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1974年以来,ブラジルでは下水のコレラ菌調査をルチーンに実施してきたが,1978年5月までは全検査陰性であった。ところがこの時点で,Sao Pauloに近いSantos市の下水から2株のコレラ菌が分離された。そこで下水調査は強化され,またTCBS培地を用いた下痢患者の便培養が実施された。しかし,コレラ菌O−1はもはや分離できなかった。
同年10月になると,こんどはリオデジャネイロ市の下水系から2株のコレラ菌が分離されたが,ここでもまた人体感染例は発見できなかった。
なお,サントス市での2分離株はY−1副腎細胞検定法によって弱陽性を示したが,ELISAやウサギ皮内検定法では非毒素原性であった。これらの株の産生する毒素蛋白はB部分が欠けている。
これら2株を成人志願者に経口的に投与した。1074−78株は106菌数を重炭酸ソーダと共に7人に与えたが発症せず,便培養も陰性であった。
1096−78株も,8人の志願者に106菌数を重炭酸ソーダと共に与えたが,発症者はでず,そのうち6人の便からは菌が分離できた。6人のそれぞれからの便由来株10(計60株)の毒素産生能をY−1副腎細胞検定法でしらべたところ,1株のみに弱い毒素原性が認められた。しかしその分離株クローンをしらべたところ,毒素非産生であった。上記6人のうち4人に対してBahrain由来の毒素原性コレラ菌O−1株で攻撃したところ,全例症状を起こした。このことは上記ブラジル株がヒト腸管内に定着しても防御を与えないことを示している。
1196−78株をさらに菌量を108にあげて重炭酸ソーダと一緒に5人の志願者に投与したが発症者はでず,便培養陽性者もそのうち2人にすぎなかった。
(WHO/DDC/EPE/80.3)
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