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Vol.1 (1980/9[007])

<国内情報>
下痢症患者からのCampylobacter jejuniの検出について


 Campylobacter腸炎は,Skirrow(1977)がCampylobacter enteritis;a “new”diseaseとして報告して以来,感染性腸炎の新しい原因菌として注目されるようになった。しかし,検体の採取,或は輸送培地,分離培地への添加剤の入手等の問題が多く,当所においてはCampylobacterの分離には困難をきわめていた。

 本年の4月から医療機関依頼検便を従来からのグリセリン緩衝液を変えてCary-Blairの輸送培地と滅菌綿棒(化学繊維製)を使用することにより,Campylobacter jejuniの分離頻度が著しく増加した。

 4月から8月中旬までの成人における下痢症の原因菌検出状況は,検体数305例中,Campylobacter jejuni 47例(15.4%),サルモネラ9例(4.7%),病原大腸菌(7例)(3.7%)であり, Campylobacter jejuniが散発下痢症患者の主要原因菌であった。

 一方,集団発生例はすでに東京をはじめ,神奈川,岩手,山口などで報告されており,本市においても7月下旬に某小学校の林間学校参加児童275名中,下痢,発熱,腹痛を主症状とする患者45名が発生し,そのうちCary-Blairで採便した30名中19名(63.3%)からCompylobacter jejuniを検出した。患者の臨床症状は下痢が平均6回以上の水様性下痢,38℃以上の発熱,腹痛,頭痛が主症状であった。

 また,この際採便から検査まで時間がかかり過ぎたためかグリセリン緩衝液で採便した患者からは本菌が検出されなかった。

 また,BBL製と国産のCary-Blair輸送培地におけるCampylobacter jejuniの保存点検を行なった結果,約106個/ml接種,室温保存では両者とも72時間まで顕著な菌数の減少は認められなかった。したがってCampylobacterの検索には,Cary-Blair輸送培地が適していると思われる。



川崎市衛生研究所 中村 武雄





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