発生動向総覧
〈第2週コメント〉 1月18日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 262例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢5例
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菌種:S. flexneri(B群)2例_感染地域:埼玉県1例、東京都1例
S. sonnei (D群)3例_感染地域:東京都1例、インドネシア1例、インド1例
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腸管出血性大腸菌感染症16例(有症者11例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内16例
国内の感染地域:福岡県5例、愛知県2例、岩手県1例、埼玉県1例、千葉県1例、東京都1例、不明5例
年齢群:0歳(2例)、7歳(1例)、8歳(1例)、9歳(1例)、10代(5例)、20代(1例)、40代(2例)、50代(2例)、80代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT1・VT2(11例)、O157 VT不明(2例)、O26 VT1(1例)、O103 VT2(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:26例(有症者14例、うちHUS なし.死亡なし)
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4類感染症: |
E型肝炎4例
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感染地域:埼玉県2例_感染源:馬肉1例、不明1例
感染地域:北海道1例_感染源:不明
感染地域:福島県1例_感染源:焼肉定食
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A型肝炎1例(感染地域:埼玉県)
つつが虫病8例
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感染地域:鹿児島県4例、福島県1例、神奈川県1例、和歌山県1例、長崎県1例
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デング熱3例(感染地域:インドネシア2例、タイ/ベトナム/ラオス1例)
レジオネラ症6例(肺炎型6例)
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感染地域:青森県1例、千葉県1例(温泉)、富山県1例、岐阜県1例(温泉)、静岡県1例、愛媛県1例
年齢群:40代(1例)、50代(1例)、70代(2例)、90代(2例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症1例、腸管及び腸管外アメーバ症1例) |
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感染地域:宮城県1例、茨城県1例、埼玉県1例、千葉県1例、東京都1例、神奈川県1例、大阪府1例、奈良県1例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触2例(異性間2例)、経口感染1例、不明6例
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ウイルス性肝炎1例〔B型_感染経路:性的接触(異性間)〕
急性脳炎6例 |
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インフルエンザウイルス1例_年齢群:4歳
ロタウイルス1例_年齢群:2歳
病原体不明4例_年齢群:1歳(3例)、9歳(1例)
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クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例 |
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年齢群:40代(1例.死亡)、50代(1例)
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後天性免疫不全症候群9例(AIDS 5例、無症候3例、その他1例) |
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感染地域:国内8例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触8例(同性間8例)、不明1例
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髄膜炎菌性髄膜炎1例
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感染地域:沖縄県
年齢群:40代
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梅毒9例(早期顕症I期2例、早期顕症II期5例、無症候2例)
破傷風1例(年齢群:60代)
風しん1例(検査診断例)
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感染地域:京都府
年齢群:40代
累積報告数:4例(検査診断例4例)
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麻しん6例〔麻しん(検査診断例2例、臨床診断例3例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:東京都2例、神奈川県2例、埼玉県1例、タイ1例
年齢群:0歳(2例)、1歳(1例)、5〜9歳(1例)、10〜14歳(1例)、25〜29歳(1例)
累積報告数:11例〔麻しん(検査診断例6例、臨床診断例4例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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(補)2012年第1週までに診断されたものの報告遅れとして、デング熱1例(感染地域:インドネシア)、日本紅斑熱7例(感染地域:三重県3例、島根県3例、鳥取県1例)、レプトスピラ症1例(感染地域:東京都_感染原因:ネズミ)、急性脳炎3例(ヘルペスウイルス1例_年齢群:60代、マイコプラズマ1例_年齢群:7歳、病原体不明1例_年齢群:7歳)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例〔20代(1例)、40代(2例)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症3例(遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:腹水、遺伝子型:不明2例_菌検出検体:腹水1例、喀痰1例)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は第42週以降増加が続いている。都道府県別では岐阜県(23.82)、愛知県(22.63)、三重県(21.92)、高知県(19.52)、福井県(16.38)、香川県(15.86)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は2,166例と第51週以降減少が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約79%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は第51週以降減少が続いている。都道府県別では新潟県(1.15)、佐賀県(0.61)、北海道(0.55)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では福井県(4.82)、富山県(4.55)、大分県(3.64)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(19.9)、大分県(18.0)、熊本県(17.1)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では宮崎県(5.03)、山形県(4.47)、鹿児島県(4.02)が多い。手足口病の定点当たり報告数は第50週以降減少が続いている。都道府県別では石川県(1.21)、滋賀県(0.75)、岡山県(0.56)、鹿児島県(0.56)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別では島根県(1.65)、鳥取県(1.32)、愛媛県(0.78)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では沖縄県(0.21)、栃木県(0.19)、静岡県(0.07)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では大分県(0.11)、徳島県(0.09)、沖縄県(0.09)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では山形県(1.97)、新潟県(1.93)、宮崎県(1.89)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(3.71)、福島県(2.29)、青森県(2.17)、栃木県(2.14)が多い。
〈12月コメント〉
◆性感染症について 2012年1月13日集計分 性感染症定点数:962
(産婦人科・産科・婦人科:464、泌尿器科:401、皮膚科84、性病科13)
●月別推移
