発生動向総覧
〈第45週コメント〉 11月16日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 347例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢6例
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菌種:S. flexneri (B群)1例_感染地域:バングラデシュ
S. boydii (C群)1例_感染地域:中国
S. sonnei (D群)4例_感染地域:埼玉県1例、東京都1例、長野県1例、ザンビア1例
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腸管出血性大腸菌感染症42例(有症者20例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内41例、韓国1例
国内の感染地域:千葉県17例*、宮城県4例、栃木県4例、長野県3例、三重県2例、福岡県2例、群馬県1例、埼玉県1例、東京都1例、静岡県1例、広島県1例、熊本県1例、宮崎県1例、不明2例
* 保育園に関連した集団感染例を含む(O145 VT1)
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、2歳(1例)、3歳(3例)、4歳(3例)、5歳(1例)、6歳(3例)、7歳(1例)、8歳(3例)、9歳(1例)、10代(5例)、20代(10例)、30代(3例)、40代(1例)、50代(1例)、60代(2例)、70代(2例)
血清型・毒素型:O145 VT1(17例)、O157 VT1・VT2(10例)、O157 VT1(6例)、O157 VT2(3例)、O26 VT1(2例)、O157 VT不明(2例)、O91 VT1(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:3,615例(有症者2,467例、うちHUS 93例.死亡14例)
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4類感染症: |
A型肝炎3例(感染地域:兵庫県1例、福岡県1例、パプアニューギニア1例)
チクングニア熱1例(感染地域:インド)
つつが虫病24例
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感染地域:群馬県4例、神奈川県4例、福島県3例、岐阜県3例、広島県3例、大分県2例、山形県1例、石川県1例、福岡県1例、長崎県1例、国内(都道府県不明)1例
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日本紅斑熱4例(感染地域:熊本県2例、徳島県1例、宮崎県1例)
ボツリヌス症1例
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乳児ボツリヌス症_感染地域:国内(都道府県不明)_感染源:不明
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レジオネラ症7例(肺炎型7例)
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感染地域:岩手県1例、栃木県1例、群馬県1例(温泉)、埼玉県1例、石川県1例、岡山県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:50代(1例)、60代(3例)、70代(3例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢8例(腸管アメーバ症7例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:東京都1例、大阪府1例、福岡県1例、国内(都道府県不明)4例、タイ1例
感染経路:性的接触3例(同性間1例、異性間・同性間不明2例)、経口感染/性的接触(異性間)1例、経口感染/性的接触(異性間・同性間不明)1例、経口感染1例、不明2例
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急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:3歳)
クリプトスポリジウム症1例(感染地域:フィリピン)
クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例) 劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(年齢群:80代)
後天性免疫不全症候群23例(AIDS 4例、無症候18例、その他1例) |
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感染地域:国内19例、台湾1例、国内・国外不明3例
感染経路:性的接触21例(異性間2例、同性間17例、異性/同性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明2例
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ジアルジア症1例(感染地域:大阪府) 梅毒9例(早期顕症I期1例、早期顕症II期3例、晩期顕症1例、無症候4例)
破傷風1例(年齢群:70代)
風しん4例(検査診断例4例)
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感染地域:福岡県2例、インドネシア1例、国内・国外不明1例
年齢群:2歳(1例)、20〜24歳(2例)、35〜39歳(1例)
累積報告数:343例(検査診断例267例、臨床診断例76例)
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(補)2011年第44週までに診断されたものの報告遅れとして、日本紅斑熱1例(感染地域:三重県)、レジオネラ症1例〔感染地域:北海道(温泉)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(60代)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症1例(遺伝子型:VanC_菌検出検体:血液.死亡)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では沖縄県(1.88)、宮城県(0.77)、岐阜県(0.44)、三重県(0.40)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,988例と第42週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約74%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では北海道(0.94)、新潟県(0.93)、徳島県(0.61)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では北海道(3.30)、大分県(3.00)、富山県(2.48)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では山口県(10.0)、大分県(9.5)、宮崎県(7.3)、岩手県(6.