発生動向総覧
〈第8週コメント〉 3月2日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 352例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢12例
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菌種:S. flexneri (B群)1例_感染地域:神奈川県
菌種:S. sonnei (D群)11例_感染地域:国内(都道府県不明)
8例*、インド2例、中国/ベトナム1例
* 福岡市の幼稚園に関連した集団発生を含む
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腸管出血性大腸菌感染症23例(有症者13例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内23例
国内の感染地域:埼玉県4例、佐賀県4例、青森県2例、富山県2例、長野県2例、京都府2例、茨城県1例、兵庫県1例、島根県1例、岡山県1例、長崎県1例、不明2例
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、2歳(1例)、4歳(1例)、5歳(1例)、6歳(1例)、7歳(1例)、8歳(1例)、10代(2例)、20代(2例)、30代(5例)、50代(3例)、60代(3例)
血清型・毒素型:O157 VT2(11例)、O157 VT1・VT2(5例)、O26 VT1(2例)、O26 VT不明(1例)、O103 VT1(1例)、O136 VT1(1例)、O157 VT不明(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:120例(有症者69例、うちHUS 4例.死亡なし)
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4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:愛媛県_感染源:猪肉)
A型肝炎1例(感染地域:インド)
エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)
つつが虫病1例(感染地域:東京都)
マラリア2例
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三日熱1例_感染地域:ウガンダ
熱帯熱1例_感染地域:ナイジェリア
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レジオネラ症2例(肺炎型2例)
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感染地域:京都府1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:60代(1例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢8例(腸管アメーバ症4例、腸管外アメーバ症4例)
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感染地域:東京都4例、千葉県1例、神奈川県1例、愛知県1例、国内(都道府県不明)1例
感染経路:性的接触3例(異性間2例、異性間・同性間不明1例)、経口感染2例、その他・不明3例
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ウイルス性肝炎2例
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B型1例_感染経路:性的接触(異性間)
サイトメガロウイルス1例_感染経路:性的接触(異性間)
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急性脳炎2例
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インフルエンザウイルスAH3亜型1例_年齢群:30代
インフルエンザウイルスB型1例_年齢群:8歳
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症4例
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年齢群:50代(1例.死亡)、70代(1例)、80代(1例.死亡)、90代(1例.死亡)
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後天性免疫不全症候群20例(AIDS 3例、無症候17例)
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感染地域:国内17例、タイ1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触17例(異性間1例、同性間14例、異性間・同性間不明2例)、静注薬物使用1例、不明2例
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ジアルジア症1例(感染地域:インド/ネパール)
梅毒7例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、無症候3例)
破傷風1例(年齢群:50代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症3例
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遺伝子型:VanA 1例_菌検出検体:血液
遺伝子型:VanA/VanB 1例_菌検出検体:血液.死亡
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:痰
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風しん3例(検査診断例3例)
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感染地域:千葉県2例、大阪府1例
年齢群:25〜29歳(1例)、30〜34歳(2例)
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麻しん4例〔麻しん(検査診断例2例、臨床診断例2例)〕
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感染地域:国内3例、インドネシア1例
国内の感染地域:千葉県1例、山口県1例、長崎県1例
年齢群:25〜29歳(1例)、30〜34歳(2例)、40代(1例)
累積報告数:65例〔麻しん(検査診断例32例、臨床診断例19例)、
修飾麻しん(検査診断例14例)〕
