発生動向総覧
〈第24週コメント〉 6月22日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 372例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例
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菌種:S. flexneri (B群)2例_感染地域:広島県1例、インドネシア1例
S. sonnei (D群)2例_感染地域:国内(都道府県不明)2例
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腸管出血性大腸菌感染症96例(有症者55例、うちHUS 2例、死亡1例) |
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感染地域:国内95例、中国1例
国内の多い感染地域:島根県14例*、千葉県6例**、東京都6例、愛知県6例、山形県5例、長崎県5例、鹿児島県5例、埼玉県4例、富山県4例、大阪府4例、静岡県3例、滋賀県3例、兵庫県3例、岡山県3例、三重県2例、広島県2例、徳島県2例、福岡県2例、佐賀県2例、大分県2例
* 社会福祉施設に関連した集団感染例を含む(O26 VT1・VT2)
** 保育所に関連した集団感染例を含む(O145 VT1)
年齢群:0歳(1例)、1歳(3例)、2歳(1例)、3歳(5例)、4歳(8例)、5歳(2例)、6歳(1例)、7歳(1例)、8歳(3例)、10代(12例)、20代(9例)、30代(12例)、40代(8例)、50代(12例)、60代(10例)、70代(4例)、80代(4例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(32例)、O26 VT1(20例)、O26 VT1・VT2(12例)、O157 VT2(8例)、O145 VT1(4例)、O103 VT1(2例)、O121 VT2(2例)、O157 VT1(2例)、O157 VT不明(2例)、O26 VT不明(1例)、O103 VT1・VT2(1例)、O111 VT1(1例)、O165 VT1・VT2(1例)、その他・不明(8例)
累積報告数:970例(有症者671例、うちHUS 48例.死亡2例)
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パラチフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:ウズベキスタン)
つつが虫病11例
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感染地域:秋田県4例、長野県3例、新潟県2例、山形県1例、広島県1例
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デング熱1例(感染地域:シンガポール)
日本紅斑熱2例(感染地域:島根県1例、岡山県1例)
ボツリヌス症1例(乳児ボツリヌス症)
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感染地域:愛知県
感染源:不明
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マラリア4例
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三日熱1例_感染地域:パプアニューギニア
熱帯熱3例_感染地域:ウガンダ1例、ガーナ1例、ナイジェリア1例
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レジオネラ症17例(肺炎型17例)
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感染地域:愛知県3例、兵庫県2例、千葉県1例、富山県1例、静岡県1例、大阪府1例、岡山県1例、国内(都道府県不明)4例(うち2例温泉)、中国1例、トルコ1例、イタリア/モナコ/フランス1例
年齢群:50代(2例)、60代(8例)、70代(5例)、80代(1例)、90代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢12例(腸管アメーバ症9例、腸管外アメーバ症2例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:京都府1例、大阪府1例、兵庫県1例、国内(都道府県不明)5例、中国1例、ハワイ1例、グアム1例、ハワイ/サイパン/メキシコ1例
感染経路:性的接触3例(異性間2例、異性間・同性間不明1例)、経口感染1例、不明8例
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ウイルス性肝炎4例 |
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B型4例_感染経路:性的接触2例(異性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明2例
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急性脳炎2例 |
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病原体不明2例_年齢群:2歳(1例)、10代(1例)
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クリプトスポリジウム1例(感染地域:三重県)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例 |
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年齢群:30代(1例)、40代(1例)、70代(1例)
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後天性免疫不全症候群10例(無症候9例、その他1例) |
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感染地域:国内8例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触9例(同性間9例)、不明1例
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梅毒10例(早期顕症I期4例、早期顕症II期4例、無症候2例)
破傷風3例〔年齢群:70代(2例)、90代(1例)〕
風しん12例(検査診断例6例、臨床診断例6例) |
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感染地域:神奈川県6例、福岡県4例、千葉県1例、大阪府1例
年齢群:1歳(1例)、20〜24歳(2例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(2例)、35〜39歳(2例)、40代(1例)、50代(3例)
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麻しん18例〔麻しん(検査診断例5例、臨床診断例10例)、修飾麻しん(検査診断例3例)〕
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感染地域:国内18例
国内の感染地域:神奈川県4例、愛知県3例、東京都2例、青森県1例、群馬県1例、京都府1例、大阪府1例、兵庫県1例、山口県1例、国内(都道府県不明)3例
年齢群:1歳(2例)、5〜9歳(3例)、15〜19歳(1例)、20〜24歳(1例)、25〜29歳(4例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(3例)、40代(2例)、50代(1例)
