発生動向総覧
〈第27週コメント〉 7月13日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 381例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例
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菌種:S. sonnei (D群)4例_感染地域:長野県2例、インドネシア1例、バングラデシュ1例
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腸管出血性大腸菌感染症102例(有症者62例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内101例、韓国1例
国内の多い感染地域:埼玉県8例、福岡県8例、石川県7例、新潟県6例、富山県6例、兵庫県5例、宮崎県5例*、東京都4例、京都府4例、熊本県4例、秋田県3例、栃木県3例、福井県3例
* 保育園に関連した集団感染例を含む(O26 VT1)
年齢群:0歳(3例)、1歳(3例)、2歳(5例)、3歳(3例)、4歳(4例)、5歳(5例)、6歳(4例)、7歳(2例)、9歳(2例)、10代(14例)、20代(12例)、30代(17例)、40代(9例)、50代(7例)、60代(5例)、70代(6例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(38例)、O157 VT2(16例)、O26 VT1(15例)、O121 VT2(4例)、O26 VT1・VT2(3例)、O145 VT2(3例)、O157 VT不明(3例)、O26 VT不明(2例)、O91 VT1(2例)、O103 VT1(2例)、O157 VT1(2例)、O111 VT1・VT2(1例)、O111 VT1(1例)、O145 VT1(1例)、O165 VT2(1例)、その他・不明(8例)
累積報告数:1,296例(有症者881例、うちHUS 51例.死亡7例)
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腸チフス1例(感染地域:福岡県)
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:東京都)
オウム病1例(感染地域:東京都_感染源:インコ)
つつが虫病1例(感染地域:岩手県)
デング熱例(感染地域:マレーシア2例、モルディブ1例)
日本紅斑熱2例(感染地域:徳島県1例、宮崎県1例)
ブルセラ症1例〔感染地域:愛知県_感染源:職業(獣医師)上の動物からの感染〕
ライム病1例(感染地域:山梨県)
レジオネラ症16例(肺炎型16例.うち1例死亡)
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感染地域:埼玉県2例、宮城県1例、福島県1例、神奈川県1例、岐阜県1例、静岡県1例、奈良県1例、島根県1例、広島県1例(温泉)、佐賀県1例、国内(都道府県不明)5例(うち1例温泉)
年齢群:20代(1例)、40代(1例)、50代(3例)、60代(6例)、70代(3例)、80代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢13例(腸管アメーバ症10例、腸管外アメーバ症2例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:神奈川県1例、新潟県1例、愛知県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)7例、インドネシア1例、国内(都道府県不明)/国外(国不明)1例
感染経路:経口感染2例、性的接触1例(異性/同性間)、不明10例
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ウイルス性肝炎4例 |
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B型4例_感染経路:性的接触3例(異性間2例、異性間・同性間不明1例)、不明1例
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急性脳炎3例〔病原体不明3例_年齢群:0歳(2例)、6歳(1例)〕
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔年齢群:10代(1例)、40代(1例)〕
後天性免疫不全症候群21例(AIDS 4例、無症候13例、その他4例) |
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感染地域:国内17例、中国1例、国内/フィリピン1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触18例(異性間5例、同性間12例、異性間・同性間不明1例)、刺青1例、不明2例
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梅毒11例(早期顕症I期1例、早期顕症II期4例、晩期顕症1例、無症候5例)
破傷風3例〔年齢群:70代(3例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:Van C_菌検出検体:尿)
風しん7例(検査診断例6例、臨床診断例1例) |
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感染地域:福岡県4例、神奈川県1例、愛知県1例、三重県1例
年齢群:20〜24歳(1例)、25〜29歳(3例)、30〜34歳(2例)、35〜39歳(1例)
累積報告数:242例(検査診断例180例、臨床診断例62例)
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麻しん13例〔麻しん(検査診断例1例、臨床診断例5例)、修飾麻しん(検査診断例7例)〕
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感染地域:国内13例
国内の感染地域:埼玉県4例、兵庫県2例、東京都1例、愛知県1例、京都府1例、広島県1例、国内(都道府県不明)3例
年齢群:0歳(1例)、1歳(2例)、2歳(2例)、5〜9歳(1例)、15〜19歳(1例)、20〜24歳(1例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(1例)、40代(2例)、50代(1例)
累積報告数:353例〔麻しん(検査診断例170例、臨床診断例75例)、修飾麻しん(検査診断例108例)〕
