発生動向総覧
〈第10週コメント〉 3月14日集計分
◆全数報告の感染症
注意:これは当該週に診断された報告症例の集計です。しかし、迅速に情報還元するために期日を決めて集計を行いますので、当該週に診断された症例の報告が集計の期日以降に届くこともあります。それらについては一部を除いて発生動向総覧では扱いませんが、翌週あるいはそれ以降に、巻末の表の累積数に加えられることになります。
*感染経路、感染原因、感染地域については、確定あるいは推定として記載されていたものを示します。
1類感染症: |
報告なし |
2類感染症: |
結核 340例 |
3類感染症: |
細菌性赤痢4例
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菌種:S. sonnei(D群)4例_感染地域:大阪府1例*、国内(都道府県不明)1例、インドネシア1例、インド1例
* 保育所に関連した集団発生の感染者
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腸管出血性大腸菌感染症3例(有症者3例、うちHUS なし) |
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感染地域:国内2例、インドネシア1例
国内の感染地域:福岡県1例、不明1例
年齢群:2歳(1例)、3歳(1例)、20代(1例)
血清型・毒素型:O111 VT1・VT2(1例)、その他・不明(2例)
累積報告数:101例(有症者51例、うちHUS 3例.死亡なし)
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4類感染症: |
E型肝炎1例(感染地域:三重県_感染源:不明)
エキノコックス症1例(単包条虫_感染地域:中国)
デング熱5例
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感染地域:インドネシア2例、シンガポール1例、フィリピン1例、マレーシア1例
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マラリア1例(熱帯熱_感染地域:ガーナ)
レジオネラ症5例(肺炎型4例、ポンティアック型1例)
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感染地域:北海道1例、宮城県1例、茨城県1例、神奈川県1例、愛知県1例
年齢群:30代(2例)、60代(2例)、70代(1例)
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5類感染症: |
アメーバ赤痢9例(腸管アメーバ症7例、腸管外アメーバ症2例) |
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感染地域:千葉県1例、沖縄県1例、国内(都道府県不明)5例、韓国1例、メキシコ1例
感染経路:性的接触2例(異性間1例、同性間1例)、経口感染1例、
経口感染/性的接触(同性間)1例、不明5例
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ウイルス性肝炎1例 |
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B型_感染経路:性的接触(異性間・同性間不明)
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急性脳炎7例 |
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インフルエンザウイルスA型1例_年齢群:70代
インフルエンザウイルスB型1例_年齢群:2歳
インフルエンザウイルス型不明1例_年齢群:1歳
病原体不明4例_年齢群:2歳(1例)、5歳(1例)、10代(1例)、40代(1例)
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劇症型溶血性レンサ球菌感染症5例 |
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年齢群:30代(1例)、40代(1例.死亡)、50代(1例)、60代(2例)
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後天性免疫不全症候群16例(AIDS 6例、無症候9例、その他1例) |
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感染地域:国内15例、国内・国外不明1例
感染経路:性的接触14例(異性間2例、同性間12例)、刺青1例、不明1例
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梅毒12例(早期顕症I期1例、早期顕症II期2例、無症候9例)
バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例
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遺伝子型:VanA 1例_菌検出検体:尿
