発生動向総覧
〈第39週コメント〉 10月5日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 392例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢7例
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菌種:S. flexneri(B群)1例_感染地域:台湾/インドネシア
S. sonnei(D群)6例_感染地域:福島県1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)1例、インド2例、カンボジア1例
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腸管出血性大腸菌感染症61例(有症者51例、うちHUS 2例) |
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感染地域:国内61例
国内の感染地域:東京都6例、北海道5例、山形県5例、福岡県5例、福島県3例、岐阜県3例、長野県2例、静岡県2例、奈良県2例、鹿児島県2例、宮城県1例、秋田県1例、栃木県1例、群馬県1例、神奈川県1例、兵庫県1例、広島県1例、山口県1例、熊本県1例、大分県1例、宮崎県1例、沖縄県1例、不明14例
年齢群:1歳(3例)、2歳(3例)、3歳(1例)、4歳(1例)、5歳(1例)、7歳(3例)、9歳(2例)、10代(11例)、20代(11例)、30代(3例)、40代(4例)、50代(5例)、60代(8例)、70代(3例)、80代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(18例)、O157 VT2(14例)、O26 VT1(12例)、O111 VT1(3例)、O157 VT不明(3例)、O103 VT(12例)、O111 VT1・VT(22例)、O74 VT2(1例)、O91 VT1(1例)、O145 VT1・VT2(1例)、O145 VT不明(1例)、O157 VT1(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:3,212例(有症者2,235例、うちHUS 89例.死亡13例)
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腸チフス2例〔感染地域:国内(都道府県不明)1例、インド1例〕
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4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:東京都_感染源:不明) A型肝炎1例(感染地域:鹿児島県) チクングニア熱1例(感染地域:インド) つつが虫病3例(感染地域:新潟県1例、福井県1例、島根県1例)
デング熱6例
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感染地域:カンボジア2例、インド2例、モルディブ1例、ベトナム/ラオス1例
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日本紅斑熱5例(感染地域:広島県2例、和歌山県1例、徳島県1例、鹿児島県1例)
日本脳炎1例(感染地域:福岡県_年齢群:60代)
マラリア5例
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熱帯熱4例_感染地域:パキスタン3例、ブルキナファソ1例
三日熱1例_感染地域:インド
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レジオネラ症15例(肺炎型14例、ポンティアック型1例)
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感染地域:埼玉県2例、長野県2例、栃木県1例、東京都1例、山梨県1例、岐阜県1例、静岡県1例、愛知県1例、兵庫県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)2例(うち1例温泉)、中国1例
年齢群:50代(1例)、60代(8例)、70代(2例)、80代(4例)
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レプトスピラ症1例(感染地域:沖縄県_感染原因:ダム)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢13例(腸管アメーバ症10例、腸管外アメーバ症1例、腸管及び腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:東京都2例、群馬県1例、千葉県1例、神奈川県1例、大阪府1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)1例、台湾1例、タイ1例、インドネシア1例、台湾/インドネシア1例、タイ/カンボジア1例
感染経路:経口感染6例、性的接触4例(異性間3例、同性間1例)、不明3例
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ウイルス性肝炎5例 |
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B型4例_感染経路:性的接触4例(異性間3例、異性間・同性間不明1例)
C型1例_感染経路:性的接触(異性間)
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急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:0歳)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
後天性免疫不全症候群15例(AIDS 4例、無症候10例、その他1例) |
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感染地域:国内10例、米国1例、ケニア1例、中央アフリカ1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触13例(異性間3例、同性間9例、異性/同性間1例)、その他・不明2例
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梅毒12例(早期顕症I期4例、早期顕症II期1例、晩期顕症1例、無症候6例)
破傷風1例(年齢群:80代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:Van C_菌検出検体:腹水)
風しん3例(検査診断例2例、臨床診断例1例) |
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感染地域:東京都1例、神奈川県1例、福岡県1例
年齢群:1歳(1例)、35〜39歳(1例)、40代(1例)
累積報告数:323例(検査診断例250例、臨床診断例73例)
