発生動向総覧
〈第36週コメント〉 9月14日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 407例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢14例
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菌種:S. sonnei (D群)12例_感染地域:山形県3例*、福島県3例*、茨城県1例、埼玉県1例、千葉県1例、国内(都道府県不明)2例、インドネシア1例
S. flexneri (B群)2例_感染地域:東京都2例
* 同系列の外食チェーン店舗で起きた食中毒の患者を含む
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腸管出血性大腸菌感染症126例(有症者76例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内125例、韓国1例
国内の多い感染地域:大阪府15例*、新潟県9例、宮城県8例、東京都7例、広島県6例、大分県6例、千葉県5例
* バーベキューによる食中毒の患者を含む
年齢群:0歳(1例)、1歳(6例)、2歳(1例)、3歳(6例)、4歳(5例)、5歳(3例)、6歳(5例)、7歳(5例)、8歳(1例)、9歳(2例)、10代(24例)、20代(13例)、30代(18例)、40代(8例)、50代(10例)、60代(9例)、70代(2例)、80代(7例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2( 59例)、O157 VT2(18例)、O26 VT1(14例)、O26 VT1・VT2(4例)、O157 VT不明(4例)、O55 VT1(3例)、O111 VT1・VT2( 3例)、O115 VT1(3例)、O145 VT2(3例)、O121 VT2(2例)、O20 VT1・VT2(1例)、O74 VT2(1例)、O86a VT2(1例)、O103 VT1(1例)、O103 VT不明(1例)、O145 VT1(1例)、その他・不明(7例)
累積報告数:2,950例(有症者2,048例、うちHUS 84例.死亡13例)
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4類感染症: |
A型肝炎1例(感染地域:フィリピン) つつが虫病1例(感染地域:新潟県) デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、ベトナム1例)
日本紅斑熱4例(感染地域:三重県1例、和歌山県1例、愛媛県1例、佐賀県1例)
レジオネラ症14例(肺炎型14例.うち1例死亡)
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感染地域:千葉県2例、東京都2例、埼玉県1例、神奈川県1例、新潟県1例、長野県1例、兵庫県1例、山口県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)3例
年齢群:50代(6例)、60代(2例)、70代(4例)、80代(2例)
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レプトスピラ症1例
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感染地域:高知県1例、宮崎県1例_感染源:水田1例、池/水田1例
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5類感染症: |
アメーバ赤痢13例(腸管アメーバ症11例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:東京都2例、千葉県1例、大阪府1例、兵庫県1例、香川県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)5例、ベトナム1例
感染経路:性的接触2例(異性間1例、異性間・同性間不明1例)、
経口感染1例、経口感染/性的接触(異性間・同性間不明)1例、その他・不明9例
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ウイルス性肝炎2例(B型2例_感染経路:不明2例)
急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:5歳)
クロイツフェルト・ヤコブ病4例(孤発性プリオン病古典型4例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例〔年齢群:70代(死亡)〕
後天性免疫不全症候群7例(AIDS 2例、無症候5例) |
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感染地域:国内6例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触6例(異性間2例、同性間3例、異性/同性間1例)、不明1例
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ジアルジア症1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
梅毒13例(早期顕症I期3例、早期顕症II期4例、晩期顕性1例、無症候5例)
破傷風1例(年齢群:90代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例 |
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遺伝子型:Van B 1例_菌検出検体:胆汁
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:血液
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麻しん2例〔麻しん(検査診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:国内1例、マレーシア1例
国内の感染地域:三重県
年齢群:0歳(1例)、20〜24歳(1例)
累積報告数:392例〔麻しん(検査診断例186例、臨床診断例114例)、修飾麻しん(検査診断例92例)〕
