発生動向総覧
〈第5週コメント〉 2月8日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 398例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢2例
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菌種:S. flexneri(B群)1例_感染地域:ギニアビサウ
S. sonnei(D群)1例_感染地域:岐阜県
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腸管出血性大腸菌感染症15例(有症者7例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内14例、フィリピン1例
国内の感染地域:千葉県3例、山口県3例、福岡県3例、北海道1例、群馬県1例、埼玉県1例、三重県1例、長崎県1例
年齢群:2歳(1例)、3歳(1例)、4歳(1例)、5歳(1例)、6歳(1例)、10代(2例)、20代(3例)、30代(4例)、50代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2(5例)、O26 VT1(4例)、O91 VT1(3例)、O29 VT2(1例)、O169 VT1(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:67例(有症者33例、うちHUS なし.死亡なし)
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4類感染症: |
E型肝炎2例
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感染地域:福島県1例_感染源:豚レバーの生食
感染地域:兵庫県1例_感染源:猪肉
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A型肝炎1例(感染地域:韓国)
つつが虫病2例(感染地域:千葉県1例、鹿児島県1例)
デング熱1例(感染地域:インドネシア)
レジオネラ症9例(肺炎型9例.うち1例死亡)
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感染地域:岩手県1例、群馬県1例(温泉)、東京都1例、神奈川県1例、岐阜県1例(温泉)、静岡県1例、島根県1例、大分県1例(温泉)、ベトナム1例
年齢群:60代(4例)、80代(4例)、90代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢11例(腸管アメーバ症9例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:東京都4例、埼玉県1例、岡山県1例、熊本県1例、国内(都道府県不明)2例、カンボジア1例、フィリピン/ミャンマー1例
感染経路:性的接触5例(異性間2例、同性間1例、異性/同性間1例、異性間・同性間不明1例)、経口感染3例、不明3例
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ウイルス性肝炎3例 |
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B型3例_感染経路:性的接触3例(異性間3例)
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急性脳炎11例 |
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インフルエンザウイルスA型7例_年齢群:1歳(1例)、2歳(1例)、4歳(1例)、6歳(1例)、7歳(1例)、10代(2例)
インフルエンザウイルスB型1例_年齢群:8歳
インフルエンザウイルス型不明1例_年齢群:8歳(死亡)
単純ヘルペスウイルス1例_年齢群:20代
病原体不明1例_年齢群:10代
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クロイツフェルト・ヤコブ病2例(孤発性プリオン病古典型2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症7例 |
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年齢群:30代(2例)、50代(2例)、60代(2例.うち1例死亡)、70代(1例)
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後天性免疫不全症候群11例(AIDS 1例、無症候7例、その他3例) |
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感染地域:国内6例、中国2例、国内・国外不明3例
感染経路:性的接触10例(同性間7例、異性間3例)、不明1例
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梅毒12例(早期顕症I期1例、早期顕症II期4例、晩期顕症1例、無症候6例)
破傷風2例〔年齢群:60代(1例)、70代(1例)〕
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanC 2例_菌検出検体:血液2例)
風しん5例(検査診断例3例、臨床診断例2例)
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感染地域:東京都2例、群馬県1例、京都府1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:0歳(1例)、15〜19歳(1例)、25〜29歳(1例)、30〜34歳(1例)、50代(1例)
累積報告数:24例(検査診断例19例、臨床診断例5例)
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麻しん10例〔麻しん(検査診断例5例、臨床診断例1例)、修飾麻しん(検査診断例4例)〕
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感染地域:愛知県3例、岐阜県1例、愛媛県1例、国内(都道府県不明)5例
年齢群:0歳(1例)、1歳(2例)、15〜19歳(2例)、20〜24歳(3例)、40代(2例)
累積報告数:37例〔麻しん(検査診断例24例、臨床診断例4例)、修飾麻しん(検査診断例9例)〕
遺伝子型別累積報告数(遺伝子型が同定・報告された症例のみ)
D8:7例_感染地域:愛知県3例、千葉県2例、岐阜県1例、タイ1例
D9:2例_感染地域:岡山県1例、フィリピン1例
