発生動向総覧
〈第37週コメント〉 9月21日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 364例 |
3類感染症: |
コレラ1例(感染地域:神奈川県)
細菌性赤痢13例
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菌種:S. flexneri (B群)2例_感染地域:静岡県1例、鳥取県1例
S. sonnei(D群)11例_感染地域:福島県2例、山形県1例*、千葉県1例、神奈川県1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)2例、中国1例、韓国1例、タイ1例
* 第34週から報告されている同系列の外食チェーン店舗で起きた食中毒事例の患者
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腸管出血性大腸菌感染症81例(有症者52例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内77例、インドネシア2例、韓国1例、中国1例
国内の多い感染地域:宮城県12例、福島県7例、埼玉県7例、群馬県3例、東京都3例、愛知県3例、滋賀県3例、北海道2例、神奈川県2例、長野県2例、大阪府2例、山口県2例、佐賀県2例、鹿児島県2例
年齢群:1歳(4例)、2歳(1例)、3歳(3例)、4歳(3例)、5歳(1例)、6歳(2例)、7歳(1例)、8歳(1例)、9歳(2例)、10代(15例)、20代(13例)、30代(9例)、40代(2例)、50代(9例)、60代(9例)、70代(3例)、80代(3例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(28例)、O26 VT1(18例)、O157 VT2(14例)、O103 VT1(4例)、O26 VT1・VT2(3例)、O74 VT2(2例)、O103 VT不明(2例)、O157 VT不明(2例)、O91 VT1(1例)、O111 VT1・VT2(1例)、O111 VT1(1例)、O121 VT2(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:3,059例(有症者2,118例、うちHUS 86例.死亡13例)
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4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:北海道_感染源:不明) A型肝炎1例(感染地域:福岡県) 日本紅斑熱2例(感染地域:広島県2例.うち1例死亡)
日本脳炎1例(感染地域:長崎県_年齢群:60代)
マラリア1例(原虫種不明_感染地域:ガーナ)
レジオネラ症22例(肺炎型22例.うち2例死亡)
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感染地域:神奈川県5例、群馬県2例(うち1例温泉)、東京都2例、静岡県2例(うち1例温泉)、広島県2例、宮城県1例、新潟県1例、岐阜県1例、愛知県1例、大阪府1例、岡山県1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)1例、中国1例
年齢群:50代(7例)、60代(7例)、70代(5例)、80代(1例)、90代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢10例(腸管アメーバ症9例、腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:東京都2例、群馬県1例、石川県1例、岐阜県1例、愛知県1例、国内(都道府県不明)4例
感染経路:性的接触5例(異性間2例、同性間1例、異性間・同性間不明2例)、その他・不明5例
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ウイルス性肝炎1例〔B型_感染経路:性的接触(同性間)〕
急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:3歳)
クロイツフェルト・ヤコブ病3例 |
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孤発性プリオン病古典型2例
遺伝性プリオン病ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病1例.死亡
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例 |
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年齢群:60代(1例)、70代(1例.死亡)
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後天性免疫不全症候群14例(AIDS 3例、無症候10例、その他1例) |
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感染地域:国内13例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触12例(異性間2例、同性間10例)、不明2例
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ジアルジア症1例(感染地域:インド)
梅毒9例(早期顕症II期5例、無症候4例)
破傷風2例〔年齢群:70代(1例)、80代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例〔遺伝子型:Van C_菌検出検体:血液〕
風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例) |
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感染地域:広島県1例、鹿児島県1例
年齢群:10〜14歳(1例)、35〜39歳(1例)
累積報告数:316例(検査診断例244例、臨床診断例72例)
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麻しん3例〔麻しん(臨床診断例1例、修飾麻しん(検査診断例2例)〕
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感染地域:青森県1例、東京都1例、福岡県1例
年齢群:1歳(1例)、15〜19歳(2例)
累積報告数:397例〔麻しん(検査診断例186例、臨床診断例116例)、修飾麻しん(検査診断例95例)〕
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(補)他に2011年第36週までに診断されたものの報告遅れとして、コレラ1例(感染地域:ウズベキスタン)、細菌性赤痢2例〔菌種:S. sonnei(D群)2例_感染地域:宮城県1例、中国1例〕、デング熱1例(感染地域:スリランカ)、日本紅斑熱3例(感染地域:愛媛県2例、和歌山県1例)、ライム病1例(感染地域:北海道)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(0.66)、愛媛県(0.31)、茨城県(0.05)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,414例と第30週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約77%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では高知県(0.67)、福井県(0.64)、三重県(0.58)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では北海道(1.47)、福井県(1.41)