これらの結果から、同様のSaV株が2009〜2010年にかけて国内の異なる地域、事例で食中毒や急性胃腸炎を引き起こしていたことが示され、今後の動向に注目する必要がある。ただし、より詳細に株間の相同性を評価するためには、少なくともカプシド全長領域の塩基配列を決定する必要がある。
一方、ここ数年で進めてきた地方衛生研究所、国立感染症研究所、および国立医薬品食品衛生研究所の共同研究により、SaVは年ごとに検出される株が大きく変化するという特徴が認められており、新たな流行株の出現も懸念される。SaVはもはや従来考えられてきた乳幼児を中心とする散発性急性胃腸炎の原因ウイルスだけではなく、ノロウイルス(NoV)と同様に成人を含めた急性胃腸炎集団発生や食中毒の重要なウイルスの1つであると考えられる。NoVで確立された全国的な検出、解析体制(本号4ページ参照)をSaVについても早急に構築し、国内での発生動向を把握するとともに、ウイルスが疑われる食中毒ではSaVの検査も積極的に行う必要がある。
国立感染症研究所ウイルス第二部 岡 智一郎 片山和彦
愛知県衛生研究所 小林慎一
川崎市衛生研究所 飯高順子
国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部 野田 衛