The Topic of This Month Vol.23 No.8(No.270)

無菌性髄膜炎関連エンテロウイルスの動向 1999〜2002

(Vol.23 p 193-194)

日本では毎年夏季に無菌性髄膜炎の流行がみられ、 起因ウイルスはエコー(E)、 コクサッキーB群(CB)などのエンテロウイルスが主である(本月報Vol.21、 No.10参照)。年によって流行するエンテロウイルスの血清型が入れ替わり、 地域によっても流行型に差がみられる。エンテロウイルスによる髄膜炎は基本的に予後は良好である。稀に急性脳炎を起こすことがあり、 エンテロウイルス71型(EV71)は重症例や死亡例から分離されたとの報告がある(本月報Vol.19、 No.3 & Vol.22、 No.6参照)。1997〜1998年にはE30の全国的流行がみられ(本月報Vol.19、 No.8参照)、 1998年の無菌性髄膜炎患者報告数は5,780人(一定点当たり15.66人、 定点数369)と、 旧感染症発生動向調査では1991年の7,672人(同14.05人、 定点数546)に次いで過去2番目であった。

1999年4月に施行された「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」に基づく新たな感染症発生動向調査では、 約470の基幹病院定点が臨床診断による無菌性髄膜炎患者を毎週報告している(1999年3月までの旧システムでは月ごとの報告であった)。また、 地方衛生研究所(地研)は病原体サーベイランスのために定点医療機関などで採取された検査材料(髄液、 糞便、 咽頭ぬぐい液など)から無菌性髄膜炎の起因ウイルスの分離・型別を行い、 その陽性結果を報告している。本特集は1999〜2002年の患者発生状況、 関連ウイルスの最近の動向について述べる。

患者発生状況:無菌性髄膜炎患者報告数は1999年(4〜12月)1,126人(一定点当たり2.47人)、 2000年1,873人(同4.08人)、 2001年1,246人(同2.67人)と少なかった。2002年は第19週以降急増しており(図1)、 第1〜29週までの累積患者報告数は1,548人(一定点当たり3.29人)と、 過去3年の同期間の報告数を大きく上回っている。福井県および岡山県、 高知県、 熊本県など西日本において定点当たり患者報告数が多い(図2)。

エンテロウイルス分離状況:1999〜2002年の各年に無菌性髄膜炎患者から分離されたウイルスを図3に示す。1999年はE6、 CB5、 E17、 2000年はE11、 EV71、 E25、 E9、 2001年はE11、 CB5が上位を占めた。エコーウイルスの各型とEV71は数年〜数十年の間隔を空けて流行する特徴があるのに対し(http://idsc.nih.go.jp/iasr/virus/graph/ent82002.gif)、 CB2〜5の各型は毎年分離されている(http://idsc.nih.go.jp/iasr/virus/graph/ent82001.gif)。

2002年は5月以降、 無菌性髄膜炎患者報告が増加するとともにエンテロウイルスの分離報告も増加している(図4)。これまでに無菌性髄膜炎患者からエコーウイルスが467(E9が33、 E11が179、 E13が225、 E30が19など)分離されている(7月24日現在報告数、 図3)。E9は高知県(本号5ページ参照)など、 E11は香川県など、 E30は岡山県、 広島県(本号4ページ参照)などからの報告である(図5)。

E13は厚生省研究班によって行われていた病原体サーベイランスで1980年に岐阜県から1例分離報告があったのみで、 以後2001年第34週まで分離の報告はなかった。2001年に和歌山県、 福井県、 福島県、 大阪市などで分離されたあと(本月報Vol.22、 No.12Vol.23、 No.5参照)、 2002年は各地で分離が相次ぎ(本月報Vol.23、 No.7および本号4ページ参照)、 現在までに24都府県(28地研)から分離が報告されている。2002年に広島県で分離された株は、 2001年に福島県で分離された株とVP1領域の塩基配列において99%の相同性が認められた(本号4ページ参照)。長期間流行がなかったため、 多くの人はE13に免疫がないと考えられ(本月報Vol.23、 No.7および本号4ページ参照)、 流行はさらに全国へ広がる可能性がある。

ウイルス分離例の年齢をみると(図6)、 E9およびE11は低年齢からの分離が多く、 そのうち無菌性髄膜炎患者はE9では5歳、 E11では0歳と4〜5歳がピークである。これに対し、 E13は幅広い年齢層から分離され、 無菌性髄膜炎患者は0歳および3歳以上に分布している。無菌性髄膜炎患者以外ではE9は発疹症患者から、 E11は上気道炎患者からの分離が多い。

E13の同定に際しての注意点として、 エコーウイルスプール血清「EP95」(本月報Vol.18、 No.3参照)にはE13が含まれていないが、 市販の単味抗血清あるいはシュミットプールで中和可能である。

E13は海外でも稀な型であったが、 2000〜2001年には英国、 ドイツなど欧州で、 2001年にはオーストラリアや米国で分離数が増加し、 髄膜炎の流行を起こしている(本月報Vol.23、 No.3および本号11ページ参照)。

無菌性髄膜炎に対する特別な予防法はない。一般的なエンテロウイルス感染予防対策として、 基本的な衛生習慣の励行、 特に手洗いの徹底(用便後、 おむつの交換のあとなど)が重要である。また、 いわゆる夏かぜ症状に続いて発熱、 頭痛、 嘔吐、 不機嫌(乳幼児)などの症状がみられた場合は早期に医療機関を受診することが勧められる。

感染症情報センターはホームページ上に患者発生(http://idsc.nih.go.jp/kanja/index-j.html)およびウイルス分離(http://idsc.nih.go.jp/iasr/index-j.html)の最新動向を掲載し、 患者の診断に当たる医師をはじめ関係機関に広く情報を提供している。

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