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(補)他に2011年第7週までに診断されたものの報告遅れとして、パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ)、E型肝炎2例〔感染地域(感染源):東京都1例(複数の動物種のレバー)、長崎県1例(猪の埋葬)〕、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、デング熱1例(感染地域:インドネシア)、日本脳炎1例(年齢群:70代_感染地域:インド)、レジオネラ症1例〔感染地域:静岡県(温泉)〕、急性脳炎9例〔インフルエンザウイルスAH1pdm 5例_1歳(1例)、5歳(2例)、10代(2例).インフルエンザウイルスA型2例_0歳(1例)、60代(1例).ヒトヘルペスウイルス6型1例_0歳.病原体不明1例_4歳〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症5例〔60代2例(ともに死亡)、70代1例、80代2例(ともに死亡)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanB 1例_菌検出検体:尿、遺伝子型:不明1例_菌検出検体:腹水)、風しん2例〔臨床診断例2例.感染地域:東京都1例、島根県1例.年齢群:0〜4歳(1例)、5〜9歳(1例)〕などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第5週以降減少が続いている。都道府県別では愛知県(36.19)、山口県(36.00)、大分県(30.91)、富山県(29.21)、三重県(27.68)、福岡県(26.37)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,219例と第4週以降減少が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(1.86)、福井県(1.36)、秋田県(1.03)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では石川県(11.2)、宮崎県(6.3)、福井県(5.4)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では大分県(21.6)、宮崎県(19.6)、福井県(16.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(4.74)、宮崎県(4.72)、福岡県(3.26)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(2.97)、福井県(0.77)、宮崎県(0.58)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では宮崎県(2.81)、山形県(1.76)、佐賀県(1.70)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では広島県(0.10)、奈良県(0.09)、徳島県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では滋賀県(0.66)、熊本県(0.19)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では長野県(4.76)、香川県(3.17)、鹿児島県(2.85)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では福島県(2.57)、沖縄県(2.00)、埼玉県(1.67)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。インフルエンザは、1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。2009年4月に新型インフルエンザ〔インフルエンザA(H1N1)2009〕の発生が明らかとなり、世界各国で大きな流行をもたらしたことは記憶に新しい。日本でも2009年の5月に最初の国内患者発生報告があり、同年第48週をピークとした大きな流行に発展し、2010年の春には新型インフルエンザの流行は鎮静化した。今シーズンのインフルエンザの患者報告数は2010年の12月末頃より急増し、2011年第4週を流行のピークとして以降は減少傾向にあり、その流行の中心はインフルエンザA(H1N1)2009であると推測されている。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。インフルエンザの報告数は2011年第5週以降減少が続いており、第8週のインフルエンザの定点当たり報告数は15.75(報告数77,751)と前週(定点当たり報告数16.35)を下回ったが、それ以前の3週間と比較してゆるやかな減少にとどまった(図1)。都道府県別では愛知県(36.19)、山口県(36.00)、大分県(30.91)、富山県(29.21)、三重県(27.68)、福岡県(26.37)、岐阜県(25.45)の順となっている。36道府県で報告数の減少がみられている一方で、大分県、山口県、岐阜県、三重県、愛知県では大きな増加がみられた(図2)。
定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると約71万人(95%信頼区間:63万人〜79万人) (暫定値)となり、年齢群別では5〜9歳約23万人(32.4%)、10〜14歳約13万人(18.3%)、0〜4歳約10万人(14.1%)、30代約7万人(9.9%)、20代約5万人(7.0%)の順であった。前週の推計受診患者数(約78万人)(暫定値)よりも減少したものの、5〜9歳、10〜14歳の年齢群では増加がみられた(図3)。2010年第36週以降これまでの累積の推計受診患者数は約903万人(95%信頼区間:876万人〜930万人)(暫定値)であり、その内訳は男性51.3%、女性48.7%、年齢群別では5〜9歳約189万人(21.2%)、20代約123万人(13.8%)、10〜14歳約118万人(13.3%)、30代約117万人(13.1%)、0〜4歳約114万人(12.8%)、40代約78万人(8.8%)の順となっている。
2010年第36週〜2011年第8週までの期間中に国内では6,734検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm 4,434件、AH3亜型(A香港型)1,914件、B型386件とAH1pdmが最多を占めている。一方、2011年第4〜8週までの直近の5週間では、総検出報告数1,959検体中AH1pdm 1,242件(63.4%)、AH3亜型516件(26.3%)、B型201件(10.3%)であり、B型の割合が増加してきている(図4)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2001〜2011年第8週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第6〜8週) |
図3. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別・週別推移(2010年第46週〜2011年第8週) |
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図4. インフルエンザウイルス検出報告割合(2011年第4〜8週) |
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インフルエンザの報告数は、2011年第4週をピークとしてその後急激な減少が続いていたが、第7週から8週にかけては比較的ゆるやかな減少にとどまった。前週よりも報告数の増加がみられた11都府県のうち、比較的増加が大きかった大分県、山口県、岐阜県、三重県、愛知県では、それぞれの県の感染症情報センターからB型インフルエンザの増加が報告されている*。B型インフルエンザの流行は、今後更に増加・拡大していく可能性があり、インフルエンザの発生動向にはいましばらく注意深い観察が必要である。
*各県インフルエンザ情報掲載ホームページURL
大分県感染症情報:http://www.coara.or.jp/~eikan/bisei/graphf.htm
山口県感染症情報センター:http://kanpoken.pref.yamaguchi.lg.jp/jyoho/report2011/2011w_1.php
岐阜県感染症情報センター:http://www.pref.gifu.lg.jp/kenko-fukushi/yaku-eisei-kansen/kansensho/shingata-infuru/
三重県感染症情報センター:http://www.kenkou.pref.mie.jp/topic/influ/influtopic.htm
愛知県感染症情報センター:http://www.pref.aichi.jp/eiseiken/2f/201108.pdf
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