発生動向総覧
〈第15週コメント〉 4月20日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 309例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例
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菌種:S. boydii (C群)2例_感染地域:バングラデシュ2例
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腸管出血性大腸菌感染症11例(有症者6例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内11例
国内の感染地域:福島県1例、東京都1例、富山県1例、岐阜県1例、愛知県1例、兵庫県1例、愛媛県1例、福岡県1例、宮崎県1例、不明2例
年齢群:2歳(2例)、5歳(1例)、8歳(1例)、20代(3例)、30代(2例)、60代(1例)、70代(1例) 血清型・毒素型:O26 VT1(3例)、O26 VT1・VT2(2例)、O91 VT1(2例)、O157 VT1(1例)、O157 VT2(1例)、O157 VT不明(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:206例(有症者117例、うちHUS 4例.死亡1例)
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4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:三重県_感染源:不明)
A型肝炎4例
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感染地域:山口県1例、佐賀県1例、国内(都道府県不明)1例、インド1例
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デング熱2例(感染地域:インドネシア2例)
マラリア2例(熱帯熱2例_感染地域:ギニア1例、ナイジェリア1例)
ライム病1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
レジオネラ症6例(肺炎型6例)
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感染地域:福島県1例、茨城県1例、群馬県1例(温泉)、石川県1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:50代(2例)、60代(2例)、80代(2例)
* 震災以降、被災地での津波に関連した感染例が計4例(岩手県2例、宮城県2例)報告されている。年齢は、2歳、30代、60代、70代各1例である。
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5類感染症: |
アメーバ赤痢13例(腸管アメーバ症11例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:東京都2例、青森県1例、富山県1例、山梨県1例、大阪府1例、福岡県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)3例、タイ1例、国外(国不明)1例
感染経路:性的接触5例(異性間1例、同性間3例、異性間・同性間不明1例)、その他・不明8例
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ウイルス性肝炎1例(B型_感染経路:不明) 急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:2歳)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型)
後天性免疫不全症候群9例(AIDS 4例、無症候4例、その他1例) |
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感染地域:国内5例、国内・国外不明4例
感染経路:性的接触7例(異性間1例、同性間6例)、性的接触(異性間)/刺青1例、不明1例
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ジアルジア症2例(感染地域:インド2例)
梅毒3例(早期顕症II期1例、無症候2例)
風しん8例(検査診断例5例、臨床診断例3例) |
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感染地域:神奈川県2例、茨城県1例、埼玉県1例、東京都1例、兵庫県1例、大分県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(1例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(1例)、20〜24歳(2例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(1例)、40代(1例)
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麻しん27例〔麻しん(検査診断例15例、臨床診断例8例)、修飾麻しん(検査診断例4例)〕
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感染地域:国内26例、カンボジア1例
国内の感染地域:東京都11例、神奈川県4例、青森県2例、石川県1例、国内(都道府県不明)8例
年齢群:1歳(2例)、5〜9歳(1例)、10〜14歳(5例)、15〜19歳(2例)、20〜24歳(7例)、25〜29歳(4例)、30〜34歳(2例)、35〜39歳(1例)、40代(2例)、50代(1例)
累積報告数:128例〔麻しん(検査診断例72例、臨床診断例34例)、修飾麻しん(検査診断例22例)〕
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(補)他に2011年第14週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢3例〔菌種:S. boydii(C群)1例_感染地域:インド、菌種:S. flexneri (B群)1例_感染地域:国外(国不明)、菌種:S. sonnei (D群)1例_感染地域:イタリア/フランス/スペイン〕、パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ)、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、マラリア1例(三日熱_感染地域:インド)、急性脳炎2例〔単純ヘルペスウイルス1型1例(0歳)、RSウイルス1例(3歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(20代)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子:Van C_菌検出検体:血液)、風しん2例〔検査診断例2例.感染地域:大阪府1例、ベトナム1例.年齢群:20〜24歳(1例)、35〜39歳(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では石川県(20.69)、長野県(19.69)、宮崎県(19.53)、福井県(15.72)、高知県(12.79)、福岡県(10.85)、沖縄県(10.84)、新潟県(10.09)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は594例と増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約78%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では富山県(1.24)、島根県(1.09)、佐賀県(1.04)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では石川県(6.14)、宮崎県(4.83)、福井県(4.00)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では鹿児島県(19.1)、福井県(18.1)、富山県(15.3)が多い。