発生動向総覧
〈第28週コメント〉 7月20日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 334例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢1例
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菌種:S. sonnei (D群)_感染地域:フィリピン
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腸管出血性大腸菌感染症80例(有症者66例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内80例
国内の多い感染地域:岩手県5例、鹿児島県4例、青森県3例、埼玉県3例、千葉県3例、東京都3例、石川県3例、長野県3例、熊本県3例、宮崎県3例
年齢群:0歳(1例)、1歳(4例)、2歳(4例)、3歳(4例)、4歳(4例)、5歳(5例)、7歳(1例)、8歳(2例)、9歳(2例)、10代(12例)、20代(12例)、30代(8例)、40代(1例)、50代(4例)、60代(5例)、70代(7例)、80代(4例) 血清型・毒素型:O26 VT1(21例)、O157 VT1・VT2(19例)、O157 VT2(13例)、O103 VT1(3例)、O26 VT1・VT2(2例)、O103 VT不明(2例)、O157 VT不明(2例)、O15 VT不明(1例)、O78 VT1(1例)、O91 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、O111 VT不明(1例)、O145 VT1(1例)、O145 VT2(1例)、O145 VT不明(1例)、O146 VT2(1例)、O157 VT1(1例)、その他・不明(8例)
累積報告数:1,382例(有症者949例、うちHUS 51例.死亡7例)
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パラチフス1例(感染地域:バングラデシュ)
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4類感染症: |
オウム病1例(感染地域:京都府_感染源:インコ)
つつが虫病1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
デング熱2例(感染地域:ベトナム/カンボジア1例、スリランカ1例)
日本紅斑熱2例(感染地域:三重県1例、島根県1例)
日本脳炎1例(感染地域:沖縄県_年齢群:1歳)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ガーナ)
レジオネラ症20例(肺炎型20例)
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感染地域:青森県2例、愛知県2例(うち1例温泉)、秋田県1例(温泉)、山形県1例(温泉)、栃木県1例、千葉県1例、東京都1例、岐阜県1例(温泉)、京都府1例、大阪府1例、奈良県1例、広島県1例、山口県1例、熊本県1例(温泉)、沖縄県1例、国内(都道府県不明)2例(うち1例温泉)、イタリア1例
年齢群:40代(1例)、50代(3例)、60代(11例)、70代(3例)、80代(1例)、90代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:長野県2例、国内(都道府県不明)5例、東京都/フィリピン1例、中国/フィンランド/ニュージーランド1例
感染経路:経口感染3例、性的接触3例(異性間2例、異性間・同性間不明1例)、不明3例
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ウイルス性肝炎2例(B型2例_感染経路:不明2例)
急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:10代)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例 |
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孤発性プリオン病古典型1例
孤発性プリオン病その他1例
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後天性免疫不全症候群21例(AIDS 4例、無症候16例、その他1例) |
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感染地域:国内20例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触21例(異性間4例、同性間14例、異性/同性間3例)
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ジアルジア症1例(感染地域:埼玉県)
梅毒8例(早期顕症I期3例、早期顕症II期1例、無症候4例)
破傷風1例(年齢群:70代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例 |
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遺伝子型:Van C_菌検出検体:血液
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風しん6例(検査診断例5例、臨床診断例1例) |
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感染地域:東京都2例、福岡県2例、埼玉県1例、大阪府1例
年齢群:5〜9歳(1例)、15〜19歳(1例)、20〜24歳(1例)、35〜39歳(3例)
累積報告数:256例(検査診断例191例、臨床診断例65例)
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麻しん7例〔麻しん(検査診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例6例)〕
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感染地域:国内7例
国内の感染地域:埼玉県2例、愛知県2例、大阪府1例、愛媛県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:2歳(1例)、5〜9歳(1例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(1例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(2例)
累積報告数:363例〔麻しん(検査診断例173例、臨床診断例108例)、修飾麻しん(検査診断例82例)〕
