発生動向総覧
〈第46週コメント〉 11月24日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 400例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢3例
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菌種:S. flexneri (B群)2例_感染地域:茨城県1例、千葉県1例
S. sonnei (D群)1例_感染地域:国内(都道府県不明)
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腸管出血性大腸菌感染症54例(有症者29例、うちHUS 1例) |
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感染地域:国内53例、タイ1例
国内の感染地域:埼玉県14例*、三重県8例、宮崎県5例、東京都4例、宮城県3例、鹿児島県3例、秋田県1例、群馬県1例、神奈川県1例、静岡県1例、滋賀県1例、大阪府1例、島根県1例、山口県1例、不明8例
* 保育園に関連した集団感染例を含む(O26 VT1)
年齢群:1歳(3例)、2歳(1例)、3歳(8例)、4歳(3例)、5歳(4例)、6歳(2例)、8歳(1例)、9歳(1例)、10代(3例)、20代(6例)、30代(8例)、40代(3例)、50代(2例)、60代(4例)、70代(3例)、80代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(16例)、O26 VT1(15例)、O157 VT2(9例)、O157 VT1(3例)、O157 VT不明(2例)、O26 VT不明(1例)、O91 VT1(1例)、O136 VT1(1例)、O145 VT2(1例)、O146 VT2(1例)、その他・不明(4例)
累積報告数:3,675例(有症者2,499例、うちHUS 95例.死亡14例)
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4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:広島県_感染源:不明)
チクングニア熱1例(感染地域:インド)
つつが虫病25例
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感染地域:神奈川県5例、岐阜県3例、秋田県2例、福島県2例、群馬県2例、熊本県2例、山形県1例、千葉県1例、東京都1例、富山県1例、静岡県1例、広島県1例、宮崎県1例、鹿児島県1例、国内(都道府県不明)1例
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日本紅斑熱2例(感染地域:和歌山県1例、長崎県1例)
ボツリヌス症1例(病型不明_感染地域:広島県_感染源:不明)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ケニア)
レジオネラ症9例(肺炎型9例)
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感染地域:宮城県2例、千葉県2例、北海道1例、福島県1例(温泉)、神奈川県1例(温泉)、島根県1例(温泉)、岡山県1例
年齢群:20代(1例)、50代(2例)、60代(2例)、70代(1例)、80代(3例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢13例(腸管アメーバ症11例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:兵庫県2例、福島県1例、千葉県1例、東京都1例、神奈川県1例、愛知県1例、国内(都道府県不明)5例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触3例(異性間2例、異性間・同性間不明1例)、経口感染2例、不明8例
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ウイルス性肝炎1例(B型_感染経路:不明)
クロイツフェルト・ヤコブ病3例(孤発性プリオン病古典型3例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例 |
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年齢群:60代(2例.うち1例死亡)、70代(1例)
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後天性免疫不全症候群18例(AIDS 2例、無症候13例、その他3例) |
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感染地域:国内16例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触16例(異性間5例、同性間11例)、不明2例
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ジアルジア症2例(感染地域:福岡県1例、カンボジア1例)
梅毒16例(早期顕症I期4例、早期顕症II期6例、晩期顕症1例、無症候5例)
破傷風1例(年齢群:40代)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:便
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風しん2例(検査診断例2例)
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感染地域:福岡県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(1例)、40代(1例)
累積報告数:345例(検査診断例268例、臨床診断例77例)
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麻しん5例〔麻しん(検査診断例2例、臨床診断例2例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:栃木県1例、千葉県1例、岐阜県1例、広島県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:1歳(2例)、5〜9歳(1例)、15〜19歳(1例)、40代(1例)
累積報告数:422例〔麻しん(検査診断例199例、臨床診断例12例)、修飾麻しん(検査診断例103例)〕
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(補)2011年第45週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例〔菌種:S. sonnei(D群)_感染地域:フィリピン〕、Q熱1例(感染地域:栃木県_感染源:塵埃)、日本紅斑熱3例(感染地域:愛媛県2例、和歌山県1例)、レジオネラ症2例〔感染地域:群馬県2例(ともに温泉)〕、急性脳炎2例〔マイコプラズマ1例(11歳)、病原体不明1例(3歳)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔50代(1例.死亡)、60代(1例.死亡)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では沖縄県(1.98)、宮城県(1.57)、愛知県(0.66)、徳島県(0.58)、岐阜県(0.57)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は2,254例と第42週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約72%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では新潟県(1.28)、北海道(1.24)、秋田県(0.71)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では北海道(3.64)、福井県(3.64)、大分県(3.31)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では香川県(12.2)、山口県(11.6)、大分県(11.0)、島根県(9.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では福井県(3.59)、山形県(2.80)、石川県(2.59)、大分県(2.44)が多い。手足口病の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では鳥取県(5.32)、島根県(2.52)、滋賀県(2.50)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では徳島県(1.35)、福島県(1.21)、愛媛県(0.95)が多い。百日咳の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では広島県(0.17)、栃木県(0.13)、岩手県(0.10)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第36週以降減少が続いている。都道府県別では徳島県(0.74)、高知県(0.40)、大分県(0.39)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(2.37)、鳥取県(1.95)、新潟県(1.93)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では埼玉県(4.33)、青森県(3.00)、沖縄県(2.71)、大阪府(2.67)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。インフルエンザは、典型的な発症例では1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生の徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト−ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生をコントロールすることは困難であると思われる。2009年4月に新型インフルエンザの発生が明らかとなり、世界各国で大きな流行をもたらしたことは記憶に新しい。この新型インフルエンザも、2011年4月以降はインフルエンザ(H1N1)2009と呼ばれるようになり、他のA/H3N2(A香港)亜型やB型のインフルエンザと同様にヒト−ヒト間で流行する季節性インフルエンザ対策の中に組み込まれることとなった(「新型インフルエンザ(A/H1N1)に係る季節性インフルエンザ対策への移行について」厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部事務局:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/jichitai1100401-01.pdf)。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。インフルエンザの定点当たり報告数は、2011年第42週以降増加が続いており、第46週の定点当たり報告数は0.21(報告数1,012)となった(図1)。都道府県別では沖縄県(1.98)、宮城県(1.57)、愛知県(0.66)、徳島県(0.58)、岐阜県(0.57)、兵庫県(0.43)、三重県(0.40)、山口県(0.35)の順であり、35都府県で前週よりも増加が見られた(図2)。
2011年第36〜46週に国内では93検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm09が2件(2.2%)、AH3亜型(A香港型)72件(77.4%)、B型19件(20.4%)とこれまでのところAH3亜型が最多を占めているが、まだ検出報告数は少数であり、引き続き慎重な経過観察が必要であると思われる(図3)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2001〜2011年第46週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第44〜46週) |
図3. インフルエンザウイルス検出報告割合(2011年第36〜46週) |
2009年の新型インフルエンザの流行を除くと、日本国内での季節性インフルエンザの流行は例年12月かまたは翌年の1月に全国的な流行が始まり、そのピークは1〜3月のいずれかとなる場合が殆どである。今シーズン(2011/2012シーズン;2011年第36週〜2012年第35週)も第42週以降はインフルエンザの報告数は継続的に増加してきており、例年と同様に12月中かまたは翌年の1月に全国的な流行となるものと予想される。インフルエンザの予防の基本はインフルエンザワクチンの接種である。同ワクチンの接種を必要としながらも、現時点ではまだ接種が実施されていない場合は速やかに接種することが望まれる。今後ともインフルエンザの発生動向には注意深い観察が必要である。
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