6例
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感染地域:埼玉県2例、千葉県1例*、国内(都道府県不明)1例、インドネシア1例、ミャンマー/タイ1例
* 千葉県内の飲食店における食中毒症例。2010年第51週以降、関連症例が報告されている。
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つつが虫病2例(感染地域:茨城県1例、千葉県1例) デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、フィリピン1例)
レジオネラ症7例(肺炎型7例)
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感染地域:茨城県2例、千葉県1例、愛知県1例、島根県1例、沖縄県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:50代(1例)、60代(2例)、80代(4例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症3例)
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感染地域:大阪府2例、北海道1例、東京都1例、新潟県1例、広島県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)3例
感染経路:性的接触3例(異性間3例)、経口感染2例、その他・不明5例
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ウイルス性肝炎1例(C型_感染経路:不明)
急性脳炎1例(単純ヘルペスウイルス_年齢群:60代)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症4例
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年齢群:30代(1例)、70代(2例.うち1例死亡)、90代(1例)
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後天性免疫不全症候群15例(AIDS 5例、無症候8例、その他2例)
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感染地域:国内15例
感染経路:性的接触13例(異性間2例、同性間10例、異性間・同性間不明1例)、不明2例
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ジアルジア症1例(感染地域:マダガスカル)
梅毒10例(早期顕症I期2例、早期顕症II期3例、無症候5例)
風しん1例(臨床診断例)
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感染地域:国内(都道府県不明)
年齢群:25〜29歳
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麻しん5例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例2例)、修飾麻しん(検査診断例2例)〕
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感染地域:国内5例
国内の感染地域:埼玉県2例、神奈川県1例、岐阜県1例、大阪府1例
年齢群:1歳(2例)、10〜14歳(1例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(1例)
累積報告数:59例〔麻しん(検査診断例27例、臨床診断例18例)、修飾麻しん(検査診断例14例)〕
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(補)他に2011年第6週までに診断されたものの報告遅れとして、パラチフス1例(感染地域:ミャンマー)、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、オウム病1例(感染地域:鳥取県_感染源:セキセイインコ)、チクングニア熱1例(感染地域:インドネシア)、デング熱1例(感染地域:インドネシア)、急性脳炎7例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 4例_2歳(2例)、4歳(1例)、30代(1例).インフルエンザウイルスA型1例_7歳.インフルエンザウイルス型不明1例_1歳.R Sウイルス/ インフルエンザウイルス型不明1例_5歳〕、クリプトスポリジウム症1例(感染地域:インド)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔50代(1例)、70代(1例.死亡)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:血液)などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では愛知県(32.28)、富山県(29.85)、山口県(27.96)、福岡県(25.19)、三重県(22.39)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,501例と減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約71%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(2.21)、福井県(1.36)、沖縄県(0.94)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では石川県(7.6)、福井県(5.1)、山形県(4.7)、鳥取県(4.7)、宮崎県(4.7)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では大分県(19.1)、宮崎県(17.9)、福井県(15.