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(補)他に2011年第26週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎1例〔感染地域(感染源):北海道(不明)〕、日本紅斑熱4例(感染地域:愛媛県2例、和歌山県1例、長崎県1例)、マラリア2例(熱帯熱1例_感染地域:ウガンダ、三日熱1例_感染地域:インド)、急性脳炎7例〔突発性発しん1例(0歳)、RSウイルス1例(1歳)、ムンプスウイルス1例(9歳)、病原体不明4例(0歳_3例、3歳_1例.死亡)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:不明_菌検出検体:血液)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第17週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(1.71)、鹿児島県(0.38)、福島県(0.24)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は411例と3週連続で増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では滋賀県(2.19)、埼玉県(1.72)、富山県(1.62)、静岡県(1.62)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いている。都道府県別では北海道(2.46)、埼玉県(2.35)、高知県(2.17)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第23週以降減少が続いている。都道府県別では大分県(7.1)、福井県(6.0)、山形県(5.8)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(2.08)、北海道(2.03)、大分県(2.00)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第19週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では佐賀県(42.3)、福岡県(41.0)、熊本県(32.7)、愛媛県(31.0)、山口県(26.8)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福島県(2.35)、宮崎県(2.33)、栃木県(2.02)、長野県(1.95)が多い。百日咳の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では栃木県(0.15)、沖縄県(0.15)、千葉県(0.09)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(10.9)、徳島県(8.4)、熊本県(8.1)、鹿児島県(7.0)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では長野県(4.40)、鹿児島県(3.56)、愛媛県(3.24)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では青森県(2.50)、愛媛県(2.00)、沖縄県(2.00)、宮城県(1.67)が多い。
注目すべき感染症
◆ 手足口病
手足口病(hand, foot, and mouth disease:HFMD)は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に主に夏季に流行する疾患である。高熱が続くことはあまりなく、基本的には数日間の内に治癒する予後良好の疾患であるとされている。しかし稀ではあるが、髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症などのほか、心筋炎、急性弛緩性麻痺などの多彩な臨床症状を呈することが以前より知られている。
病原ウイルスは主にコクサッキーA16(CA16)、エンテロウイルス71(EV71)であり、その他CA6、CA9やCA10などのエンテロウイルスによっても発症する。手足口病の感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染であり、保育園や幼稚園などの乳幼児の集団生活施設においての感染予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となる。手足口病の病原ウイルスに感染しても全員が典型的な症状を呈するものではなく、不顕性感染例も存在することから、発症して診断された者を隔離しても効果的な対策とはならないと考えるべきである。また、主要症状が回復した後も比較的長期間にわたって児の便などからウイルスが排泄されることがあるが、基本的には軽症疾患であることを踏まえ、回復した児に対して長期間の欠席を求めることは現実的ではない。
手足口病は例年4月頃から患者数が増加し始め、流行のピークは7月の中旬か下旬となり、8月に入ると減少していく、という経過を辿る。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告に基づいて手足口病をはじめとする各種小児科疾患の発生動向を分析している。手足口病の報告数は2011年第19週以降増加が続いており、第27週の定点当たり報告数は9.7(報告数30,506)と前週(定点当たり報告数7.2)よりも更に大きく増加し、1982年に同調査が開始されて以来最多の報告数となった(図1)。都道府県別では佐賀県(42.3)、福岡県(41.0)、熊本県(32.7)、愛媛県(31.0)、山口県(26.8)、兵庫県(24.7)、徳島県(21.8)、長崎県(18.8)、大分県(17.3)、福井県(16.2)の順となっており、39都道府県で前週の報告数よりも増加がみられている。手足口病の流行は西日本のほぼ全域と中部の一部地域で大きく、また首都圏や東北の一部でも大きな増加がみられている(図2)。2011年第1〜27週の定点当たり累積報告数は30.4(累積報告数95,102)であり、年齢群別では0〜1歳の報告割合が38.7%と例年と比べて高い割合となっている(図3)。
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図1. 手足口病の年別・週別発生状況(2001〜2011年第27週) |
図2. 手足口病の都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第25〜27週) |
図3. 手足口病の年別・年齢群別割合(2000〜2011年第27週) |
手足口病の原因ウイルスは、CA16とEV71が代表的であるが、2011年は現時点(2011年7月19日現在)での総検出報告数196件中、CA6が103件(52.6%)と患者から検出されたウイルスの半数以上を占めている(図4)。
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図4. 手足口病由来ウイルス分離・検出報告割合(2007〜2011年第27週) |
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臨床現場からの報告では、本年国内で流行している手足口病の臨床的特徴は、発症初期に高熱を発することが少なくなく、また昨年までみられていた典型的な発症例と比べて発疹が大きく、四肢末端に限局せずに広範囲に認められる症例が目立つといった情報が寄せられている。過去10年間の発生動向をみると、例年手足口病の流行は第28週または第29週にそのピークを迎えることが多く、本年も間もなくピークとなるものと推察される。手足口病の流行の推移については、今後も注意深く観察する必要がある。
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