発生動向総覧
〈第21週コメント〉 6月1日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 429例 |
3類感染症: |
コレラ1例(感染地域:インド)
細菌性赤痢1例
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菌種:S. flexneri(B群)_感染地域:バングラデシュ
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腸管出血性大腸菌感染症49例(有症者40例、うちHUS 2例) |
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感染地域:国内49例
国内の感染地域:京都府5例、福島県3例、栃木県3例、富山県3例、広島県3例、大分県3例、千葉県2例、岐阜県2例、滋賀県2例、熊本県2例、岩手県1例、山形県1例、茨城県1例、群馬県1例、東京都1例、神奈川県1例、静岡県1例、兵庫県1例、山口県1例、香川県1例、福岡県1例、宮崎県1例、鹿児島県1例、沖縄県1例、不明7例
年齢群:2歳(2例)、3歳(2例)、5歳(4例)、6歳(2例)、7歳(1例)、8歳(2例)、10代(9例)、20代(8例)、30代(6例)、40代(6例)、50代(4例)、60代(1例)、70代(2例)
血清型・毒素型:O26 VT1(12例)、O157 VT1・VT2(12例)、O157 VT2(9例)、O157 VT不明(2例)、O6 VT2(1例)、O86 VT1(1例)、O103 VT1(1例)、O121 VT2(1例)、O121 VT不明(1例)、その他・不明(9例)
累積報告数:515例(有症者351例、うちHUS 39例.死亡1例)
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4類感染症: |
つつが虫病12例
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感染地域:山形県3例、青森県2例、秋田県2例、福島県2例、岩手県1例、宮城県1例、新潟県1例
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デング熱1例(感染地域:インドネシア)
日本紅斑熱5例
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感染地域:大阪府1例、広島県1例、徳島県1例、宮崎県1例、鹿児島県1例
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マラリア1例(熱帯熱_感染地域:リベリア)
レジオネラ症7例(肺炎型6例、無症状病原体保有者1例)
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感染地域:東京都1例、神奈川県1例、石川県1例、岐阜県1例、兵庫県1例、福岡県1例、メキシコ1例
年齢群:50代(1例)、60代(2例)、70代(2例)、80代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢4例(腸管アメーバ症4例) |
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感染地域:香川県1例、国内(都道府県不明)3例
感染経路:経口感染3例、その他・不明1例
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ウイルス性肝炎2例 |
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B型1例_感染経路:不明
サイトメガロウイルス1例_感染経路:子供との接触
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急性脳炎1例(インフルエンザウイルスB型_年齢群:3歳)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症4例 |
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年齢群:40代(1例)、50代(1例)、70代(1例)、90代(1例.死亡)
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後天性免疫不全症候群10例〔AIDS 1例(死亡)、無症候9例〕 |
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感染地域:国内7例、国内・国外不明3例
感染経路:性的接触6例(異性間1例、同性間5例)、性的接触(異性間)/静注薬物1例、不明3例
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髄膜炎菌性髄膜炎1 |
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感染地域:宮崎県
年齢群:10代
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梅毒8例(先天梅毒1例、早期顕症I期3例、早期顕症II期2例、無症候2例)
破傷風2例 |
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感染地域:茨城県1例、埼玉県1例
年齢群:60代(1例)、70代(1例)
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バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例 |
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遺伝子型:Van A_菌検出検体:肝のう胞穿刺液
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風しん13例(検査診断例11例、臨床診断例2例) |
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感染地域:神奈川県3例、福岡県3例、大阪府2例、東京都1例、長野県1例、愛知県1例、国内(都道府県不明)1例、中国1例
年齢群:10〜14歳(1例)、20〜24歳(5例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(2例)、40代(1例)、50代(3例)
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麻しん18例〔麻しん(検査診断例4例、臨床診断例6例、修飾麻しん(検査診断例8例)〕
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感染地域:国内18例
国内の感染地域:東京都6例、神奈川県4例、栃木県1例、埼玉県1例、千葉県1例、長野県1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)3例
年齢群:1歳(1例)、4歳(1例)、5〜9歳(2例)、10〜14歳(4例)、15〜19歳(2例)、20〜24歳(2例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(2例)、40代(3例)
累積報告数:281例〔麻しん(検査診断例147例、臨床診断例79例)、修飾麻しん(検査診断例55例)〕
