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昭和55年5月23日から6月3日にかけて,山口県吉敷郡A小学校,B中学校(調理施設同一)と山口市C小学校においてCampylobacter fetus subsp. jejuniを原因菌とする食中毒が発生した。患者数はA小学校291名,B中学校229名,C小学校181名,計701名であった(表参照)。患者の発生は23日から3日にかけて見られ,24日から27日の間に多発した(図参照)。症状は下痢,腹痛,発熱,頭痛などで,下痢は水様性または粘液,粘血性で,1日5回以内,発熱は38度,39度台のものが多かった。症状は2〜4日で消退するものが多かったが,11日かかったものもあった。
患者が両校の生徒に限られ,また,当時特別な行事もなかったため,学校給食が原因ではないかと考えられた。両校の献立を検討したところ,22日に拌三絲を食べており,この中に同一製造所の錦糸卵が使用されていたことがわかった。この錦糸卵は加熱後摂取する冷凍商品であるにもかかわらず,過熱調理しておらず,問題があると考えられたが,検食はすでになく,本菌の検索はできなかった。また,保健所の調査によると同じ頃,錦糸卵(製造月日不明)を加熱調理せずに食べた学校が県内に10校あったが,欠席率に特に異常は認められないようであった。その他には共通食品はなかった。井戸水,食肉,牛乳などについても菌検索を行ったが,いずれも陰性であった。
本事例は,発生当初集団風邪として扱われていたため迷宮入りするところであったが,偶然にも病院から細菌性の疾患が疑われるとして,粘血便が保健所経由で当所に持ち込まれた。当所では,Campylobacterも念頭において菌検索を行ったところ,本菌が分離された。このため,下痢患者を対象に調査を開始したものであるが,初発患者発生後1週間を経過していたので検食は全くなく,喫食調査も記憶があいまいで,x2検定も困難であった。
以上の事より,原因は学校給食によると推定されたものの,原因食品を推定する事はできなかった。
山口県衛生研究所 松崎 静枝,片山 淳
表.学校別患者発生状況
図.日別患者発生状況
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