HOME 目次 記事一覧 索引 操作方法 上へ 前へ 次へ

Vol.1 (1980/6[004])

<国内情報>
最近の恙虫病に関して


数年前より各地で非アカムシ媒介性恙虫病の発生が報告されているが,群馬県でも53年秋に中之条町を中心として18名の届出があり,うち15名が血清反応で真性と診断され,54年秋には24名の届出があり,うち3名が血清反応を実施していないので疑問が残るも,他の21名が真性と考えている。群馬県で血清反応を用いて恙虫病と診断されたのは今回が初めてであるが,50年から52年の3年間に中之条町の医療機関でカルテを調査すると18例の恙虫病らしきものが見つけられており,医師や住民によると10数年前から,それらしき患者は発生していたようである。さて,1979年の発生について月別にまとめて表に示した。

この表は医科研川村教室でまとめたものである。アカムシ媒介性と思われるものは秋田県の雄物川流域,特に大曲市を中心とした横手盆地(53年9例,54年5例),新潟県の長岡市を中心としての信濃川流域および魚沼地区(53年4例,54年4例)に局在し,他は全て非アカムシ媒介性と考えられる。また春および夏に発生しているのは秋田県と新潟県のみで,他は秋に集積している。山梨県でも5月に発生しているが例外的である。ツツガムシの生態を考えると春に発生しても不思議ではなく,これから発生増加に伴って春の発生にも注意する必要がある。非アカムシ媒介性が頻発しているのは秋田県の能代川流域(北新田地区),新潟県の南西部,富山県の黒部地域,伊豆七島,それに群馬県の中之条町近郊である。

 2年に亘り調査してきたが,気のついたことについて述べてみましょう。

 従来OXK抗原に対する抗体上昇が知られ,ワイルフェリックス反応(WF)として広く利用されているが,抗体価上昇が病気の経過と一致しないことが多く,この反応のみに頼って診断することは無理のようである。新潟県衛研で間接蛍光抗体法(IF),補体結合反応(CF),それにWFを用いて多くの住民を対象として抗体保有率を求めているが,WFで求めた保有率が前二者に比して極端に低く,潜在的感染を知るには不適当と思われた。また,私達はA社の抗原を使用し,他の機関ではB社のものを使用しているが,両抗原間で測定した抗体価に著明な差があり,また両者間における関連性も少ない。

 私達のところで保存している株より作製した抗原も異るようで,今後,適当なるシステムで統一する必要を感じている。

 1979年に分離したリケッチアについて蛍光抗体法で型別されているが,Gilliam型およびKato型に関連しているのは秋田県および新潟県で分離された株のみで,他の地区では全てKarp型である。患者血清を補体結合反応で型別することもされているが,はっきりした成績は得られないようである。非アカムシ媒介性恙虫病がKarp型リケッチアの感染により,アカムシ媒介性恙虫病がGilliam型およびKato型の感染により発病している傾向があるように感じる。但し秋田では53年発生の非アカムシ媒介性恙虫病で2株のGilliam型リケッチアを分離している。然し,非アカムシ媒介性かアカムシ媒介性かを判断することはむずかしく,一般にアカムシが生息していること,秋以外の発病であることなどより判断している。

 次に一般住民の抗体保有調査について述べたい。新潟県衛生研究所で2289人を対象として,IF,CF,WFを用いて県内の各地域で抗体保有調査をしているが,IFによる保有率が最も高く,5.0%の値を得ている。最も高率なのは六日町町,十日町市で夫々42.9%,33.3%の率を得ている。山梨県の道志村での調査では昨年1月に40.6%,7月に58%の高率を得ている。医科研川村教室が,伊豆七島で実施した成績では,三宅島で26.1%,利島で23.5%の率であった。また,数は少ないが八丈島では56.3%の保有率であった。私達も中之条町近郊で実施しているが,高山村で24.5%の率であった。住民の抗体保有調査が何を意味するのが興味の深いことであるが,発生地域ではかなりの保有率を示すようである。はっきり言えないが25%内外の保有率があれば有病地域であると言えそうである。

 以上の成績は10倍稀釈血清IFを用いて実施したものであるが,20倍稀釈血清の方が良いか等について方法を検討し,各機関が同一方法で実施する要がある。

恙虫病発生と農薬との関連をここで説明することは出来ないが,ここ数年の経過を考えるとこれからも発生が増加してゆくものと思われる。予防衛生研究所における対応策を期待しています。



群馬県衛生公害研究所 氏家 淳雄


表.日本における恙虫病発生(昭和54年)





前へ 次へ
copyright
IASR