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では山形県(2.87)、岩手県(2.78)、福井県(2.59)、大分県(2.25)が多い。手足口病の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では鳥取県(3.47)、滋賀県(2.38)、宮城県(2.31)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では徳島県(1.13)、高知県(0.77)、愛媛県(0.76)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では栃木県(0.21)、岩手県(0.15)、沖縄県(0.15)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第36週以降減少が続いている。都道府県別では徳島県(1.22)、香川県(0.37)、高知県(0.33)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では山形県(2.70)、宮崎県(2.25)、新潟県(2.08)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(5.14)、愛知県(3.15)、福島県(3.14)、埼玉県(2.89)が多い。
〈10月コメント〉
◆性感染症について 2011年11月14日集計分 性感染症定点数:958
(産婦人科・産科・婦人科:462、泌尿器科:400、皮膚科83、性病科13)
●月別推移
2011年10月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.36(男1.10、女1.26)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.73(男0.30、女0.44)、尖圭コンジローマが0.44(男0.24、女0.20)、淋菌感染症が0.92(男0.74、女0.18)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で減少、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で減少した。女性では、性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で微減、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で減少した(28〜31ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、男性の尖圭コンジローマでやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(10月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は30〜39歳の2つの年齢群、尖圭コンジローマは25〜39歳の3つの年齢群、淋菌感染症は20〜29歳の2つの年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜29歳の年齢群、尖圭コンジローマは25〜29歳の年齢群、淋菌感染症は20〜24歳の年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、男性では性器クラミジア感染症で、女性では性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症で10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患の報告は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上は僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、年齢群分布においての明らかな変化は見られておらず、この基準の周知徹底とともに、遵守されているかの検討なども今後必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜34歳、45〜49歳、60〜64歳、70歳以上の7つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜29歳の3つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性より多く、他の年齢群は同値あるいは男性が多かった。淋菌感染症ではすべての年齢群で同値あるいは男性が女性より多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較については各地域におけるそれらの比率等の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男性では2003年以降減少傾向がみられた後、2009〜2010年はほぼ横ばいで推移したが、2011年は再び減少している。女性では2003年以降減少傾向がみられていたが、2011年は横ばいである。性器ヘルペスウイルス感染症は男性では2007年以降微減傾向がみられた後、2010年はほぼ横ばいであったが、2011年は再び減少している。女性では2006年以降微減傾向がみられたが、2010年にやや増加した後、2011年は再び減少している。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられたが、男性では2011年は横ばいで、女性では2010年以降はほぼ横ばいで推移している。淋菌感染症は男性では2003年以降減少傾向がみられ、2010年に増加傾向がみられたが、2011年は再び減少している。女性では2004年以降微減傾向がみられた後2007年以降は横ばいで推移していたが、2011年は微増している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症で減少であった。女性では性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで減少、淋菌感染症減少であった。
◆薬剤耐性菌について (11月14集計分)
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基幹定点数(10月):464.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.31(前月:4.02、前年同月:4.03)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。10月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では上位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.76(前月:0.56、前年同月:0.83)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。10月は前月と比べて増加し、過去10年間の同月との比較では下位に属した。
薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症
0.11(前月:0.12、前年同月:0.09)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。10月は前月と比べて減少し、過去10年間の同月との比較では下位に属した。
薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)感染症
0.02(前月:0.01、前年同月:−)
報告数は11例であった。本年2月の報告開始から間もないため、傾向の分析や過去との比較はできない。
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●年齢階級別
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MRSA感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の65%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の61%を占める一方、70歳以上が全体の18%を占めている(図2:PDF参照)。
MDRP感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の67%を占めている(図3:PDF参照)
MDRA感染症
0歳で2例、1〜4歳で1例、50代で3例、70歳以上で5例報告されている(図4:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.6:1
PRSP感染症…男:女=1.4:1
MDRP感染症…男:女=2.1:1
MDRA感染症…男:女=男性で9例、女性で2例が報告されている。
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は沖縄県(11.14)、滋賀県(8.71)、愛知県(8.69)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(3.44)、福井県(2.83)、群馬県(2.25)が多い。
MDRP感染症
報告総数が52例にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
MDRA感染症
報告総数が11例のみであるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ 感染性胃腸炎
感染性胃腸炎は多種多様の原因によるものを包含する症候群名である。全国約3,000カ所の小児科定点からの患者発生報告数が増加するのは冬季であり、その大半はノロウイルスやロタウイルス等のウイルス感染を原因とするものであると推測される。また、患者発生のピークは例年12月中となることが多く(図1)、同時期の感染性胃腸炎の、特に集団発生例の原因の多くはノロウイルスによるものであると考えられている(IASR, Vol 31. No 11. P312-314 http://idsc.nih.go.jp/iasr/31/369/tpc369-j.html 参照)。
ノロウイルス感染症の潜伏期間は数時間〜数日(平均1〜2日)で、主な症状は嘔気・嘔吐及び下痢であり、嘔吐・下痢は1日数回から多いときには10回以上のこともある。しかし、症状持続期間は数時間〜数日(平均1〜2日)と比較的短く、以前から他の病気がある等の要因がない限りは、重症化して長期にわたり入院を要することは少ない。また、発熱の頻度は高くはない。治療では特効薬はなく、対症療法となるが、最も重要なことは水分補給によって脱水を防ぐことである。
ノロウイルスの感染経路としては、以前は食中毒としての経口感染がよく知られていたが、患者や無症状病原体保有者との直接もしくは間接的接触による接触感染や、患者の嘔吐物や下痢便を介した飛沫感染等のヒト−ヒト感染があり、その感染力は非常に強い。乳幼児の集団生活施設である保育所や幼稚園、小児の集団生活施設である小学校等においては、これら接触感染や飛沫感染等により、集団発生が繰り返されてきているものと推察される。また、2006年12月に東京都のホテルにおいて発生した集団感染事例のように、「吐物や下痢便の処理が適切に行われなかったために残存したウイルスを含む小粒子が、掃除などの物理的刺激によって舞い上がり、それを間近とは限らない場所で吸引し、経食道的に嚥下して消化管へ至る感染経路」である「塵埃感染」が発生する場合がある(感染症情報センターホームページ「ノロウイルスの感染経路」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/0702keiro.html 参照)。ノロウイルスの感染予防には、流水・石けんによる手洗いの励行と吐物や下痢便の適切な処理がきわめて重要である(感染症情報センターホームページ「家庭等一般の方々へ」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/taio-a.html、「医療従事者・施設スタッフ用」:http://idsc.nih.go.jp/disease/norovirus/taio-b.html 参照)。
感染症発生動向調査では、感染性胃腸炎は全国約3,000カ所の小児科定点からの報告に基づいており、2011年第45週の定点当たり報告数は3.94(報告数12,388)と第42週以降増加が続いている(図1)。都道府県別では山口県(10.02)、大分県(9.53)、宮崎県(7.25)、岩手県(6.85)、愛媛県(6.81)、香川県(6.40)、福岡県(5.60)の順となっており、41都道府県で前週の報告数よりも増加がみられている(図2)。2011年第36〜45週の定点当たり累積報告数は29.04(累積報告数91,117)であり、年齢群別では0〜1歳26.0%、2〜3歳20.6%、4〜5歳16.2%、6〜7歳9.9%の順となっている(図3)。
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図1. 感染性胃腸炎の年別・週別発生状況(2001〜2011年第45週) |
図2. 感染性胃腸炎の都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第43〜45週) |
図3. 感染性胃腸炎の年齢群別割合(2011年第36〜45週) |
感染性胃腸炎の報告数は11月に入ると急増し、12月中にそのピークを迎えるという流行をほとんどの年で繰り返してきている。今後の感染性胃腸炎の発生動向には注意が必要である。
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