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Vol.2 (1981/1[011])

<国内情報>
溶連菌症の定点観測


福井県では1979年8月末以来,福井市内の1小児科医院を訪れた溶連菌症の疑いの患者について,A群溶連菌の検索を行っている。1979年9月より1980年8月までの1年間についてみると,被検者は延356名で,このうち192人から直接培養により菌を分離した。菌陽性者の年齢は5,6才をピークに約80%が3〜8才に分布していた。臨床的には猩紅熱様発疹症55名,腎炎1名,リューマチ熱1名,残りは急性気道感染症であった。分離菌についてT型別と3濃度ディスク法によるPC,TC,CP,EM,CERに対する感受性試験を実施し,以下の結果を得た。

1.分離圏は型別不能株(6株)を除き10菌型に分布していたが主要菌型は12型108株(56%),4型33株(17%),6型19株(10%),1型8株(4%)であった。これをシステム研究班の1979年全国集計と比較すると上記4菌型の優先順位は変わらないが,12型の占有率は福井の方が大分高かった。

2.耐性菌は分離株の47%(91株)を占めた。PC,CERに対する耐性菌は検出されなかった。薬剤別では分離192株のうちTCに耐性を示すもの88株(46%),EM耐性9株(5%),CP耐性7株(4%)であった。また耐性株の86%までがTC単独耐性菌であった。全般に感受性菌が増加しているように見うけられ,特に12型のEM耐性株の著しい減少(1976年の患者株は71%がEM耐性)が注目をひいた。

3.この調査期間内では12型,4型に比べ6型の猩紅熱発症率が高かった。腎炎,リューマチ熱患者からは12型が分離された。

4.再感染は11名にみられたが,そのうち8名が6才児であった。11名中同一菌型による感染6例,異なる菌型によるもの5例であった。この医院では菌陽性者にAB−PCを10日間投薬しているようであるが,20日以内に再発した2例(同一菌型)は再感染ではなく再燃かとも思われた。

以上1医院での調査結果ではあるが菌型ではよく全国状況を反映しているようであった。溶連菌症はもっともポピュラーな病気の1つであり,腎炎等の二次疾患の引金になることから,今後も監視を続けながら予防対策を模索する必要があろう。



福井県衛生研究所 小林桂子 和田祐一





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