The Topic of This Month Vol.22 No.12(No.262)

インフルエンザ 2000/01シーズン
(Vol.22 p 309-310)

1999年4月の感染症法施行に伴い、 感染症発生動向調査小児科定点が約2,500から約3,000に増加し、 成人患者の動向を把握するため内科約2,000定点が加わり、 計約5,000定点がインフルエンザ定点となった。

患者発生状況:2000/01シーズンは、 例年より5、 6週遅い2001年第5週に流行の指標である定点当たり1人を超え、 第11週に小さなピークに達した(図1)。その後患者は緩やかに減少し、 第18週には定点当たり1人以下となった。

都道府県別にみると(図2)、 高知と和歌山では他の県より流行が早く、 第8週が流行のピーク(定点当たり31.0人と16.2人)となり、 東北を中心に他の地域の多くは第11週がピークであった。

患者の年齢は(表1)、 20歳未満では4歳が最も多く、 20歳以上の成人では1999/2000シーズン同様30代が最も多かった(本月報Vol.21、 No.12参照)。

ウイルス分離状況図3に全国の地方衛生研究所(地研)で分離・検出されたインフルエンザウイルス週別報告数を示した。2000/01シーズンは3つの型の流行がほぼ同時に立ち上がり、 ピークはA(H3N2)型が2001年第9週、 A(H1N1)型が第10週、 B型が第10〜11週であった。報告数はB型がA(H1N1)型を上回ったが、 この2つの型が共に多数分離されたのは1982年の病原体サーベイランス開始以来初めてである。B型は2シーズンぶりの流行、 A(H1N1)型は2シーズン連続の流行で、 さらに昨シーズンまで4シーズン連続で流行したA(H3N2)型も加わった混合流行であった(表2、 本月報Vol.21、 No.12参照)。都道府県別にみると、 B型は45都道府県、 A(H1N1)型は44都道府県とほぼ全国で分離され、 A(H3N2)型も地域的な偏りはなく41都道府県で分離された。高知では患者発生がピークとなった第8週(図2)にはB型のみが分離されていた。インフルエンザウイルス検出例の年齢をみると(図4)、 B型は5〜7歳、 A(H1N1)型は4〜5歳をピークに、 成人からも高年齢まで幅広く検出された。一方、 A(H3N2)型は1歳がピークで低年齢を中心に検出された。

ウイルス抗原解析:B型ウイルスは山形系統とVictoria系統に大別されるが、 2000/01シーズン分離株の大部分は山形系統に属しており、 B/Sichuan(四川)/379/99およびB/Johannesburg/5/99 (2001/02シーズンワクチン株)に抗原性が近い株が主流であった。2000/01シーズンワクチン株であるB/Yamanashi(山梨)/166/98に類似した株は13%程度であった。またVictoria系統に属するウイルスも少数みられた。A(H1N1)型分離株の80%はA/New Caledonia/20/99 (2000/01および2001/02シーズンワクチン株)類似株であったが、 HA抗原性がこれより変異した株も少数分離されていた。A(H3N2)型分離株の92%はA/Panama/2007/99 (2000/01および2001/02シーズンワクチン株)類似株であった(本月報Vol.22、 No.10参照)。

抗体保有状況:2001/02シーズン前の2001年秋に、 2001/02シーズンのワクチン株3株を含む4株のインフルエンザウイルス抗原を用いて感染症流行予測調査による感受性調査が実施された。14道県分の集計による健常人の抗体保有率(HI抗体価40以上)は(図5)、 A/New Caledonia/20/99(H1N1)に対しては5〜19歳で33〜48%、 0〜4歳で19%、 20歳以上はすべての年齢層で10%以下と極めて低い。A/Panama/2007/99(H3N2)は5〜19歳で55〜82%と高かったが、 その他の年齢層では17〜27%前後と低い。B/Johannesburg/5/99は5〜19歳で39〜59%であったが、 他の年齢層ではいずれも26%以下と低く、 0〜4歳群と40歳以上で特に低い。Victoria系統のB/Akita(秋田)/27/2001に対する抗体保有率は、 全年齢層で極めて低い(本号3ページ参照)。

超過死亡:比較的大きなインフルエンザ流行シーズンには超過死亡が認められ、 高齢化社会を迎えたわが国ではその増加が問題となっている(本月報Vol.21、 No.12参照)。2000/01シーズンは流行規模が小さかったため、 有意な超過死亡は認められなかった。

脳症:インフルエンザ流行シーズンには小児の急性脳症の発生が多くみられることが最近明らかとなってきている。厚生労働省研究班(研究班長・森島恒雄・名古屋大学教授)による全国規模での調査では、 1999年1月1日〜3月31日に報告された238例中217例、 2000年同期142例中109例、 2001年同期61例中55例を該当例としている。その発症機序はまだ明らかではないが、 解熱剤(ジクロフェナクナトリウム、 メフェナム酸)の使用が脳症の重症化に関与している可能性が示唆され、 2001年5月30日、 厚生労働省は「インフルエンザによる発熱に対して使用する解熱剤について」の通知を出した(本号4ページ参照)。

2000/01シーズン中に、 地研における急性脳症患者からのインフルエンザウイルス分離・検出報告は32例(1999/2000シーズンの半数)であった。このうち、 咽頭からの分離26例(+2例 PCRのみで検出)、 髄液からの分離1例(+同2例)で、 B型は17例、 A(H3N2)型8例、 A(H1N1) 型7例であった。

予防接種法の改正:平成13年11月7日予防接種法の一部改正が行われ、 インフルエンザは2類疾病と規定された。1)65歳以上の高齢者、 2)60歳以上65歳未満の慢性高度心・肺・腎機能不全または後天性免疫不全症候群の患者がインフルエンザの予防接種を希望した場合定期接種の対象として一部公費負担となる(接種期間・接種対象者・自己負担額等は各市区町村が定める)。また、 定期接種による健康被害が生じた際には、 公費による救済が行われる(本号5ページ参照)。

平成13年11月12日、 厚生労働省は「今冬のインフルエンザ総合対策について」の通知を出し(http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1112-1.html)、 インフルエンザに関する特定感染症予防指針も改定される。

2001/02シーズンウイルス分離速報:2001年12月6日現在、 B型が9月26日に名古屋市で1株、 A(H3N2) 型が10月5日に仙台市で1株(本月報Vol.22、 No.11参照)、 10月19〜23日に沖縄県で4株分離されている。最新のインフルエンザ情報は、 感染症情報センターホームページ(http://idsc.nih.go.jp/others/topics/newpage2.html)上で随時更新されている。

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