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(補)他に2011年第20週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例〔菌種:S. sonnei(D群)_感染地域:モロッコ〕、エキノコックス症1例(多包条虫_感染地域:北海道)、デング熱1例(感染地域:フィリピン)、マラリア1例(熱帯熱_感染地域:モザンビーク)、急性脳炎2例〔ヒトヘルペスウイルス6型1例(0歳)、ロタウイルス1例(7歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例〔30代(1例)、50代(1例)、60代(1例.死亡)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:尿)、風しん11例〔検査診断例9例、臨床診断例2例_感染地域:北海道2例、東京都1例、新潟県1例、福井県1例、大阪府1例、香川県1例、長崎県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)2例_年齢群:10〜14歳(1例)、15〜19歳(2例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(4例)、40代(2例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たりの報告数は第17週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では沖縄県(15.69)、佐賀県(5.10)、宮崎県(3.58)、長崎県(3.50)、秋田県(3.04)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は358例と増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約70%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では佐賀県(1.57)、富山県(1.45)、福井県(1.32)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では福井県(5.4)、新潟県(4.9)、山形県(4.1)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では大分県(12.7)、富山県(12.7)、福井県(12.2)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(4.41)、鳥取県(3.84)、宮崎県(3.69)が多い。手足口病の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では岡山県(3.37)、宮崎県(3.03)、福岡県(2.69)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(1.90)、宮崎県(1.69)、北海道(1.61)が多い。百日咳の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(0.21)、福岡県(0.09)、神奈川県(0.08)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では鹿児島県(1.59)、宮崎県(0.86)、岡山県(0.85)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では長野県(3.19)、鳥取県(2.74)、鹿児島県(2.39)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は3週連続で増加した。都道府県別では青森県(2.83)、宮城県(1.83)、大阪府(1.53)が多い。
注目すべき感染症
◆ 咽頭結膜熱
咽頭結膜熱は主にアデノウイルス3型(他に1、2、5、4、6、7型等でもみられる)に感染することによってみられる咽頭炎、結膜炎を主とする急性ウイルス性感染症である。発熱、咽頭炎(咽頭発赤、咽頭痛)、結膜炎(結膜充血、眼痛、流涙、眼脂)が3主症状であり、通常感染曝露からの潜伏期間が5〜7日、有症状期間は3〜5日といわれている。特異的な治療方法はなく、対症療法が中心となる。眼の症状が強い時には、眼科的治療が必要となることもある。感染経路は主に飛沫感染、接触感染であるが、その感染力は強力であり、タオル、ドアの把手、エレベーターのボタン、階段の手すり等の患者が触れたものを触ることによっても感染する場合がある。また、本疾患は症状消失後も約1カ月間に渡って尿・便中にウイルスが排出されるといわれており、更に感染後発病はしない無症候病原体保有者も存在するため、効果的な感染予防対策の実行は困難である。特に感染経験の乏しい小児の集団生活施設である保育園、幼稚園、小学校等では流行時期になると集団発生がみられることも珍しくはない。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告に基づいて咽頭結膜熱をはじめとする各種小児科疾患の発生動向を分析している。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は、第15週以降増加傾向となり、第18週のゴールデンウイーク期間中は一旦減少がみられたものの、その後は3週連続して増加し、第21週の定点当たり報告数は0.53(報告数1,651)となった(図1)。都道府県別では佐賀県(1.57)、富山県(1.45)、福井県(1.32)、滋賀県(1.28)、宮崎県(1.17)、石川県(0.97)の順となっている。32都道県で前週よりも報告数が増加しており、特に佐賀県、富山県、石川県、青森県、香川県で大きな増加が見られた(図2)。第1〜21週までの定点当たり累積報告数は8.02(累積報告数25,094)であり、年齢群別割合をみると2〜3歳31.5%、0〜1歳28.4%、4〜5歳24.2%の順となっており、5歳以下で全体の80%前後を、3歳以下で60%前後を占めているのは2009年以降続いている傾向と合致している(図3)。
2011年第1週からこれまでに咽頭結膜熱と診断された患者から検出されたアデノウイルス(総検出報告数65)では、アデノウイルス3型69.2%(検出報告数45)、2型20.0%(検出報告数13)、1型4.6%(検出報告数3)の順となっている。まだ検出報告数は少ないものの、これまでのところ例年にも増して3型の報告割合が高くなっている(図4)。
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図1. 咽頭結膜熱の年別・週別発生状況(2001〜2011年第21週) |
図2. 咽頭結膜熱の都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第19〜21週) |
図3. 咽頭結膜熱の年別・年齢群別割合(2000〜2011年第21週) |
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図4. 咽頭結膜熱由来ウイルス分離・検出報告割合推移(2007年〜2011年第21週) |
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咽頭結膜熱の流行のピークは例年夏季休暇の始まる第29週前後であり、今後はそのピークに向けて更に患者発生数が増加してくるものと予想される。咽頭結膜熱の発生動向には今後とも注意深い観察が必要である。
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