累積報告数:323例〔麻しん(検査診断例162例、臨床診断例101例)、修飾麻しん(検査診断例60例)〕
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(補)他に2011年第23週までに診断されたものの報告遅れとして、腸チフス1例(感染地域:長崎県)、つつが虫病1例(感染地域:青森県.死亡)、急性脳炎1例〔病原体不明(80代)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例〔40代(1例)、70代(1例)、80代(1例)〕、風しん3例〔検査診断例3例_感染地域:北海道1例、東京都1例、福岡県1例_年齢群:15〜19歳(1例)、20〜24歳(1例)、40代(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第17週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(6.62)、鹿児島県(1.57)、福島県(1.24)、宮崎県(1.12)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は247例と減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約84%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では滋賀県(2.97)、福井県(2.00)、宮崎県(1.36)、富山県(1.34)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(4.64)、埼玉県(3.42)、千葉県(3.35)、新潟県(3.35)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では大分県(9.3)、福井県(8.1)、宮崎県(7.0)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(3.20)、福井県(3.18)、山形県(3.03)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第19週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では佐賀県(12.3)、福岡県(12.1)、島根県(10.3)、岡山県(9.4)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では宮崎県(2.56)、栃木県(2.13)、群馬県(2.03)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では広島県(0.18)、沖縄県(0.18)、徳島県(0.17)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では鹿児島県(6.0)、香川県(4.9)、和歌山県(2.5)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では長野県(4.55)、鹿児島県(3.53)、鳥取県(3.37)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では青森県(2.67)、宮城県(1.83)、大阪府(1.69)が多い。
注目すべき感染症
◆ 手足口病
手足口病(hand, foot, and mouth disease:HFMD)は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に主に夏季に流行する疾患である。病原ウイルスは主にコクサッキーA16(CA16)、エンテロウイルス71(EV71)であり、その他CA6、CA9やCA10などのエンテロウウイルスによっても発症する。例年4月頃から患者数が増加し始め、流行のピークは7月の中旬か下旬となり、8月に入ると減少していく、という経過を辿る。
臨床的特徴であるが、感染から3〜5日の潜伏期間の後に、口腔粘膜、手掌、足底や足背などの四肢末端に2〜3mmの水疱性発疹が出現する。発熱は約3分の1に認められるが軽度であり、高熱が続くことは通常はない。本症は基本的には数日間の内に治癒する予後良好の疾患である。しかしながら、まれではあるが髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症などのほか、心筋炎、急性弛緩性麻痺などの多彩な臨床症状を呈することがある。
感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染であり、保育園や幼稚園などの乳幼児施設においての感染予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となる。本疾患は主要症状が回復した後も比較的長期間に渡って児の便などからウイルスが排泄されることがあるが、基本的には軽症疾患であることを踏まえ、回復した児に対して長期間の欠席を求めることは現実的ではない。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告に基づいて手足口病をはじめとする各種小児科疾患の発生動向を分析している。手足口病の報告数は2011年第19週以降増加が続いており、第24週の定点当たり報告数は2.60(報告数8,166)と前週(定点当たり報告数1.68)よりも大きく増加し、過去10年間の同時期と比較して最も多い値であった(図1)。都道府県別では佐賀県(12.3)、福岡県(12.1)、島根県(10.3)、岡山県(9.4)、香川県(8.9)、熊本県(7.0)、徳島県(6.8)、長崎県(6.8)の順となっており、39都道府県で前週の報告数よりも増加がみられている。中国、四国、九州の西日本地域では流行が大きくなってきている一方で、東日本では定点当たり報告数が全国平均を大きく下回っている地域が大半である(図2)。
2011年第1〜24週の定点当たり累積報告数は9.54(累積報告数29,901)であり、年齢群別では0〜1歳の報告割合が42.5%と例年と比べて高い割合となっている(図3)。
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図1. 手足口病の年別・週別発生状況(2001〜2011年第24週) |
図2. 手足口病の都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第22〜24週) |
図3. 手足口病の年別・年齢群別割合(2000〜2011年第24週) |
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図4. 手足口病由来ウイルス分離・検出報告割合(2007〜2011年第24週) |
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手足口病の原因ウイルスは、CA16とEV71が代表的であるが、2011年は現時点(2011年6月24日現在)では総検出報告数は82検体と少ないものの、CA6が患者から検出されたウイルスの半数近くを占めている(図4)。これまでのところ、手足口病の流行は西日本に偏っているが、流行地域では急激な増加を示している。臨床現場からは本年の手足口病は、従来の典型例と比べて発疹が大きく、四肢末端に限局せずに広範囲に認められる症例が目立つとの情報も寄せられている。手足口病の患者報告数は、今後夏季の流行のピークに向かって更に大きく増加していく可能性が高く、その流行の拡大には注意深い観察が必要である。
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