水痘の定点当たり報告数は第11週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(4.73)、宮崎県(2.92)、鹿児島県(2.89)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(1.33)、沖縄県(1.06)、佐賀県(0.83)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では石川県(2.07)、宮崎県(1.97)、島根県(1.65)が多い。百日咳の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(0.21)、鳥取県(0.11)、広島県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では熊本県(0.40)、岩手県(0.14)、和歌山県(0.13)、高知県(0.13)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は第11週以降減少が続いている。都道府県別では長野県(4.02)、香川県(3.07)、鳥取県(2.95)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では青森県(1.83)、富山県(1.20)、大阪府(1.20)が多い。
〈3月コメント〉
◆性感染症について 2011年4月15日集計分 性感染症定点数:964
(産婦人科・産科・婦人科:463、泌尿器科:403、皮膚科86、性病科12)
●月別推移
2011年3月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.09(男0.93、女1.16)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.69(男0.28、女0.41)、尖圭コンジローマが0.43(男0.23、女0.20)、淋菌感染症が0.77(男0.61、女0.17)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで横ばい、淋菌感染症で増加した。女性では、4疾患すべてで増加した(37〜40ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、男性では性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマでやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(3月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は30〜34歳の年齢群、尖圭コンジローマは30〜39歳の2つの年齢群、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は20〜29歳の2つの年齢群、尖圭コンジローマは20〜29歳の2つの年齢群、淋菌感染症は20〜29歳の2つの年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、女性では性器クラミジア感染症、淋菌感染症で10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上の報告は僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、年齢群分布においての明らかな変化は見られておらず、この基準の周知徹底とともに、遵守されているかの検討等も今後必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜34歳、55〜59歳、および70歳以上の6つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜29歳の3つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性より多く、他の年齢群は同値あるいは男性が多かった。淋菌感染症では15〜19歳の年齢群で同値で、他のすべての年齢群で男性が女性よりも多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較については各地域におけるそれらの比率等の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に図4(PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男女ともに2003年以降減少傾向がみられ、男性では2010年に入り増加傾向がみられたが11月に減少してその後ほぼ横ばいである。性器ヘルペスウイルス感染症は男性では2007年以降微減傾向がみられたが、2009年以降ほぼ横ばいである。女性では2006年以降微減傾向がみられたが、2009年に増加した後横ばいで推移し、2010年12月に減少してその後ほぼ横ばいである。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられ、女性では2009年以降はほぼ横ばいで推移している。淋菌感染症は男性では2003年以降減少傾向がみられ、2010年に入り増加傾向がみられたが11月に減少してその後ほぼ横ばいである。女性では2004年以降微減傾向がみられたが2007年以降は横ばいで推移している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で増加であった。女性では4疾患すべてで増加であった。
◆薬剤耐性菌について (4月15集計分)
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基幹定点数(3月):469.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
3.91(前月:3.88、前年同月:3.98)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。3月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.71(前月:0.81、前年同月:0.95)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。3月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では最も少なかった。
薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症
0.06(前月:0.06、前年同月:0.06)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。3月は前月と変化なく、過去10年間の同月との比較では最も少なかった。
薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)感染症
0.00(前月:0.00、前年同月:−)
今月は報告がなく、前月の報告数は1例であった。報告開始から間もないため、傾向の分析や過去との比較は出来ない。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の68%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の49%を占める一方、70歳以上が全体の27%を占めている(図2:PDF参照)。