遺伝子型:不明1例_菌検出検体:尿
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風しん15例(検査診断例14例、臨床診断例1例)
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感染地域:兵庫県3例、東京都2例、三重県2例、山形県1例、千葉県1例、大阪府1例、広島県1例、国内(都道府県不明)4例
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、4歳(1例)、15〜19歳(1例)、20〜24歳(2例)、25〜29歳(2例)、30〜34歳(1例)、35〜39歳(3例)、40代(1例)、50代(2例)
累積報告数:64例(検査診断例53例、臨床診断例11例)
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麻しん8例〔麻しん(検査診断例3例、臨床診断例2例)、修飾麻しん(検査診断例3例)〕
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感染地域:愛知県3例、栃木県1例、埼玉県1例、国内(都道府県不明)2例、国内・国外不明1例
年齢群:0歳(1例)、1歳(1例)、5〜9歳(4例)、20〜24歳(1例)、35〜39歳(1例)
累積報告数:75例〔麻しん(検査診断例54例、臨床診断例7例)、修飾麻しん(検査診断例14例)〕
遺伝子型別累積報告数(遺伝子型が同定・報告された症例のみ):38例
D4:4例_感染地域:千葉県1例、東京都1例、東京都/ベトナム1例、大阪府/英国1例
D8:27例_感染地域:愛知県11例、千葉県5例、山梨県2例、岐阜県2例、都道府県不明6例、タイ1例
D9:7例_感染地域:岡山県4例、千葉県1例、東京都1例、フィリピン1例
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(補)2012年第9週までに診断されたものの報告遅れとして、細菌性赤痢1例〔菌種:S. sonnei(D群)_感染地域:カンボジア〕、E型肝炎1例(感染地域:北海道_感染源:不明)、レジオネラ症1例〔感染地域:栃木県(温泉)〕、急性脳炎3例〔インフルエンザウイルス型不明2例_年齢群:8歳(1例)、10代(1例).ムンプスウイルス1例_年齢群:6歳〕、劇症型溶血性レンサ球菌感染症3例〔20代(2例)、70代(1例)〕、バンコマイシン耐性腸球菌感染症2例(遺伝子型:VanA 1例_菌検出検体:人工肛門閉鎖創の膿、遺伝子型:VanC 1例_菌検出検体:血液)などの報告があった。
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◆定点把握の対象となる5類感染症(週報対象のもの)
全国の指定された医療機関(定点)から報告され、疾患により小児科定点(約3,000 カ所)、インフルエンザ(小児科・内科)定点(約5,000 カ所)、眼科定点(約600 カ所)、基幹定点(約500 カ所)に分かれています。また、定点当たり報告数は、報告数/定点医療機関数です。
インフルエンザ:定点当たり報告数は第6週以降減少が続いている。都道府県別では新潟県(41.89)、山形県(39.81)、宮城県(38.70)、福島県(37.80)、埼玉県(31.89)、秋田県(31.27)が多い。
小児科定点報告疾患:RSウイルス感染症の報告数は1,334例と増加した。年齢別では1歳以下の報告数が全体の約77%を占めている。咽頭結膜熱の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では富山県(0.90)、佐賀県(0.61)、宮崎県(0.56)が多い。A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では富山県(7.76)、山形県(5.23)、大分県(5.11)が多い。感染性胃腸炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では大分県(12.7)、福岡県(12.4)、広島県(11.9)、島根県(11.9)が多い。水痘の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では宮崎県(3.33)、山形県(2.43)、鹿児島県(2.35)が多い。手足口病の定点当たり報告数は2週連続で減少した。都道府県別では福井県(1.27)、沖縄県(0.74)、石川県(0.34)が多い。伝染性紅斑の定点当たり報告数は横ばいであった。都道府県別では鳥取県(1.32)、島根県(0.87)、高知県(0.73)が多い。百日咳の定点当たり報告数は減少した。都道府県別では高知県(0.13)、沖縄県(0.12)、広島県(0.07)が多い。ヘルパンギーナの定点当たり報告数は増加した。都道府県別では熊本県(0.15)、沖縄県(0.09)が多い。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は増加した。都道府県別では山形県(1.87)、鳥取県(1.68)、宮崎県(1.44)が多い。
基幹定点報告疾患:マイコプラズマ肺炎の定点当たり報告数は増加し、過去5年間の同時期(前週、当該週、後週)と比較してかなり多い。都道府県別では沖縄県(3.29)、福島県(2.86)、宮城県(2.58)が多い。
