発生動向総覧
〈第6週コメント〉 2月15日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 337例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例
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菌種:S. flexneri(B群)2例_感染地域:ギニアビサウ2例
S. sonnei(D群)2例_感染地域:東京都1例、インドネシア1例
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腸管出血性大腸菌感染症4例(有症者1例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内4例
国内の感染地域:千葉県1例、大阪府1例、福岡県1例、不明1例
年齢群:6歳(1例)、10代(1例)、20代(1例)、30代(1例)
血清型・毒素型:O157 VT2(2例)、O26 VT1(1例)、その他・不明(1例)
累積報告数:72例(有症者34例、うちHUS なし.死亡なし)
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腸チフス1例(感染地域:バングラデシュ)
パラチフス1例(感染地域:インド)
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4類感染症: |
E型肝炎2例
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感染地域:茨城県1例_感染源:不明
感染地域:国内(都道府県不明)1例_感染源:猪・鹿の肉・内臓の生食
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A型肝炎1例〔感染地域:国内(都道府県不明)〕
つつが虫病6例
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感染地域:鹿児島県2例、千葉県1例、和歌山県1例、宮崎県1例、国内(都道府県不明)1例
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デング熱2例(感染地域:インドネシア1例、インド1例)
マラリア1例(原虫種不明_感染地域:マリ)
レジオネラ症11例(肺炎型11例)
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感染地域:静岡県2例、岩手県1例、埼玉県1例、神奈川県1例、新潟県1例(温泉)、京都府1例、兵庫県1例、広島県1例、山口県1例、福岡県1例
年齢群:20代(1例)、50代(1例)、60代(5例)、70代(1例)、80代(3例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢15例(腸管アメーバ症10例、腸管外アメーバ症3例、腸管及び腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:広島県2例、宮城県1例、埼玉県1例、東京都1例、神奈川県1例、新潟県1例、京都府1例、徳島県1例、香川県1例、大阪府/タイ1例、国内(都道府県不明)2例、中国1例、中国/フィリピン1例
感染経路:性的接触7例(異性間4例、同性間2例、異性間・同性間不明1例)、経口感染2例、不明6例
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急性脳炎6例 |
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インフルエンザウイルスA型2例_年齢群:4歳(1例.死亡)、80代(1例)
インフルエンザウイルス型不明2例_年齢群:1歳(1例)、10代(1例)
単純ヘルペスウイルス1例_年齢群:80代
病原体不明1例_年齢群:20代
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クリプトスポリジウム症1例(感染地域:三重県)
クロイツフェルト・ヤコブ病1例(孤発性プリオン病古典型2例)
劇症型溶血性レンサ球菌感染症4例 |
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年齢群:60代(1例)、70代(3例.うち3例死亡)
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後天性免疫不全症候群16例〔AIDS 2例(うち1例死亡)、無症候14例〕 |
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感染地域:国内12例、台湾1例、タイ1例、国内・国外不明2例
感染経路:性的接触15例(異性間4例、同性間11例)、不明1例
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ジアルジア症1例(感染地域:茨城県)
