1)情報収集と還元
米国における新型インフルエンザ発生の第一報を探知した4月25日以降、感染研感染症情報センターはFETP研修員を中心に、新型インフルエンザに関する公式・非公式情報について諸外国の政府機関や日本の外務省等のホームページ、海外ニュースメディアのウェブサイト等を丹念にチェックすることにより、情報を迅速に入手し、国内の関係者と共有する活動を続けていた。
日本において新型インフルエンザの症例が確認された以降は、上記の海外の情報収集に合わせて、国内のニュースメディアのウェブサイトや厚生労働省(厚労省)や自治体のホームページ等からも情報収集を行い、国内の関係者と共有する活動を行った。
2)実地疫学調査
実地疫学調査とは、健康危機管理事例の発生にあたり実地疫学専門家が現地入りして全体像の把握、感染源・感染経路の特定等につながる調査活動を行うことにより適切な対応への助言を行うことを目的としている。
5月8日には、デトロイト経由でカナダから帰国したグループのうち3名が成田空港検疫所において新型インフルエンザと確定診断され、厚労省からの依頼に基づき、感染研は成田空港に感染症情報センタースタッフとFETP研修員からなる実地疫学調査チームを派遣した。
5月16日には、日本国内で初めてとなる新型インフルエンザの3例が神戸市から報告され、感染研は厚労省からの依頼に基づき、同日、感染症情報センタースタッフとFETP研修員からなる実地疫学調査チームを現地に派遣した(本号5ページ)。なお、これらの症例には海外渡航歴は確認されていなかった。
時を同じくして、5月16日に大阪府においても、海外渡航歴のない新型インフルエンザの症例が確認され、感染研は厚労省からの依頼に基づき、5月17日には感染症情報センタースタッフとFETP研修員からなる実地疫学調査チームを現地に派遣した。
これらの実地疫学調査から得られた知見等をもとに、関係機関において新型インフルエンザに対する対処方針の変更が検討されていたところ、6月6日には、福岡市において初めてとなる新型インフルエンザの症例が確認された。一定規模のクラスターを形成していたこと、感染源が不明であったことなどから、6月9日より福岡市と厚労省からの依頼に基づき感染研は感染症情報センタースタッフとFETP研修員からなる実地疫学調査チームを現地に派遣した(本号6ページ)。また、6月11日から、船橋市における新型インフルエンザのクラスターに対して、感染症情報センタースタッフが実地疫学調査を行った(本号8ページ)。
国立感染症研究所感染症情報センター 松井珠乃 砂川富正 大山卓昭