、山口県(1.33)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(5.2)、大分県(4.9)、宮崎県(4.6)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(1.59)、宮崎県(1.28)、長崎県(1.16)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では秋田県(11.5)、宮城県(10.3)、青森県(10.0)、岩手県(8.3)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では徳島県(0.91)、宮崎県(0.86)、長野県(0.81)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では新潟県(0.23)、沖縄県(0.18)、香川県(0.13)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では山形県(10.2)、福島県(4.2)、新潟県(4.2)、長野県(4.2)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では愛媛県(2.78)、宮崎県(2.19)、新潟県(1.98)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では青森県(3.67)、埼玉県(2.89)、福島県(2.86)が多い。
〈8月コメント〉
◆性感染症について 2011年9月13日集計分 性感染症定点数:967
(産婦人科・産科・婦人科:469、泌尿器科:399、皮膚科86、性病科13)
●月別推移
2011年8月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.40(男1.11、女1.29)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.77(男0.32、女0.45)、尖圭コンジローマが0.50(男0.30、女0.20)、淋菌感染症が1.07(男0.83、女0.24)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で横ばい、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で増加した。女性では、4疾患すべてで増加した(31〜34ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、男性では性器クラミジア感染症でやや少なく、女性では淋菌感染症でやや多かった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(8月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は35〜39歳の年齢群、尖圭コンジローマは30〜39歳の2つの年齢群、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜34歳の2つの年齢群、尖圭コンジローマは20〜24歳の年齢群、淋菌感染症は20〜24歳の年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、男性では性器ヘルペスウイルス感染症、女性では淋菌感染症で10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患の報告は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上は僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、年齢群分布においての明らかな変化は見られておらず、この基準の周知徹底とともに、遵守されているかの検討なども今後必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜34歳、65〜69歳、70歳以上の6つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜29歳の3つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性より多く、他の年齢群は同値あるいは男性が多かった。淋菌感染症ではすべての年齢で男性が女性より多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較については各地域におけるそれらの比率等の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男性では2003年以降減少傾向がみられた後、2009〜2010年はほぼ横ばいで推移したが、2011年は再び減少している。女性では2003年以降減少傾向がみられている。性器ヘルペスウイルス感染症は男性では2007年以降微減傾向がみられた後、2010年はほぼ横ばいであったが、2011年は再び減少している。女性では2006年以降微減傾向がみられたが、2010年にやや増加した後、2011年は再び減少している。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられたが、男性では2011年は横ばいで、女性では2010年以降はほぼ横ばいで推移している。淋菌感染症は男性では2003年以降減少傾向がみられ、2010年に増加傾向がみられたが、2011年は再び減少している。女性では2004年以降微減傾向がみられた後2007年以降は横ばいで推移していたが、2011年は微増している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で増加、ヘルペスウイルス感染症で減少、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で増加であった。女性では性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で同値、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で増加であった。
◆薬剤耐性菌について (9月13集計分)
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基幹定点数(8月):467.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.60(前月:4.04、前年同月:4.62)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。8月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では上位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.67(前月:0.68、前年同月:0.73)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。8月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症
0.10(前月:0.11、前年同月:0.13)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。8月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では下位に属した。
薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)感染症
0.01(前月:0.01、前年同月:−)
報告数は5例であった。本年2月の報告開始から間もないため、傾向の分析や過去との比較は出来ない。
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●年齢階級別