梅毒13例(早期顕症I期1例、早期顕症II期7例、晩期顕症1例、無症候4例)
風しん2例(検査診断例1例、臨床診断例1例)
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感染地域:愛知県1例、国内(都道府県不明)1例
年齢群:15〜19歳(1例)、35〜39歳(1例)
累積報告数:27例(検査診断例21例、臨床診断例6例)
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麻しん13例〔麻しん(検査診断例9例、臨床診断例3例)、修飾麻しん(検査診断例1例)〕
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感染地域:千葉県3例、岡山県2例、茨城県1例、愛知県1例、愛媛県1例、国内(都道府県不明)4例、東京都/ベトナム1例
年齢群:0歳(1例)、1歳(3例)、5〜9歳(2例)、10〜14歳(1例)、15〜19歳(1例)、20〜24歳(2例)、30〜34歳(2例)、35〜39歳(1例)
累積報告数:47例〔麻しん(検査診断例33例、臨床診断例6例)、修飾麻しん(検査診断例8例)〕
遺伝子型別累積報告数(遺伝子型が同定・報告された症例のみ)
D4:1例_感染地域:東京都/ベトナム
D8:8例_感染地域:愛知県3例、千葉県3例、岐阜県1例、タイ1例
D9:4例_感染地域:岡山県3例、フィリピン1例
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(補)2012年第5週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢3例〔菌種:S. flexneri(B群)1例_感染地域:マダガスカル.菌種:S. sonnei(D群)2例_感染地域:国内(都道府県不明)1例、フィリピン1例〕、E型肝炎1例(感染地域:東京都_感染源:豚のレバー)、デング熱3例(感染地域:インド3例)、急性脳炎2例(インフルエンザウイルスA型1例_年齢群:10代.病原体不明1例_年齢群:60代)、劇症型溶血性レンサ球菌感染症2例〔60代(1例)、90代(1例)〕などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ: 定点当たり報告数は減少したが、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では大分県(60.88)、石川県(53.92)、岩手県(52.63)、宮崎県(52.15)、鹿児島県(52.09)、埼玉県(50.04)、秋田県(50.00)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,393例と第51週以降減少が続いている。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約76%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では新潟県(0.73)、佐賀県(0.70)、福岡県(0.60)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では富山県(5.59)、大分県(5.25)、福井県(4.95)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では大分県(18.1)、福井県(14.1)、宮崎県(11.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では宮崎県(2.78)、佐賀県(2.52)、徳島県(2.48)が多い。手足口病の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では滋賀県(0.84)、富山県(0.69)、石川県(0.62)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は3週連続で減少した。都道府県別では鳥取県(1.16)、長野県(0.76)、島根県(0.57)が多い。百日咳の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では高知県(0.13)、沖縄県(0.12)、広島県(0.06)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では徳島県(0.09)、岩手県(0.08)、高知県(0.07)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では鳥取県(1.47)、徳島県(1.35)、新潟県(1.27)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は2週連続で増加し、過去5年間の同時期と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(3.43)、青森県(2.67)、栃木県(2.57)が多い。
〈1月コメント〉
