発生動向総覧
〈第1週コメント〉 1月11日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 169例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例
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菌種:S. sonnei (D群)2例_感染地域:ラオス1例、モロッコ1例
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腸管出血性大腸菌感染症7例(有症者1例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内7例
国内の感染地域:福岡県5例、広島県1例、沖縄県1例
年齢群:1歳(1例)、20代(2例)、50代(2例)、70代(2例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(6例)、その他・不明(1例)
累積報告数:7例(有症者1例、うちHUS なし.死亡なし)
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パラチフス1例(感染地域:パキスタン) |
4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:北海道_感染源:不明)
A型肝炎1例(感染地域:バングラデシュ)
つつが虫病15例
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感染地域:千葉県4例、宮崎県4例、鹿児島県3例、茨城県1例、群馬県1例、佐賀県1例、長崎県1例
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デング熱1例(感染地域:スリランカ)
マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ガーナ)
レジオネラ症10例(肺炎型10例)
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感染地域:埼玉県2例、新潟県2例、宮城県1例、富山県1例、滋賀県1例(温泉)、兵庫県1例(温泉)、佐賀県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:30代(1例)、50代(2例)、60代(1例)、70代(2例)、80代(4例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢8例(腸管アメーバ症8例) |
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感染地域:東京都1例、長野県1例、大阪府1例、国内(都道府県不明)3例、フィリピン1例、インド1例
感染経路:経口感染3例、性的接触2例(同性間1例、異性間・同性間不明1例)、不明3例
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ウイルス性肝炎1例 |
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B型_感染経路:性的接触(異性間)
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急性脳炎1例(病原体不明_年齢群:3歳)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症6例 |
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年齢群:30代(1例.死亡)、60代(2例)、70代(2例)、80代(1例)
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後天性免疫不全症候群8例(AIDS 3例、無症候3例、その他2例) |
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感染地域:国内7例、国外(国不明)1例
感染経路:性的接触7例(異性間3例、同性間3例、異性間・同性間不明1例)、不明1例
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梅毒7例(早期顕症I期1例、早期顕症II期1例、無症候5例)
破傷風2例 |
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年齢群:40代(1例)、80代(1例)
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風しん2例(検査診断例2例)
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感染地域:福岡県2例
年齢群:1歳(1例)、20〜24歳(1例)
累積報告数:2例(検査診断例2例)
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麻しん4例〔麻しん(検査診断例3例、臨床診断例1例)〕
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感染地域:愛知県2例、千葉県1例、広島県1例
年齢群:10〜14歳(2例)、15〜19歳(2例)
累積報告数:4例〔麻しん(検査診断例3例、臨床診断例1例)〕
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(補)2011年第52週までに診断されたものの報告遅れとして、パラチフス1例(感染地域:インド)、日本紅斑熱4例(感染地域:三重県3例、熊本県1例)、急性脳炎2例〔病原体不明2例_年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔50代(1例)、60代(1例.死亡)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では岐阜県(16.60)、愛知県(16.22)、三重県(15.17)、香川県(9.35)、滋賀県(8.85)、沖縄県(8.40)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は2,507例と3週連続で減少した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約81%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では新潟県(1.65)、北海道(0.73)、佐賀県(0.61)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では福井県(4.64)、富山県(2.55)、大分県(2.47)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では宮崎県(14.4)、大分県(12.9)、熊本県(12.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では岩手県(4.90)、宮崎県(4.47)、鹿児島県(4.44)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第50週以降減少が続いている。都道府県別では石川県(1.62)、滋賀県(1.22)、岡山県(0.81)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では島根県(0.83)、高知県(0.73)、徳島県(0.68)が多い。百日咳の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では栃木県(0.10)、沖縄県(0.09)、高知県(0.07)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は第50週以降減少が続いている。都道府県別では岩手県(0.10)、島根県(0.09)、大分県(0.08)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(2.53)、新潟県(2.08)、鳥取県(1.95)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では福島県(4.29)、沖縄県(3.57)、青森県(3.50)、愛知県(3.08)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。典型的な発症例では1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。近年、抗インフルエンザウイルス薬が広く臨床現場で用いられるようになり、発症後早期から投与されることによって従来よりも有熱期間が短縮している例も少なくない。
インフルエンザの主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生の徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト−ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生をコントロールすることは困難であると思われる。
2009年4月に発生した新型インフルエンザは、2011年4月以降はインフルエンザ(H1N1)2009と呼ばれるようになり、他のA/H3N2(A香港)亜型やB型のインフルエンザと同様にヒト−ヒト間で流行する季節性インフルエンザ対策の中に組み込まれることとなった(「新型インフルエンザ(A/H1N1)に係る季節性インフルエンザ対策への移行について」厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部事務局:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/dl/jichitai1100401-01.pdf)。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。インフルエンザの定点当たり報告数は、2011年第42週以降増加が続いており、2012年第1週の定点当たり報告数は3.76(報告数18,341)となった(図1)。都道府県別では岐阜県(16.60)、愛知県(16.22)、三重県(15.17)、香川県(9.35)、滋賀県(8.85)、沖縄県(8.40)、宮城県(7.98)、岡山県(7.79)の順となっている。25都府県で前週の定点当たり報告数よりも増加がみられた(図2)。
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診したインフルエンザ患者数を推計すると、2012年第1週は23万人(95%信頼区間:21〜25万人)(暫定値)となり、前週(17万人)よりも更に増加した(図3)。年齢群別では30〜39歳約4万人(17.4%)、0〜4歳、20〜29歳、40〜49歳がそれぞれ約3万人(13.0%)の順であり、20歳以上の成人層が65.2%と多くを占めている(図4)。これは学校、幼稚園等の大半の小児の集団生活施設が冬季休暇期間中であったことも影響していると思われる。2011年第36週以降これまでの累積の推計受診患者数は74万人(95%信頼区間:71〜77万人)(暫定値)であった。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2002〜2012年第1週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第51週〜2012年第1週) |
図3. インフルエンザ推計受診患者数週別推移(2011年第36週〜2012年第1週) |
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図1. インフルエンザの推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合(2012年第1週) |
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2011年第36週〜2012年第1週に国内では538検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm09が2件(0.4%)、AH3亜型(A香港型)487件(90.5%)、B型49件(9.1%)とAH3亜型が大半を占めている状態が続いている。
冬季休暇中であったにもかかわらず、2011年第52週、2012年第1週とインフルエンザの患者報告数、推計受診患者数は増加が続いた。冬季休暇が終了した1月中旬以降に、AH3亜型を中心としたインフルエンザの流行は本格化してくる可能性が高い。今後ともインフルエンザの発生動向には注意が必要である。
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