発生動向総覧
〈第43週コメント〉 11月2日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 347例 |
3類感染症: |
コレラ1例(感染地域:インドネシア)
細菌性赤痢8例
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菌種:S. sonnei(D群)8例_感染地域:東京都2例、国内(都道府
県不明)1例、フィリピン2例、カンボジア2例、キューバ1例
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腸管出血性大腸菌感染症37例(有症者24例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内36例、米国/メキシコ1例
国内の感染地域:福岡県5例、鹿児島県4例、大阪府3例、長崎県3例、千葉県2例、東京都2例、長野県2例、秋田県1例、福島県1例、茨城県1例、群馬県1例、石川県1例、兵庫県1例、広島県1例、愛媛県1例、高知県1例、熊本県1例、宮崎県1例、不明4例
年齢群:2歳(2例)、3歳(4例)、4歳(2例)、7歳(1例)、10代(3例)、20代(6例)、30代(5例)、40代(5例)、50代(3例)、60代(3例)、70代(1例)、80代(1例)、90代(1例)
血清型・毒素型:O26 VT1(12例)、O157 VT1・VT2(12例)、O157 VT2(5例)、O18 VT2(1例)、O91 VT1(1例)、O103 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、O145 VT1(1例)、O146 VT2(1例)、O157 VT不明(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:3,489例(有症者2,404例、うちHUS 91例.死亡14例)
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パラチフス1例(感染地域:宮城県)
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4類感染症: |
E型肝炎1例〔感染地域:国内(都道府県不明)_感染源:豚肉〕
A型肝炎2例〔感染地域:国内(都道府県不明)2例〕
オウム病1例(感染地域:山形県_感染源:ハト)
つつが虫病8例
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感染地域:福島県3例、神奈川県3例、石川県1例、鹿児島県1例
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デング熱1例(感染地域:フィリピン) 日本紅斑熱3例(感染地域:三重県1例、高知県1例、鹿児島県1例)
日本脳炎1例(感染地域:福岡県_年齢群:70代.死亡)
マラリア3例
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熱帯熱3例_感染地域:ブルキナファソ2例、その他(インドから日本への航海途上)1例
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レジオネラ症14例(肺炎型12例、ポンティアック型2例)
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感染地域:埼玉県2例、北海道1例、宮城県1例、群馬県1例(温泉)、神奈川県1例、新潟県1例、長野県1例、愛知県1例、兵庫県1例(温泉)、国内(都道府県不明)4例
年齢群:10代(1例)、40代(3例)、50代(1例)、60代(4例)、70代(4例)、80代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症6例、腸管外アメーバ症3例) |
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感染地域:東京都2例、神奈川県2例、愛知県2例、宮城県1例、国内(都道府県不明)1例、タイ1例
感染経路:性的接触2例(異性間1例、同性間1例)、経口感染1例、不明6例
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ウイルス性肝炎2例 |
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B型2例_感染経路:性的接触2例(異性間1例、同性間1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
後天性免疫不全症候群20例(AIDS 4例、無症候14例、その他2例) |
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感染地域:国内18例、中国1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触17例(異性間3例、同性間11例、異性/同性間2例、異性間・同性間不明1例)、その他・不明3例
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梅毒19例(早期顕症I期4例、早期顕症II期6例、晩期顕症1例、無症候8例)
破傷風1例(年齢群:70代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症4例 |
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遺伝子型:VanC 3例_菌検出検体:血液1例、腹水1例、CAPD排液1例
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:尿
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麻しん2例〔麻しん(臨床診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:青森県1例、埼玉県1例
年齢群:1歳(1例)、3歳(1例)
累積報告数:418例〔麻しん(検査診断例196例、臨床診断例119例)、修飾麻しん(検査診断例103例)〕