◆性感染症について 2012年2月10日集計分 性感染症定点数:963
(産婦人科・産科・婦人科:462、泌尿器科:405、皮膚科83、性病科13)
●月別推移
2012年1月の月別定点当たり患者報告数は、性器クラミジア感染症が1.92(男0.94、女0.98)、性器ヘルペスウイルス感染症が0.74(男0.31、女0.43)、尖圭コンジローマが0.44(男0.25、女0.20)、淋菌感染症が0.87(男0.67、女0.19)であった。男性では性器クラミジア感染症、次いで淋菌感染症が多く、女性では性器クラミジア感染症、次いで性器ヘルペスウイルス感染症が多かった(図1)。
前月に比べると、男性では、性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで増加し、淋菌感染症で微減した。女性では、性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で増加した(27〜30ページ「グラフ総覧」参照)。過去5年間の同時期と比較すると、女性では性器クラミジア感染症がかなり少なく、淋菌感染症がかなり多かった(図2)。
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図1. 各性感染症が総報告数に占める割合(1月) |
●男女別・年齢階級別
年齢群別(0歳、1〜4歳、5〜69歳は5歳毎、および70歳以上)でみた定点当たり報告数のピークは、男性では、性器クラミジア感染症は25〜29歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は35〜39歳の年齢群、尖圭コンジローマは25〜29歳の年齢群、淋菌感染症は25〜29歳の年齢群であった。女性では、性器クラミジア感染症は20〜24歳の年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症は25〜29歳の年齢群、尖圭コンジローマは20〜24歳の年齢群、淋菌感染症は20〜29歳の2つの年齢群であった(図3:PDF参照)。男女ともに4疾患すべてで15〜19歳の年齢群の報告があり、また男性の尖圭コンジローマ、女性の性器クラミジア感染症で10〜14歳の年齢群の報告があった。また、性器クラミジア感染症、尖圭コンジローマ、淋菌感染症の3疾患の報告は、男性では60代以上は僅かであり、女性では50代以上は僅かである。しかし、性器ヘルペスウイルス感染症は男女ともに、50代以降の報告も少なくない。この年齢層は再発例が含まれている可能性が以前から指摘されており、2006年4月の届出基準改正により、抗体のみ陽性のものの除外に加えて「明らかな再発例は除外する」ことが明示された。しかし、年齢群分布においての明らかな変化は見られておらず、この基準の周知徹底とともに、遵守されているかの検討なども今後必要と考える。
年齢群毎にみた定点当たり報告数の男女の比較では、性器クラミジア感染症では15〜29歳の3つの年齢群、性器ヘルペスウイルス感染症では15〜34歳、40〜44歳、70歳以上の6つの年齢群、尖圭コンジローマでは15〜24歳の2つの年齢群という比較的低い年齢層を中心に女性が男性より多く、他の年齢群は同値あるいは男性が多かった。淋菌感染症ではすべての年齢群で男性が女性より多かった。ただし、性感染症定点は泌尿器科系、婦人科系および皮膚科系などの診療科から構成されており、男女の比較については各地域におけるそれらの比率等の影響を受ける可能性がある。
●若年齢層での推移
感染症法が施行された1999年4月以降について、若年層(15〜29歳)における各疾患の定点当たり報告数を男女別・月別に(図4:PDF参照)に示した。性器クラミジア感染症は男性では2003年以降減少傾向がみられた後、2009〜2010年はほぼ横ばいで推移したが、2011年以降は再び減少している。女性では2003年以降減少傾向がみられていたが、2011年以降は横ばいである。性器ヘルペスウイルス感染症は男性では2007年以降微減傾向がみられた後、2010年以降はほぼ横ばいで推移している。女性では2006年以降微減傾向がみられたが、2010年にやや増加した後、2011年以降は再び減少している。尖圭コンジローマは男女共に2006年以降微減傾向がみられたが、男性では2011年以降はほぼ横ばいで、女性では2010年以降はほぼ横ばいで推移している。淋菌感染症は男性では2003年以降減少傾向がみられ、2010年に増加傾向がみられたが、2011年以降は再び減少している。女性では2004年以降微減傾向がみられた後2007年以降は横ばいで推移していたが、2011年以降は微増している。前月との比較では、男性では性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で同値、尖圭コンジローマで同値、淋菌感染症で増加であった。女性では性器クラミジア感染症で減少、性器ヘルペスウイルス感染症で増加、尖圭コンジローマで増加、淋菌感染症で増加であった。
◆薬剤耐性菌について (2月10集計分)
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基幹定点数(1月):464.
