発生動向総覧
〈第11週コメント〉 3月23日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 277例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢6例
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菌種:S. flexneri(B群)2例_感染地域:国内(都道府県不明)1例、インド1例
菌種:S. sonnei(D群)4例_感染地域:広島県2例、国内(都道府県不明)1例、ベトナム/カンボジア1例
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腸管出血性大腸菌感染症9例(有症者4例、うちHUSなし) |
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感染地域:国内9例
国内の感染地域:東京都2例、宮崎県2例、茨城県1例、静岡県1例、奈良県1例、広島県1例、福岡県1例
年齢群:7歳(1例)、10代(1例)、20代(1例)、40代(4例)、60代(1例)、90代(1例)
血清型・毒素型:O91 VT1(2例)、O157 VT1・VT2(1例)、O157 VT2(1例)、O157 VT不明(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:159例(有症者87例、うちHUS 4例. 死亡なし)
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4類感染症: |
A型肝炎1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
デング熱3例(感染地域:タイ1例、インドネシア1例、タンザニア1例) マラリア1例(三日熱_感染地域:インド)
レジオネラ症3例(肺炎型2例、無症状病原体保有者1例)
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感染地域:宮城県1例(津波に関連)、茨城県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:60代(1例)、80代(2例)
*震災以降、被災地での感染例が計2例(宮城県2例.60代1例、70代1例)が報告されている。
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レプトスピラ症1例〔感染地域:国内(都道府県不明)_感染源:不明〕
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症2例)
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感染地域:東京都3例、北海道1例、栃木県1例、国内(都道府県不明)4例
感染経路:経口感染4例、性的接触1例(異性間・同性間不明)、その他・不明4例
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急性脳炎1例(ロタウイルス_年齢群:1歳)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例
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年齢群:50代(1例)、60代(1例)、70代(1例.死亡)
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後天性免疫不全症候群9例(無症候8例、その他1例)
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感染地域:国内8例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触8例(異性間2例、同性間6例)、不明1例
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ジアルジア症1例(感染地域:インド)
梅毒7例(早期顕症I期1例、早期顕症II期1例、晩期顕症1例、無症候4例)
破傷風1例
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感染地域:宮崎県
年齢群:60代
*震災以降、被災地での感染例が計6例(宮城県4例、岩手県2例)報告されている。年齢中央値60.5歳(56〜82歳)、受傷から発病までの平均日数10.3日である。
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風しん6例(検査診断例4例、臨床診断例2例)
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感染地域:福岡県3例、愛知県2例、岐阜県1例
年齢群:10〜14歳(1例)、15〜19歳(1例)、20〜24歳(2例)、35〜39歳(1例)、40代(1例)
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麻しん6例〔麻しん(検査診断例4例、臨床診断例2例)〕
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感染地域:国内6例
国内の感染地域:東京都2例、栃木県1例、神奈川県1例、国内(都道府県不明)2例
年齢群:0歳(3例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(2例)
累積報告数:77例〔麻しん(検査診断例42例、臨床診断例20例)、修飾麻しん(検査診断例15例)〕
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(補)他にデング熱1例の報告があったが削除予定。また、2011年第10週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例〔菌種:S. sonnei(D群)_感染地域:タンザニア〕、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):岐阜県(猪肉)〕、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、デング熱1例(感染地域:インドネシア)、急性脳炎2例〔インフルエンザウイルスAH3亜型1例(8歳)、病原体不明1例(1歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔30代(1例.死亡)、40代(1例.死亡)〕、風しん4例〔検査診断例3例、臨床診断例1例.感染地域:大阪府2例、国内(都道府県不明)2例.年齢群:10〜14歳(1例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(1例)〕などの報告があった。 |
