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Vol.1 (1980/6[004])

<国内情報>
チフス菌・パラチフス菌のファージ型別について


 チフス菌・パラチフス菌はそれぞれの型別用ファージによって細分され,本疾患流行解析の有用な手段となっている。現在国際的に認められているファージ型は,チフス96種,パラチフスA6種,パラチフスB11種である。ファージ型は遺伝的にかなり安定なため,同一流行に属する患者からの菌は原則として同一ファージ型であり,もし,異なった型の菌が分離されれば,それは別の感染源からのものと考えられる。ファージ型を指標に流行像を解析するためにも,平素から分離菌株をファージ型別に供し,分布状況を把握しておくことが望ましい。

 わが国では,1966年に厚生省公衆衛生局長通知「腸チフス対策の推進について」が出されたが,それ以降,チフス菌およびパラチフス菌が分離された場合,菌株は速やかに予研に送付し,ファージ型別に供されることになった。一方予研では結果が出次第,全国的視野に基く情報とともにその結果を送付機関に還元する態勢をとってきた。

 現在では腸チフス発生数の約90%に相当する分離菌が型別に供されており,1967年以降,1979年までに送付された菌株はチフス菌3790株,パラチフス菌710株に達している。

 これら菌株の型別の結果,わが国で最も高頻度に分離されたファージ型はD2:21%,ついでM1:15%,E1:12%,D1:8.0%,A:4.9%,53:4.5%,などとなっている。その他,比較的多種の型別用ファージに溶菌されA型菌に近い溶菌パターンを示すA degraded 9.6%,すべての型別用ファージに感受性のない型別不能(U.T.)4.6%なども最近は増加傾向にある。

 パラチフスAでは,1型(31%),4型(30%)が,パラチフスBでは3a型(40%),1型(28%)の出現頻度が高い。

 本月報には,1980年1月〜4月の間に人および環境から分離されたチフス菌,パラチフス菌のファージ型分布を示したが,この期間に患者および保菌者から分離されたチフス菌で高頻度に分離されたのはD2,E1,M1,53,A degradedなどであった。その他46型も高率に分離されており,しかも福岡,熊本の両県に集中して発生していることから,本型による同一流行が疑われ現在調査を続行中である。

 腸チフスの流行は原則的には永続排菌状態にある保菌者を起点として起こる。したがって保菌者の発見と治癒を主眼とする対策によって流行を未然に防ぐことも可能である。環境からチフス菌が分離された場合,隠れた患者あるいは保菌者の存在が示唆されるわけで,ファージ型を指標に遡及調査を行った結果保菌者に辿りつく例も最近では珍しくない。

 今回のデーターの中で(表3),環境からチフス菌が分離されているにもかかわらず,同型患者の発生報告のみられないケースがあるが,これらは遡及調査を必要とする例であろう。

 近年の海外旅行者数の増加に伴って腸チフス・パラチフスの輸入例も増加の一途を辿っているが,1979年には本疾患の輸入例は国内発生例の15%を占めるに至った。輸入例の中には,これまでわが国では分離をみなかったファージ型が出現しており,今後輸入例の占める比率が高くなるにつれ国内でのファージ型分布状況も修飾されてくるものと思われる。

Editorial Note:本号より毎号にファージ型別の成績が掲載される予定です。



予研・細菌第一部ファージ型別室 中村 明子


表1.チフス菌のファージ型分布(1980.1月〜4月 検査分集計)
表2.パラチフス菌のファージ型分布(1980.1月〜4月 検査分集計)
表3.環境から分離されたチフス菌・パラチフス菌のファージ型分布(1980.1月〜4月 検査分)





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