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(補)2011年年第42週までに診断されたものの報告遅れとして、コレラ1例(感染地域:インド)、日本紅斑熱4例(感染地域:三重県3例、鳥取県1例)、レジオネラ症1例〔感染地域:兵庫県(温泉)〕、急性脳炎4例〔病原体不明4例_0歳(1例)、1歳(1例)、4歳(1例)、80代(1例.死亡)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔6歳(1例)、70代(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では沖縄県(2.07)、鳥取県(0.69)、山口県(0.49)、福井県(0.47)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,864例と2週連続で増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約72%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では新潟県(0.52)、徳島県(0.52)、秋田県(0.44)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では北海道(2.62)、大分県(2.33)、福井県(2.00)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山口県(8.3)、愛媛県(6.7)、大分県(6.6)、宮崎県(5.3)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では岩手県(2.20)、大分県(2.06)、山形県(1.60)、宮城県(1.58)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第36週以降減少が続いているが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では福島県(3.02)、鹿児島県(2.98)、鳥取県(2.79)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では愛媛県(1.05)、福島県(0.71)、高知県(0.67)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では広島県(0.18)、高知県(0.13)、香川県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第36週以降減少が続いている。都道府県別では徳島県(1.17)、山形県(0.77)、愛媛県(0.68)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鳥取県(2.58)、愛媛県(2.57)、新潟県(1.90)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(3.43)、岐阜県(3.20)、岡山県(3.20)、大阪府(3.00)が多い。
注目すべき感染症
◆ マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎は、肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)を病原体とする呼吸器感染症である。感染経路としては、飛沫感染による経気道感染や、接触感染によって伝播すると言われている。感染には濃厚接触が必要と考えられており、保育施設、幼稚園、学校などの閉鎖施設内や家庭などでの感染伝播はみられるが、短時間の曝露による感染拡大の可能性はそれほど高くはない。潜伏期間は2〜3週間とインフルエンザやRSウイルス感染症等の他の小児を中心に大きく流行する呼吸器疾患と比べて長く、初発症状は発熱、全身倦怠、頭痛などである。本症の特徴的な症状である咳は、初発症状発現後3〜5日より始まることが多く、乾性の咳が経過に従って徐々に増強し、解熱後も長期にわたって(3〜4週間)持続する。治療は抗菌薬投与による原因療法が基本であるが、Mycoplasma pneumoniae は細胞壁を持たないために、β-ラクタム系抗菌薬には感受性はない。これまでは蛋白合成阻害薬であるマクロライド系(エリスロマイシン、クラリスロマイシン等)が第1選択薬とされてきたが、以前よりマクロライド系抗菌薬に耐性を有する耐性株が存在することが明らかとなっており(IASR速報http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3814.html、IASR特集:マイコプラズマ肺炎http://idsc.nih.go.jp/iasr/28/324/tpc324-j.html)、近年その耐性株の割合が増加しつつあるとの指摘もあり、注意が必要である。
診断には特異的IgM抗体迅速検出キットが開発され、臨床現場において活用されてきているが、幼児、学童の初回感染例では発病1週間以内では陰性を示すことが多く、また単一血清で高い抗体価であっても感染の既往を示している可能性を否定できない。最近は、PCR法やLAMP法による遺伝子検出が次第に多くの検査機関で実施されるようになってきている。
マイコプラズマ肺炎は、かつては、他の病原体によるものも含まれる「異型肺炎」として発生動向調査が実施されていたが、1999年4月の感染症法改正により、現在の病原体診断に基づく調査となった。現在、マイコプラズマ肺炎のサーベイランスは全国約500カ所の基幹定点医療機関(2次医療圏域毎に1カ所以上設定された、300人以上収容する施設を有する病院)からの報告に基づいている。
2011年のマイコプラズマ肺炎の基幹定点からの定点当たり報告数は、第25週以降は1999年の調査開始以降の同時期と比較して最も多い状態が継続している。特に第40週以降は定点当たり報告数が1.00を超えた状態が継続している。第43週の定点当たり報告数は前週(定点当たり報告数1.13)よりも増加し、1.20(報告数552)であった(図1)。都道府県別では沖縄県(3.43)、岐阜県(3.20)、岡山県(3.20)、大阪府(3.00)、埼玉県(2.89)、青森県(2.50)、福島県(2.43)、宮城県(2.42)の順となっており、23都道府県で前週よりも報告数の増加が認められた(図2)。
2011年第1〜43週の定点当たり累積報告数は25.03(累積報告数11,539)であり、既に2000年以降の年間の最多報告数(2010年、定点当たり累積報告数22.50)を上回っている。年齢群別では0〜4歳36.6%、5〜9歳29.6%、10〜14歳15.0%、20〜39歳7.7%、60歳以上4.9%の順となっている。2007年以降は成人の報告割合がやや増加して全報告数の20%近くを占めるようになってきているが、一方で14歳以下が80%前後を占めており、マイコプラズマ肺炎の報告の中心が小児であることには変わりはない(図3)。
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図1. マイコプラズマ肺炎の年別・週別発生状況(2001〜2011年第43週) |
図2. マイコプラズマ肺炎の都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第41〜43週) |
図3. マイコプラズマ肺炎の年別・年齢群別割合(2000〜2011年第43週) |
2011年のマイコプラズマ肺炎の週毎の報告数は、1999年4月の発生動向調査開始以来の多い水準を保ったまま例年報告数が若干増加傾向となる時期を迎えつつある。今後ともマイコプラズマ肺炎の報告数の推移については慎重に経過観察していくべきであると同時に、これまで治療の第一選択薬とされていたマクロライド系抗菌薬に対する耐性株に関する情報にも注意していく必要がある。
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