2011年12月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が2.04(男0.98、女1.06)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.69(男0.29、女0.40)、尖圭コンジローマが0.41(男0.23、女0.17)、淋菌感染症が0.85(男0.68、女0.17)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで微減し、淋菌感染症で横ばいであった。女性では、性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で減少、尖圭コンジローマで横ばい、淋菌感染症で減少した(27〜30ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、女性では性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマでやや少なかった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(12月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は30〜34歳の年齢群、尖圭コンジローマは35〜39歳の年齢群、淋菌感染症は20〜29歳の2つの年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は20〜34歳の3つの年齢群、尖圭コンジローマは20〜24歳の年齢群、淋菌感染症は20〜24歳の年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、また男女ともに性器クラミジア感染症、淋菌感染症で10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患の報告は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上は僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、年齢群分布においての明らかな変化は見られておらず、この基準の周知徹底とともに、遵守されているかの検討なども今後必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜39歳、55〜59歳、70歳以上の7つの年齢群、尖圭コンジローマでは20〜29歳の2つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性より多く、他の年齢群は同値あるいは男性が多かった。淋菌感染症ではすべての年齢群で同値あるいは男性が女性より多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較については各地域におけるそれらの比率等の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男性では2003年以降減少傾向がみられた後、2009〜2010年はほぼ横ばいで推移したが、2011年は再び減少している。女性では2003年以降減少傾向がみられていたが、2011年は横ばいである。性器ヘルペスウイルス感染症は男性では2007年以降微減傾向がみられた後、2010年以降はほぼ横ばいで推移している。女性では2006年以降微減傾向がみられたが、2010年にやや増加した後、2011年は再び減少している。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられたが、男性では2011年はほぼ横ばいで、女性では2010年以降はほぼ横ばいで推移している。淋菌感染症は男性では2003年以降減少傾向がみられ、2010年に増加傾向がみられたが、2011年は再び減少している。女性では2004年以降微減傾向がみられた後2007年以降は横ばいで推移していたが、2011年は微増している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で増加、性器ヘルペスウイルス感染症で減少、尖圭コンジローマで同値、淋菌感染症で同値であった。女性では性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で減少、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で減少であった。
◆薬剤耐性菌について (1月13集計分)
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基幹定点数(12月):463.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.00(前月:4.15、前年同月:3.80)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。12月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.88(前月:0.89、前年同月:1.19)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。12月は前月と比べて横ばいで、過去10年間の同月との比較では最も少なかった。
薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症
0.07(前月:0.07、前年同月:0.10)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。12月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では下位に属した。
薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)感染症
0.00(前月:0.01、前年同月:−)
報告数は2例であった。本年2月の報告開始から間もないため、傾向の分析や過去との比較はできない。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の67%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の58%を占める一方、70歳以上が全体の22%を占めている(図2:PDF参照)。
MDRP感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の79%を占めている(図3:PDF参照)
MDRA感染症 60代で1例、70歳以上で1例報告されている(図4:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.3:1
MDRP感染症…男:女=2.1:1
MDRA感染症…男性で2例報告されている。
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は沖縄県(9.00)、新潟県(8.54)、高知県(7.71)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は千葉県(3.11)、福島県(2.71)、福井県(2.67)が多い。
MDRP感染症
報告総数が34例にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
MDRA感染症
報告総数が2例のみであるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。典型的な発症例では1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
インフルエンザの主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生の徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト−ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生をコントロールすることは困難であると思われる。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。インフルエンザの定点当たり報告数は、2011年第42週以降増加が続いており、2012年第2週の定点当たり報告数は7.33(報告数36,056)となり、前週の報告数(定点当たり報告数3.76)の2倍近い値となった(図1)。都道府県別では岐阜県(23.82)、愛知県(22.63)、三重県(21.92)、高知県(19.52)、福井県(16.38)、香川県(15.86)、愛媛県(15.00)、岡山県(13.71)の順となっている。全ての都道府県で前週の定点当たり報告数よりも増加がみられた(図2)。
定点医療機関からの報告数をもとに、定点以外を含む全国の医療機関を1週間に受診したインフルエンザ患者数を推計すると、2012年第2週は40万人(95%信頼区間:37〜44万人)(暫定値)となり、前週(23万人)よりも大幅に増加した(図3)。年齢群別では5〜9歳約8万人(19.5%)、0〜4歳約6万人(14.6%)、30代約5万人(12.2%)、10〜14歳、20代、40代がそれぞれ約4万人(9.8%)の順であり、特に5〜9歳が前週(約2万人)より大きく増加した(図4)。この増加は学校、幼稚園等の大半の小児の集団生活施設の冬期休暇が終了して再開したことも影響していると思われる。2011年第36週以降これまでの累積の推計受診患者数は114万人(95%信頼区間:109〜119万人)(暫定値)であった。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2002〜2012年第2週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2011年第52週〜2012年第2週) |
図3. インフルエンザ推計受診者数(暫定値)週別推移(2011年第36週〜2012年第2週) |
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図4. インフルエンザ推計受診患者数(暫定値)の年齢群別割合(2012年第2週) |
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2011年第36週〜2012年第2週に国内では717検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm09が4件(0.6%)、AH3亜型(A香港型)649件(90.5%)、B型64件(8.9%)とAH3亜型が大半を占めている状態が続いている。
国内の多くの学校、幼稚園等での冬期休暇終了後、中部、中国、四国地方を中心にインフルエンザの報告数は急増してきており、インフルエンザの流行は本格化しつつあると考えられる。今後ともインフルエンザの発生動向には注意が必要である。
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