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●月別
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メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染症
4.09(前月:4.00、前年同月:3.98)
定点当たり報告数は、例年年間を通じてほぼ一定である。1月は前月より増加し、過去10年間の同月との比較では中位に属した。
ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)感染症
0.76(前月:0.88、前年同月:0.94)
定点当たり報告数は、例年春から初夏にかけて(4〜6月)と冬(11、12月)に多く、夏(7〜9月)に少なく推移している。1月は前月より減少し、過去10年間の同月との比較では最も少なかった。
薬剤耐性緑膿菌(MDRP)感染症
0.07(前月:0.07、前年同月:0.10)
定点当たり報告数は、例年後半が前半に比して多い傾向がある。1月は前月と同値で、過去10年間の同月との比較では下位に属した。
薬剤耐性アシネトバクター(MDRA)感染症
0.00(前月:0.00、前年同月:−)
報告数は1例であった。2011年2月の報告開始から間もないため、傾向の分析や過去との比較はできない。
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●年齢階級別
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MRSA感染症
高齢者に多く、70歳以上が全体の68%を占めている(図1:PDF参照)
PRSP感染症
小児と高齢者に多い。5歳未満が全体の44%を占める一方、70歳以上が全体の33%を占めている(図2:PDF参照)。
MDRP感染症 高齢者に多く、70歳以上が全体の68%を占めている(図3:PDF参照)
MDRA感染症 70歳以上で1例報告されている(図4:PDF参照)
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●性別:女性を1 として算出した男/女比
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MRSA感染症…男:女=1.7:1
PRSP感染症…男:女=1.5:1
MDRP感染症…男:女=1.8:1
MDRA感染症…女性で1例報告されている。
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●都道府県別
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MRSA感染症
定点当たり報告数は沖縄県(10.43)、滋賀県(10.29)、愛知県(9.46)が多い。
PRSP感染症
定点当たり報告数は福島県(2.71)、千葉県(2.33)、東京都(1.92)が多い。
MDRP感染症
報告総数が34例にとどまるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
MDRA感染症
報告総数が1例のみであるため、都道府県別定点当たり報告数の評価は困難である。
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注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。典型的な発症例では1〜4日間の潜伏期間を経て、突然に発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが出現し、鼻水・咳などの呼吸器症状がこれに続く。通常は1週間前後の経過で軽快するが、いわゆる「かぜ」と比べて全身症状が強いのが特徴である。
インフルエンザの主な感染経路はくしゃみ、咳、会話等で口から発する飛沫による飛沫感染であり、他に接触感染もあるといわれている(CDCホームページ:http://www.cdc.gov/flu/about/disease/spread.htm)。感染対策としては、飛沫感染対策としての咳エチケット、接触感染対策としての手洗い等の手指衛生の徹底が重要であると考えられるが、たとえインフルエンザウイルスに感染しても、全く無症状の不顕性感染例や臨床的にはインフルエンザとは診断し難い軽症例が存在する。従って、特にヒト−ヒト間の距離が短く、濃厚な接触機会の多い学校、幼稚園、保育園等の小児の集団生活施設においてインフルエンザの集団発生をコントロールすることは困難であると思われる。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。インフルエンザの定点当たり報告数は、2011年第42週以降増加が続いていたが、2012年第6週は40.34(報告数198,910)となり、前週の42.62よりも減少した(図1)。都道府県別では大分県(60.88)、石川県(53.92)、岩手県(52.63)、宮崎県(52.15)、鹿児島県(52.09)、埼玉県(50.04)、秋田県(50.00)、千葉県(49.72)の順となっている。30の都府県で前週よりも減少がみられている(図2)
定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると約201万人(95%信頼区間:183〜219万人)(暫定値)と前週の推計値(約211万人)よりも減少した(図3)。また、2011年第36週以降これまでの累積の推計受診者数は約810万人(95%信頼区間:780〜840万人)(暫定値)であり、年齢群別では5〜9歳約212万人、10〜14歳約133万人、0〜4歳約122万人、30代約85万人、40代約62万人、20代約54万人の順であり、70歳以上は約36万人(以上全て暫定値)であった(図4)
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2002〜2012年第6週) |
図2. インフルエンザの都道府県別定点当たり報告数の推移(2012年第4〜6週) |
図3. インフルエンザの推計受診者数(暫定値)週別推移(2011年第36週〜2012年第6週) |
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図4. インフルエンザの年齢群別推計受診者数(暫定値)(2011年第36週〜2012年第6週) |
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2011年第36週〜2012年第6週までに国内では2,501検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm09が6件(0.2%)、AH3亜型(A香港型)2,184件(87.3%)、B型311件(12.4%)とAH3亜型が大半を占めている状態に変わりはないものの、B型の割合が徐々に増加してきている。
2012年第6週のインフルエンザの定点からの報告数は多くの地域で減少がみられたものの、北海道、東北、北関東、九州ではまだ増加がみられている地域もある。引き続きインフルエンザの発生動向に対しては注意が必要である。
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