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MRSA感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の61%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の54%を占める一方、70歳以上が全体の24%を占めている(図2:PDF参照)。
MDRP感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の78%を占めている(図3:PDF参照)
MDRA感染症
5〜9歳、50代、60代でそれぞれ1例、70歳以上で2例報告されている(図4:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.6:1
PRSP感染症…男:女=1.4:1
MDRP感染症…男:女=1.1:1
MDRA感染症…男:女=男性2例、女性3例が報告されている。
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は滋賀県(12.0)、沖縄県(11.0)、新潟県(10.8)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(2.9)、新潟県(2.1)、福井県(2.0)が多い。
MDRP感染症
報告総数が45例にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
MDRA感染症
5例のみの報告であるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である
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注目すべき感染症
◆ RSウイルス感染症
RSウイルス感染症(respiratory syncytial virus infection)は、病原体であるRSウイルスが伝播することによって発生する呼吸器感染症である。年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返し、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児がRSウイルスの初感染を受けるとされているが、乳幼児期においては非常に重要な疾患であり、特に生後数週間〜数カ月間の時期においては母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす。
潜伏期間は2〜8日、典型的には4〜6日とされているが、発熱、鼻汁などの上気道炎症状が数日続き、その後下気道症状が出現してくる。咳嗽、鼻汁などの上気道症状が2〜3日続いた後、感染が下気道、とくに細気管支に及んだ場合には特徴的な病型である細気管支炎となる。炎症性浮腫と分泌物、脱落上皮により細気管支が狭くなるに従い、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などを呈する。心肺に基礎疾患を有する児においては、しばしば遷延化、重症化する。喀痰の貯留により無気肺をおこしやすい。発熱は初期症状として普通に見られるが、入院時には38℃以下になるか、消失していることが多い。RSウイルス感染症は、乳幼児の肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50〜90%を占めるとの報告もある。また、低出生体重児や、心肺系に基礎疾患があったり、免疫不全が存在する場合には重症化のリスクは高く、臨床上、公衆衛生上のインパクトは大きい。合併症として注意すべきものには無呼吸、ADH分泌異常症候群、急性脳症等がある(IASR 2008年10月号http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/344/tpc344-j.html 参照)。
予防方法としては、遺伝子組み換え技術を用いて作成された単クローン抗体製剤(Palivizumab:パリビズマブ)が2002年1月に認可されており、早産児や慢性肺疾患を持つ小児などのハイリスク児に対しては、流行前から流行期の間、1カ月毎に予防的な投与が考慮される。
RSウイルスの主な感染経路は飛沫感染と接触感染であるが、感染力が強く、また再感染例等で典型的な症状を呈さずにRSウイルス感染と気付かれない軽症例も存在することから、家族間の感染や乳幼児の集団生活施設等での流行を効果的に抑制することは困難であるといわれている(出展:Mandell, Douglas, and Bennett's Principales and Practice of Infectious Diseases 7th edition)。小児の集団生活施設で流行している場合は、RSウイルス感染症と診断された有症状者を隔離(欠席を含む)することに加えて、(1)飛沫感染対策としてはマスクを着用するなどして咳エチケットに努める、(2)接触感染対策としては手洗いもしくは速乾性刷式アルコール製剤による手指消毒剤による手指衛生を励行する、等を職員も含めて全員が実行すべきである。
RSウイルス感染症の発生動向については、感染症法改正(2003年11月5日施行)により対象疾患となり、全国約3,000の小児科定点医療機関から毎週報告がなされている。診断は臨床症状のみでは不可能であることから、届出基準としてウイルスの分離・同定、迅速診断キットによる抗原検出、血清抗体検出(中和反応または補体結合反応)による病原検査が必須とされている。しかし、臨床現場で最も簡便な迅速診断キット検査については、医療保険適用として入院例のみが対象であり、小児科定点医療機関の70%以上を占める病院以外の一般医療機関では診断に至らずに報告されていない症例が少なくないと推察される。従って、発生動向調査によるRSウイルス感染症の報告数は、国内の現状を正確に反映しているとは必ずしも言えない面もあるが、ここ数年その報告数は増加傾向にあり、また最近では外来診療の際にもRSウイルスの迅速抗原検査を実施する小児科医が多くなってきているとの指摘もある。
RSウイルス感染症の小児科定点医療機関からの報告数は、例年冬期にピークが見られ、夏期は報告数が少ない状態が継続しているが、2011年は第25週から増加傾向が続いている。第37週の患者報告数は1,414例であり、2004年以降の同時期の報告数としてはこれまでで最も多い状態が第16週以降継続している(図1)。都道府県別の報告数をみると、大阪府(205)、宮崎県(160)、東京都(126)、福岡県(100)、香川県(69)、愛知県(50)の順であり、26都道府県で前週よりも増加がみられている(図2)。
2011年第1〜37週の累積報告数(34,900)の年齢群別割合をみると、0歳児42.3%(0〜5カ月19.6%、6〜11カ月22.7%)、1歳児32.4%、2歳児13.5%、3歳児6.4%、4歳児3.0%の順であり、1歳以下で全報告数の約70%以上を、3歳以下で全報告数の90%以上を占めているのは、2004年以降変わっていない(図3)。
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図1. RSウイルス感染症の年別・週別発生状況(2003年第45週〜2011年第37週) |
図2. RSウイルス感染症の都道府県別報告数の推移(2011年第35〜37週) |
図3. RSウイルス感染症の年別・年齢群別割合(2004年〜2011年第37週) |
RSウイルス感染症は冬季に最も流行する感染症であり、例年12月か又は翌年の1月にそのピークを迎えている。第37週の報告数は、例年であれば10月中旬から11月下旬に認められる水準であり、今後冬期に向けて更に報告数が増加してくるものと予想される。RSウイルス感染症は、その重篤性や合併症から特に乳幼児において極めて重要な感染症であり、今後の同疾患の報告数の推移についてはより一層の注意が必要である。
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