注目すべき感染症
◆ インフルエンザ
インフルエンザ(Influenza)は、インフルエンザウイルスを病原体とする急性の呼吸器感染症で、毎年世界中で流行がみられている。
感染症発生動向調査では、全国約5,000カ所(小児科定点約3,000、内科定点約2,000)のインフルエンザ定点からの報告に基づいてインフルエンザの発生動向を分析している。今シーズン(2011/2012年シーズン、2011年第36週〜2012年第35週)のインフルエンザの定点当たり報告数は、2011年第49週に1.11と全国的な流行開始の指標である1.00を超え、2012年第5週に定点当たり報告数は42.62(報告数209,974)と流行のピークとなった。第6週以降減少が続いており、第10週の定点当たり報告数は21.06(報告数103,863)であった(図1)。都道府県別では新潟県(41.89)、山形県(39.81)、宮城県(38.70)、福島県(37.80)、埼玉県(31.89)、秋田県(31.27)、北海道(30.62)、岩手県(30.54)の順となっている。42都道府県で減少がみられているが、東北地方を中心とした5県(岩手県、宮城県、山形県、福島県、新潟県)では増加が認められた。
定点医療機関からの報告をもとに、定点以外を含む全国の医療機関をこの1週間に受診した患者数を推計すると約97万人(95%信頼区間:86〜107万人)(暫定値)とこちらも減少が続いている。2011年第36週以降これまでの累積の推計受診者数は約1,338万人(95%信頼区間:1,299〜1,377万人)(暫定値)であり、年齢群別では5〜9歳約361万人、10〜14歳約217万人、0〜4歳約206万人、30代約136万人、40代約99万人、20代約89万人の順であった。また70歳以上は約60万人と昨シーズン(2010/2011年シーズン、2010年第36週〜2011年第35週)の推計受診者数(24万人)(以上全て暫定値)を既に大きく上回っている(図2)。
2011年第36週〜2012年第10週までに国内では4,239検体のインフルエンザウイルスの検出が報告されており、AH1pdm09が8件(0.2%)、AH3亜型(A香港型)3,543件(83.6%)、B型688件(16.2%)とAH3亜型が多くを占めている状態に変わりはないものの、B型の割合が増加してきている(図3)。
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図1. インフルエンザの年別・週別発生状況(2002〜2012年第10週) |
図2. インフルエンザの年齢群別累積推計受診者数(暫定値)(2011年第36週〜2012年第10週) |
図3. インフルエンザウイルスの週別・型/亜型別検出状況(2011年第36週〜2012年第10週) |
インフルエンザの重篤な合併症であるインフルエンザ脳症は、2004年4月より急性脳炎の発生動向調査の一環として報告されるようになった。今シーズンはこれまでに23都道府県から71例(男性42例、女性29例、71例中4例は死亡報告あり)の報告があった。診断週別にみると、2012年第2週以降継続的に報告があり、インフルエンザの流行のピークと一致して第5週に14例とインフルエンザ脳症の報告数も最多となっている一方で、第7週の報告数は2例と減少したものの、第9週は11例と再び増加がみられている(図4)。年齢は1〜83歳(中央値6歳、平均値11.4歳)で、4歳が9例と最も多く、5歳、6歳が共に7例、7歳6例、2歳、8歳が共に5例の順となっており、10歳以下で73.2%を占めている。16〜19歳の報告はなく、20歳以上は9例で12.7%を占めていた(図5)。ウイルス型別ではA型41例(57.7%、うちAH1pdm09が1例、AH3が6例)、B型16例(22.5%)、型別不明14例(19.7%)となっており、今シーズンの流行を反映してA型が多数を占めているものの、第7週以降では全報告24例中B型が12例とA型(7例)よりも多数となっている(図4)。
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図4. インフルエンザ脳症のウイルス型/亜型別報告数とインフルエンザ定点当たり報告数の週別推移(2011年第36週〜2012年第10週) |
図5. インフルエンザ脳症の年齢群別報告数と割合(2011年第36週〜2012年第10週) |
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今シーズンのインフルエンザの流行は、2012年第5週のピークを過ぎてからは報告数の減少が続いているものの、第10週の定点当たり報告数は21.06と高く、ウイルス検出ではB型の報告割合が大きくなってきている。インフルエンザ脳症の報告数は、インフルエンザの流行の推移に一致して第5週の報告数が最多となり、また第7週以降はB型の報告割合が大きくなっているのもインフルエンザの流行状況を反映しているものと推察される。インフルエンザの流行と、インフルエンザ脳症の報告数の推移には今後とも注意深く観察していく必要がある。
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