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山口県(48.87)、大分県(41.55)、愛知県(31.55)、岐阜県(30.59)、福岡県(29.81)、三重県(29.38)、広島県(27.71)、石川県(26.50)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は794例と第4週以降減少が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では富山県(2.07)、福井県(1.32)、兵庫県(1.05)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では石川県(9.1)、山形県(5.6)、宮崎県(5.4)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(21.6)、福井県(18.7)、大分県(18.7)、熊本県(17.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(5.9)、宮崎県(4.1)、山形県(3.3)、大分県(3.3)が多い。手足口病の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では沖縄県(1.41)、和歌山県(0.68)、福井県(0.64)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(2.28)、山形県(1.93)、石川県(1.79)、佐賀県(1.61)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(0.18)、徳島県(0.13)、栃木県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少した。都道府県別では滋賀県(0.47)、熊本県(0.17)、鹿児島県(0.13)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では長野県(4.24)、香川県(3.50)、新潟県(3.07)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では埼玉県(2.44)、青森県(2.00)、沖縄県(1.71)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。インフルエンザは、1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗いの徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。インフルエンザの報告数は2011年第5週以降減少が続いていたが、第11週の報告数(定点当たり報告数17.25、報告数82,523)は第10週(定点当たり報告数16.81、報告数79,174)に引き続いて2週連続で増加した(図1)。都道府県別では山口県(48.87)、大分県(41.55)、愛知県(31.55)、岐阜県(30.59)、福岡県(29.81)、三重県(29.38)、広島県(27.71)、石川県(26.50)の順である。中部地方、中国地方、九州地方に定点当たり報告数の多い県が多く、31道府県で定点当たり報告数の増加が認められた。前週に引き続いて、岩手県内の一部(3保健所)、福島県の全ての保健所(8保健所)からの報告はなかった。宮城県は県内の全ての保健所(12保健所)から報告があったが、定点当たり報告数は1.58(報告数142)と少なく、震災被災地での状況を考慮すると実際のインフルエンザの発生状況をまだ反映できていない可能性が高い。岩手県、宮城県、福島県3県の周辺地域では、青森県、秋田県、茨城県、新潟県で報告数は減少したが、山形県、栃木県、群馬県では増加がみられた(図2)。
定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると約74万人(95%信頼区間:65万人〜83万人)(暫定値)となり、年齢群別では5〜9歳約29万人(39.2%)、10〜14歳約17万人(23.0%)、0〜4歳約11万人(14.9%)、30代約5万人(6.8%)の順であった。0〜14歳の年齢層で増加が続いている(図3)。2010年第36週以降これまでの累積の推計受診患者数は約1,104万人(95%信頼区間:1,073万人〜1,135万人)(暫定値)であり、その内訳は男性51.1%、女性48.9%、年齢群別では5〜9歳24.5%、10〜14歳14.8%、0〜4歳13.2%、20代12.2%、30代12.1%の順となっている。
2010年第36週〜2011年第11週までの期間中に国内では8,419件のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm 5,261件、AH3亜型(A香港型)2,528件、B型630件とAH1pdmが最多を占めている。一方、2011年第7〜11週までの直近の5週間では、総検出報告数1,067件中AH3亜型513件(48.1%)、AH1pdm 321件(30.1%)、B型233件(21.8%)であり、AH3亜型の検出が最多となっており、B型の検出割合も増加してきている(図4)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2001〜2011年第11週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第9〜11週) |
図3. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別・週別推移(2010年第46週〜2011年第11週) |
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図4. インフルエンザウイルス検出報告割合(2011年第7〜11週) |
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インフルエンザの患者報告数は、3月に入って第10週、11週と2週連続で増加し、流行が再燃してきていることを示している。検出されているウイルスの状況をみると、AH3亜型が流行の中心となってきており、またB型の患者発生数も増加してきているものと推測される。残念ながら感染症発生動向調査では、被災地におけるインフルエンザの発生状況を的確に把握することは困難であるといわざるを得ないが、今回の東北地方太平洋沖地震で被災された方々の避難所等の集団生活施設においては、外部からのインフルエンザウイルスの持ち込み等によってインフルエンザの集団発生が既に生じており、また今後も発生する可能性が高い。特に避難所での生活によって体力が低下している高齢者がインフルエンザに罹患した場合、重症化する者が多くなることが危惧される。今後ともインフルエンザの発生動向には注意が必要である。
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