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(補)2012年第4週までに診断されたものの報告遅れとして、E型肝炎3例(感染地域:静岡県2例、神奈川県1例_感染源:猪肉2例、鹿肉1例)、デング熱4例(感染地域:インドネシア1例、インド1例、フィリピン1例、インド/シンガポール1例)、日本紅斑熱1例(感染地域:熊本県)、マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ウガンダ)、レジオネラ症1例(感染地域:北海道.死亡)、急性脳炎14例〔インフルエンザウイルスA型3例_年齢群:5歳(1例)、6歳(1例)、9歳(1例).インフルエンザウイルスB型1例_年齢群:7歳.ヒトヘルペスウイルス6型2例_年齢群:0歳(1例)、1歳(1例).RSウイルス1例_年齢群:2歳.単純ヘルペスウイルス1例_年齢群:40代.ロタウイルス1例_年齢群:2歳.病原体不明5例_年齢群:1歳(1例)、3歳(2例)、9歳(1例)、40代(1例)〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症4例〔40代(1例)、70代(1例)、80代(1例)、90代(1例)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症3例(遺伝子型:VanC 3例_菌検出検体:血液2例、腹水1例)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第42週以降増加が続いており、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では福井県(64.41)、岩手県(58.98)、石川県(55.65)、宮崎県(55.36)、高知県(54.21)、山口県(51.64)、埼玉県(50.94)、千葉県(50.84)、静岡県(50.83)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,684例と第51週以降減少が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約77%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で増加した。都道府県別で新潟県(1.10)、佐賀県(0.83)、福岡県(0.60)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では大分県(5.64)、富山県(5.62)、福井県(5.27)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では大分県(24.7)、福井県(15.2)、熊本県(14.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鹿児島県(2.78)、宮崎県(2.60)、岩手県(2.40)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では石川県(0.72)、滋賀県(0.56)、鹿児島県(0.56)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では鳥取県(1.63)、島根県(1.39)、長野県(0.98)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では沖縄県(0.15)、栃木県(0.08)、群馬県(0.05)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では徳島県(0.09)、富山県(0.07)、香川県(0.07)、高知県(0.07)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では大分県(1.72)、山形県(1.70)、鳥取県(1.68)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(3.29)、埼玉県(3.11)、愛知県(1.92)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。典型的な発症例では1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
インフルエンザの主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生の徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト−ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生をコントロールすることは困難であると思われる。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。インフルエンザの定点当たり報告数は、2011年第42週以降増加が続いており、2012年第5週の定点当たり報告数は42.62(報告数209,974)となり、前週の定点当たり報告数(35.95)をさらに上回った(図1)。都道府県別では福井県(64.41)、岩手県(58.98)、石川県(55.65)、宮崎県(55.36)、高知県(54.21)、山口県(51.64)、埼玉県(50.94)、千葉県(50.84)、静岡県(50.83)、神奈川県(48.86)の順となっている。36都道府県で前週より増加がみられており、27の都道府県で40.00を、9県で50.00を上回った(図2)。
定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると約211万人(95%信頼区間:194〜229万人)(暫定値)と前週の推計値(約173万人)よりも増加しており(図3)、年齢群別では5〜9歳約57万人(27.0%)、10〜14歳約37万人(17.5%)、0〜4歳約32万人(15.2%)、30代約22万人(10.4%)、40代、60歳以上は共に約16万人(7.6%)の順となっている。また、2011年第36週以降これまでの累積の推計受診患者数は609万人(95%信頼区間:585〜633万人)(暫定値)であった。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2002〜2012年第5週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2012年第3〜5週) |
図3. インフルエンザ推計受診者数(暫定値)週別推移(2011年第36週〜2012年第5週) |
2011年第36週〜2012年第5週に国内では2,022検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm09が6件(0.3%)、AH3亜型(A香港型)1,788件(88.4%)、B型228件(11.3%)とAH3亜型が大半を占めている状態に変わりはないものの、B型の割合がやや増加してきている。
一部の県では報告数の減少がみられてきているものの、北海道、東北、関東、九州の各地域ではまだ比較的大きな増加を示しているところが少なくない。今後ともインフルエンザの発生動向に対しては注意深い観察が必要である。
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