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(補)2011年第38週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例〔菌種:S. sonnei(D群)_感染地域:ウズベキスタン〕、E型肝炎1例(感染地域:不明_感染源:レバー)、デング熱2例(感染地域:バングラデシュ1例、インド1例)、日本紅斑熱3例(感染地域:和歌山県1例、愛媛県1例、鹿児島県1例)、レプトスピラ症1例(感染地域:愛媛県_感染原因:河川)、急性脳炎2例〔単純ヘルペスウイルス1例(50代)、病原体不明1例(4歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(70代.死亡)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第35週以降増加が続いている。都道府県別では沖縄県(0.83)、山口県(0.67)、愛媛県(0.16)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,781例と増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第29週以降減少が続いている。都道府県別では愛媛県(0.54)、福岡県(0.53)、奈良県(0.49)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(2.09)、石川県(1.38)、大分県(1.36)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では大分県(5.14)、福井県(4.73)、宮崎県(4.56)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では福井県(0.95)、大分県(0.86)、鳥取県(0.79)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第36週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では宮城県(9.9)、秋田県(5.2)、岩手県(5.1)、青森県(4.7)、福島県(4.7)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では島根県(0.65)、徳島県(0.57)、高知県(0.53)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では群馬県(0.10)、千葉県(0.10)、広島県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第36週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してやや多い。都道府県別では山形県(4.50)、愛媛県(1.97)、福島県(1.63)、富山県(1.41)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では愛媛県(2.32)、宮崎県(2.25)、新潟県(2.17)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では埼玉県(3.22)、大阪府(2.67)、愛知県(2.62)、沖縄県(2.57)が多い。
注目すべき感染症
◆ RSウイルス感染症
RSウイルス感染症(respiratory syncytial virus infection)は、病原体であるRSウイルスが伝播することによって発生する呼吸器感染症である。年齢を問わず、生涯にわたり顕性感染を繰り返し、生後1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の児がRSウイルスの初感染を受けるとされているが、乳幼児期においては非常に重要な疾患であり、特に生後数週間〜数カ月間の時期においては母体からの移行抗体が存在するにもかかわらず、下気道の炎症を中心とした重篤な症状を引き起こす。
潜伏期間は2〜8日、典型的には4〜6日とされているが、発熱、鼻汁などの上気道炎症状が数日続き、その後下気道症状が出現してくる。咳嗽、鼻汁などの上気道症状が2〜3日続いた後、感染が下気道、とくに細気管支に及んだ場合には特徴的な病型である細気管支炎となる。炎症性浮腫と分泌物、脱落上皮により細気管支が狭くなるに従い、呼気性喘鳴、多呼吸、陥没呼吸などを呈する。心肺に基礎疾患を有する児においては、しばしば遷延化、重症化する。喀痰の貯留により無気肺をおこしやすい。発熱は初期症状として普通に見られるが、入院時には38℃以下になるか、消失していることが多い。RSウイルス感染症は、乳幼児の肺炎の原因の約50%、細気管支炎の50〜90%を占めるとの報告もある。また、低出生体重児や、心肺系に基礎疾患があったり、免疫不全が存在する場合には重症化のリスクは高く、臨床上、公衆衛生上のインパクトは大きい。合併症として注意すべきものには無呼吸、ADH分泌異常症候群、急性脳症等がある(IASR 2008年10月号http://idsc.nih.go.jp/iasr/29/344/tpc344-j.html 参照)。
RSウイルスの主な感染経路は飛沫感染と接触感染であるが、感染力が強く、また再感染例等で典型的な症状を呈さずにRSウイルス感染と気付かれない軽症例も存在することから、家族間の感染や乳幼児の集団生活施設等での流行を効果的に抑制することは困難であるといわれている。
RSウイルス感染症の発生動向については、感染症法改正(2003年11月5日施行)により対象疾患となり、全国約3,000の小児科定点医療機関から毎週報告がなされている。診断は臨床症状のみでは不可能であることから、届出基準としてウイルスの分離・同定、迅速診断キットによる抗原検出、血清抗体検出(中和反応または補体結合反応)による病原検査が必須とされている。しかし、臨床現場で最も簡便な迅速診断キット検査については、医療保険適用として入院例のみが対象であり、小児科定点医療機関の70%以上を占める病院以外の一般医療機関では診断に至らずに報告されていない症例が少なくないと推察される。従って、発生動向調査によるRSウイルス感染症の報告数は、国内の現状を正確に反映しているとは必ずしも言えない面もあるが、ここ数年その報告数は増加傾向にあり、また最近では外来診療の際にもRSウイルスの迅速抗原検査を実施する小児科医が多くなってきているとの指摘もある。
RSウイルス感染症の小児科定点医療機関からの報告数は、例年冬期にピークが見られ、夏期は報告数が少ない状態が継続しているが、2011年は、祝日を含んだ第29週および第38週を除き、第25週から増加が続いている。第39週は1,781例と前週(第38週)の報告数1,336例よりも大きく増加した。2004年以降の同時期の報告数としてはこれまでで最も多い状態が第16週以降継続している(図1)。都道府県別の報告数をみると、東京都(173)、大阪府(168)、宮崎県(105)、愛知県(87)、香川県(67)、福岡県(62)、神奈川県(61)の順となっており、36都道府県で前週の報告数よりも増加がみられている(図2)。
2011年第1〜39週の累積報告数(38,041)の年齢群別割合をみると、0歳児42.1%(0〜5カ月19.4%、6〜11カ月22.6%)、1歳児32.6%、2歳児13.5%、3歳児6.4%、4歳児3.0%の順であり、1歳以下で全報告数の約70%以上を、3歳以下で全報告数の90%以上を占めているのは、2004年以降変わっていない(図3)。
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図1. RSウイルス感染症の年別・週別発生状況(2003年第45週〜2011年第39週) |
図2. RSウイルス感染症の都道府県別報告数の推移(2011年第37〜39週) |
図3. RSウイルス感染症の年別・年齢群別割合(2004年〜2011年第39週) |
RSウイルス感染症は冬季に最も流行する感染症であり、例年12月か又は翌年の1月にそのピークを迎えている。第39週の報告数は、例年であれば11月に相当する流行水準であり、今後冬期に向けて更に報告数が増加してくるものと予想される。RSウイルス感染症は、その重篤性や合併症から特に乳幼児において臨床的および公衆衛生的に極めて重要な感染症であり、今後の同疾患の報告数の推移についてはより一層の注意が必要である。
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