発生動向総覧
〈第48週コメント〉 12月7日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 392例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢6例
|
|
菌種:S. boydii(C群)1例_感染地域:東京都
S. sonnei(D群)5例_感染地域:東京都1例、国内(都道府県不明)2例、インドネシア1例、インド1例
|
腸管出血性大腸菌感染症30例(有症者19例、うちHUS 1例) |
|
感染地域:国内29例、韓国1例
国内の感染地域:長野県4例、埼玉県3例*、東京都3例、千葉県2例、福岡県2例、鹿児島県2例、群馬県1例、神奈川県1例、富山県1例、山梨県1例、岐阜県1例、静岡県1例、兵庫県1例、岡山県1例、長崎県1例、不明4例
* 保育園に関連した集団感染例を含む(O26 VT1)
年齢群:0歳(1例)、1歳(2例)、2歳(2例)、3歳(2例)、4歳(1例)、6歳(1例)、8歳(1例)、9歳(2例)、10代(2例)、20代(4例)、30代(6例)、40代(2例)、50代(1例)、60代(1例)、70代(1例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(7例)、O157 VT2(6例)、O26 VT1(4例)、O103 VT1(4例)、O111 VT1・VT2(2例)、O157 VT不明(2例)、O91 VT1(1例)、O111 VT1(1例)、O121 VT2(1例)、O145 VT2(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:3,754例(有症者2,549例、うちHUS 98例.死亡14例)
|
腸チフス1例(感染地域:インド)
パラチフス1例(感染地域:インド)
|
4類感染症: |
A型肝炎2例(感染地域:中国1例、インド1例)
つつが虫病26例
|
|
感染地域:鹿児島県7例、千葉県4例、宮崎県4例、岐阜県3例、熊本県2例、福島県1例、栃木県1例、群馬県1例、神奈川県1例、島根県1例、大分県1例
|
デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、マレーシア1例)
日本紅斑熱6例(感染地域:熊本県3例、三重県1例、和歌山県1例、大分県1例) ブルセラ症1例(感染地域:中国_感染源:ヤギ)
レジオネラ症17例(肺炎型17例)
|
|
感染地域:長崎県2例(うち1例温泉)、宮城県1例、山形県1例、茨城県1例、栃木県1例、千葉県1例、富山県1例、長野県1例、京都府1例、広島県1例、佐賀県1例(温泉)、熊本県1例、国内(都道府県不明)2例、台湾1例、フィリピン1例
年齢群:40代(2例)、50代(5例)、60代(5例)、70代(3例)、80代(2例)
|
|
5類感染症: |
アメーバ赤痢4例(腸管アメーバ症3例、腸管外アメーバ症1例) |
|
感染地域:千葉県1例、国内(都道府県不明)2例、フィリピン1例
感染経路:経口感染1例、不明3例
|
ウイルス性肝炎3例〔B型3例_感染経路:性的接触2例(異性間2例)、不明1例〕
急性脳炎5例 |
|
ムンプスウイルス1例_年齢群:4歳
病原体不明4例_年齢群:0歳(1例)、2歳(1例)、9歳(1例)、10代(1例)
|
クロイツフェルト・ヤコブ病3例(孤発性プリオン病古典型3例)
後天性免疫不全症候群8例(AIDS 3例、無症候5例) |
|
感染地域:国内5例、ベトナム1例、国外(国不明)2例
感染経路:性的接触7例(異性間1例、同性間5例、異性間・同性間不明1例)、不明1例
|
ジアルジア症1例(感染地域:静岡県)
髄膜炎菌性髄膜炎2例 |
|
感染地域:大阪府2例
年齢群:5〜9歳(1例)、50代(1例)
|
梅毒12例(早期顕症I期3例、早期顕症II期5例、無症候4例)
破傷風2例〔年齢群:60代(1例)、70代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
|
|
遺伝子型:VanB 1例_菌検出検体:血液
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:血液/便
|
風しん2例(検査診断例2例)
|
|
感染地域:福岡県2例
年齢群:15〜19歳(2例)
累積報告数:355例(検査診断例275例、臨床診断例80例)
|
麻しん2例〔麻しん(検査診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
|
|
感染地域:岐阜県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:0歳(1例)、50代(1例)
累積報告数:421例〔麻しん(検査診断例200例、臨床診断例118例)、修飾麻しん(検査診断例103例)〕
|
(補)2011年第47週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢2例〔菌種:S. sonnei(D群)2例_感染地域:インド2例〕、日本紅斑熱6例(感染地域:三重県3例、熊本県3例)、急性脳炎1例〔病原体不明(40代.死亡)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症1例(20代.死亡)などの報告があった。
|
◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では宮城県(4.10)、三重県(2.86)、愛知県(2.33)、沖縄県(2.09)、岡山県(1.88)、山口県(1.29)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は2,749例と第42週以降増加が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約73%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では新潟県(2.57)、北海道(1.50)、徳島県(0.91)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では大分県(4.39)、北海道(3.98)、富山県(3.86)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では香川県(12.7)、島根県(12.3)、山口県(11.7)、愛媛県(11.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してやや多い。都道府県別では福井県(4.68)、石川県(3.45)、大分県(3.44)、岩手県(3.43)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少したが、過去5年間の同時期と比較してかなりの定点多い。都道府県別では鳥取県(3.16)、石川県(2.59)、滋賀県(2.25)が多い。伝染性紅斑当たり報告数は増加した。都道府県別では福島県(1.13)、長野県(0.87)、徳島県(0.65)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では岩手県(0.20)、栃木県(0.15)、沖縄県(0.12)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第36週以降減少が続いている。都道府県別では徳島県(0.65)、高知県(0.20)、大分県(0.19)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では鳥取県(2.84)、山形県(2.37)、徳島県(2.17)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(4.57)、大阪府(3.87)、栃木県(3.86)、岡山県(3.20)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。インフルエンザは、典型的な発症例では1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。インフルエンザの感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生の徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト−ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生をコントロールすることは困難であると思われる。2009年4月に発生した新型インフルエンザは、2011年4月以降はインフルエンザ(H1N1)2009と呼ばれるようになり、他のA/H3N2(A香港)亜型やB型のインフルエンザと同様にヒト−ヒト間で流行する季節性インフルエンザ対策の中に組み込まれることとなった(「新型インフルエンザ(A/H1N1)に係る季節性インフルエンザ対策への移行について」厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部事務局:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/jichitai1100401-01.pdf)。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。インフルエンザの定点当たり報告数は、2011年第42週以降増加が続いており、第48週の定点当たり報告数は0.57(報告数2,781)と、前週(第47週定点当たり報告数0.29)のほぼ2倍の値となった(図1)。都道府県別では宮城県(4.10)、三重県(2.86)、愛知県(2.33)、沖縄県(2.09)、岡山県(1.88)、山口県(1.29)、鳥取県(1.24)、岐阜県(1.17)の順となっている。38都道府県で前週よりも増加が認められ、特に三重県、宮城県、愛知県、岡山県が比較的大きな増加となっている(図2)。
2011年第36〜48週に国内では174検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm09が2件(1.1%)、AH3亜型(A香港型)151件(86.8%)、B型21件(12.1%)とこれまでのところAH3亜型が大半を占めている(図3)。
|
|
|
図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2001〜2011年第48週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第46〜48週) |
図3. インフルエンザウイルス検出報告割合(2011年第36〜48週) |
インフルエンザの予防の基本はインフルエンザワクチンの接種である。同ワクチンの接種を必要としながらも、現時点ではまだ接種が実施されていない場合は速やかに接種することが望まれる。今後ともインフルエンザの発生動向には注意深い観察が必要である。
|