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山形県(4.90)、沖縄県(4.38)、宮崎県(4.28)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(1.56)、岩手県(0.43)、高知県(0.43)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福岡県(1.65)、宮崎県(1.56)、石川県(1.21)が多い。百日咳の定点当たり報告数は第4週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(0.24)、広島県(0.14)、佐賀県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では熊本県(0.35)、岩手県(0.15)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では長野県(5.3)、香川県(3.3)、宮崎県(3.1)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮城県(2.08)、青森県(1.50)、愛媛県(1.50)が多い。
注目すべき感染症
◆ 伝染性紅斑
伝染性紅斑(erythema infectiosum)は4〜5歳の幼児を中心に幼児、学童に好発する感染症であり、単鎖DNAウイルスであるヒトパルボウイルスB19(Human parvovirus B19 virus)が本症の病原体である。典型例では両頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」と呼ばれることもあるが、本症の周辺には多くの非定型例や不顕性感染例があること、また多彩な臨床像があることなども明らかになってきている。
感染後約1週間で軽い感冒様症状を示す例がみられることがあるが、この時期にウイルス血症を起こしており、ウイルスの体外への排泄量は最も多くなる。本疾患の特徴的な症状は感染後10〜20日で出現する両頬の境界鮮明な紅斑であり、続いて腕、脚部にも両側性にレース様の紅斑がみられる。体幹部(胸腹背部)にまでこの発疹が出現する例もある。発熱はあっても軽度である。本疾患の大きな特徴として、発疹出現時期を迎えて伝染性紅斑と臨床的に診断された時点は抗体産生後であり、ウイルス血症はほぼ終息し、既に他者への感染性は殆どないといわれている。
成人では、両頬の蝶形紅斑は少ないが、合併症である関節痛・関節炎の頻度は小児では約10%以下といわれているが、成人男性では約30%、成人女性では約60%と高率である。また、妊婦が感染すると、胎児水腫や流産の可能性がある。妊娠前半期の方がより危険性が高いが、後半期にも胎児感染は生じるとの報告もある。その他、溶血性貧血患者が感染した場合の貧血発作(aplastic crisis)を引き起こすことがあり、他にも血小板減少症、顆粒球減少症、血球貪食症候群等の稀ではあるが重篤な合併症が知られている。
感染経路は通常は飛沫感染もしくは接触感染であるが、まれにウイルス血症の時期に採取された血液製剤からの感染の報告がある。本症は紅斑出現の時期には殆ど感染力がないが、反対にウイルス排泄時期には特徴的な症状を呈さないために診断に至らず、実際的な二次感染予防策は存在しない。
感染症発生動向調査によると、伝染性紅斑は例年夏季に報告数が増加し、第26週前後がそのピークとなることが多い。1987年、1992年、1997年、そして2000年以降では2001年、2007年とほぼ4〜6年ごとの周期で患者発生数の増加がみられている(図1)。2008〜2009年の報告数は減少し、夏季の流行のピークも定かではない状態が続いていたが、その後2010年の報告数は前年よりも増加し、特に秋季以降は例年よりも高い水準となり、現在まで継続している。2011年第7週の伝染性紅斑の定点当たり報告数は0.51(報告数1,596)となり、第4週以降減少が続いていた報告数が増加に転じた(図2)。都道府県別では福岡県(1.65)、宮崎県(1.56)、石川県(1.21)、宮城県(1.12)、鳥取県(0.95)の順であり、31都府県で前週の報告数よりも増加がみられた(図3)。2011年第1〜7週までの定点当たり累積報告数は4.07(累積報告数12,842)であり、2000年以降では2007年に次いで多くなっている。年齢群別割合をみると、4〜5歳が32.9%と最多であり、次いで6〜7歳(25.9%)、2〜3歳(17.0%)、8〜9歳(12.2%)の順となっており、7歳までで全報告数の75%以上を、9歳以下で90%以上を占めているのは例年と同様である(図4、図5)
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図1. 伝染性紅斑の累積報告数年別推移(2000年〜2010年) |
図2. 伝染性紅斑の年別・週別発生状況(2001〜2011年第7週) |
図3. 伝染性紅斑の都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第5〜7週) |
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図4. 伝染性紅斑累積報告数の年齢群別割合(2011年第1〜7週) |
図5. 伝染性紅斑の年別・年齢群別割合(2000〜2011年第7週) |
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伝染性紅斑の報告数は2010年秋季より例年よりも増加した状態となり、2011年第7週現在も同様の状況が継続している。2007年の流行時は、前年の2006年秋季頃より報告数が例年よりも多い状態となり、同様の状況が2007年の夏季まで継続した。おそらく、伝染性紅斑の報告数は今後も例年よりも増加した状態が継続し、2011年の夏季の流行のピークを迎えることになると推測される。伝染性紅斑は、多彩な臨床像を呈することからも、実際に診断されているのは感染者の中の一部である可能性があり、加えて紅斑や発疹が出現して臨床的に診断が容易になる前に周囲への感染性があることより、その感染対策は極めて困難であると言わざるを得ない。保育園、幼稚園、小学校等の小児の集団生活施設で流行が発生している際には、その流行が収束するまでの間、妊婦等が施設内に立ち入ることを制限することを考慮すべきである。今後とも伝染性紅斑の発生動向には注意が必要である。
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