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(補)2011年第35週までに診断されたものの報告遅れとして、デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、インド/ネパール1例)、日本紅斑熱2例(感染地域:長崎県1例、熊本県1例)、急性脳炎1例〔病原体不明(0歳)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は微増した。都道府県別では沖縄県(0.45)、福島県(0.03)、茨城県(0.03)、鳥取県(0.03)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,321例と第30週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では高知県(1.00)、長野県(0.91)、三重県(0.91)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では長野県(1.46)、福井県(1.45)、富山県(1.34)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第33週以降増加が続いている。都道府県別では大分県(5.4)、福井県(5.0)、福岡県(4.7)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では佐賀県(1.48)、長崎県(1.20)、愛媛県(1.14)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では秋田県(14.3)、青森県(10.9)、岩手県(10.8)、宮城県(10.6)、島根県(10.6)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では福島県(1.00)、徳島県(0.91)、愛知県(0.81)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では和歌山県(0.13)、広島県(0.13)、鳥取県(0.11)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では山形県(12.0)、新潟県(9.6)、長野県(6.6)、福島県(5.8)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では愛媛県(2.70)、鹿児島県(1.82)、長野県(1.78)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では富山県(2.40)、沖縄県(2.29)、埼玉県(2.22)が多い。
注目すべき感染症
◆ 手足口病
手足口病(hand, foot, and mouth disease:HFMD)は、口腔粘膜および手や足などに現れる水疱性の発疹を主症状とした急性ウイルス性感染症であり、乳幼児を中心に主に夏季に流行する疾患である。基本的には数日間の内に治癒する予後良好の疾患であるとされている。しかし稀ではあるが、髄膜炎、小脳失調症、脳炎などの中枢神経系の合併症などのほか、心筋炎、急性弛緩性麻痺などの多彩な臨床症状を呈することが以前より知られている。
手足口病の感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染であり、保育園や幼稚園などの乳幼児の集団生活施設においての感染予防は手洗いの励行と排泄物の適正な処理が基本となる。手足口病の病原ウイルスに感染しても全員が典型的な症状を呈するものではなく、不顕性感染例も存在することから、発症して診断された者を隔離しても効果的な対策とはならないと考えるべきである。また、主要症状が回復した後も比較的長期間に渡って児の便などからウイルスが排泄されることがあるが、基本的には軽症疾患であることを踏まえ、回復した児に対して長期間の欠席を求めることは現実的ではない。
手足口病の病原ウイルスは主にコクサッキーA16(CA16)、エンテロウイルス71(EV71)であり、その他CA6、CA9やCA10などのエンテロウイルスによっても発症する。2011年の手足口病の流行で患者から最も多く検出されているのはコクサッキーA6(CA6)であり、検出報告988件(2011年9月15日現在)中、CA6が551件(55.8%)と半数以上を占めている(図1)。本年の手足口病の臨床的特徴としては、発症初期に高熱を発することが少なくなく、昨年までみられていた典型的な発症例と比べて発疹が大きく、四肢末端に限局せずに広範囲に認められる症例が目立つといった情報が寄せられている。また、CA6の感染によって発症した手足口病では、治癒してから数週間経過した後に、爪甲が爪床から浮き上がって剥離・脱落する症例(爪甲脱落症)が少なからず存在することが以前よりヨーロッパ等で指摘されており(http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/15/9/09-0438_article.htm)、本年の国内の手足口病発症例においても、治癒後の爪甲が剥離・脱落する例が認められつつある。
感染症発生動向調査では、全国約3,000カ所の小児科定点からの報告に基づいて手足口病をはじめとする各種小児科疾患の発生動向を分析している。2011年第36週の手足口病の定点当たり報告数は4.1(報告数12,974)と前週(定点当たり報告数4.4)よりも減少したが、依然として過去5年間の同時期の報告数を大きく上回った状態が継続している(図2)。都道府県別では秋田県(14.3)、青森県(10.9)、岩手県(10.8)、宮城県(10.6)、島根県(10.6)、山形県(9.2)、富山県(7.8)、長野県(6.2)の順となっている。第29週以降、手足口病の報告数は減少傾向にあるが、東北地方や北海道ではまだ増加傾向を示している地域が少なからず認められており、第27週以降は減少が続いていた島根県でも第33週以降再び急激な増加がみられている(図3)。2011年第1〜36週の定点当たり累積報告数は89.0(累積報告数278,522)であり、年齢群別では0〜1歳の報告割合が38.0%、2〜3歳が34.9%と3歳までで全報告数の70%以上を占めている。
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図1. 手足口病由来ウイルス分離・検出報告割合(2007〜2011年第36週) |
図2. 手足口病の年別・週別発生状況(2001〜2011年第36週) |
図3. 手足口病の都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第34〜36週) |
2011年の手足口病の流行は第28週にピークとなり、その後は減少傾向を示しているものの、まだこれまでの同時期と比較してかなり患者報告数が多い状態が続いており、増加傾向を示している地域も少なからず存在している。今後とも手足口病の発生動向には注意深い観察が必要であることに加えて、手足口病治癒後の爪甲脱落症の発生にも注意すべきである。
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