MDRP感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の65%を占めている(図3:PDF参照)
MDRA感染症
1例も報告されていない(図4:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.4:1
MDRP感染症…男:女=2.7:1
MDRA感染症…男:女=0:0
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は滋賀県(9.7)、沖縄県(8.6)、福島県(7.8)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は福井県(4.0)、千葉県(2.7)、東京都(2.0)が多い。
MDRP感染症
報告総数が26件にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難
である。
MDRA感染症
1例も報告がないため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ 麻しん 2011年 第1〜15週(2011年4月20日現在)
わが国における麻しんの流行状況の把握は、1981(昭和56年)年7月に厚生省実施の事業により定点把握調査として開始された。1999年4月からは感染症法制定に伴い、法のもとで定点把握調査が続けられていた。定期予防接種によって麻しんの患者数は着実に減少し、2006年には過去最低の定点当たり累積報告数(516例)、推計受診患者数5,000人(95%信頼区間:3,000〜4,000人)となっていたが、翌2007年に10代、20代を中心とする流行が起こり、多数の学校が休校措置を行うなどの社会的問題が生じた。世界保健機関では、日本を含む西太平洋地域において2012年までに麻しんを排除するという目標を掲げており、わが国においてもこの目標に向け、2007年12月28日に「麻しんに関する特定感染症予防指針(http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/kokuji442-191228.pdf)」が制定された。この指針にもとづき、予防接種については、追加接種の実施による2回接種の徹底が図られるとともに、発生状況の把握については、より正確な把握のため、2008年1月1日から全数把握調査に変更された。
2008年、2009年の発生状況は、それぞれIDWR2009年第4号(http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/idwr0904.html)、同2010年第4号(http://idsc.nih.go.jp/disease/measles/idwr1004.html)で報告したので参照して頂きたい。さらに本号の「速報」において2010年の発生状況について報告している。
2011年第1〜15週(2011年1月3日〜2011年4月17日診断のもの、2011年4月20日現在)に報告された麻しん累積報告数は128例であった(図1)。これは2010年の同期間(第1〜15週)の累積報告数142例に比較すると約10%の減少ではあるが、第15週の報告数は27例となり、明らかな流行といえるピークを示さなかった2009年の週平均報告数13.8例、2010年の同8.8例と比較して、大幅な増加といえる。
都道府県別では、第15週までに27都道府県から報告されており、東京都38例、広島県19例、神奈川県11例、愛知県9例、千葉県7例、青森県5例、埼玉県5例の順であり、一方、報告例がない県は20府県であった(図2)。人口100万人当たり報告数でみると、最も高い値を示しているのは広島県6.64であり、次いで青森県3.63、東京都2.95、山梨県2.31、群馬県1.49であった(図3)。
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図1. 麻しん報告数の週別推移(2011年第1〜15週) |
図2. 麻しんの都道府県別累積報告状況(2011年第1〜15週) |
図3. 人口100万人当たり都道府県別麻しん報告状況(2011年第1〜15週) |
病型別累積報告数では、臨床診断例34例(26.6%)、検査診断例72例(56.3%)、修飾麻しん(検査診断例)22例(17.2%)と、検査診断例が73.5%を占めている(図4)。これは2008年の臨床診断例が全11,012例のうち62.1%を占めていた状況と比較すると、わずか3年の間にほぼ逆転した。
年齢群別累積報告数では、20歳未満では2〜4歳16例(12.5%)、10〜14歳15例(11.7%)、1歳14例(10.9%)、5〜9歳13例(10.2%)、15〜19歳11例(8.6%)、0歳5例(3.9%)の順であった(図5)。20歳以上の年齢群では20〜29歳25例(19.5%)、30〜39歳19例(14.8%)であった。年齢別では、1歳14例、11歳8例、3歳/4歳6例、0歳/24歳5例の順であった。
感染地域別麻疹報告数を、国外とされたもの、国内①(国外例と疫学的に関連)、国内②(国外例との疫学的関連は認められなかったが、
遺伝子型がD5以外のもの)、国内③(①、②以外)、国外または国内、に分類して、週別報告数を図6に示す。国内?以外を「国外例」とす
ると、その報告数は43例となり33.6%を占めた。さらに、昨年末から今年に特徴的なこととして、これまで国内での感染例から優位に検出されて
いた遺伝子型D5麻しんウイルスは検出されておらず、D5型以外の遺伝子型が、国内?のように国内での感染例からも検出されていることがある
〔参考:麻疹ウイルス分離・検出状況 2009〜2011年(2011年4月22日現在報告数)http://idsc.nih.go.jp/iasr/measles.html〕。なお、地方衛生研究所で遺伝子型が同定された
結果(病原体情報)について、今回集計した患者情報へはまだ反映されていない症例があるため、国内例のうちD5型以外の遺伝子型の症例はさらに
増加すると思われる。なお、WHOが定義する麻しん排除の判断基準のひとつは「1年間の報告数が、人口100万人当たり、実験室診断または疫学的リ
ンクによる麻しん確定症例が1未満(臨床診断例、輸入例を除く)」であり、これに該当する症例は第1〜15週で79例であり、人口100万人当たり
では0.62であった。
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図4. 麻しん累積報告数の病型別割合(2011年第1〜15週) |
図5. 麻しん累積報告数の年齢群別割合(2011年第1〜15週) |
図6. 週別推定感染地域別麻しん報告数(2011年第1〜15週) |
麻しんは年齢にかかわらず命に関わる重篤な疾患である。今年の発生状況においても、20〜39歳の症例が34%を占めていることからも、決して子どもだけの病気ではない。麻しん排除に向け、さらに麻しん患者発生を抑制しなければならない。そのために必要なことは、まず麻しん予防接種率の向上、すなわち、定期予防接種第1期の高い接種率の維持であり、2回目接種の徹底である。2011年は、2009年以降みられなかった麻しんの流行の兆しがある。加えて、東日本大震災の影響で避難生活を余儀なくされている場合には、通常よりも栄養状態が十分でないことからの重症化も懸念される。また、母子手帳を失くしたことや住民登録状況が不明となっていること、本来の住所とは異なる自治体で避難生活を送っていることが、予防接種の勧奨や実施にあたっての制約になることも考えられる。地域的、さらには全国的な麻しんの流行とならないよう、また被災地へ麻しんが持ち込まれないよう警戒が必要である。定期接種対象者はもちろんのこと、麻しんの罹患歴がない、または不明な方で、麻しん予防接種が未接種あるいは1回のみの接種の方、予防接種歴が不明の方は、定期接種対象外であっても積極的に麻しん予防接種を受けていただきたい。
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