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(補)他に2011年第27週までに診断されたものの報告遅れとして、日本紅斑熱3例(感染地域:三重県1例、和歌山県1例、福岡県1例)、クリプトスポリジウム症1例(感染地域:北海道)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(70代)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第17週以降減少が続いている。都道府県別では沖縄県(1.79)、鹿児島県(0.44)、佐賀県(0.13)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は521例と第25週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では静岡県(2.02)、埼玉県(1.81)、宮崎県(1.75)、千葉県(1.52)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第24週以降減少が続いている。都道府県別では高知県(2.43)、富山県(2.28)、北海道(2.00)、福井県(2.00)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第23週以降減少が続いている。都道府県別では大分県(6.7)、福井県(5.9)、山形県(5.6)が多い。水痘の定点当たり報告数は微増した。都道府県別では福井県(2.73)、北海道(2.62)、山形県(2.37)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第19週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では佐賀県(39.7)、福岡県(37.2)、熊本県(30.3)、兵庫県(26.2)、愛媛県(24.9)、山口県(24.7)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福島県(2.08)、宮崎県(1.86)、長野県(1.76)が多い。百日咳の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では沖縄県(0.24)、東京都(0.05)、鳥取県(0.05)、福岡県(0.05)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第19週以降増加が続いている。都道府県別では宮崎県(13.3)、熊本県(9.5)、栃木県(8.7)、千葉県(7.8)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では長野県(3.96)、鹿児島県(3.07)、山形県(3.00)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では青森県(3.17)、沖縄県(2.71)、大阪府(2.40)が多い。
〈6月コメント〉
◆性感染症について 2011年7月15日集計分 性感染症定点数:966
(産婦人科・産科・婦人科:469、泌尿器科:400、皮膚科84、性病科13)
●月別推移
2011年6月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.45(男1.14、女1.31)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.72(男0.26、女0.45)、尖圭コンジローマが0.47(男0.27、女0.20)、淋菌感染症が0.85(男0.65、女0.19)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で横ばい、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で増加した。女性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で横ばい、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で増加であった(28〜31ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、男性では性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症でやや少なく、女性では尖圭コンジローマでやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(6月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜39歳の3つの年齢群、尖圭コンジローマは25〜29歳の年齢群、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は20〜24歳の年齢群、尖圭コンジローマは20〜24歳の年齢群、淋菌感染症は20〜29歳の2つ年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、男性では性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、女性では性器クラミジア感染症、性器ヘルペスウイルス感染症、尖圭コンジローマで10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患の報告は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上は僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、年齢群分布においての明らかな変化は見られておらず、この基準の周知徹底とともに、遵守されているかの検討なども今後必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では10〜34歳の5つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜44歳、65〜69歳、70歳以上の8つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性より多く、他の年齢群は同値あるいは男性が多かった。淋菌感染症ではすべての年齢群で男性が女性より多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較については各地域におけるそれらの比率等の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男性では2003年以降減少傾向がみられた後、2009年以降はほぼ横ばいで推移している。女性では2003年以降減少傾向がみられている。性器ヘルペスウイルス感染症は男性では2007年以降微減傾向がみられたが、2009年以降ほぼ横ばいである。女性では2006年以降微減傾向がみられたが、2009年に増加した後横ばいで推移し、2010年12月に減少してその後ほぼ横ばいである。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられ、女性では2009年以降はほぼ横ばいで推移している。淋菌感染症は男性では2003年以降減少傾向がみられ、2010年に入り増加傾向がみられたが11月に減少してその後ほぼ横ばいである。女性では2004年以降微減傾向がみられたが2007年以降は横ばいで推移している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で増加、ヘルペスウイルス感染症で減少、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で増加であった。女性では性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で同値であった。
◆薬剤耐性菌について (7月15集計分)
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基幹定点数(6月):468.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.28(前月:4.22、前年同月:4.61)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。6月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では上位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.97(前月:1.05、前年同月:1.21)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。6月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では最も少なかった。
薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症
0.07(前月:0.08、前年同月:0.07)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。6月は前月より微減し、過去10年間の同月との比較では下位に属した。
薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)感染症
0.00(前月:0.00、前年同月:−)
報告数は1例であった。本年2月の報告開始から間もないため、傾向の分析や過去との比較は出来ない。
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●年齢階級別
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MRSA感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の64%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の62%を占める一方、70歳以上が全体の18%を占めている(図2:PDF参照)。
MDRP感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の83%を占めている(図3:PDF参照)
MDRA感染症 70代で1例だけ報告されている(図4:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.3:1
MDRP感染症…男:女=2.2:1
MDRA感染症…男:女=男性で1例だけ報告されている。
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は新潟県(10.2)、沖縄県(10.0)、福島県(8.3)、滋賀県(8.3)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(3.6)、新潟県(3.3)、福井県(3.2)が多い。
MDRP感染症
報告総数が35例にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
MDRA感染症
1例のみの報告であるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である
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注目すべき感染症
◆ 手足口病
手足口病(hand, foot, and mouth disease:HFMD)は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に主に夏季に流行する疾患である。基本的には数日間の内に治癒する予後良好の疾患であるとされている。しかし稀ではあるが、髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症などのほか、心筋炎、急性弛緩性麻痺などの多彩な臨床症状を呈することが以前より知られている。
病原ウイルスは主にコクサッキーA16(CA16)、エンテロウイルス71(EV71)であり、その他CA6、CA9やCA10などのエンテロウイルスによっても発症する。手足口病の感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染であり、保育園や幼稚園などの乳幼児の集団生活施設においての感染予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となる。手足口病の病原ウイルスに感染しても全員が典型的な症状を呈するものではなく、不顕性感染例も存在することから、発症して診断された者を隔離しても効果的な対策とはならないと考えるべきである。また、主要症状が回復した後も比較的長期間にわたって児の便などからウイルスが排泄されることがあるが、基本的には軽症疾患であることを踏まえ、回復した児に対して長期間の欠席を求めることは現実的ではない。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告に基づいて手足口病をはじめとする各種小児科疾患の発生動向を分析している。手足口病の報告数は2011年第19週以降増加が続いており、第28週の定点当たり報告数は11.0(報告数34,216)となり、1982年に同調査が開始されて以来最多の報告数となった前週(定点当たり報告数9.7)よりも更に大きく増加した(図1)。都道府県別では佐賀県(39.7)、福岡県(37.2)、熊本県(30.3)、兵庫県(26.2)、愛媛県(24.9)、山口県(24.7)、大分県(22.0)、滋賀県(20.3)、長崎県(18.5)、福井県(16.0)の順となっている。これまで流行が大きかった中国、四国、九州地方では、報告数の減少しているところが多いが、近畿地方より東側では福井県を除く全ての都道府県で増加が見られており、流行は全国的なものとなってきている(図2)。2011年第1〜28週の定点当たり累積報告数は41.7(累積報告数130,766)であり、年齢群別では0〜1歳の報告割合が37.6%、2〜3歳が35.6%と3歳までで全報告数の70%以上を占めている(図3)。
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図1. 手足口病の年別・週別発生状況(2001〜2011年第28週) |
図2. 手足口病の都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第26〜28週) |
図3. 手足口病の年別・年齢群別割合(2000〜2011年第28週) |
手足口病の原因ウイルスは、CA16とEV71が代表的であるが、2011年は現時点(2011年7月21日現在)での総検出報告数263件中、CA6が145件(55.1%)と患者から検出されたウイルスの半数以上を占めている(図4)。
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図4. 手足口病由来ウイルス分離・検出報告割合(2007〜2011年第28週) |
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臨床現場からの報告では、本年国内で流行している手足口病の臨床的特徴として、発症初期に高熱を発することが少なくなく、また昨年までみられていた典型的な発症例と比べて発疹が大きく、四肢末端に限局せずに広範囲に認められる症例が目立つとの情報が寄せられている。また、ヨーロッパでは最近、CA6の感染によって手足口病を発症し、治癒してから数週間経過した後に、爪甲が爪床から浮き上がって剥離・脱落する症例(爪甲脱落症)の多発が、小児及び成人で報告されている。一方、本年のわが国の手足口病発症例においても、爪甲脱落症が疑われる例が報告されてきており、今後手足口病の流行が終息した後も本症例について留意する必要がある。
過去の発生動向調査の推移を参照すると、現在手足口病の発生はそのピークを迎えつつあるものと推察されるが、これまでの最多報告数を更新しており、その発生動向には今後も注意が必要である。
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